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15.本来のダミアンとは

 

 サロンでは、エリザベス様と一緒という事で、また何か攻撃されるかと思いきや、辺境伯子息がいい緩衝材となり、あのエリザベス様を上手く持ち上げながら相手をしてくれている。

 

 なんていい子!

 王太子殿下より、よっぽどエリザベス様の扱いが上手だわ!

 

 この子は将来、絶対に大物になるわと感心しながら、時々相槌を打ち、何とかこの場を乗り切っていた。

 

 

 ん? ちょっと待って?

 これからもこんな感じなのかしら?

 殿下達が討伐に行っている間、このエリザベス様と二人で過ごすの?

 

 いやー!

 

 怒られても、魔物討伐に行った方が何倍もマシなんじゃない!?

 

 

 そんな事を悶々と考えていたら、殿下たちが戻って来た。

 どうやら辺境伯と無事話すことが出来たらしい。

 

「今日は、このまま休んで、明日から討伐に向かうことにした。

 君たちは、ここで休んでいてくれていい」

 

 そうイアン殿下が説明すると、エリザベス様がすかさず前に出て主張し始めた。

 

 

「わたくしも一緒に向かいますわ。

 心配で付いてきたのに、ここで待ってるだけだなんて有り得ませんもの。

 これでも火魔法は得意なんですの。

 魔物なんて、全て焼き尽くして差し上げますわ!」

 

 

 そう言い切ったエリザベス様は、とても自信満々だ。

 

 すごい。

 恋する乙女は、魔物なんて目もくれずに、イアン殿下の傍にいたいのね~。

 

 

 思わず拍手を贈ってしまいそうになるが、イアン殿下には全く通じなかった。

 

 

「邪魔はしない約束では?」

 

 

「うっ! ……じ、邪魔するつもりはありませんわ!」

 

 

 イアン殿下の突っ込みに、エリザベス様はたじろぎながらも食い下がっていた。

 

 見かねた王太子殿下が、仲裁に入る。

 

 

「まぁまぁ。エリザベス嬢は勿論、私の心配をしてくれているのだよね?

 なら、安心してくれ。

 私は現場といえど、総司令として少し離れた場所で待機しているから、危なくないんだよ?」

 

 

 王太子殿下がエリザベス様にそう言うと、

「いえ……あ、そ、そうですわね」 

 と、エリザベス様も何も言えなくなった。

 

 

「まぁでも名目上、王太子・王子妃妃教育として来ているから、取り敢えずは私と同じ場所で待機しておこうか。

 それならいいだろう? エリザベス嬢」

 

 

「兄上!」 

 

 

「勿論ですわ! ありがとうございます、ダミアン様!」

 

 

 王太子殿下の言葉に、イアン殿下は反対するも、エリザベス様はとても喜んでいた。

 

 イアン殿下は苦虫を噛み潰したような表情になっている。

 

 そりゃそうよね。

 足手まといを連れていくものだもの。

 

 

「じゃ、そういう事で。ファクソン伯爵令嬢もそのつもりで明日、準備しといてね」

 

 

 笑顔でそういう王太子殿下に、

「はい?」

 と首を傾げる。

 

 

「君もエリザベス嬢と共に、私と同じ場所まで来るんだよ?」

 

 王太子殿下の言葉に、ハッとした。

 

 そうか! そういえば王子妃教育としてって言ってたわ!

 

 そう思って、

「は、はい!」

 と、返答しながらもイアン殿下をチラリと見る。

 

 

 苦虫を噛み潰したような表情でこちらを見ているイアン殿下に、私が言ったんじゃないわよといった気持ちで、首を横に振る。

 

 

 イアン殿下は、大きな溜め息を吐いて頭を抱えていた。

 

 

 

 

 

 

「兄上」

 

 一旦夕食まで解散とした後、各自の部屋に戻る際に、イアンはダミアンを呼び止めた。

 

「どうした?」

 

「どうしたも無いでしょう? 何故彼女らの同行を許したのです?」

 

 そう言ってダミアンを軽く睨む。

 

「ハハ、そう睨むな。

 言ったろう? 名目上、王家の教育の一環として来ているんだから、何もしないでここに待機はマズイと思ったからだよ?」

 

「だからって!」

 

「珍しいね? イアンが人を心配しているだなんて。余程、婚約者殿を気に入っているみたいだ。

 でも、前はそんなに気にしてなかったのに、何故急に?」

 

  

「気に入ってなんか! ……ただ、女性を危険な場所に連れていくのは足手まといとなると言いたいのです!」

 

 ダミアンの言葉に、イアンは狼狽えながら反論する。

 

「足手まといか……。私も同じだな……。

 すまない、イアン。

 本来なら私が現場の指揮を取りながら討伐に向かわなければいけないのに、不甲斐ないばかりに、イアンに責務を負わせる羽目になってしまった」

 

 

「兄上……」

 

 

「母上の前では、何も言えないし、息すらしにくいんだ。

 こんな自分は、自分でも嫌だけど、幼い頃からの刷り込みは自分では直せない。

 優しい母を持つお前が羨ましいよ」

 

 

 悲しそうにそう話すダミアンに、イアンはこれ以上責める事など出来なかった。

 

 

「兄上。兄上はもっと自信を持っていいのです。本当は何でも出来るんだから。

 きっとここでは、本来の力が発揮されて、その事を周りの皆も気付くことになるでしょう」

 

 

 王妃が傍に居ない今、兄は、何者にも萎縮させられる事はない。

 本来なら、魔力に溢れており、真面目に剣術や勉学にも取り組んでいるのだ。

 きっと本当は自分よりも能力は高く、強いはず。

 

 本来の兄の事を、周りに知ってもらういい機会だとイアンは考えていた。

 

「買いかぶりすぎだよ。

 明日から大変になるが、絶対に無茶はしないでくれよ?

 お前に何かあったら、王妃が喜んでしまうからな。それは嫌だろう?」

 

 

 冗談っぽくそう話すダミアンは、本当に遠征に出てきてから、のびのびと過ごせている。

 その兄の姿を見ると、本当にあの王妃は害悪にしかならないなと感じた。

 

 

「ええ、何がなんでも無事に解決して、五体満足で戻りましょう。

 さぞ王妃様は悔しがることでしょうね」

 

 

 イアンがそう言ったあと、二人は顔を見合わせて笑った。




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