むかしばなし
むかしむかしあるところに
おじいさんとちいさなおんなのこが
ちいさなくにのひがしにあるちいさなやまにすんでいました
ちいさなおんなのこには
うまれたひからことしのはるまでのきおくがありませんでした
きせつはなつです
ちいさなおんなのこは
おじいさんにまいにちまいにちききました
「わたしはどんなふうにすごしてましたか」
「どのようなにんげんでしたか」
「どんなことをかんがえて
どんなことでわらったりしてましたか」
おじいさんはこたえます
「わたしもわすれてしまったよ
いまのきみがすごしたいようにすごして
いまのきみというにんげんでいきて
いまのきみがわらいたいことでわらいなさい」
ちいさなおんなのこは
わかったようなわからないようなきもちになりました
いまのわたしもわたしにはわからない
ちいさなおんなのこはたびにでました
おじいさんのいえをでて
やまみちをくだります
つかれたなー
わたしはいまつかれてる
のどがかわいたなー
わたしはいまのどがかわいてる
いたっ
わたしはいまあしがいたい
わたしはいまそらがきらきらしてすてきにかんじてる
わたしはいまじめんにおちているえだやいしがじゃまだとかんじてる
ひとつひとつ
かんがえてることをみつけていきました
ちいさなやまをおりると
ちいさなまちがひろがっていました
おおきなおんなのひとがこっちをみていました
おおきなおとこのひともこっちをみていました
「どこにいっていたの」
「ぶじでよかった」
「おかえりちーちゃん」
むかしのわたしをしりました
いまのわたしはこばみました
しりたくなかった
さようならおじいさん