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桜色の出会い

今回『怪物は彼女でした。』を執筆しました風 渡です。これからも投稿していくのでよろしくお願いします

 春の温かい風が頬を撫でる。湖に流れ落ちる水滴の音が心地よい。桜の花びらが舞い落ちる。

柔らかな声で目が覚めた。


『あの、大丈夫?』


淡い桜色の髪で琥珀色の瞳、桃のように甘い匂いがした。


『君!こんなところで寝てたら危ないよ!』


頬を膨らませて怒っている。いったいなんのことだろう。


『この辺りは、半獣(はんじゅう)がいるよ。』


半獣....半世紀ほど前から存在が確認されている生物だ。彼らは人の姿を持ち、同時に獣の姿を持つと言い伝えられている。


『あなたはなぜこんなところに?』


『……あ、あー!私ね家が近くにあるんだよ!』


ばつが悪そうな顔で彼女は答えた。


『そっか…では、そろそろ帰ります。声をかけてくださり、ありがとうございました。』


僕は軽く挨拶をして帰ろうとした。


『ちょっと待っt!』


彼女の声に振り向く前に、より大きな声で呼びかけられた。


『君!この辺で狼を見なかったか?』


黒い服に白髪と碧眼(へきがん)の男性、左胸には金色の徽章(きしょう)をつけている。

この徽章はこの王国の兵士であることを示すものだ。


『僕は何も…』


そうだ彼女も、ってあれ?彼女の姿が見当たらない。


『どうしたんだ?…というか先ほど話した通りこの辺りは危険なんだ。親御さんも心配するよ。』


『お心遣いありがとうございます。では失礼します。』


彼女のことが気になったが、僕はそのまま家に帰ることにした。



帰宅中・・・



 夕暮れで景色も赤みがかってきた。夕空を反射した草原の上を歩いていた。


『僕の妄想だったのかな?』


彼女の桃の香りを思い出し頬が赤く染まった。


『この辺に住んでいるって言ってたし、また会えるかな』


彼女のことを考えながら歩いていると何かにぶつかった。


『おいてめえ!!!どこに目ぇつけてんだ!!』


完全にやらかした。岩のような体の大男が全身を貫くような鋭い視線で僕を睨み付けた。


『すっすみません!前を見てませんでした!』


顔をあげると大男の顔が見えてきた。

よく見ると大男は豚のような顔をしていた。


『ばぁっっっはははは!!!なんですかその顔!』


笑い転げていた僕の前で煮えたぎるように赤くなった男が口を開いた。


『お前ら!こいつ()んぞ』


そう言った大男の後ろから二人の男が出てきた。

一人は小柄で、もう一人は細見の男だった。


『兄貴!こいつむかつく顔してますね!!』


『こんな奴、兄さんの手を煩わせることもありませんよ』


あぁなんだこいつら。よくいる子分キャラか。兄貴さんは豚さんみたいな顔してますね!


『このセルド様にたてつくとどうなるか教えてやる!』


大男が拳を振りかざした。


『グ゛ア゛ァ゛ッ゛!!』


顔を大きな棒で殴られたような痛みだった。足がすくんで逃げることができない。


『ごめんなさい!!やめてください!!』


彼らは殴るのをやめない。三人から殴る蹴るの暴行を受けて顔全体が血まみれになった。

ヤバい。本当に死んでしまう。自身の行動を恨んだ。

視界が真っ赤に染まりかけている。これはもう無理だ。こんなことなら、



5年前・・・



 太陽が照らし出す青空の下で木刀を握っていた。父との剣の稽古(けいこ)の時間だ。母は庭仕事をしながら笑顔で僕たちを見ている。


『おーいw!そんなへなちょこな剣捌きじゃ俺には当たんねーぞっ』


イラっとした。父の煽りは、はっきり言ってウザイ。剣を握る力が強くなる。


『父さん!!この一撃をくらえ!』


大きく振りかぶった。


『グッ!』


父は僕の頭部に剣を振り下ろした。鈍い痛みと共に眼前(がんぜん)は湿った土で満たされた。

今にも気絶しそうだった。そんな僕を横目に見ながら父は言った。


『剣はな..繊細(せんさい)なんだ。大きく振りかぶるとそれだけ大きな隙が生まれる。本当の剣技とは一切隙が生まれないものなんだよ。剣において隙は死だ。剣を極めることも……。』


途切れ途切れに聞こえる言葉の中、僕は気絶してしまった。まだ剣を続けていれば、体を鍛え続けていたら、そんなのは結果論だ。

そんなことを考えながら、僕は我に返った。



『兄貴っ!これ以上やると本当に死んでしまいますよ!』


『うるせぇ!初めから殺すつもりだ!』


殴られ続けられ、もう前を見る力も残っていない。

ほのかな甘い香りと共に鋭い風が吹いた。


『う゛わ゛っ!何だこりゃ!』


三人組の暴漢らが桜色の風と共に舞い上がった。

目の前には強烈な風の柱。地面に打ち付けられた暴漢たちは走り去っていった。

朦朧(もうろう)としていたがかすかな意識の中、確かに見た。

風の中から出てきた彼女を……




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