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給与額がそのままレベルに反映されたら最強っぽくなった  作者: (独)妄想支援センター
Ⅰ.異世界トリップからの冷静な状況分析 そして草原での華麗なる無双劇
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12 ソード

 思考がぼんやりと戻り始める。

 今は確か…そう、小6の3学期だ。


「女って初めての時、血が…」

「や、やはり出るのでしょうか?」


 ほんとだって!

 にーちゃんが嘘言うわけねーもん!


「本当…だ」

「そう、ですよね…」


 にーちゃんはコンピュータ使えるから何でも知ってるんだぜ!

 すげーだろ!


「しかし女性なら誰もが一度は経験することです。

 うん…大丈夫、大丈夫です!」

「ダメです!」


「(こらユリーカ!何を言うんだ!お気を悪くされたらどうする)」

「(ルチア様の御身を捧げるのがいけないと言っているんです。

  お礼でしたら私が務めますから、ルチア様は輿入れまで純潔をお守りください)」


「(そんなこと言って、ユリーカだってしたことないじゃないか)」


「(どうして知って…ではなくて!

 私は侍女長に講習を受けていますから知識はあるんです)」


「(侍女長って…あの方こそ経験が無いのでは…)」


 おい、女子だけで面白い話すんなよー。

 俺も混ぜてくれよー。


 ブフォー!


 ちょっと男子ー!静かにしなさいよ!

 もうっ!ほんと男子って豚人間なんだからー…


 じゃねえ!

 なんだこの豚人間は…!?


 ブブブのブー!


「オーク…!」


 そうだオークだ。 

 今は小6の3学期ではなく、俺は既に2X歳で…ここは異世界!


 そして現在、オークの群れに取り囲まれている。

 いったいいつの間に接近されたんだ?!


「あっ」

「ひっ!」


 ルチユリさん達は完全にびびってペタンと座り込んじゃってる。

 女の子座りとか久々に見た。かわいい。


 ルチアさんはどうにか剣の柄に手をかけてはいるが、手が震えてまるで掴めていない。

 ユリーカちゃんはまた目のハイライトが消えかけてる。これは確実にトラウマってるわ。


 こんなに脅えちゃってかわいそうに。

 すぐに片付けてや…いやまて。

 本当に怖かったらやむを得ず漏らしちゃうものじゃない?


 よし、もうちょっとだけ待ってみよう…


 ブフー


 既にオークの吐く息がかかるほどの至近距離。

 目の前は完全にオークで埋め尽くされている。 


 巨体の立ち並ぶ様はまるで林だ。

 オーク林だ。

 大久林さんだ。


 おのれ大久林さんめ…!


 これ以上は生理的に無理だな。

 お漏らしが見られないのは残念だが仕方ない。

 手早く終わらせてしまおう。


「いくぞっ…!」


 ソード――どういうわけか棍棒から変化した――

 をしっかりと握り、バシッと構える。


 俺には理解でき(わか)る。

 このソードは刀身が上下に割れる。

 

 バシャッ

 

 ほらね。


 分かれた刀身の間を虹色の光がバチバチと行き来する。

 いかにもエネルギー溢れてます、って感じだ。

 これを大久林さん目掛けてズビャっと発射!


 シュビビビ


 輝く虹色の光線がオークの群れに襲い掛かる。


 ブギャー!

 ブギュー!

 ブゲラッ!?


 30体はいたオークを塵一つ残さず消滅させた。



◇◆



 さてどうしよう。

 オークは片付いたが、呆然としているルチユリさん達にはどう接したらいいんだ?

 

 強姦(未遂)に遭った女性のアフターケアなんて習ってないぞ。

 義務教育で教えるべきだよな、実習付きで。

 

 それ以前に二人ともかなりの美人さんだ。

 普通に話しかけるだけでもハードル高い。


 しかも一人は念願の女騎士だし、もう一方は半裸だし…

 …!そうだ半裸じゃん!


 よし!さりげなく上着を渡しつつ声を掛ける。

 それでいこう!


 ちなみに今の俺はスーツの上着をマントみたいに羽織った状態。

 スーパーサラリーマンだ。


 縛っていた腕の部分を解き、さりげなく…さりげなくだぞ!

 さりげなく手渡す。


「…着るといい」


 なるべく渋く聞こえるように、低めの声でゆっくりと発音する。

 焦ると呂律が怪しくなるからね。


「ぁ…あ、あり、あり、ありあとうごぁれぃり…!」


 震える声、噛みまくりの台詞。

 向こうは俺以上に緊張してる。


 お陰で俺は逆に冷静さを取り戻し、

 フッと微笑を浮かべる余裕さえ生まれる。


「お、お気遣い感謝します…」


 一度大きく深呼吸すると、取り繕ってお堅い礼を返すルチアさん。


 ルチアさん?…あれ?

 何であなたが俺の上着を着ているの?半裸さんは?


 見ると半裸ことユリーカちゃんはルチアさんの着ていた服を羽織っている。

 …そりゃそうか、被害女性をいつまでも半裸で放置しておくわけないよな。

 

 そんなわけで今のルチアさんは白いシャツみたいな薄着一枚だ。

 清潔感のある白だが、いかにも肌着って感じで色気には欠ける。

 それでも胸当てを外した胸元は眩いばかりの魅力を放っていた。


 なのに!(ドンッ

 それが半ば隠されてしまっている!

 これはどういうことか!


 上着なんか渡した馬鹿野郎はどいつ…俺か。


「…う、くっ!」

 

 視線を感じてか、上着のボタンを留めようと指をもたもた動かす。

 しかしまだ手の震えが治まらないのか一向に留まる気配がない。


「ああっ…」


 更に胸がつかえて締まらないことに気付き、困ったようにこちらを見上げてくる。

 目が合うと真っ赤になって視線を逸らす。

 かと思えば今度はユリーカちゃんに縋るような視線を向ける。

 首を左右に振ったり、うんうん頷いたりする。


 せわしないわねこの子…


「じっとしててください」


 察してくれたユリーカちゃんに下側のボタンだけ留めてもらい、なんとか上着を着ることに成功する。

 内側からの圧力で今にも弾けそうなのがちょっと心配。


 あの…その上着あとで返してくださいね?


「この度は危ないところを助けていただき誠にありがとうございます」


 ぼけっとしてるルチアさんに代わってユリーカちゃんがお礼の言葉を口にする。


「いや、別にたいしたことは…っ!?」


 近くに来るとわかる。

 ふわふわ感を取り戻したユリーカちゃんの髪が濃厚な栗の花の香りを漂わせている。

 案の定ルチアさんの拭き拭きのせいでしっかり擦り込まれている。


「……ぅ」


 咽返る臭いに思わず半歩下がる。


「あのままでしたらルチア様も私もどうなっていたことか…」


 追うように彼女も一歩踏み出すと、にこりと微笑んで俺の手を取りぎゅっと握る。


「あ…うん、はい」


 きめ細かく柔らかな女性の手。

 普段ならこんなことされれば勘違い必至なわけだが…


 髪がふわっと揺れると更に香りが強くなる。


「くぅ…!」


 残念なことに今はそれどころじゃない。


 ていうか手!手!キミ手洗ってないでしょ!?

 オーク特製ミラクルジュースがっ!

 やめてー!お願いだから離して!


 【スキル:祈り を発動しました】


「ぇ!?」


 淡い光に包まれたユリーカちゃんがビクッとなって手を離す。


 良かった…離してくれた。

 あれれ?


「ぁ、ふっ、あ、ああああっ!」


 どうしてそんなにお顔が真っ赤で、そして熱い吐息を漏らしているの。

 アヘ顔を惜しげもなく披露しておられるの。


 レ○プ目からのアヘ顔コンボとは…

 この子はヤバイ表情の見本市か。


 …もしかして【祈り】に変な効果でもあるのか?

 自分には絶対使わないようにしよう。


「(ちょっ!ユリーカ!何をされ…ナニをしてもらったの?!)」

「ぁふゅー…ぇ?」

「(わ、私も…!どうしたらしてもらえるの?ねえ!)」

「んふー…んふふふ」


 なにやら二人でこしょこしょ内緒話。

 妖精の歌声のようで耳に心地良い。

 ここは地上に残された最後の楽園に違いない。


 ドスドスドスッズザッ


「すっげえ!ダストさんマジすげー!!かっけー!ヒュー!」


 そこへ楽園の音楽をぶち壊すかのように走り寄ってくる樽オヤジ。

 なんかテンションおかしい。


 お嬢が無事だったから嬉しいのはわかるんだが…

 

「あ、ルチア様ご無事で何よりです、ユリーカさんも。マジすげえ!すげえええ!」


 と思ったら会長令嬢に対してあんまりな態度。

 この人ほんとに社長さんなのか。


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