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22.突然の贈り物

 

 

 ギアス様から送って頂いたスライムゼリーは、薄く伸ばした樹脂で覆って、保冷剤や冷却枕などに使えるように大きさを変えて、順調に商品化していった。

 スライムゼリーは、溶けると水のようになるので、濡れないようにナイロンのような保護膜が欲しかった。

 そのイメージをギアス様に伝えたら、樹液で覆えばいいと教えてもらい、領地から取れる樹液を加工して、その問題も解決したのだ。

 まだまだ小さな商会だが、売れ行き次第では、大々的にファクソン家の目玉商品として商会を大きくし、貧乏伯爵家の汚名を返上してやるつもりだ。

 

 氷室のある貴族家はもちろん、ゆくゆくは平民の間でも気軽に使えるように、商売方法も考えてある。

 

 せっかく前世の記憶が戻ったのだから、この記憶を元に人生を楽しまないとね!

 

 

 そんな事を考えていたら、父が私の部屋にやってきた。

 

 

 

「エレノア、大変だ!

 お前にイアン殿下から贈り物が届いているよ!」

 

 

 ん? イアン様からの贈り物?

 

 

「まさか。今まで誕生日でも何も贈り物などなかったですのに。

 何かの間違いでは?」

 

 

 私はついそう返事してしまった。

 

 この3年間、まともに贈り物など頂いた記憶などない。

 ましてや、今日は誕生日でもないし、パーティが近いわけでもない。

 もちろん、今までパーティに一緒に行った事など全くないし。

 

 

 

「私も何かの間違いだと思ったんだ!

 しかし、いつもイアン殿下のそばに居る護衛騎士のオーウェン殿が直々に持ってきたんだよ!

 直接渡すと、今、エントランスホールで待っているぞ!」 

 

 

 

 そんな事言われても、いきなりで理解が出来ない。

 

 

「分かりました。直ぐに下に降りますわ」

 

 

 二階にある自室から出て、階段上からエントランスホールを覗く。

 

 エントランスホールには、本当にオーウェン様が立っていた。

 

 取り敢えず急いで階段を下り、エントランスホールに行く。

 

 

「お待たせ致しました。本日は一体……?」

 

 

 そうオーウェン様に話しかけると、オーウェン様は私に敬礼した後、手に持っていた花束を前に出す。

 

 

「急な訪問をお許しください。

 イアン殿下の代わりに、ファクソン伯爵令嬢にイアン殿下からの贈り物をお持ちいたしました」

 

 

 花束と共に、ドレスが入った大きな箱を差し出してくる。

 

 

「あの……? この贈り物は一体?」

 

 

 困惑する私に、オーウェン様はイアン殿下から預かってきた手紙を渡してくる。

 

 

「イアン殿下からのお手紙です。

 それを読めば、この贈り物の意味も分かるかと」

 

 

 オーウェン様はそうにこやかに私に言ったあと、手紙と贈り物を置いて速やかに帰っていった。

 

 

「何なの?」 

 

 

 取り敢えず、贈り物を部屋に運んでもらい、手紙を読んでみる。

 

 

 手紙には、先日の遠征で世話になった事、料理が美味しかった事、騎士の介抱についても感謝していると書いてあった。

 

 そして感謝の気持ちを表した花束と、ドレスを贈る事、そのドレスを着て、1ヶ月後に王宮で行われる就任パーティにパートナーとして参加してほしい事などが書かれてあった。

 

 

「就任パーティ?」

 

 

 不思議に思い、そう声に出してしまうと、隣りで心配そうに私を見ていた父が徐に答えた。

 

 

「あぁ、魔術師団本部の副団長を迎えるパーティだな。

 お前も知っているのではないか?

 遠征に行った南支部の団長をしていたゼノ・ギアス殿が就任されるのだ」

 

 

「え!? ギアス様が王都に!?」

 

 

 そんな事、聞いてないわよ!?

 

 まぁ、王都に来てくれるなら、これからも何か困った時に協力してもらえるかしら?

 いや、でも昇格したら忙しくて頼れないかもしれないわね。

 

 でも、おめでたい事なので、今までの感謝を伝えるいい機会かもしれない。

 

 

「お父様、わたくし、このパーティに参加致しますわね。幸いイアン様が誘って下さいましたので」

 

 

「もちろんだ! 初めて殿下がパーティに誘ってくれたんだ! これを機に婚約者としてちゃんと交流を図りなさい!」

 

 

 父はとても喜んでいる。

 

 そうね。今まで心配ばかりかけてしまって、両親にはとても悪い事をした。

 

 どうせなら、このパーティの時にイアン様がこれからどうしたいのか尋ねてみるのもいいかもしれない。

 婚約解消を願っているのなら、すぐに応じると気持ちを伝えておいた方がいいものね。

 

 まさかとは思うけど、ここが乙女ゲームの世界で、私が悪役令嬢の立場だとしたら、断罪は避けたいもの。

 

 どちらかと言うとエリザベス様のほうが悪役令嬢にピッタリだとは思うけど、今回の遠征ではエリザベス様のいい所も分かってしまったから、エリザベス様もまとめて回避出来るように頑張ってみるか。

 

 

 

 私はさっそく贈り物のお礼と共に、パーティのお誘いを受ける旨を書いたお礼状をイアン様宛に出した。

 

 

 すると、その数日後には、またイアン様から花束が届き、パーティに一緒に行ける事を楽しみにしているといった内容の手紙が届いた。

 

 花束のお礼状を返すと、またしても花束を贈ってくる。

 

 不思議に思いながら、このやり取りはパーティが始まる前日まで続いていた。




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