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~朝永舞乃と創始者~

※注意:彼女、朝永舞乃は主人公ではありません。ヒロインです。


 部活を終えてある生徒はダラダラと、またある生徒はいそいそと帰途に着く、ごくごく当たり前の日常がゆっくりと流れる三年前のとある春の夜のこと。

 当時中学一年生で気の弱かった私は、帰宅途中に通る街中の交差点近くで明らかにナンパ目的だと分かる四・五人の男たちに囲まれていた。

「お嬢ちゃん、お兄さんたちとイイコトしようよ~」

「おっ、けっこうかわいいじゃん、いっしょに遊ぼうぜ~。いつ帰れるかわかんねーけどな」

「あっ……ちょっと……」

 生まれてから一度も大声を出したことのなかった当時の私は、助けを求めることも、逃げ出すことすらもできなかったからでしょうね。男たちはますます調子に乗って、私を取り囲む円を徐々につめてきたわ。

 さすがにこのままではまずいと思った私は、全身の力を振り絞って逃げ出した。

 しかし、私はこの時とんでもない失敗をしていたの。

 でも、しょうがないじゃない。逃げることばかりに気を取られていて、周りの状況なんて確認する余裕もなかったのよ。

男たちからやっとのことで逃げ出して、横断歩道を走ったんだけれど、ふと顔を上げると目の前の信号は赤だった。

「あっ、おい!」

 男たちも気づいてとめようとしたらしいけど、何もかも手遅れだったわ。

 横を見ると、大型トラックが大きなブレーキ音とクラクションを鳴らしながらすぐ近くにせまっていた。

「………ッ!」

 あのとき私はさすがに死を覚悟したわね。

あぁ、私の人生はここまでなのか…。家族にも友達にも悲しい思いをさせるなんて…。やりたいことだってたくさんあったのに…って、いろんなことが頭の中で走馬灯のように駆け巡った。

 そのとき。

(雷?)

 トラックと私との間に雷のような青い閃光が走り、いつの間にか目の前に人が私に背を向けて立っていた。

 その人の右手には銀色に輝くカードのようなものが握られていて、それを胸元に持っていき横に薙いだ。

 すると次の瞬間私たちのまわりが銀色の光に包まれて、光源である足元を見ると、それはさながらマンガやアニメでよく見かける魔法陣のような図形が浮かび上がっていたわね。

 死ぬときの幻覚だろうかとその光景を見ていると、気づいたときには動画の再生中に不意に一時停止を押したかのようにトラックは止まり、運転手は唖然としていて、あたりは再び夜の闇と街の明かりが戻っていたわ。

「大丈夫か?ケガは無いか?」

 先ほど突然現れて、背中を向けていた人がこちらを振り返ってなだめるような声でそう確認してきたわ。

「あっ…。えっと………はい…」

「そっか。よかった~」

 その人は、私に向って心底ほっとしたように笑いかけてきたの。

 そのときはそれどころではなかったから気がつかなかったんだけれど、知らない学校の学生服を着ていて、年もおそらく私ぐらいだった。

「悪いけど、俺はそろそろ行かせてもらうな。あとで警察とか来ると思うが、後の説明とかは任せていいか?」

「任せるって…。私、何が起こったかわからないんだけど…」

「まぁなんだ、なんか適当にごまかしといてくれ。明日になったらそんな珍しいことでもなくなっているだろうからさ。……ヤバイ、時間が…。それじゃあ。」

「待って!」

 気づいたら、当時の気の弱い私からするとびっくりするくらいの声量で彼を呼び止めていた。彼は立ち止まって振り向き、私が何か言い出すのを待っていてくれたみたいで、

「えっと、どうかしたか?」

「あの…。さっきのって、その…。信じたくは無いけど魔法か何かなの?」

 ほんとうはここでお礼を言ったり、彼の名前を聞いたりするのが正しい判断だったんでしょうね。だけど、そのときの私の最も聞きたいことはこれだったの。

 あの光景を見たあとでは誰でも聞きたくなると思うわ。当時の私のことは、今の私でも責められない。

 だけど、彼は。

「違うよ。魔法みたいに見えるかもしれないが、これはれっきとした科学なんだ。これは俺が作ったんだ。世界中のたくさんの人を救えるようにってな。君がその第一号ってとこか。まあ、さっきも言ったが、明日になったら分かる。ごめん、もう時間がヤバいからそろそろ行かせてもらうぞ」

 と言って、目の前をまた青い閃光が走ったかと思ったら、すでに彼はいなくなっていた…。

 当時の私にはあまりにも現実味の無い出来事だったからか、死にかけたからかは分からないが、事態が収まってからの私は、私を助けてくれた彼の顔をハッキリと思い出すことが出来なかった。

 それが私、朝永舞乃と名前も知らない命の恩人であり、私の目標である彼との出会いだった。


 私が彼のやったことを理解したのは、彼の言ったとおり翌日のことだった。

 目が覚めると枕元に一枚の真っ白なプレートが置いてあって、私がそれに触れた瞬間、赤い光を強く発して真っ白だったプレートは真紅と言っても良いくらいの赤に染まっていた。

 起き出して一階のリビングに下りてみると、世界中の人間が、私が朝に体験したようなことが起きていることと、それに関わるNSTが発表されたことが伝えられ、プレートの使い方や、使うことによって扱える『能力』についての簡単な説明やあれこれをどの番組でも祭りのような雰囲気で取り上げていた。

「あの人がやったのってこれだったんだ…。そういえば、彼が作った技術だって言っていたわね…」

 そう思った私は、いろんなメディアを使ってNSTの創始者について調べたが、名前を伏せて発表したらしく、情報をまったくつかめなかった。手がかりは銀色に輝くプレートだけ・・・。

 だけど私は決意した。

 彼がやってくれたようにたくさんの人を助けて、彼を見つけてお礼を言おうって。

 そのために死ぬ気で勉強してこの高校、『東京理科高校』に私は進学したの。

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