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気持ち  作者: さだ 藤
1/7

おねいちゃん

*ひらがな多用

 お母さんは言う――――お姉ちゃんだもんね、お姉ちゃんだから、お姉ちゃんは、……



 わかってるよ。おねいちゃんだもん。

 ゆいはちゃんとわかってるよ。

 むねがなんだかいたくなって、いつの間にかにぎっていたてのひらもいたかったから、いたい位に、ゆいはわかってるよ。


 ちゃんとね。




 ゆいが3才のときに妹が生まれた。

 ちっちゃくて、かわいくって、お母さんはいつもつきっきりでめんどうを見ていた。


 それまでいつもゆいを見てくれていたお母さんも、お父さんも、赤ちゃんにいつもしせんが行くようになった。

 赤ちゃんってそういうものなのよって、おばあちゃんはゆいをちゃんと見て言ってくれた。


 わかってるよ、わかってる。

 でもしょうじき、やっぱりゆいのむねはなんだかもやもやした。


 でもやっぱりゆいはお母さんが大好きだったから、母の日が近くなっておばあちゃんとないしょでお母さんにプレゼントをかった。

 ちょっとだったけど、ゆいがためていたおこづかいもつかってもらって。


 いっぱいいろんな物をおばあちゃんと見てまわって、疲れたなぁなんて思ってたときにひとめぼれした。

 きれいで、せんさいで、おばあちゃんが言ってたけれど、すずしげ、なガラスのコップ。

 きれいで、やさしいお母さんにぴったり! って思ったの。

 

 これ! ぜったいこれ! って。


 きれいなラッピングをお店の人にしてもらって、こわれ物だから落とさないようにってしっかり! もって待ちに待った母の日。

 その日までお母さんにないしょにするためにおばあちゃんの家にかくしてもらっていて、母の日だからおばあちゃんの家にお母さんと、妹と、ゆいで行ったときに、さぷらいず! ってお母さんにプレゼントしたら、お母さん目をいっぱいいっぱい開いてふんわり。ゆいの大好きなふんわり笑顔で笑ってくれたの。

 

 大せいこう! 開けて開けてってわくわくしていたらお母さんはていねいに、きれいに、ほうそうしを開けていった。

 お母さんはわぁっていって、うれしそうに、きれいって喜んでくれた。


 ゆいにむかってありがとうって。

 いってくれたから、ゆいのむねはなんだかほんわりってあたたかくなった。


 それね、えっとね、すず、しげ、っていうんだよ! ってお母さんにおしえると、お母さんはめをぱちぱちして物しりね、さすがお姉ちゃん! ってほめてくれた。


 ゆいはえへへって笑った。


 お姉ちゃんだもん。

 それくらいしってるよ、……お姉ちゃんだもん。



 その時は、なんだかやっぱりもやもやってなって、でもちょっとだけなんだかくすぐったくもあった。



 お家に帰るとお母さんはゆいからのプレゼントをお父さんにじまんして、いいでしょうって笑って、お父さんは、次はお父さんだからね! って言ってお母さんにしっと……? していた。


 ねっ? って上めづかいでゆいを見てくるお父さんはなんだかかわいかった。


 お母さんはガラスのコップをほんとうに気に入ってくれたみたいで、大切に、でもいつも使ってくれていた。


 なんだかむねがほわほわする、そんな、まいにちだった。



 ある日妹が、テーブルに置いてあったガラスのコップをたおしてわった。



 お母さんはひめいを上げて、妹をだきあげて、はへんから遠ざけて、けがしてないわよね、だいじょうぶよねって妹の体をくまなく見る。

 ゆいはわれたガラスのコップをじっと見る。

 


 ほわほわしていたむねがなんだかいたくても、いつの間にかにぎっていた手のひらがいたくても、 


 だいじょうぶだよ。


 おねいちゃんだもん。ゆいは、へいきだよ。


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