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第三話「生き返った代償」

エーナ「始まります……が、ディヴェルさんは何処に……」

マナ「急用と休養で来れないみたいよ」


「あの、マナさん……」

 申し訳無さそうに少女が話しかける。

 この少女の名前はエーナ。ロボットである。

「ん、何?」

 マナと呼ばれた少女が本を読みながら返事をする。

 彼女は魔女で、不老不死。

「そろそろ私の未練の解消を考えていただかないと……」

 それを聞くなりマナは本を閉じ、

「ああ、すっかり忘れてた!!」

 あわただしく動き始めた。

 エーナは不機嫌そうに頬を膨らませ、

「忘れないでくださいよ~。かれこれ一週間いつその話が出るか待ってたんですよ~」

 と訴えたが悪びれる様子も無く、

「でもそのおかげで体も自由に動かせるようになったでしょう」

 それとこれとは話が別だ。と言おうとしたが、

「それで、あなたの未練は何?」

 反論を許さないスピードで返されるのでエーナは何も言う事が出来ない。

 仕方が無いので、質問に答えることにした。

「色々ありますが、まずは家族に別れの言葉を言いたいと思います」

 突然死に別れることになった家族に、エーナは謝っておきたかったのだ。

「なるほどねぇ、それじゃ早速行動に移しますか」

「え、ちょ、ま、まだ心の準備が……」

 マナが指を鳴らした。

 それだけで一瞬で風景が変わった。

 先ほどまでは確かにマナの部屋の中にいたはずで、マナはこの風景をみるのは初めてのはずだ。

「ここは、私の……!」

 永奈の部屋である。

「今はあなたの家族はいないようね」

 マナが、「ふむ」といった後、

「ちょうどいいわ、エーナが残してきたものを色々物色させてもらいましょう。ふふ」

 エーナの耳(つまるところマイクのような物だが)には入らないように呟いたつもりだったようだが、しっかりと聞こえていたらしい。

「やめてくださいね。許したとしても、私の部屋の中の物だけですよ」

「ちぇっ」

 釘を刺され、マナは不満そうにするが、

「あら、あっちには何があるのかしら?」

 と、部屋を物色し始めた。

 エーナは「はぁ……」と溜息をつき、

「まあいいです、お茶でも入れてきますよ」

 と部屋を後にした。




「ふむ、今の科学はこんなことまで出来る様になってるのね」

 マナが椅子の上に座って手にしているのは週刊少年誌だ。

「しかし、この戦闘力は魔術を越えてるわ……私でも勝てるかどうか……」

 食い入るように読んでいるとエーナが戻ってきたようだ。

 部屋のドアが開き、お茶を急須に淹れたエーナが今にも泣きそうな顔をしながら立っていた。

「マナさぁ~ん」

「遅かったわね。って、どうしたの?」

 なんで泣きそうな顔をしているのか、なぜ急須は持っているのに湯飲みが無いのか。

「何が何やらわからないわ……」

 マナは戸惑った表情で目の前のロボットを見ている。

「私のお気に入りの湯飲みが……湯飲みが……」

 かなり気が動転しているようだ。

「うぅっ……ひっく……」

 嗚咽混じりで泣き出してしまった。

(エーナをこの体にして生き返らせるために感情を調整したし、そのせいで精神が弱っているのかもしれないわね。なんにせよこれから苦労するかもしれないわ。)

 そこまでマナは考えたが、(私にはどうこう出来る話ではないわね)という結論に至るのに時間はかからなかった。

「湯飲みがどうかしたの?」

 エーナが泣いていてなにも言わないのでは埒があかないのでマナは聞いてみることにした。

「わ、わた、ひっ……わたシノ、ウゥ……、ワタシノユウゥゥ----」

 しかしいきなりエーナはその場で倒れてしまった。

 それを見てマナが慌てて駆け寄る。

「ちょ、ちょっと!急にどうしたのよ!?あ、熱っ!……オーバーヒート!?」

 エーナの体はかなりの熱を持っていた。

「三日分の動力源を一気に使い果たしたせいか……!とにかく家に戻らないと!」

 マナが指を鳴らす。

 たちまち周囲の風景がマナの部屋に切り替わる。

「ふう、とにかく冷却しないと……!」

 マナは胸の前でアスタリスクを描くように右手を振るった。

 エーナが冷気に包まれ、心なしか表情が和らぐ。

「これで大丈夫な、はず……くうっ!?」

 マナが苦悶の表情を浮かべてふらつく。

(基礎中の基礎の魔術を使っただけでこんな……)

よろけ、壁にもたれ掛かる。

「ゲホッ!……ガフッ!」

 激しく咳き込むマナだったが、暫く経って落ち着くと、

「さて……次は……メンテナンスを――――」

 次の作業に移ろうとした。が、何も出来ず、彼女も床に倒れ臥してしまった。

(基礎の魔術なんて、――――)

 薄れ行く意識の中で、

(何百年ぶりに使ったかしら……――――)

マナはそんなことを考えていた。

ディヴェル「……?」

マナ「あ、生きてた」

ディヴェル「……!」

マナ「どうしたの?そんなに怯えて」

ディヴェル「いえ……貴女は誰ですか?」

マナ(やっぱり記憶も飛んでたか)「私はあなたの治療を任された者よ」

ディヴェル「……」

マナ「震えているみたいだけど、寒い?」

ディヴェル「いえ、なんと言うか……貴女を見ていると本能的なものでしょうか、なにか、そう捕食されるのを待つだけの虫になったような言いようの無い感情が込み上げてくるんです」

マナ(これはもはや、何も思い出さないほうが良いかも……)「貴方が覚えていることは、なにか?」

ディヴェル「特に無いんですが……でも、“夢”を見ます……」

マナ「“夢”とは?」

ディヴェル「小さな女の子に荒縄で簀巻きにされて、先ず腹を殴られ、膝を捻られ、腕を折られ、耳をそぎ落とされ、歯を一本ずつ無理やり抜かれ、最後に顔を三百二十七回殴られて、痛みもしっかり感じているのにまだ目が覚めなくて……」

マナ「……」

ディヴェル「それでその女の子が恍惚の、しかも屈託の無い笑顔で言うんですよ『怪我はなおして置くけど、ふふっ、心の怪我までは治せないから、安心して』って……」

マナ「……その人に見覚えは?」

ディヴェル「うーん……貴女と同じ服を着ていて、貴女と同じ声で、貴女と同じ喋り方で、それに貴女と同じ顔をしていますね」

マナ(いくらなんでも気づきなさいよ)「ふむ、なるほど」

ディヴェル「……もしかして僕、貴女にあったことがありませんか?」

マナ「どうしてそう思う?」

ディヴェル「僕が見た“夢”、“夢”にしてはちょっとはっきりしすぎてるんですよ。痛みとか、攻撃手段とか相手の顔とか」

マナ「PTSDみたいなものよ。その人の経験した苦痛が夢に出たり、フラッシュバックしたり……。あなたの場合は記憶が深いところ沈んでも尚、その症状が発生するようね」

ディヴェル「記憶?PTSDって、もしや……」

マナ「そう、貴方の夢は現実にあったこと。いい加減全部思い出して、仕事に復帰しなさい」

ディヴェル「ははは……怖いなあ……」



――――その頃

エーナ「次回もお楽しみに、ですね!」

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