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ブスブタブサイクの私は愛されなくても構いません  作者: 満原こもじ


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第1話:親譲りのブスブタブサイクで

 親譲りのブスブタブサイクで子供の時から損ばかりしている……ということはない。

 子供の頃は顔貌よりも積極性と腕力、頭の回転がものを言うものだからだ。

 特に私のような平民の娘はね。

 姐御肌の私はそれなりにブイブイ言わせていたと思う。


 ところが貴族だと話は変わる。

 貴族令嬢の価値はどれだけいい令息を捕まえられるかということにあり、つまり美しい令嬢のランクは高く評価されるのだ。

 私のようなブスブタブサイクはお呼びでない、というかそもそも平民は貴族のパーティーなんかにお呼びでないはずなのだが、人生はわからないもので。

 今日私は貴族のパーティーに参加しているわけだ。


 話は変わるが、釣りというのは男性の趣味という印象がある。

 私は女性であるにも拘らず、釣りが好きだ。

 同じく釣り好きである父様の影響かもしれない。

 獲物がかかった時の快感が堪らない。


 実はパーティー会場でも釣りと似た快感が味わえる。

 程よく着飾った若い女が一人、私のことだ。

 手持ち無沙汰そうに料理を眺めている。

 ほれほれ、食いついてこい。

 私いい感じに太ってて美味そうなエサでしょ(自虐)。


「あーら、ナオミ様お一人なの?」


 かかった!

 えっ? 男を釣ろうと思ってたんじゃないのかって?

 違うわ。

 だって私にはブライアン・トレイワーヴァス公爵令息という、結構なモテ男の婚約者がいるから。


 平民ブタ女の婚約者がどうしてモテ男公爵令息なんだって?

 理屈に合わないだろって?

 それにはこんなわけがあるんだよ。


          ◇


「ナオミ嬢。ブライアンを、トレイワーヴァス公爵家をよろしく頼む……」

「お任せを! 私が持てる力全部を使って、ブライアン様とトレイワーヴァス公爵家を支えてみせます!」

「ああ、これで思い残すことは……」

「公爵様っ!」


 男と女がくっつく理由は大きく分けて四つだと思ってる。

 愛か政略か気の迷いかお金だね。

 トレイワーヴァス公爵家の一粒種ブライアン様と私が婚約したのは最後の理由だよ。


 私は商売では日の出の勢いのサークル商会の娘だ。

 アカデミー文官科でトップの成績で、在学中なのに既に商売を行っているから、私は割と有名人ではあるんだよ。

 有名っていいことばかりじゃなくて。

 太ったブサイクってことが知られてるから、婚約事情はちょっと。

 顔合わせすら断られるの。


 痩せりゃいいだろうって?

 わざわざ体力を落とすことに何の意味が?

 あなたは現実を知らない。

 ブタは痩せても人間にはなれないのだ。


 あたしは切り替えの早いほうだ。

 不得意分野で戦うなんてことはしない。

 結婚とかは諦めて、商売で生きていけばいいやと思っていた。

 私と外見そっくりの父様もそう言ってたし。


 ところが人生わからないことはあるもので。

 トレイワーヴァス公爵家から縁談が舞い込んだ。

 お相手のブライアン様は嫡男で、繊細さが素敵っていう巷の評価の貴公子。

 さっきも言ったけど理由はお金。


 これはちょっと父様も私も意表を突かれた。

 トレイワーヴァス公爵家は肥沃な広い領地を持っていることで知られ、お金に困っているようには思えなったから。

 どういうことだろう?

 しかし公爵様の説明を受けて納得した。


 戦乱の世でもなく、また建国時に比べ王国全体の農業生産力が倍以上になっている現在では、肥沃な土地を持っているだけでは強みにならない。

 王都から見て僻地に当たるトレイワーヴァス公爵領は、昔に比べ重要性が低下していると。

 もちろん食べていけないなんてことはない。

 しかし公爵家の体面を維持する資金は収入が減っても変わらないから、徐々に苦しくなってきたのだということ。

 

 つまりジワジワと金回りが悪くなりつつある状態。

 まだ手を打てる段階で何とかしたかったという、公爵様の思惑だ。

 能力はあっても嫁の貰い手のない私を婚約で引き入れるという、思い切った決断をされた公爵様の知遇には絶対に応えなければならない。


 一方でブスブタブサイクの三ブ主義の体現者を婚約者にしたブライアン様は面白くないよね。

 婚約してからも私にあんまり話しかけてこないし。

 すぐ目を逸らされるし。

 でもいいのだ。

 儚げな立ち姿が素敵と評判のモテ令息の婚約者になれたことだけで、私は十分満足なのだから。


 婚約が成立するやいなや、私は早速王都のトレイワーヴァス公爵家邸内部に手をつけた。

 ……僭越だとは思ったが、公爵様の身体の具合がよろしくなかったから。

 お亡くなりになる前に私の権威を徹底させておかなければ、改革が進まないのだ。


 『公爵家の体面を維持する』ことが大事なのはわかっているが、公爵邸の使用人は多過ぎる。

 初めて邸にお邪魔した時にそう思った。

 いや、使用人って目立つのはよろしくないよね?

 来客に多いと思われるようじゃダメだ。


 本来家の中は公爵夫人が統率すべきだと思う。

 しかし残念なことながら、夫人はとうの昔に亡くなられている。

 だから私がやらねばならんのだ。

 公爵様の威を借りてでもだ。


 男の使用人は私の指示の下、家令のセバスチャンに担当してもらった。

 この家令も伯爵家の出なのだそうで、本来平民の私がセバスなどと省略形で呼び捨てにしてはいけない人なのだが、上下関係で仕方がない。

 幸いセバスは公爵様に対する忠誠が篤いので、私の言うこともよく聞いてくれる。

 ありがたい。


 問題は侍女達だ。

 使えん。

 侍女のことは男のセバスじゃ行き届かないだろうしな。

 全員クビにしたい気持ちをグッと堪えて、教育することにした。


 具体的に何をしたか?

 ローテーションを組んで、侍女達を順に私の実家サークル商会の接客のアルバイトに放り込んだ。

 まあトレイワーヴァス公爵家の侍女ともなると、皆いいとこのお嬢なわけだ。

 しかし侍女にお嬢意識はいらん。

 お客さんを相手にどういう心遣いが必要か学べ。


 侍女達から文句?

 出ないよ。

 だってサークル商会からもアルバイト料出してるもん。

 勤労時間一緒で侍女の給金+アルバイト料だから、皆喜んで働くわ。


 しかし当然アルバイト先ではなってないと叱られるわけで。

 侍女達の態度が変わった。

 プロ意識が芽生えた。

 作戦成功。


 アルバイト期間が終わった後、侍女達の給金を上げた。

 いや、商会に何人か引き抜かれて数が減ったから、人件費全体としてはむしろ減っているの。

 引き抜かれた元侍女もやり甲斐を感じているようだし、元侍女も貴族の令嬢だったりするから上流階級とのパイプが太くなって商会も嬉しいという、ウィンウィンなのだよ。

 ここまで考えている私はやり手。


 このタイミングで公爵様が亡くなった。

 せめてブライアン様が成人して公爵を継げるようになるまで生きていて欲しかった。

 でも何とか大丈夫だろう。

 家内はまとまったから。


 私自身に弱いところがあるとすると人脈だ。

 いや、外見については諦めてるから弱点に数えないよ。

 私は王立アカデミー生ではあるけど文官科だから。

 貴族家の次男三男くらいとしか知り合えないんだよな。

 

 私がトレイワーヴァス公爵家の足を引っ張ってはならない。

 幸いブライアン様の婚約者になったことで、貴族のパーティーに招待された。

 ちょうど公爵様の一ヶ月の忌明けすぐだ。

 ここで仕掛けて人脈を広げてみせる。


「ブライアン様は私と離れて行動してください」

「えっ? う、うん」


 ブライアン様は私をあちこちに紹介する義務があると思っていたかもしれないけど、そんなのいらん。

 というか正式にブライアン様が公爵位を継ぐか、ないしは私と結婚した後でいい。

 まあブライアン様にとってはお世継ぎを得る相手が必要だ。

 三ブ主義の私を抱く気にはならないだろうから、一人で行動して適当な相手を見繕っていてください。

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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!
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