知らない街
目を覚ました世界は、見知らぬ土地、一面の花畑。優しい風が吹き付けて花たちがなびいている。普段なら、幻想的な場所として観光地や有名なスポットとされるだろうが、今の青葉にとってはそんな楽しむ余裕は無かった。
「(もしかして、夢かも・・・)」
と、思いながら頬を思いっきりつねってみる。
痛い。めっちゃ痛い。
薄々、夢では無いとは気付いていた。夢とは思えないこのハッキリとした感覚。確かにこの場所にいる、今吹いているこの風をしっかり感じていた。
とりあえずこの場所にいても仕方が無いので、場所を移動してみることにした。
花畑を出るには、一本の道しか見当たらなく、その道以外は木々に囲まれている。全くの見知らぬ土地の、更に見知らぬ森に入ってしまうのは流石に危険だと分かる。どんな危険な場所か分からないし、熊みたいな生物に遭遇するかもしれない。そう考えて一本道を下っていくことにした。
長い一本道を下っていくと、、大きな壁の様なものが先にあるのが見えた。その壁には門の様なものがついており、それが開いた状態になっていた。そこからは人の賑わいを感じる騒がしさを感じていた。
青葉はこの様な場所を見たことがあった。某RPGゲームなどでよく見られる町である。
「まるでゲームみたいだな」
と呟いて、ふと一つの考えが青葉の頭をよぎった。学校の友達が読んでいた小説では、現代の人が妖精の世界に飛ばされて魔法や不思議な力で戦っていくという話だ。その創作話とどこか近しい点を感じていた。突然の見知らぬ場所、ゲームの様な世界。だとしたら、もしかするとこれは、
「異世界、転生・・・?」
もしかしたら、ここは異世界。そんな考えが浮かんだものの実際あり得ることじゃないし、決まったわけじゃない。とりあえず今はこの町と思われる所に行くことにした。
特に町に入ることに問題はなく、難なく町に入ることが出来た。入り口から少し進むと、綺麗な町並みが広がり、多くの人、更には賑わいがあった。
町を少し歩いていると、ふと気付くことがあった。町にいる人たちは、髪の色や目の色が金色や、銀、緑や赤と様々で顔立ちも日本人の様な人から西洋な人までいた。ちょっと、近場にいた男二人の会話に耳をすましてみる。
「おい、聞いたかあの話。アルビシア大陸の王都の騎士団長が単独でSSクラスを倒したって話」
「おうおう、すげーなー。そんな奴が敵さんにならねぇことを祈るしかねぇな。それより俺は『知を制するもの』が新しいレアな魔鉱を発見した方がきになるけどな」
「流石は情報ギルドって感じだな。一体どんな魔鉱なんだろうなー」
・・・何だか日本語なのに日本語じゃない感じがした。ギルドと言ったらゲームとかで団体を指す言葉だったと思う。あとはアルビシア大陸といっていたが、少なくとも現代にそんな大陸は無かったはずだし、あの二人が適当に言ってるとも思えないほど自然に会話をしていた。
そんなことを考えていると、周りから視線を感じるので周りを見るとチラチラとこっちを見ていた。
改めて視線の先を見てみると、視線を集めている理由がわかった。今、青葉は紺色のブレザーを着ているが、周りにはそんな格好をしている人は一人もいない。 視線が集まるのが少し恥ずかしくなり、その場を駆け足で離れた。
「さて、どうしようかなー・・・」
周りの視線から、少し離れたものの、特にすることもない。ここがどういったところでどんな世界なのか・・・。
とにかく情報が必要だった。
しかし、あの視線の浴びようを考えると、自分は変な格好をしているのかもしれない。そんな状態で話しかけてもいい情報が得られるかは微妙だろう。
どうしたものかなー。と思っていると、後ろから背中を突かれた。振り返るとそこには誰も居ない。
イタズラか?とおもっていたが、
「あのー、冒険してる方ですか?」
と声が下から、聞こえる。
自分は170cmほどだから、よくあることだ。と思い、下を見ると140cmくらいの女の子がちょこんと立っていた。
「・・・子供?」
と言って、ハッと気づいた時には遅かった。
140cmくらいの女の子が流れるように拳を構え、勢いよく放たれた。
力の乗った拳が青葉の腹に深々と突き刺さり、膝をつきながら思った。
「幼女・・・、怖い・・・」
青葉は言葉にしたつもりは無かったが、漏れたものは仕方ない。そこから幼女の追撃が青葉の背中を襲っていた。