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32.氷魔法

「氷魔法とな!? 水属性でありながら、特殊魔法も使えるとはどういう事なのだ?」


 陛下が驚きながら私にそう聞いてくる。


「本来、特殊魔法である氷魔法ですが、氷はもともとは水で出来たものです。

 水が凍って出来た物が氷。その過程を知っていれば、水属性の方なら誰でも氷を作れるというのが、わたくしの見解です」


 そう言う私に、堪りかねた王妃が叫んだ。


「何を言っているのです! 嘘も大概になさいな! そんな事、出来るわけがないでしょう!

 氷室が取られそうになってるから、話を逸らそうとしているのではなくて⁉︎」


 そう叫ぶ王妃に追従して、他の官僚がたも叫んだ。


「なんて娘だ! 陛下の前でそんな嘘を吐くなど、言語道断だ!」

「ありもしない事を言って、この場を混乱させるだけの者の言う事など、聞いておれん!」

「即刻この娘に罰を与えるべきだ!」


 それぞれ叫んでいる人達の前で、私は無詠唱で氷魔法を発現し、氷塊を出した。


「は?」

「何故急に氷が?」

「これは一体?」


 それぞれが驚いて氷塊と私を見比べている。

 私はその視線を受けながら、しっかりと王妃を見据えながら説明した。


「わたくしが出した氷塊です。

 わたくしはこの魔法を用いて、我が家の土地である裏山の小さな洞窟を氷室に変えました。

 そして、王都に出している商会の店で扱っているかき氷などは、わたくしが出した氷を元に作った物。

 他の商品もすべて、わたくしの魔法を元に冷やされた商品でございます」


 そう説明した私に、イアン様も後押しをしてくれる。


「陛下。私の発言もお許しください。私もエレノア嬢から、氷魔法について説明を受け、実際にそれで商品を作っているところを確認しております」


 そう言ったイアン様に、王妃が睨みながらイアン様を責める。


「お前は、このような重大な事を陛下に黙っていたのですか⁉︎ 陛下を蔑ろにするなど、許し難い行為ですよ!」


「発言をよろしいでしょうか?」


 王妃の発言に対し、今度はギアス様がそう訴えた。


「発言を許す」


 陛下の許しを得て、ギアス様が話し出す。


「私も実はファクソン伯爵令嬢の商品開発に手を貸していまして。

 その際に、氷魔法について令嬢から教えて頂きました。

 この方法を使えば、水属性の者は水を氷に変えられるという画期的な発明に、私は大層感銘を受けまして、つい先日、その研究論文を魔術師団団長に提出したばかりなのです。

 やはり、陛下に報告するには、きちんとした研究結果をまとめ上げた上で報告せねばと、ファクソン伯爵令嬢や第二王子殿下とも相談した上で、そういう話になりましたので」


 そう話すギアス様に、陛下は頷く。


「一理あるな。サイラス。お前はその報告を受けたか?」


 陛下がサイラス大公にそう確認してすると、

「はい。先日からの研究報告を受けて、今それの検証をしている最中です。

 検証の結果が出次第、陛下にご報告申し上げるつもりでした」

と、答えた。


「ふむ。ならばきちんとした手順を踏んでおるから、咎める事では無いな。

 ファクソン伯爵令嬢。

 後できちんとした報告書を見る事とするが、私も興味がある。簡単にこの場で氷にする説明は出来るか?」


 陛下にそう言われて、私は水から氷に変える成り立ちを説明した。


「水属性だけでなく、このように、その物質の本質を知れば、他にももっと色んな魔法が作り出せるのではないかと考えております」


 説明の後、そう締め括った私に、ギアス様がキラキラとした視線を送ってきた。


 あぁ、研究意欲を刺激してしまったか。

 でも、私も専門家ではなく、ただ前世の知識を踏まえて感じた事だから、ちゃんとした研究はギアス様がやってねと、心の中でその視線を突き返しておく。


「なるほど。その研究発表次第では、温暖な我が国に画期的な革命が巻き起こるであろうな」


 そう話す陛下に、ギアス様が付け加える。


「しかしながら、陛下。私もそのやり方で水から氷に変える事は出来るようになりましたが、これがなかなか難しく、ファクソン伯爵令嬢のように、あのような短時間でそれ程の大きさの氷塊を作るまでには全く至りません。

 しかも、無詠唱でなど、それはやはりファクソン伯爵令嬢の持って生まれた能力が大きく反映されているものであります」


 そうギアス様が発言した後、イアン様がその後を引き継いだ。


「なので、陛下。エレノア嬢の身の安全の為、エレノア嬢の能力はこの場限りで、他言無用にして頂きたいのです」


 ギアス様とイアン様の発言に、王妃がいち早く反論する。


「何を言っているのです。商売としてその力を使っているのに、国に貢献しないなんてあり得ない事でしょう。

 ファクソン伯爵令嬢は、その力を国の為に使うべきです。

 これからファクソン伯爵令嬢は、身を粉にしながら国の為にその能力を使いなさい。

 そうね、まずはその能力がどの程度のものなのか、わたくしが確かめてあげるわ。

 貴女は今日からわたくしの専属侍女となり、わたくしの言う通りにその能力を使うように」


 王妃の発言にびっくりする。


 えっ? 嘘よね?

 これは想定外だわ⁉︎


「なっ⁉︎ 陛下! ファクソン伯爵令嬢は、私の婚約者です! その彼女を勝手に王妃の専属侍女など、あり得ないでしょう!

 陛下! 王妃をお止めください!」


 イアン様も驚きながら、必死で陛下に申し出る。


「王妃よ、イアンの婚約者である娘を王妃の専属侍女とするのは流石に……」


 そう言う陛下の発言を遮り、王妃は言葉を連ねる。


「あら、では王太子の側妃と変更致しましょう。

 イアンは以前より臣籍降下を願っておりましたでしょう?

 イアンの婚約者のままでは、この娘は王家から離れてしまいますものね。

 このような能力のある娘は、王家のものとするのが一番安全ですよ。

 イアン、貴方もこの娘の身の安全を願っていたではありませんか」


 くぅ! この王妃、変に頭の回転だけは速いわねっ!

 次から次へと、よくもまぁこんなに屁理屈が並べられるものだわっ!



 どう言えば、この王妃の暴走を止められるのか?

 イアン様も焦りながら、次の句を告げようとした時、意外なところから大きな発言が聞こえた。





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