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プロローグ
それは小雨の降る、クリスマスの日だった。
街は、どこもかしこもイルミネーションで彩られていて、すれ違う人はみな、どこか浮足立っている、そんな日だった。
僕たちは住宅街を歩いていた。決して、クリスマスに恋人たちが行くような場所ではなく、駅が近く、コンビニやクリニックなどが並ぶ、いたって普通の住宅街だった。
夜風が僕たちを撫でてゆく、ぱらぱらと降る雨が僕たちの体を濡らしていく。それでも、繋いだ左手はとても温かかった。
コンビニのある角を左に曲がる。クリニックの前の道を歩いていく、言葉はない。沈黙ですら、居心地が良く、一緒にいられるだけで幸せだった。
クリニックを通り越して、何も建物が立っていない空地に差し掛かる。その手前で、ふと君は立ち止った。
近くの電灯の灯りが君の顔を照らす。涙と鼻水でぐちゃぐちゃで、それなのに目が離せなくなるほど綺麗で。
そのまま君は手を繋ぎながら、ぐちゃぐちゃの顔で、かすれた鼻声で、まるで今まで言えなかったことを絞り出すように言った。
「好きじゃない」
きっとその日は、寒かった。




