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16.討伐隊合流

 

「ご紹介致します。 

 こちらがパルバット山脈の魔物の動向を観察し、今後の動きを予測して下さっている、魔術師団南支部団長のゼノ・ギアス様です」

 

 

 次の日、さっそく私たちは魔物討伐を行なっている現地に赴いた。

 山脈の国境付近に、普段から魔物の動向を観察する為の小さな砦があり、その周りに砦に入り切らない冒険者用の各テントが立てられいた。

 

 そこで辺境伯の代理で指揮を務めている辺境伯騎士団長や、各チームのリーダーなど、それぞれの主要人物と顔合わせをする。

 その中でも異色を放っていたのが、この魔術師団南地区団長のゼノ・ギアス様だ。

 貴族らしいが、貴族とはとても思えないような、髪の毛はボサボサ、無精髭を生やしている小汚い風貌で、瓶底メガネを掛けている。

 言われなければ、何処かの浮浪者かと思ってしまう出で立ちに、エリザベス様は思い切り顔を顰めて変質者でも見るような目つきで見ており、私もつい引き気味で見てしまった。

 

 

「これは申し訳ない。王太子殿下と第二王子殿下、それにご令嬢方の前に出る格好では無かったですね。

 魔物の動向に目が離せなかったので、自分の身なりを気にする暇がなかったもので」

 

 

 紹介を受けて、魔術師団長はそのように答えた。

 意外と声は若い。見た目はかなりのご年配だけど。

 

 

 

 それぞれの挨拶が終わり、魔術師団長より魔物の動向の説明を受けて、いよいよイアン殿下が騎士団を率いて、国境を越えて入ってきている中型の魔物の討伐に向かう。

 数が多いため、何組かの編成を組んでパルバット山脈より国内に入り込もうとしている魔物達を順に討伐していくそうだ。

 

 

「こちら側から、山脈の国境付近より入ろうとする魔物達が見えます」

 

 

 一人の騎士より案内を受け、砦のバルコニーに出ると、今も魔物達と戦っている騎士や冒険者達の様子が見える。

 

 

「こんなに近いのですね……」

 

 

 私は思わず呟いた。 

 

 目視でもその様子が十分見える位置にあるこの砦やテントも、決して絶対安全とは言えないが。それでもここに待機しているのが一番邪魔にならなそうだ。

 

 

 

 それからは計画通り、現場の指揮はイアン殿下が取りながら討伐に向かい、この砦の中で総指揮を王太子殿下が執る。

 皆がそれぞれ忙しく動き回る中、やはり私とエリザベス様は浮いた存在となってしまった。

 

 どうしても付いていくと言ったエリザベス様は、先程の砦の一角から討伐の様子を見ている。

 

「凄いわ! さすがはイアン殿下! あっという間に中級魔物を倒していますわ!」

 

 勿論エリザベス様の視線はイアン殿下に釘付け。

 あなた、やっぱりイアン殿下の勇姿をただ見たかっただけでしょ。

 

 呆れながらその様子を見ていたけど、何もしないのも悪いと、私は厨房に向かった。

 観察用の砦として作られているが、ちゃんと快適に作られており、厨房も整っている。

 

 流石に今の状況では、料理人は雇えず、専ら騎士達が交代で食事を作っていると聞いた。

 

「大勢の分を作るとなるとシチューくらいしか思いつかないわね」

 

 私は本日の料理当番の人に代わりに作らせてほしいと言って、当番を代わってもらったのだ。

 ここにある物は何でも使っていいと言っていたし、野菜は裏庭に植えてあるものも使っていいらしい。

 

 

「ちょっと裏庭を見に行きますか」

 

 私はそう独り言を呟きながら、裏庭に向かう。

 着いた先には、キャベツやらじゃがいもやらトマトなどが作られていた。

 

「やだ! 本格的じゃない!」

 

 嬉しくなって、畑より野菜類を持ってきた籠に入れていく。

 

 すると、目の前を何やらモゾモゾと水風船のようなものが横切った。

 

 

「ん?」

 

 

 もう一度よく見ると、それはスライムで……。

 

 

「畑にスライムがいる……。どうしよう。

 放っておいても大丈夫なのかな……」

 

 

 でもよく見ると、そのスライムは、畑の野菜類を食べているではないか。

 

 

「うん、1匹だし、狩っても大丈夫だよね?」

 

 

 そう思い、魔法で水球を無詠唱でスライムに向かって放つ。

 

 しかし、水球はスライムの身体に弾かれてしまい、全く傷一つ付けられていない。

 それどころか、スライムは勢いよく私の方に向かってきてしまった。

 

 

「げっ!ヤバい!アイスカッター!」

 

 ビックリして、慌てて氷の刃をスライムに放つ。 

 スライムはスパッと半分に切れて、動かなくなった。

 

 

「び、びっくりした……。スライムって、動きが速いじゃないのよ」

 

 

 動かなくなったスライムを眺めながら、ようやく一息つく。

 

 

「その魔法は、いったい……?」

 

 

 その時、突然後ろから声を掛けられ、振り向くと、見たことも無い超絶美形の色白男性が、目を大きく見開いてこちらを見ているではないか。

 

 

 え? 誰?

 

 そんな事を考えている私に勢いよく近づいたと思ったら、いきなり両腕を掴まれ、勢いよく揺さぶられた。


「さっきの魔法は何なのですか!? 何故氷の刃が出てきたのです!?」

 

そして勢いよく超絶美形に問い詰められる。

 

 

「あ、あの……どちら様で?」

 

 

 そう聞いた私に、首を傾げ不思議そうにその美形が私を見る。

 

 

「何を言っているのです? 先程挨拶をしたではありませんか。

 ゼノ・ギアスですよ。魔術師団南地区団長の」

 

 

「はぁ~!? 嘘でしょ~!? こんなの詐欺レベルでしょ!?」 

 

 

 

 返答した美形に、思わずそう叫んだ私は悪くない。

 

 

 

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