表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

風鈴の家

作者: Akira Clementi

 俺の地元には、風鈴の家と呼ばれる立ち入り禁止の廃墟があった。

 小学三年生の夏休み、俺と幼馴染のOとKちゃんの三人でそこに入った。

 荒れ放題の家をすぐに調べ尽くし、帰ろうかとなったとき。


 Kちゃんがいなかった。


 Oと探したら、Kちゃんは板張りの廊下の途中で突っ立ってた。声をかけても反応がない。


 そのとき。


 りん、って風鈴のような音がした。


 音はOにも聞こえたようで、息を呑むのが分かった。音は俺たちの後ろから聞こえた。

 何かが廊下を歩いてくる。


 りん、ぎし。

 りん。


 音が止まった。


 Oと一緒にゆっくり振り向く。


 全身黄ばんだお札まみれの何かが立ってた。そいつが一歩踏み出すと、りん、と音がする。


 俺たちはKちゃんを連れて弾かれたように駆け出した。

 廊下の先は行き止まり。ぼろいドアのトイレだ。

 Kちゃんを中に押し込み、続いてOに背中を押された俺が入る。

 Oが入ろうとしたとき、その体が後ろから引っ張られた。俺は夢中でOに手を伸ばしたけれど、間に合わなかった。

 ドアが乱暴に閉じられる。開けようとしてもびくともしない。

 何度目かの体当たりでやっとドアは開いたが、そこには誰もいなかった。


 もうどうしようもないと思い、家に走って帰った。


 母さんに話したら、慌てた様子で近くの寺に連れていかれた。

 俺とKちゃんだけで年寄りの坊さんに案内されたのは、狭い座敷だ。


「誰に呼ばれても襖を開けないように。返事もしないように」


 そう言いつけられて閉じ込められる。暫くしたら、襖の向こうを誰かが歩く気配がした。

 りん、とあの音がしたからあいつだとすぐ分かった。


「Y(俺の名前)、開けて」


 俺の母さんそっくりの声だった。

 俺は歯を食いしばった。

 あいつは自分で襖を開けられないらしい。歩き出し、少ししてまた止まる。


「K、迎えに来たよ」


 Kちゃんの兄さんの声だった。Kちゃんの口がゆっくり開くのを見て、俺はとっさにその口を手で塞いだ。


 何度もそれを繰り返し、某さんが戻ってきた頃にはもう夜だった。迎えに来た親と帰ろうとしたとき。


「ねえ、Oは! Oとは一緒じゃなかったの!」


 Oの母さんに肩を強く掴まれ、がくがく揺さぶられた。俺が何も答えられずにいると、Oの母さんはその場で崩れ落ちた。


 あれからずっと、Oは見つかっていない。


 ずっとぼんやりしたままのKちゃんは、夏休み中に引っ越してしまったからどうなったのかは不明だ。


 今でも、風鈴の音を聞くとこの話を思い出す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ