表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
給与額がそのままレベルに反映されたら最強っぽくなった  作者: (独)妄想支援センター
Ⅲ.世界へ踏み出す輝かしき第一歩 そして無辜なる者への果て無き慈心
46/69

46 縁の下の怪力

「う、うぇぇ…っく、ひっ、ぅく」


 ノーラの目の前で咽び泣く女性。

 言うまでもなくこの街を治める領主の娘、ルチアだ。


「ぉ、お、おいていかれ、うっ…ぐすっ、ぅえっ…」


 その彼女が如何なる理由でこの宿を訪ねてきたのか。

 なにゆえ泣き濡れた美貌を惜しげもなく領民の前に晒しているのか。


「わわわわ…」


 想定外の事態にノーラの思考は一瞬にして混乱の淵に叩き込まれた。


「わ、私が何かまずいことを…?」


 貴人の応対など彼女にとってはまるで経験の無いこと。

 よもや知らぬうちに無礼をはたらいてしまったのだろうか。


 そもそも斯様な重大事、本来なら亭主である父が対応すべきである。


「(なのに暢気に床で寝てるなんて!)」


 怒りで混乱が上塗りされ、幾分落ち着きを取り戻す。

 父が伏している原因は頭から抜け落ちていた。


「あなたのせいではありませんよ。

 ほらルチア様、もう少しお話を訊いてみましょう?」


 ノーラの疑問に答えたのはルチアの側に控えていた侍女だった。


 いつの間にか主の姿を衆目から隠す立ち位置に移動している。


 その淑やかで楚々とした振る舞いは、ノーラが思い描く大人の女性そのものである。

 ルチアにばかり目がいって気付かなかったが、彼女もかなりの美人だ。


「(ううっ…どうしよう、ちゃんと答えられるかな)」


 おかげで再び緊張が増してくる。ついでに父への怒りも再燃する。

 彼のこの後を思うと不憫でならない。



「では詳しくお話しいただけますか」


 ピンと背筋を張るノーラをなだめるように、侍女がたおやかな声で問う。


「ひぁい!あ、あのですね、ダストさ…様は今朝早くに出発しま、されました!」


 お陰でどうにか声が裏返りながらも答えることができた。

 目の前に姫君、周囲を騎士に囲まれた状況にしては上出来である。


「そうですか…行き先は仰っておられましたか?」

「いえ、ただ『大いなる目的のため』としか…」


 昨日食事中にしていた話がおそらくそのことだろう。

 ハルは当初、自分の生家を訪ねてくれるのを期待していたようだが。



「なるほど、「目的」と申されましたか」


 ノーラの話を受けて年嵩の騎士が口を挟んでくる。


「エインス様、それはもしや…」


 放心しているルチアを差し置いて侍女と二人で談論を始めてしまう。


「(い、いいのかな…?)」


 一人気を揉むノーラをよそに、お付きの者達は誰も気にした様子が無い。

 彼らにとっては常のことのようだ。


「(…で、私はどうすればいいんだろう)」


 置いてけぼりを食らい、呆然と立ち尽くす。


 救いを求めて周囲を見渡すも、近所の者達は頭を垂れたまま誰一人動こうとはしない。

 その中にいつの間にか父の姿も混じっていた。

 

「(お父さん!…あとで憶えといてよ)」


 ノーラがぎゅっと拳を握るとピシリと空気が震える。

 彼女を良く知る幾人かがそれを感じて僅かに身を震わせる。


 そんな中、先程の侍女と騎士の会話に不穏な言葉が混じった。


「――やはり魔王」


 密やかな囁きであったが、近くにいたノーラの耳には届いた。

 その途端、彼女は自身の心臓がドクンと跳ね上がるのを感じた。



 魔王復活――


 それは今の時代の人々に共通した、常に側にある不安の種だ。




 1000年前、魔王リーチは世界を破滅の淵まで追い込んだ。


 憐れんだ天は地上に勇者を遣わし、それを討たしめた。


 しかし魔王は何らかの特性により完全には滅びず、

 いつの日か復活を果たすとの予言が当時から存在した。


 勇者と英雄達が健在のうちはさほど問題視されなかったが、

 英雄のうち幾人かは予言を重く受け止め、後世へ警告を遺している。


 その中の一人、予報学士コンピウタが月の魔力波形観測から得た予測では、

 魔王復活はちょうど1000年後とされている。


 魔王が討たれてから現在までは正確にいうと1008年。

 もしコンピウタの予測が正しければ既に魔王は復活していることになる。 


 それを裏付けるように、数年前から月が異様な形に映ることが観測されていた。

 加えて昨今の魔物の増大と強大化である。


 信じたくはないものが現実になろうとしている。


 記録に残る魔王軍とは、大地を埋め尽くす魔物の群れだ。

 津波のように押し寄せるそれは、全てを呑み込み跡には何も残さない。


 魔王復活は破滅そのものだった。




「わ、わ…」


 衝撃にノーラの思考は今度こそ真っ白になる。


 絶望を口にしたのはルチアお付きの騎士と侍女。

 領主の近くに仕える彼らの言葉は単なる町人の噂とは重みが違う。


 今の平穏は薄氷のうえに在り、

 ほんの些細な切っ掛けで恐慌へと沈む危うさを内包している。


 自分がそれを踏むわけにはいかぬと、ノーラは必死に口を噤んでいたが、

 それも程なく限界を迎えた。


「ま…んむっ?!」 


 恐怖に耐え兼ね言葉が出掛ったところでいきなり、例の侍女に抱きすくめられた。

 

「落ち着いて…目を閉じて、大きく息を吸ってください」


 ノーラの様子を察してとっさに口を塞いだのだろう。


 だが、温かく柔らかな胸に抱かれたノーラにはそれ以上の効果をもたらした。


「ん…すぅっ」


 言われたとおり目を閉じて大きく息を吸う。


 真新しい衣服の清潔な香りに混じって、微かに甘い芳香が感じられる。


 記憶の底にある長らく忘れていた安心が呼び起こされ、

 このまま眠ってしまいたくなるような心地良さに恐怖を一時忘れることができた。


「大丈夫…大丈夫ですよ。私たちにはあの方がおられますから…」


 あやすように囁いてくれる侍女が今のノーラにとっては世界一頼れる存在に思えた。


 その彼女をして「大丈夫」と言わしめる“あの方”とは…



「(あの方?……あ!)」


 半ばまどろんだ思考の中に突如として、燦然と煌めく辰星が瞬いた。


「!…ダストさん」


 他でもない、先刻旅立ったこの街の救世主だ。


 実のところ彼の人柄を知るノーラには半信半疑だったが、 

 魔王復活というピースと組み合わさった途端、溢れんばかりの希望となって輝き始めた。


「ええ、そうです」


 柔らかな声に誘われ顔を上げると、目が合った侍女が微笑んでくれる。

 まるで正解を褒められているようで、嬉しさに胸の奥がポッと暖かくなる。


「あの、よろしければお名前を…」


 なんとなく離れがたいものを感じ、彼女の名を尋ねようとしたところ――


「やはりそうだ!」


 突然の大声に、驚いてパッと身を離す。



 声の元を辿ると、いつの間にか馬車の()に登ったルチアが、両手を大きく広げて天を仰いでいた。


「わ…」


 鮮やかな真紅の髪が朝日に良く映え、状況のおかしさも忘れて目を奪われた。

 頭を垂れていた住民達も思わず顔を上げる。


 ひとしきり注目を集めたところで、ルチアは良く通る声で宣言した。



「ダスト様こそ新たな勇者様だ!!」



 場がシンと静まり返る。


 すぐさまその言葉の意味を理解できた者はいない。

 この世界の人々にとって勇者とはそれほど重い意味を持つ。


 かつては実体の無い神を崇める教えも存在したが、それらは魔王の時代に尽く滅んでいる。

 最も辛い時に何の救いも与えてくれぬ、存在すら怪しい神に価値を見出す者は皆無だった。


 代わって救いをもたらしてくれた勇者と英雄達が後に新たな信仰の対象となり、

 時代が下るとともに勇者を中心とした多神教の様相を呈すようになった。


 ルチアが告げたのはその神にも等しい勇者の再臨である。


 その姿は、さながら天啓を授ける女神のようにも思えた。


「まさか本当に…?」

「…勇者様だったの?」

「強いとは思ってたけど…」


 ゆっくりとざわめきが広がっていく。

 暗雲の如く垂れ込めた不安の中、突如顔を出した陽光に誰もが希望を垣間見た。


「あの白い影は天の御使いだったんだ!」

「じゃあやっぱり?!」

「そうだ!勇者様だ!」

「新しい勇者様!!」

「きゃあ!わたし勇者さまにお会いしちゃった!」

「俺の方が先だったぞ!」

「ボクなんか挨拶しちゃったもんね!」

「私が作ったお弁当を勇者様が食べてくださったのよ!」

「いや、あんた弁当屋だろ」

「そうだ!婆ちゃんにも教えてやろう!」

「俺も家族に知らせてやらにゃ!」

「私も元カノに教えてあげよ!」

「わー!きゃー!」


 喧噪はこの場のみならず、野火のように街全体へと広まっていく。


 ルチアはそれを満足そうに見やると、さも当然のように馬車から飛び降りた。


「あっ!危ないっ!」


 その無茶苦茶な行動に思わずノーラは声を上げる。


 豪奢な馬車は宿の二階ほどの高さがある。

 姫君がそんな所へ登ったこと自体がおかしいのに、まさか飛び降りるとは…


 ノーラの危惧を余所に、ルチアは危なげ無く軽やかに着地する。

 その際フワリと舞い上がったスカートの奥にチラリと眩しい白が見え隠れした。


「(…そこは赤じゃないんだ)」


 見たまま素直な感想を抱く。

 一連の騒ぎでノーラの感覚もだいぶ麻痺してきたらしい。


 降り立ったルチアは勢いのままくるりと身を翻すと、お付き達に向かって声を上げる。


「私は置いて行かれたんじゃなかった!」


 はっきり言い放った横顔は朝日を浴びて一層美しく輝いていた。

 

「…え?」


 それはいいのだが、どうしてそこへ辿り着いたのかがまるで理解できない。


 ルチアは今しがたダストを訪ねてきた。

 しかし彼はそれを待たず今朝早くに街を出た。


「ふふっ…わかっているさ。確かに結果だけ見れば置き去りにされたようにも見えるだろう」


 そうとしか思えないのだが誰も口には出さない。


「急ぎ発たれたのは一刻も早い世の泰平を願うダスト様のご恩徳ゆえ。

 だからこそ供を募る暇も惜しんでお独りで発たれたのだろう」


 馬車の周囲をゆっくり歩き回りながら持論を述べる。


「すなわち!」


 教鞭を振るうかのように鞘の先で石畳をトンッと突く。


「ついて来られる者のみ供とする、との仰せに違いない!」


「「「おおっ!」」」


 騎士達が感嘆の声を上げる。

 そこには「我こそは」という想いが強く感じられた。


 街の喧騒にも増して盛り上がりを見せている。



「(うわぁ…どうしよう)」


 ノーラからすれば今の弁で納得してしまったことにも疑問を唱えたいが、

 それ以上に正さねばならない事実があった。


「(ダストさんは一人じゃないんだよ~…)」


 おそらくルチアはハルの存在を知らぬのだろう。

 でなければこんな逢瀬を待ち焦がれる乙女のようではいられまい。


「(…このままだとマズイことになるね)」


 もし今すぐダストの下へルチアが参じてしまえば、あの気弱な狐娘はどうなってしまう。

 ハルはきっとダストの体面を気にして身を引いてしまうに違いない。


 貴族と奴隷という身分差は彼女に非常に不利に働く。

 例えダストが気にしなくてもハルは気にする。


 もうしばらく、二人の関係が進展するまでルチアとは会ってほしくない。


 だが逆にダストとハルが親密になりすぎてもいけない。

 こちらも思い込みの強いルチアのことだ、絶望のすえ自害してもおかしくない。


 今のハルとルチアはどちらにとっても相手を滅ぼす致死毒となり得る。

 互いに面識すらないのに、なぜこんなことになってしまったのか。


「(どうしてこうなっちゃったのぉ~??)」


 ノーラは考えを巡らせすぎて頭がカッと熱くなる。


「あ、あのっ…!」


 ともかくこのままルチアを行かせるわけにはいかない。


「ん?なにかな」

「どうしました」


 意を決して声を上げたものの、ルチアと侍女から視線を向けられると言葉が詰まる。


「うっ…そ、その、えっと…」


「すまないが私は急ぎダスト様の下に馳せ参じなければならない。

 もし父…領主様に奏上があれば直接屋敷まで出向いてもらいたい」


 言い淀んでいるうちにルチアが勝手に話を切り上げてしまう。


「いえ、あの、そうではなく…」


 考えることが多すぎて全く考えがまとまらない。

 今はとにかく猶予が欲しい。


 最悪このままでは今日中にも破局が訪れる。

 それをできる限り先延ばしし、ダストとハルが情を深める時間を稼ぐ。


 ハルの地盤を整えた上で、まだルチアに芽があるギリギリのタイミングを図ってダストと合流。

 その後は彼の心がどちらか一方に傾きすぎないよう間に入って関係を取り持つ…


「(そんなことできるのぉ!?)」


 あらためて考えるとあまりの難度に眩暈がしてくる。


 ルチアと話しをするだけでも尻込みしていまうのに、ただの宿屋の娘には荷が重過ぎるではないか。

 そこでふと思い至る。


「(でも一人じゃなければ…)」


 かつての勇者一行にも人間関係に心を砕く者達がいた。

 英雄オナカイタイとその部下である。


 多数の種族から成る集団が一丸となって事に当たれたのは、

 勇者の求心力もあるが彼らの尽力もまた大きい。


「(私と一緒にやってくれる人…)」


 無意識にこの場で最も頼りにする者へと目がいく。


 ルチアの傍らに控えた侍女は、ノーラの視線に気付くとニコリと微笑みを返してくれる。

 その暖かな笑みを受けて幾分申し訳なさを感じたが、事は世界の運命を左右する。


「(ごめんなさい…でも、これからよろしくお願いします)」


 密かに彼女を協力者に見立て、心の中で頭を下げる。


 ノーラにとって想定外だったのは、この侍女もまた“当事者”であったことだろう。

 そのせいでノーラの苦悩はいっそう深まるのだが、この時は知る由もなかった。




◇◇◇




「(くそっ!何が慈父だよハゲゴリラめ!)」


 草原に出て冷静になった俺は、怒りを再燃させて冷静さを失くしていた。


 悪ゴリラの放った怪電波で少しばかり意識を狂わされたが、鋼の精神力で見事打ち勝った。

 今の俺は怒りと哀しみを抱えた傷付いた戦士、この心の乾きはお漏らしでしか癒せない。


「(ああ…水と音が織り成す魅惑のウォーターショー…)」


 幻に終わった夏の恒例行事に想いを馳せる。

 芳しきビッグウェーブは陽炎の如く夏空の彼方に消え去った。


「(せめて音…音だけでも!)」


 もし叶っていたら彼女はどんな音色を奏でてくれたのだろう。


 赤い彗星のようにシャーッと鮮やかに、あるいは奇妙な冒険のようにジョジョ~ッと力強く。

 恵みをもたらす水の流れは心に安らぎを、魂に潤いを与えてくれただろう。


 恵みで思い出したけど、実はあの時受付嬢さんの股下にはちょうど小人族の集落があった。

 日照り続きで苦しむ小人達にとって奇跡のコラボレーションが恵みの雨になるはずだった。


 もし雫の一滴なりとも器に受けられれば、水増ししてみんなで回し飲みできたのに…


「(雫か…)」


 女性のものは男とは違い蛇口を持たない、いわば剥き出しの放水口だ。

 ちょろっと先走った雫ちゃんがいたとしても不思議ではない。


「(そうか…!しまった!)」


 俺としたことがそんな簡単なことにも気付かず調査を怠ってしまうとは。


 そもそもあの時の受付嬢さんは完全に地面に座り込んでいた。

 

「(つまり股間は地面に直付けだったのでは…?)」


 これは益々貴重な資源が眠っている可能性が出てきた。

 うまくいけば今日は土かけご飯が食べられるぞ!


 よし、今すぐ戻ってあの場にある土を根こそぎ採取しよう。

 小人族の集落?そんなもんあるわけねえだろ。



「おいハル…」


 「引き返そう」と告げる前に、いつものように危険を知らせてきた。


「あ!主様、あそこに巨大ヤスデがいます!」


 見ると電柱ほどの太さがあるヤスデが前方をゆっくりと這っている。

 寒気がするほどの気色悪さだ。


「近寄ると毒を出します、気をつけて迂回しましょう」


 なに言ってんだバカギツネ。

 虫ごときのためにわざわざ迂回するわけないだろ。


「面倒だ、潰して行く」


 言うが早いか、ポケットから石粒を取り出して放り投げる。


 ビシャッ


 描写は省く。



 その様子をハルはぽかんと見ていた。


「…あの、あの、“むえきなせっしょう”はよろしかったのですか?」


 煽てるのも忘れて心底不思議そうに首を傾げる。


「(無益な殺生ねえ…)」


 どうやらどこぞの糞ゴリラがうちの子に余計なこと吹き込んだらしい。


 慈父を騙るエセ教祖め!

 どこまで俺の邪魔をすれば気が済むんだ。


 むしろ虫なんか殺してなんぼ。

 子供はそうやって命とは何かを学んでゆくものだ。


 ミミズにおしっこかけたあいつは本当にすごかった。

 迷信に真っ向から立ち向かう姿はまさにヒーローだ。


 クラスに一人は勇者がいた。

 いい時代だったなぁ…


 ねえ、それよりおしっこの話しなかった? 

 受付嬢さんのお漏らし見たかったね。


 返す返すも惜しまれる、このままでは夏が終われない。

 今が夏かどうか知らないけど。



 ピキーン



 突然俺の頭の中に素晴らしい思いつきが生まれる。

 まさに天の啓示!


「…なあハル、のど渇いてないか?」


 お供の体調を気遣ってやりなさい、とのお告げです。

 邪な企みなど一切ありません。


「?いえ、いえ、大丈夫です」

「…そうか」


 失敗した。


「わかった、でも辛くなった時は遠慮せず言え」

「はい、はい、お気遣い嬉しうございます」


 巨大な陰謀が蠢いていたとも知らず、ハルは無邪気にひょこんと頭を下げる。


 その姿を見て俺の中の邪念が完全に消し飛んだ。


「(よく考えたら…)」


 またしても偽神ゴンゾが卑劣な精神支配を目論んでいたようだ。

 だが常に心を研ぎ澄ませている俺の前では全くの無駄である。


「(連れが漏らしたら気まずいどころの話じゃないよな)」


 悪魔の誘惑を独力で撥ね除け、人間的に一回り成長することができた。

 いつか黄金の湖を見つけるまで僕らの旅は続いていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ