~黒生野奈桜との邂逅~
今回だけかなり短めです。
舞乃が本気を俺に見せて欲しいと望んでいることに気づいていたので、はっきり言ってそれ以上の追求をさせないために本気を(ただし、能力は一切使わなかったが)見せた。
だが、この場合俺の対応は正しかったのだろうか?
さっきから対戦相手や観客よりも舞乃の視線が痛い…。
俺は舞乃の方を怖くて見ることが出来なかったが、能力を使わなかったことがよっぽどご立腹だったらしい…。どうにかして機嫌をとらないとな・・・。
舞乃のことをこれからどう宥めようか考えているところで、俺の正面から一人の女子生徒が歩いてきた。
身長は小柄ながらも落ち着いた雰囲気があり、スレンダーな体つきと顔立ちが整っていることからクールビューティと言う言葉がしっくりとくる少女だった。
「えーっと、誰だっけ?」
俺は初対面だと思って聞いたのだが…。
「私は、あなた達と同じ一年三組の黒生野奈桜。名字は好きではない。だから奈桜と呼んで。その様子からすると、あなたは自己紹介をまともに聞いていなかったと推測できる。だが、覚えていなくても気にならない…。」
そうだったっけか?失礼な事を言っちまったか。
というかコイツ、俺が覚えて無いこと気にしてるだろ…。
「会話するのは今回が初めて。だけど、あなたに聞きたいことがある。今の試合を見ていて思ったが、あなたはなぜ能力を使わない?」
そのことか…。
舞乃もこの話題に聞き耳を立てていることが、気配から察せられた。
しかし、舞乃がいなかったとしても答えられない質問だったため、俺は一言、
「ちょっと訳ありでな…。」
と、答えておいた。
「学年主席が、訳あり…。」
「正直そこを突かれると痛いな…。」
俺は早くこの話題を切り上げるための方策を練っていたが、その前に奈桜がこんなことを言い出した。
奈桜のこの言葉で、俺の高校生活の運命は舞乃と関わったことと同じくらい変わってしまったのかもしれない。
「神崎ハヤテ、あなたとの一対一の模擬線を申請する。」
そんな風に唐突に俺は模擬戦を奈桜に申し込まれた。
俺の後ろで舞乃がガッツポーズを決めていたのは、このときの俺は知る由もなかったが。




