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31.暴露



 私は今、両親と共に王宮の謁見室にいる。

 

 目の前には国王陛下並びに王妃様、王太子殿下とイアン様、宰相様や騎士団長、魔術師団本部団長とギアス副団長、その他官僚数名がいた。

 

 

「ファクソン伯爵、本日ここに呼ばれた事に心当たりはあるか?」

 

 

 国王陛下にそう言われ、父は震え上がっていた。

 元々父は気が弱く、人と揉め事を起こす事など到底無理な性格をしている。

 その性格が災いし、下に見られて苦い思いをさせられてきた事が何度もあった。

 

 その父が国王陛下にそう言われて震えないわけが無い。

 

「も、申し訳あ、りません。わたくしには、さっぱりわ、からない、のですが……」

 

 必死でそう答える父に、国王陛下はため息を吐き、宰相を見る。

 

 国王陛下の視線を受けて、宰相から説明が始まった。

 

 

「では、私から説明致しましょう。

 まず、ファクソン伯爵家が経営するファクソン商会ですが、最近、保冷商品を扱っていますね?

 その商品なのですが、王都内で魔物の肉を材料としているとの噂が広がっています。

 

 今まで見たこともない保冷商品にて、我々としても安全なものか確認したく、保冷材料として、何を使用しているのか、ぜひ説明をして頂きたいというのが一点」

 

 宰相はそう説明し、更にこちらを見ながら続ける。

 

 

「もう1つ。ファクソン伯爵家の裏山に、自然氷室が見つかったという報告は、以前に頂きましたが、その規模はどのようなものなのでしょうか? 

 ファクソン商会が取り扱っている氷や、冷えたデザートなどを見るに、氷室の規模は大きいと考えられる。 

 規模の大きさによっては、個人が所有する財産としてはあまりに大きい。

 氷室は、温暖なこの国にとってとても貴重なもの。国に返上すべきなのではないかという意見が出ています。

 この件について、ファクソン伯爵から自主的に返上されなかった事も問題視されています。

 この2点について、どう考えているのか、ぜひ聞かせて頂きたい」

 

 

 宰相からそう説明を受け、父は冷や汗を垂らしながら、私の方をチラチラと見た。

 

 そうよね。父にしたら、全部私からの報告を聞いただけに過ぎないし、実質商会の経営をしているのは私だもの。

 

 私は、壇上にいるイアン様やギアス様を見た。

 2人とも私の視線を受けて頷いてくれる。


 私は父に、事前に答えられない事があれば私に振るようにと伝えてある。

 だから、父に目線で私に振るよう伝えた。


 父は私の視線を受け、勇気をだして陛下に直訴した。


「此度の件については、我が娘エレノアから説明させて頂きたく存じます。許可願えますでしょうか?」


 そう訴えた父に陛下が首を傾げる。


「それは何故か? 商会はそなたの経営であろう?」


「お恥ずかしい事ではありますが、実質経営しているのは、娘のエレノアでして……」


 陛下は、そう返答した父と私を見比べ、

「許可しよう。エレノア嬢、先程の件を説明出来るか?」

 と聞いてきた。


「はい。ではわたくしからご説明させて頂きます」

 

 私は周りを見渡しながら、そう話す。

 他に反対意見もない為、そのまま話す事にした。


「まず一点目ですが、保冷商品に魔物の肉を使っているというのは本当です」


 そう言うと、すかさずその場にいた官僚達が騒ぎ出す。


「本当だったのか! なんて事だ! 危険だろう!」

「なぜわざわざ魔物を取り扱うのだ! この王都に持ち込むなど、言語道断だ!」


 騒ぎ出す官僚達を見てほくそ笑んでいる王妃に気づき、やはり王妃の仕業かと、こっそりため息を吐く。

 

「魔物の肉としては、スライムを使用しております。

 元々魔物はコアという魔物の心臓に当たる部分を壊すと、ただの肉塊になり、焼却して廃棄するそうですが、スライムに関しては、ほぼ水分で出来た魔物なのだそうで、コアを壊すとただの水として川に流して廃棄していたそうです。

 なので、無害という認識だと聞いております。

 しかしながら、その事を知らない方々に対しては、大変な不安を抱かせてしまったそうで、本当に申し訳ないと思っております」


 私の説明に、宰相からの質問が飛んできた。


「何故わざわざスライムを使用しようと考えられたのだろうか?」


 うん、そうよね。そこが疑問でしょうね。

 前世の記憶で、あのスライムのプルプルゼリーが保冷剤によく似ているっていうだけの理由から使い始めて、それが運良く使い勝手のいいものだというのは後からわかった事だもの。


「遠征の時に、スライムを偶然見かけ、閃いたとしか申し上げられませんが、実際、使用するに当たって、これほどの性能があるとは思っておりませんでした。

 これも、魔術師団本部、副団長であらせられるゼノ・ギアス様のお力添えがあって判明したもの。

 ゼノ・ギアス副団長様には、深く感謝申し上げます」


 私の言葉を受け、ギアス様は笑顔で手を振って応じてくれた。


「魔物に詳しい魔術師団本部団長、サイラス大公様。並びに騎士団長。

 御二方にお尋ねします。

 先程の魔物のコアを壊した後の処理方法はあっておりますか? 無害というのも、本当でしょうか?」


 宰相の言葉に、サイラス大公様は頷いて説明する。


「ああ、合っている。魔物にもよるが、スライムはコアを壊すと水と同じ成分となり、無害だとして川に捨てて処理する」


「騎士団としても同じ認識をしております」


 サイラス大公様の後に続いて、騎士団長もそのように答えた。


「スライムの肉を使うにあたって、無害だということは分かりました。

 しかし、民衆を無闇に不安にさせたという事には変わりないでしょう。

 前代未聞の代物を使用するに当たっては、事前に国に報告をするべきでした」


 その宰相の言葉にはぐうの音も出ないので、ひたすら謝っておこう。


「はい。その点については誠に申し訳ありませんでした。反省しております」


 私の言葉を聞いて宰相は頷き、陛下を見る。


「陛下、この件については反省しておりますし、無害なものを使用していた事もここで判明しました。今後の販売については、内容物をさらによく説明を受けた上で販売再開の有無を決めるという事で、どうでしょう?」


 宰相の言葉に、陛下は頷く。


「そうだな。魔術師団長と騎士団長がそう言うのであれば、安全なものを使用している事になる。後で商品の更なる報告を受けた上で商品の販売を改めて許可しよう」


 陛下がそう言うと、横に座っていた王妃が憎々しげに私を睨んでくる。


 いや、睨まれても。

 難癖つけて呼び出したのはそっちでしょうに。


「では、もう一点の氷室についても説明してもらいましょう。

 引き続き、ファクソン伯爵令嬢が説明してくれるのでしょうか?」


 宰相の言葉に私は頷いた。


「はい。引き続きわたくしから説明させて頂きます。

 これに関しても、ご報告が遅れました事、本当に申し訳ないのですが……」


 そう言って、前振りをした後、一呼吸置く。


「わたくしは、水魔法の適性ですが、氷魔法も使えます」


 そういうと、私の家族や協力者を除く他の方々が、一斉に驚いて私を見た。



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