青葉から、新人冒険者アオバへ
ライセンスに書かれていた内容には、名前や性別、年齢が書かれていた。この情報に間違いはない。現代の彼と何も違う所はなかった。ただ、見知らぬ項目が異彩を放ち、違和感を感じていた。
魔法、それはおとぎ話な架空の世界などで見られる現象をさす言葉である。このライセンスが書かれてれいることが本当なら、自分はどうやら魔法が使えるらしい。
しかし、魔法というものはてっきり炎を出して爆発を起こしたり、氷を生み出して飛ばしたりというイメージがあった。しかし、彼の魔法は『剣を司る者』という魔法名であるということと、スキルに光剣というものがあるということだけで、どういったものかは分からない。
「(これがどんなものか分かんないとなー・・・)」
流石に名前だけではどんなものかも推測出来ない。それに分かってないものをいきなり使うというのは不安すぎる。追加の情報はないのか?と思っていると、魔法名の欄に文章が追加された。どうやらこの世界では思念の力が起動する元となっているようだ。
「(ずいぶん便利なことで)」
と思わずこの便利ご都合設定に感嘆の声を漏らしながら、追加された文章に目を通す。
『剣を司る者』
剣に関する魔法、スキルを習得することが出来る。極めることが出来れば、貴方は至上の力を手にするだろう。
どうやらこの魔法は剣に司る特科している魔法のようだ。イメージをしていた炎や氷には少し使ってみたいという気持ちがあったので、少し残念な気持ちがするが文章には『至上の力』とある。この言葉どおりなら、この魔法はかなり強い魔法のはずである。
「(これは、当たりなのかもしれない!)」
突然に自分には強い力があると知ってアオバはテンションが自然にあがる。彼もまた男であるため、強い力というものには憧れを持っていた。
魔法がどういったものかは分かったので、次はスキルの方も知ろうと念じる。すると同様に文章の追加が起こり、光剣についての補足が行われた。
光剣 lv1
剣に魔法力を纏わせ、剣の強化、リーチの伸長、切れ味を上昇させることが出来る。lvの上昇によりその効果が増大することが出来る。
MPの基本消費50
やはり、これは剣に関するスキルのようだ。自分の持っている剣の強化を行うことが出来るらしい。その性能あたりは実際に使ってみないとわからないが、また一つ見慣れない単語に遭遇した。
MP。よくRPGの世界に見られる単語だ。魔法などを使用するときに使われるものだが、この世界にも存在するようだ。しかし、先ほどライセンスを見た限りではMPなどは載っていなかった。しかし、この時のアオバはもう流れで察していた。どうせ念じればでてくるのだということを。この世界への順応を自ら感じつつ、念じると、ライセンスが新しいページに切り替わる。
NAME アオバ リョウ
lv 1
HP 150
MP 100
POWER 50
DIFFENCE 30
SPEED 35
MAGIC・P 20
MAGIC・D 30
どうやらこの世界では現代でのRPGのようにステータスが目に見えるようだ。基準が分からないから評価のしようがないが、MPをみて気になることがある。
「(光剣2回分、だと!?)」
どうやら今のステータスだと、光剣が2回しか発動出来ないらしい。しかも、1回がどれくらい続くかも分からないし、光剣の50MPが基本の消費値のようだ。このスキルでは剣のリーチをあげたり出来るようだから、それに応じてMPも消費するかもしれないから実質1回分と考えたほうがいいようだ。
ここで、今まであれやこれやと考えていた青葉だが、ふと我に帰り前を見ると心配そうな表情でアルがこっちを見ていた。
「どう?ずいぶん考えてたけど、何か思いだした?」
「いや、何も・・・」
「そう・・・」
アルは悲しそうな表情でシュンとしている。記憶が戻るキッカケがあればと思っていたらしい。実際の所は戻す記憶も何も無いわけだが、罪悪感で一杯になり、心が痛むアオバだった。
「けど、きっといつか思い出せるよ!」
先ほどは、顔を少しうつむかせて、暗い表情でいたアルだか、今はこちらを向いている。アオバに自分の暗い顔を見せないようにと明るく振舞っている。
「うん。ありがとうアル。ところでさ、俺の魔法は『剣を司る者っていうんだけど、どうなのかな?よくわかんないんだけど、説明では剣がどうとかってあったけど。」
「『剣を司る者』?氷とか、雷とか書いてなかったの?」
「ん?書いてなかったよ?」
というとアルは少し驚いた表情をしていた。
「ていうことは、アオバは固有魔法だね!あんまり多くないんだよ!私にも知りあいには少ししか居ないし」
それを聞いてまた少しテンションが上がる。が、そこでアルが注意するように
「あ、一応言っとくけど、固有魔法ってことは言わない方がいいよ。固有魔法は珍しくて強い力を持ったり、特殊な魔法を使えたりするけど、その分周りから妬まれて狙われたりするとか、変な集団にマークされるとかあるから注意してね。ま、それをどうにか出来る力があれば話はべつだけどね」
そう言われて、少し怖くなった。今、自分は固有魔法といえどもlvはたった1。少しでも狙われようものなら確実に勝てないだろう。
「・・・これからは言動に気をつけるよ」
と、アルに言いつつ、自分に言い聞かせた。
「そーいえば、まだ真っ白なんだねライセンス。てことは冒険者の登録もしてないんだね」
「えっと、冒険者って」
なに?と聞こうとしたが、アルが
「あー、いいよいいよ。分かってる。ちゃんと説明するよ」
と言ってきた。こっちの事情を知ってくれての親切だが、少し悲しい気分だった。
「冒険者の登録は、ギルド局で依頼を受けたり、正式なギルドのメンバー登録には冒険者としての登録が必要なの。登録したら、ライセンスの色が、その人のランクに応じて色分けされるの。Fが緑色、Eが青色、Dが灰色、Cが紫色、Bが赤色、Aが金色、Sが黒色ね。SSやSSSになると黒色から更に白線が描かれるらしいけど、みたことないわね」
今の自分アオバは白色のライセンスだ。白色はつまり、冒険者になっていない人たちをさしているのだろう。
「この町の人じゃないからてっきり冒険者かと、思っちゃったけどちがったみたいね」
「どうやらそうみたいだね」
そりゃ、数時間前どころか数10分前には学生の色についてたから、冒険者なんてやっているはずもない。しかし、そこで疑問が浮かぶ。この世界でどうやって生きていくかを。おそらくこの世界でも、何処かで働かせてもらって生きていくことは出来ると思う。異世界にきたところで変わらない、この普通な人生を。
しかし、青葉は知ってしまった。自分の魔法の存在を。
青葉は知ってしまった。自分の魔法が普通じゃないことを。
そして、青葉は自分の中が魔法で生きていくことを、この世界に対する高揚感として感じているのが分かった。
青葉は向かいに座るアルをジッとみる。
「なあ、その冒険者って俺にもなれる?」
「なれるけど、どうしたの?急に」
「俺は、新しい自分を知ったんだ。この魔法の世界で、冒険者として、アオバリョウとして生きてみたいんだ」
そういうとアルは、アオバをみて微笑む。
「ようこそ。新人冒険者さん」