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17.アレを見つけた!

 

「え? 詐欺とは?」

 

「い、いえ、気になさらないで下さい!」 

 

 

 不思議そうにそう言ったゼノ・ギアス様に、私は慌てて誤魔化した。

 

 ゼノ・ギアス様は不思議そうにしていたが、さっきの氷魔法を思い出したのか、すぐに先程に勢いを取り戻す。

 

 

「まぁそれはいいです! それで! さっきの魔法は何なのです!? 氷を出す魔法は初めて見たのですが、貴女が出したのですよね!?」

 

 

「え? ……え〜っと、そうかも?」

 

 

 ゼノ・ギアス様に強い視線を向けられるが、つい、そっぽ向きながら何とかこの場を凌がないとと、私も必死だった。

 

 

 つい氷魔法を使っちゃったけど、まさか人が見ているなんて思わなかった。

 

 誰にも内緒だって家族みんなで決めてたのに!

 

 

「あ」

 

 

 その時、私はふいに2つに切り分けられたスライムを見る。

 水風船みたいだから、切ったら弾けて割れるか、萎むかと思っていたのに、プルプルのまま残っていた。

 

 そのままジッーとそのスライムを見ていたら、ゼノ・ギアス様もその視線に、スライムを見た。

 

 

「あぁ、危ない所でしたね。普段は無害だけど、攻撃すれば素早い動きで反撃してくるのですよ。まぁ、スライムにびっくりして攻撃したのでしょうけど」

 

 

 そう話すゼノ・ギアス様に、

「いえ、知っていましたけど、野菜を荒らしていたので……。

 あの……ゼノ・ギアス南支部団長様?」

 と、私は疑問に思っている事を尋ねようと思った。

 ゼノ・ギアス様は不思議そうな表情で私を見る。

 

 

「スライムの死骸はどう処理されています? あのプルプルは害のあるものなのですか?」 

 

 

 私はスライムのプルプルが、前世のある物に活用出来るのではと考えていた。

 でも、スライムは魔物。それを活用する事で人体に害を与えるのでは?とも懸念している。 

 

 

「スライムの死骸?

 あぁ、魔物の中には心臓に当たるコアというものがあるので、それを取り出して壊したあとに焼却するのが通常ですが、スライムはほぼ水で出来た魔物ですので、コアを取り出した後はそのまま川に捨てたりもしますね」 

 

 

 という事は、コアを取り出したらあのプルプルは人体に無害って事?

 

 ならば、アレに使えるだろうか?

 

 

「ゼノ・ギアス南支部団長様! あのスライムのコアを取り出した後は、あのプルプルを是非わたくしに下さいませ!」

 

 

 思わず前のめりになってゼノ・ギアス様に詰め寄ってしまった。

 

 (アレ)とは。

 

 私は常々、氷室で凍らせた物を取り出した後、少しでも溶けずに長持ちする方法はないかと考えていた。

 

 前世にあったクーラーボックスや、保冷バッグなどあれば……と。

 

 そして見つけた。

 

 保冷剤を!

 

 そう、アレとはつまり、保冷剤。

 

 あのプルプルは、保冷剤の中身にとても似ている。

 あれを凍らせれば、保冷剤に使えるのではと考えていた。

 

 

「それよりもご令嬢! 先程の……」

 

 

「ストップ! わたくしも、ぜひ魔術師団の南支部団長である貴方に教えて頂きたい事が。

 ここはお互いに情報提供しながら、協力体制を取りません?」

 

 

 氷魔法について急かしてくるゼノ・ギアス様の言葉を遮り、私は協力を求めた。

 魔術師支部団長ならば、いろいろな情報を持っているはず。

 ぜひ保冷剤としてスライムを活用出来るようにいろいろと教えてもらいたい。

 

 氷魔法を見られた限りは腹を括り、水魔法から氷魔法への変換方法を教える代わりに、色々と役立ってもらおうではないか。

 

 

 そう考えてほくそ笑む私に、何故かゼノ・ギアス様は思い切り引いていた。

 

 

 

 その後、取り敢えずシチューを作るために野菜類を持って入り、約束通り皆のご飯を作る。

 もちろんスライムの死骸も回収して。

 

 ちなみにコアはゼノ・ギアス様に取り出してもらった。

 

 私がシチューを作っている間、まさかのゼノ・ギアス様もお手伝いをしてくれ、お互いの情報共有は夕食後に待ち合わせをしてゆっくり行おうという事にしたのだ。

 

 やがて日が暮れて、料理が出来る頃に討伐隊が戻ってきた。

 

 

「お疲れ様でしたわ! イアン殿下!」

 

 

 いち早くエリザベス様が、イアン様を出迎える。その後に、王太子殿下や私、ゼノ・ギアス様などが続いて出迎えた。

 

 

「ただいま戻りました」

 

 

「あぁ、疲れただろう。さぁ、夕食にしようじゃないか。

 今日はお前の婚約者殿が作ってくれたそうだよ?」

 

 王太子殿下の言葉に驚いた表情で、イアン様は私を見る。

 

 

「エレノア嬢が?」

 

 イアン様の言葉に、私は頷いた。

 

 

「大したものは出来ませんでしたが、ここに居る間、せめてわたくしに出来ることをと思いまして……。

 あ、でもゼノ・ギアス支部団長様にも手伝って頂きましたが」

 

 

 私の言葉に、イアン様は胡乱げにゼノ・ギアス様を見る。

 

 

「貴方が?」

 

 

「ええ。ご令嬢一人で作ってもらうのは気が引けたので」

 

 

 イアン様の言葉を受けて、にこやかにゼノ・ギアス様が答えた。

 

 ちなみに、王都から来た他の人達も、ゼノ・ギアス様の変貌ぶりにはとても驚いていた。

 

 エリザベス様などは、目と口が開きっぱなしで、公爵令嬢にあるまじき表情をしていた。

 

 

「ゼノ・ギアス支部団長様がお手伝いをして下さったので、大変助かりましたわ」

 

 改めて笑顔でゼノ・ギアス様に笑顔でお礼を言った私に、

「いえいえ、私に出来る事なら何でも協力させて頂きますよ」

 と綺麗な笑顔で返してくれたゼノ・ギアス様と私を交互に見ながら、複雑な表情をしているイアン様に全く気付かなかった。




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