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33.反撃


「母上! もうおやめ下さい!」


 そう叫んだのは、今まで一言も発せず、黙って成り行きを見ていたダミアン王太子殿下だった。


「いい加減にして下さい! 何故母上の勝手な言い分で、イアンの婚約者を勝手に私の側妃に変更出来るのです?

 我々は母上の玩具ではないのですよ!

 一体、人を何だと思っているのですか!

 それに、今回の件だって、母上が国中に変な噂を撒き散らして、ファクソン家に難癖をつけただけではありませんか!

 それに対し、きちんと報告と説明を受けたのに、今度はその功績を我がものにしようとするなど、人として許せない行為です!

 ファクソン伯爵令嬢や、協力したギアス魔術師団副団長、見守ってきたイアンは、画期的な発明や、力の使い方など、惜しげもなく国に報告して貢献したでしょう?

 それに対し讃える事もせず、ましてすぐさま奪うなどすれば、これから先、誰も国に何も知らせる事などしない!

 そうすれば、国の発展は途絶える一方になるでしょう!」



 今まで王妃に一言も逆らわず、常に顔色を窺いオドオドしていたダミアン王太子が、今はしっかりと王妃を見据えながら、一気にそう叫んだ事で、周りは皆一様に驚いていた。

 その中で一番驚いていたのは、王妃だった。


「だ、ダミアン?」


 今まで王妃の目をまともに見る事も出来なかったダミアン王太子の変貌ぶりに、王妃は二の句が告げない。


「陛下。私からもお願いします。

ファクソン伯爵家は、キチンと説明と報告をし、氷室に対しても、令嬢の力で作り上げたもの。

 商品の安全性を確立した暁には、国が安全性を認めたと公式発表し、また氷室は、ファクソン家のものである事もきちんと認めた事を発表しましょう。

 氷魔法に対しては、魔術師団団長の鑑定結果を待ち、その上で公式発表して、誰もがその力を使えるようになる事を目指して、国が後押しすれば良いと思うのです。

 その際は、その力の使い方を発見したファクソン伯爵令嬢を讃え、その力の使い方を伝授指導してもらえばいいのでは?

 その為にも、今はファクソン伯爵令嬢の身の安全の為に、来る時がくるまで、他言無用で保護する形を取りましょう。

 イアン。ファクソン伯爵令嬢はお前の婚約者だ。身の安全を守る為に、どうすればいいか方法を考えるように」


 ダミアン王太子にそう言われて、イアン様は「もちろんです! しっかりとエレノア嬢を守ります!」

と、返答した。


 ダミアン王太子の発言を受け、しばらく黙っていた陛下が改めて発言する。


「ダミアンの言う通りだな。

画期的な発明に対し、すぐに王家に取り込むような事をすれば、民心は王家から離れてしまい、王家への不信感を煽る事になる。

 それは今後の国の発展に大きな支障となるだろう。

 王妃よ。そなたは少しやり過ぎたようだ。

 しばらく東地区にある避暑地の別宮にて、頭を冷やしてくるがよい。

 ファクソン伯爵令嬢、すまなかったな。

 そなたの家の商品についても、すぐに安全性への保証も国で対処するようにしよう。

 もちろん氷室に関しては、国に返上する義務などない事も発表する事とする。

 また、氷魔法の公式発表まで、ファクソン伯爵令嬢の件は他言無用とする」


 陛下の言葉に、私たちは安堵した。

 王妃はいまだに信じられないといった顔で、ダミアン王太子を見ている。

 そんな王妃をダミアンは一瞥した後、近くにいた衛兵に指示を出す。


「王妃をここから連れ出すように。

 今から王妃は東の避暑地へと行かれるので、準備するようにと王妃付きの者に伝えよ」


「ダミアン⁉︎」


 ダミアン王太子の言葉に、ようやく反応して怒り出したが、陛下も追随して、

「王妃よ、ゆっくり過ごすがよい」

と言った事で、衛兵達に連れられて、王妃は謁見室を退室した。


「何か他に意見のある者はあるか?」


 そう陛下に言われ、それまで王妃の駒として動いていた官僚たちも、分が悪いと黙り込む。


「ないようだな。

 では、これにて今回の議題は終了とする」


 陛下のその言葉にて、ようやく解散となった。


 私たち親子は、別室にて改めて商品の説明書を提出し、魔術師団の安全保証書付きで商品を売り出す事になった。


 そして私は、氷魔法についてのやり方を確立する為、魔術師団の特別団員に任命され、魔術師団の保護を受けながら研究に協力する形となった。

 これについては、イアン様が尽力してくれた事は言うまでもない。


 ようやく安心して、またいつもの日常生活に戻りつつあった。




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