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給与額がそのままレベルに反映されたら最強っぽくなった  作者: (独)妄想支援センター
Ⅰ.異世界トリップからの冷静な状況分析 そして草原での華麗なる無双劇
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14 鑑定

 異世界モノの定番チート【鑑定】スキルを手に入れた俺は、

 目に付いたものを片っ端から鑑定しまくった。


 石ころやおっさんの鑑定結果などどうでもいいので省く。

 それより早くルチユリさん達を鑑定したい。全てを暴きたい。奥の奥までじっくり観察したい。

 生理周期把握したい。遺伝子配列まで解析したい。


 馬車から降りてきたらバッチリ鑑定しちゃうんだからね。

 休憩時間が待ち遠しいわ。



 いろいろ漲らせて待っていたが、結局一行が歩みを止めたのは日暮れ間近だった。

 ずっと気を張っていたせいですっかり疲れた俺は、馬車の屋根に座って沈みゆく太陽を眺めていた。


 隊商は馬車を円陣に配して中央で煮炊きをしている。

 どうやら昨日よりはマシなものが食べられそうだ。

 

 そういえばこの世界って米あるのかな。

 過去にもトリッパーがいて、あっちの食文化が根付いてたりすると助かるんだが。

 今のところそれらしい気配は微塵も無い。


「ダスト様」

「ん?」


 ぼんやりしてるとユリーカちゃんに呼ばれた。


「お食事をお持ちしました」


 食器を持って馬車の側に立ち、こちらを見上げている。

 湯気の立つ器、どうやらこの世界に来て初めてまともな食事にありつけそうだ。


 だがそこには一抹の不安があった。


 そのお食事…まさかあなたが作ったんじゃないですよね?


 普段なら女の子の手料理とか勘違いすっ飛ばして求婚しちゃう妄想するレベルだけど、

 いま目の前にいるのは手を洗ったか疑わしい食品衛生上の問題児。

 草原では水が貴重だからあり得ない話ではない。


 いや待てよ、よく考えたら侍女にそこまでさせるか?

 仮にもお姫様ご一行なんだから専門の料理番も同行しているに違いない。

 そうだよな、そうであってくれ…


 不安は残るが、昨夜から何も食べていない俺は温かい食事の誘惑に勝てなかった。


「ありがたい…」


 食事を受け取り、護衛さんの真似をしてお礼を言う。


 見たところ乾燥野菜と干し肉のスープのようだ。

 豪華ではないがこの不毛の草原ではこれ以上望むべくもない晩餐だろう。


「……?」


 ところでユリーカ君、早くあっちへ行ってくれないかね。

 何か言いたげにじっと見つめるのは止めてくれないか。

 俺は人に見られてるとごはん食べられないタイプなんだ。


 もっとも、一番の問題はそこじゃないがね。

 あまり何度も言いたくはないが…イカ臭がひどいんだ。ほんとひどい。


「ダスト様にどうしてもお願いしたいことがございます」

「…何だ?」


 それ聞いたら俺のお願いも聞いてくれる?

 あっち行って。


「命を救っていただきながら、身勝手なお願いとは存じておりますが…」


 あーもういいや食べ始まっちゃおう。

 じっと見られてると食べられないけど、話しながらなら大丈夫だろう。


 ズズッ


 まずは一口。

 あら美味しい!こういうのでいいんだよ。


 お野菜と肉のうま味がしっかり出てる。

 その上で肉臭くならないように香草か何かで香り付けしてあるみたいだ。


 アウトドアで頂くにはこの上なく贅沢なお食事だな。

 子供の頃に行ったキャンプでの食事を思い出す。行ったこと無いけど。


「件のお礼についてお考え直しいただけないでしょうか?」


 それじゃ何のことかさっぱりわからん。

 俺の記憶力をなめるんじゃないよ。


「もちろん取り消せとは申しません、代わりに私が務めさせていただきます」


 思いつめた表情で語るユリーカちゃん。

 何の話?なんて訊けそうな雰囲気ではない。


「経験もありませんし、ルチア様ほど…その、豊かではありませんが、精一杯お尽くしいたします。ですからどうか、私の身を以って報酬とさせてはいただけませんでしょうか?」


 ルチアさんの代わりにって……あぁ…思い出した。

 エロい話の件か。


「いかがでしょう…」


 篝火に照らされ、不安げな面持ちで俺の言葉を待つ。

 

「ふむ…」


 真面目な侍女さんと猥談てのも面白いかもしれない。


「そうだな、悪くは…ない」

「!…でしたら是非にっ!」


 うおっ!?なんかすごい食いついてきたぞ。

 意外とムッツリさんなのかしら。

 

「それ以外の雑事も一通りの事はこなせるよう教育を受けております。

 末永くお役に立てるかと存じます」

「ほう?」


 雑事っていうと掃除、洗濯、あとは料理…とか?

 おや、なんだか雲行きが怪しくなってきたぞ。


「この通り、粗末な食材でもおいしく調理できます」

「!?」


 俺の胃袋にとんでもない爆弾が投下される。


「ユリーカ…何をしているんだ」

「!…ルチア様」


 ぎゃあ!ルチアさんまで来た!

 耐えろ!俺の胃袋。


「ダスト様のお食事を妨げては失礼だろう。(抜け駆けして!またアレ(・・)をやってもらうつもりだったな!)」

「(違います!今回は本当に違いますから!…………本当ですよ?)」


 まずい!食道に侵入されたぞ!


「お邪魔をして申し訳ありませんダスト様、見張りは護衛の者達が行いますのでごゆっくりお休みください」

「あぁ…そうさせてもらおう」


 俺の答えにルチアさんはほっとした様子を見せ、

 ユリーカちゃんを促して馬車に戻って行った。



 俺は二人が見えなくなるのを確認して吐いた。


「ふぅ…あっ」


 そういや鑑定するのすっかり忘れてた。


 【スキル:鑑定 を発動しました】


〔吐瀉物〕

 品質:最低

 効果:なし

 価格:0

 備考:ゲロ


 違うそうじゃない。


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