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給与額がそのままレベルに反映されたら最強っぽくなった  作者: (独)妄想支援センター
Ⅲ.世界へ踏み出す輝かしき第一歩 そして無辜なる者への果て無き慈心
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40 ソードマン

 【スキルの複合効果により対象に 器人変刃きじんへんじん が発現しました】


「(スキルの複合効果?!)」


 初めて見るメッセージだ…


 カイト氏に使ったスキルといえば【祈り】と…【詐術】か?

 それが特別な効果を生み出したらしいのだが…


「(【器人変刃きじんへんじん】?なんだこりゃ??)」


 それが今のカイト氏に起きている現象の正体らしい。



 光は収まるどころかますます強さを増し、

 今では白熱した金属の塊のようになっている。


「(そういえば…似ているな、あの時と)」


 今の状況は棍棒がソードに変化した時を思い起こさせた。


 だが大きさがソードの比ではない分、放つ光と熱の量が尋常でない。

 まるで生まれたての恒星のようだ。


「ヘイ、ダストさん…これは」

「あぁ…おそらくは」


 ウム!


 さっぱりわからん。



 キン キン カン


 物体の内部から金属を叩くような音が聴こえてくる。

 光は白から赤へと色を変え、熱は徐々に和らいでいく。



 シキ シキ シャリン


 金属音はやがて刃物を擦り合わせるような鋭い音へと変化する。

 どうやら一連の現象が終わりに近付いているようだ。



 ガチン


 最後に一際大きな音を立て、ついに変化が収まった。



「…………ム」


 物体はパチリと目を開ける。


 姿形は以前のカイト氏そのままだが、身体全体にピカピカした金属光沢がある。


「…これは、どうしたことか」


 発した声には断続した低いハウリングが混じっている。


「(どうしたって…そんなの俺が訊きたいよ)」


 俺の疑問を余所に、当人は感触を確かめるように身体を動かし始める。


 ギィ キキィ


「おおっ…!この鋼の身体はっ!」


 最初は金属が擦れるような音を立てぎこちない動きをしていたが、

 次第に静かで滑らかな動きに変わってくる。


 準備運動とばかりにその辺をひとしきり走り回ると、

 今度は例のパンチを繰り出し始める。


「せいっ!」


 シュバッ


 続いてキック。


「せやっ!」


 シビッ


「(んんっ?!)」


 気のせいか、いま突き出した手足の先が刃物になっていたような…


「せぇいやっ!」


 シャラン


「(気のせいじゃない!)」


 勢い良く手足を振ると、その瞬間だけ刃に変わるようだ。


「せーりゃあぁぁ!!」


 勢いに乗って刃物化した両腕を横に広げてコマのように回転する。


 ギュルルン


「(すげえ!必殺技だ!)」


 じゃなくて!

 これはいったいどういうことなの?



 【スキル:鑑定 を発動しました】


名前:カイト・デカルト

種族:ソードマン

性別:男

年齢:0

LV: マスターの1/1000

HP*3 :738

MP*0 :0

力*5 :1230

技*1 :246

守*3 :738

速*1 :246

賢*0 :0

魔*0 :0



 なんだこれ……?

 

 [種族:ソードマン]ってなによ、人間やめちゃってるよ。


 ソードマンとはいうが俺の知ってるソードマンとかなり違う。

 これ剣士じゃなくて剣人間だ。


 いや、確かにそれもある意味ソードマンだけど…


 しかしこれ…本人的にはどうなんだ?



「ううむ……」


 いやー、やっぱりショックでしょう。

 こんな訳のわからんモノになっちゃたら…


「素晴らしい!」


 いいのかそれで?!


「ボス!アメイジング!」


 お前も!?



 じ、じゃあ俺も便乗しておこう。


「やったなカイト殿!」

「おおおっ!ありがとうございます!全部ダストさんのお陰です!すげえ!!」


「え、あ…そうなのかな」

「そうですとも!」


 いやだー!

 全ての原因が俺にあるような言い方しないで。


「すまないが今夜この場で起きたことは伏せておいてほしい」


「おや?」

「ヘイ?」


 変人コンビは心底不思議そうに首を傾げる。

 

「何故です?」


 だってそうだろ…


 こんな調子で俺のお陰だと騒ぎながら奇行を繰り返されたらどうなる。

 俺にまで悪評が飛び火するじゃないか。


 当然それはルチユリの耳にも届き、俺への好感度ガタ落ち。

 せっかくの婚約を破棄されてしまう。(※そもそも婚約してない)

 そんなことになったら悪役令嬢よろしく復讐に走るかもしれない。


 それはすなわちレベル24万6800の化け物が世に放たれるということ、

 俺の暴走は世界の破滅へと繋がっている。


「それが皆の心の安寧となるからだ」


 その破滅は俺が嫁ゲットして幸せなニートになれば回避できる。


 つまり俺は知らぬ間に世界平和のために活動していたことになる。


 なんと素晴らしい!

 ダスト様こそ救世のヒーローだわ!キャー素敵ー!


「おおお…!承知いたした!」

「イエス!ビッグボス!」


 とりあえず二人ともわかってくれたらしい。

 まあこいつらバカだから何言っても信じるだろうけど。


「ありがたい…」


 いや待て、何で俺のことビッグボスとか呼んでるの?

 カイト氏の上位互換とかそれなんて悪口よ。


「ではまず有翼獅子グリフォンの掃除からですな!」


 俺が不服を唱える前に、カイト氏が空を見上げて弾んだ声を上げる。 

 

 薄明前の最も暗い闇空、そこには未だ多数の有翼獅子が飛び交っている。

 人の目には映らぬその影を、剣人間ソードマンは確かに捉えているようだった。


「ここは私にお任せください、頂いた力を早速ご覧に入れます」


 言うが早いか近くの建物に取り付き、刃物化した手足を登山のハーケンのように使いよじ登る。

 あっという間に天辺まで登り切ると、屋根の上に立って周囲を見渡す。


「わはは!いい眺めです!夜明けは近い!」


 そんな目立つことをすれば当然敵の目にも触れる。



 グワゥゥッ


 風切り音とともに一頭の有翼獅子が急速に飛来する。


「むっ!来たか!」

 

 カイト氏も気付いたようだ。


 迫り来る獣に真っ直ぐ狙いを定め…


「せいひゅぉぅ!」


 ジャンプした!


 ビュン


 そこからのチョップ!


 グベァ!


 鋼に変じた手刀は落下の勢いも加わり、容易く有翼獅子の首を切り落とす。


「せいさぁっ!」


 ズビシッ


 トドメとばかりに、地に墜ちた有翼獅子の身体を刃化させた足で貫き通す。


「ボス!クール!」



 地に降り立つと、その鈍重な見た目とは裏腹に、

 刃化した足先をスケート靴のブレードのように使ってスルスルと滑る様に移動する。

 

 この短時間でもう身体の使い方に慣れてきたらしい。


「わはは!いかがでしょう」

「すごいねー」


 ……ちょっと理解が追いつかない。


「おおおお!ではこの調子でガンガンいきます!せっ!」


 ぃぃぃぅぅぅぉぉぉぉぉぉ!!!!


 謎の剣人間は奇声を曳いて遅明の街へと消えていった。














「……という夢を見たんだ」


 夢だ、夢に違いない。


「ヘイ!本当に夢みたいな出来事っすっす!」


 おかしい、何故お前がここにいる。

 こいつは夢に出てきたバカ2号じゃないか。


 つまり…まだ夢の中か。


「なあパーシー君、ちょっと俺を叩いてみてくれ」


 それで痛くなければ夢確定だな。


「へ、ヘイ…?」


 だからそんな不審そうな顔をするな。

 変な性癖に目覚めたわけじゃない。


「いいから遠慮なくやってくれ」

「ヘイ…ヘイッ!」


 ビュン


 本当に遠慮しなかったのか、かなり強めのフルスイング。


 ボコッ


 顔面にクリーンヒット。



 あのさ…顔を殴れとは言ってないよね?


 さすがにちょっとビキビキきたけど、痛くなかったのでまあ許そう。 


 そう、痛くなかった。

 ということはやっぱりまだ夢の中だ。


「ヘイ!?」


 パシリ君はノーダメージの俺を見て目を見開く。

 そりゃ自分が夢の世界の住人だと知ったら驚くわな。


 夢診断を頼んだら「あなたは間違いなく夢の世界の住人です」って言われたようなもの。


 あ、でもパシリ君の腕力が低すぎてノーダメージって可能性もあるな。

 一応確認しておこう。



 【スキル:鑑定 を発動しました】


名前:パーシヴァル・リグルディア

種族:梟

性別:男

年齢:13

LV: 144

HP*2 :288

MP*3 :432

力*2 :288

技*4 :526

守*2 :288

速*7 :1008

賢*3 :432

魔*3 :432


【特性:敏捷】



 なんだぁ!?

 こいつのステータスもなんかおかしいぞ!


 あ、でもこれ夢だっけ。

 じゃあ問題無いな、うん。


 さっきから何回「夢」って言ってるんだ俺は。(11回)

 もういい加減疲れた、帰って寝よう。


「じゃあ俺は行くから、あー…あとは頼む」


 さようなら夢の人。(12回)


「ヘイ!マイヒーロー!」


 パーなんとか君は槍を掲げて元気に見送ってくれた。


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