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泡沫少女  作者: INORI
7/12

六.月の記憶

「本当にごめんなさい!」

 朝、茜ちゃんに起こされ、まともな思考が出来るようになった瞬間、私は即座に土下座した。

 掛布団を体に巻き付け、顔にかかった髪も直さぬまま頭を枕に打ち付ける私を見て、茜ちゃんは動揺しつつ、

「え、何が?」

 と聞いてきる。そりゃそうか。人を起こしたらその人から土下座される経験なんてそうそうしないだろう。

 私は顔をあげ、茜ちゃんの顔色を伺いながら、

「昨日、布団に入ったらそのまま寝ちゃって…。えっと、今日泊まれる場所無いかもしれない、です…」

 と答える。

「あー…。まぁ大丈夫でしょ」

 私は結構深刻にとらえていたが、茜ちゃんはあっけらかんと言う。

「え、大丈夫なの?」

 あまり問題としていなそうな理由が気になって、私は聞いた。

 茜ちゃんは指を口に当てながら、

「だって、別にネットカフェとかでも寝れるだろうし」

 と言う。茜ちゃん、私、若い女の子だよ?

 実際にそういう事が起こる可能性は低いとしても、どうしても警戒してしまう。

 渋い表情で反論する私に対して、茜ちゃんは、

「でも、他に選択肢はあるの?流石に路上で寝るなんて事はしないでしょ?」

 と諭してくる。その通りすぎて何も言えない。そもそも、寝てしまった私が百パーセント悪いし。

「あ、カラオケとかで歌い明かすのもありか。私ちょっとやってみたかったんだよね、オールナイトカラオケ」

 と、目をきらきらとさせた茜ちゃんが続ける。

「あのぉ…茜ちゃん、まだ十六歳でしょ?…オールは駄目なんじゃないかなぁ…?」

「今の私って、法に縛られてるの?」

 一応は成人している大人として、高校生がオールするのはなんだか絵的にまずい気がしたので止めようとしたが、そう言われると自信が無い。

「私って、今は夢みたいなものなんでしょ?夢の中なら何しても良くない?人にも迷惑かけてないし」

 茜ちゃん、無敵モードだ。

 私は、無色透明な茜ちゃんがテンテンテテンテンテンテテンテンとゲーミングに光り輝いているのを幻視しながら、他の案を考える。

「…分かった。お昼頃までに宿が見つからなかったら、そうする」

 考えたが、結局何も浮かばなかった。

 折衷案をあげてから、私は枕元に落ちていたスマホを立ち上げる。

「ていうか、今何時…え!?」

 十一時四十分。

 お昼頃だった。

 カーテン越しに刺す窓枠の陰が、濃く、短かった。


 そもそも、茜ちゃんが起こしてくれたのはチェックアウトの時間が近づいていたからだったようだ。文句を言える立場ではないけど、もうちょっとだけ早く起こして欲しかった。

 宿を探す時間なんてなく、荷物をまとめて忘れ物が無いか確認したらぎりぎりの時間になっていた私は今、肩を落としながら市街地を歩いている。

 平日だからか、人通りはあまり多くなく、歩きやすい。

 地元では見た事の無い歩道タイルに新鮮さを感じながら、高いビルが並ぶ街道を進む。

 快晴と言っていいような天気で、太陽が頭のてっぺんをじりじりと焦がし、私のうなじから背中へ汗が滴った。

「ほら、元気出しなって。私は起きててあげるから」

 茜ちゃんが私の背中にばしゃばしゃと手を当てながら励ましてくる。どうやら茜ちゃんは、私がカラオケボックスで夜を明かすのを嫌がっていると思っているようだが、私が落ち込んでいる理由はそうじゃない。いや、それもあるけど。それよりも、だ。

 余りにも朝の時間が短かった。

 背負ったリュックサックの中身は整理されておらず膨らんでいるし、私本人は、鏡を見て気が付いていながらも整えられなかった、中段から跳ねている寝癖を必死に手で撫で付けている。化粧なんて当然できていないし、寝起きで顔がむくんでて丸い。

 私の事を誰かが見ている訳では無いけれど、なんだか恥ずかしかった。

「おまけにお腹も空いてるし…」

 歯磨きはしたという事実だけが、私に人としての最低限の矜持を保証していた。

「お腹空いたの?確かに朝食べてないもんねー」

 茜ちゃんは、気になる事があったらぴちゃぴちゃと走って確認してくる。だから、実際は茜ちゃんの方が私よりもはるかにカロリーを消費しているはずなのに、彼女に飢えている素振りは無い。

 なんだか釈然としない気持ちになりながら、私は食堂を探した。


「…」

「…」

 今、私は、茜ちゃんとフグが、ガラス越しに見つめ合っているのを見ている。

 五分間、ずっと。

 ねえ余りにも絵が地味なんだけど…。

 それでも一応写真は撮った私がいい加減しびれを切らしかけたまさにその瞬間、ふいにフグが興味を無くしたように泳ぎ去って行った。

「よし!」

 尾鰭を振って何処かへ向かうフグに向かって茜ちゃんがガッツポーズをする。暗いし透けてるし揺らめいているからよく分からないけど、多分ドヤ顔もしている。

 なんだか勝った気でいる茜ちゃんには申し訳ないが、そもそもフグには茜ちゃんが見えていないはずなので、勝負として成り立っていない。

 …あれ、でもさっきのフグ、茜ちゃんの事を追いかけていたような…?

 考えても分かる筈も無いので、私は何も見なかった事にして茜ちゃんに話しかける。

「お魚って、良く見ると可愛いね」

「え、そうかな?」

 さっきまでにらめっこしてたじゃん!

 てっきり可愛いと思っていると思って振ったのに、茜ちゃんはまるで『祈里、これが可愛いの?』とでも言いたそうな声で反応した。

「ほら、良く見てよ。あのお魚なんか、すっごく唇分厚くて、鰭とかひらひらさせて、お腹もぷっくりしてて、「おいしそう?」そう、おいしそ…じゃなくて!」

 あまりにも簡単に釣られてしまった自分自身に愕然としていると、私がよほど間抜けな顔をしているのか、茜ちゃんはけらけらと笑っていた。

 手で腿を叩くしぐさが妙に悔しい。

 私、茜ちゃんに対して何かしちゃったのかなと思う程、この旅を始めてから茜ちゃんにからかわれてばかりだ。…あぁ、出会い頭のあれのせいかな…。

 だとしたらもう完全に私が悪いので、ただむすっとする事しか出来ない。

「…茜ちゃん、それ、さっきの子の真似?」

「フグじゃないよ!」


 せっかくの旅行だというのに、空腹に耐えかねて昼食をハンバーガーチェーンで済ませてしまった私と茜ちゃんは、その時に近くの観光スポットを探し、水族館を訪れていた。

 小学校を卒業して以来縁も無く、水族館には久しぶりに訪れたので、人がいないのは平日だからなのか水族館という施設のポテンシャルなのかは判然としないが、そのおかげで私達は悠々自適に見て回ることが出来ている。

 魚に緊張を与えないようにと暗く設定されている照明によって、まるで私も水の中に入って、魚達と空間を共有している気分になれた。

「へえ、タコって、ビンの中に閉じ込められても自力で脱出できるんだ」

「…」

 伽藍とした水族館の緩やかなカーブの途中に、あまり大きくない私の声が響き、独り言として消えていった。

 誰もいないけどちょっと恥ずかしくて、私は茜ちゃんがいるだろう場所を向く。すると、水槽の中でふよふよと、泳いでいるのか漂っているのかいまいち分からないクラゲ達が紫色の光に照らされていて、透明度の高い水の中では宙に浮いているみたいになっているのが見えた。

 視線を下ろすと、茜ちゃんが、クラゲの生態についての説明文を齧りつくように読んでいる。

 私の話に返事をしてくれなかった事に対して悲しく思う気持ちも少しはあるけれど、茜ちゃんがやりたいように振舞えているならそれでもいいかと、私も目の前の水槽に向き直って、タコについての説明文を眺めていった。

 それにしても、改めてこのタコと言う生き物は不思議だ。

 説明文中では、タコは巻貝の一種が進化した事によって生まれたと書いてあるけど、貝要素が全然見つからない。と言うか、殻を持つ事が貝としてのアイデンティティじゃないの?

 自分の殻を物理的に破った何千万年前のタコに思いを馳せながら、目の前の水槽を覗き込む。

 ところで、肝心のタコはどこにいるの?


 小一時間も見ていると、二人で来たはずだけど、茜ちゃんがあまりにも自分の世界に入り切っちゃってもうどこに行ったかも分からないので、実質一人客の様になってしまった。…料金的には一人分しか払ってないので、間違ってはいないのか。

『デートの時はちゃんと二人で回るんだぞー』と、心の中で茜ちゃんに注意しながら、私はこの水族館のメインであろう大水槽を眺める。

 大小様々な魚達が、時には単体で、時には群れを作って、私の前を通り過ぎていく。

 水槽の上から刺す光が、水面で乱雑に屈折し、床に網を作り、底の白い岩の上で美しくゆらゆら伸びたり縮んだりしていた。

 奥では鰯の群れがいきなり方向転換し、手前ではエイがガラスに沿って泳ぎ、笑った顔の様な腹を見せる。タイが堂々と泳いでいる下では、ウツボが岩陰から目を光らせている。

 最近よく耳に届くようになった「多様性」という言葉の意味を、私は今ここで初めて理解した気がした。

 見た目が違う。泳ぎ方が違う。生き方が違う。

 でも一緒に生きている。

 お互いが適度に不干渉な大水槽の中は、住みやすそうだと思った。

 私はカメラを向け、そんな世界の写真を撮る。

 魚達は縦横無心に動き回っているのでピントを合わせるのが大変だったけど、一秒だって同じ時が無い大水槽の中を撮影することはいつまで経っても飽きなかった。


 昼食の時に食に対するプライドは木端微塵に砕かれてしまったので、夕食もチェーン店となった。

 私の地元にも展開されているこのイタリアンレストランは、安さと旨さによって学生から絶大な支持を集めている。

 私はメニューも碌に見ず、普段から注文している料理を数品頼み、

「茜ちゃんは水族館で何見てたの?」

 と話しかける。

 カメラの充電が怪しくなったので撮影を切り上げ、出口付近に設置されているお土産コーナーに向かうと既に茜ちゃんが待っていたので、私は茜ちゃんが水族館でどのように過ごしたのかを知らない。

 この子がどんな事に興味を持つのかに興味が湧いたので聞いてみると、茜ちゃんは手を顔に当てながら「えーと、」と視線を上にあげる。

「まずエビを見て、それからカニ…あ、なんかでっかい白いダンゴムシみたいなやつも見て…」

 わぁ、全然魚見てない。

「あと、ヒトデと、クラゲと、ナマコも見た」

 と続ける茜ちゃんに最早誇らしさすら感じる。

「祈里は?何見てたの?」

「私は、」

 と、そこまで言って私は店内を見渡す。

 夕食時であるため店内は繁盛しており、隣の客の会話すらもどこからか聞こえる笑い声によってはっきりしない程だ。

 その騒がしさに寧ろほっとしながら、

「ずっと大水槽で写真を撮ってたよ」

 と続けた。

 それからは、あの魚が可愛かったとか、甲殻類は関節が格好いいとか、明日は遊園地に行って観覧車に乗りたいとか、流石に店員が来た時は(私だけ)黙ったけれど、二人で話し合った。

 食べ慣れたカルボナーラの最後の一口は、もうとっくに冷めてしまっていた。


 午後も検索はしていたのだが、ついぞ宿が見つからなかったので、私は渋々と、茜ちゃんは揚々とカラオケボックスに向かう。

 私達が話に夢中になっている間、外では夕立でも降ったのか、土と埃の湿った臭いと、粘性を持った重たい空気が街に積もっていた。

 車のブレーキライトが規則的に茜ちゃんの横顔を赤く舐めていくのを横目に信号待ちをする。

 排気口から香るラーメンの匂い、モーターの駆動音、街灯りに消え入りそうな朧月。

 道の名前も知らないけれど、全ての景色を知っていた。

 ここは特別な場所じゃない。

 ここは誰とも知れない人達の日常だ。

 世界が飽和している。そんな感覚に、私はなんだかほっとした。

 私は多分、主人公ではない。私は誰かの風景で、脇役で。まるであの月だ。

 私は特別な人間ではない。

 代々受け継いできたものなんてないし、誰かに選ばれた事もない。

 私は特別な人間ではない。

 でも多分それは、皆そうなんだ。

 例えば道の向こうで折り畳み傘を畳みながら居酒屋に入った男性も、ドアを開けてお客さんを降ろすタクシードライバーも。

 私の隣で、炭酸少女となっている茜ちゃんでさえ。

 主人公ではない。

 どこにでもありふれた景色に過ぎないんだ。

 ピッポ、ピッポ、と目の前の信号が青に変わる。

 茜ちゃんがフライング気味に飛び出すのを見ながら、私も白線を踏んでいく。

 交差点を渡り切った先に、大きめの水溜りがあった。

 だったらなんだ。

 茜ちゃんは大袈裟に避けたけれど、私は口角を上げながら、水溜りを踏んずけた。


「祈里、そのスニーカー、撥水機能とか無いよね?」

「はい…」

「水溜り、見えなかったの?」

「いえ…」

「じゃなんで突っ込んだの!?」

「なんか、行けると思って…」

 はぁぁ、と、大きな溜め息をつきながら、茜ちゃんはソファに体を預けた。

 カラオケボックスの中は薄暗いからか、茜ちゃんの表情が読みにくいけど、絶対うんざりした顔してる。私には分かる。

 しおしおとしながら靴と靴下を脱いだ私は、ハンカチで足を軽くぬぐってからソファに座る。

 カラオケボックスの中は、モスグリーンの落ち着いた壁紙に、真っ黒の四角いテーブル、その上にはメニュー表とタブレット端末がある、いたって普通の様相だった。

 カラオケボックスはどこも変わらないんだな、と、部屋を見渡して思う。

「え、祈里、もう寝るの!?」

 コの字型に曲がったソファに足を伸ばして寝転がると、茜ちゃんが残念そうな声を上げる。

「流石にまだ寝ないけど、疲れたから横になりたかったの」

 そう答えると茜ちゃんは肩を下ろし、

「せっかくだし何か歌おうよ」

 と言った。確かに、カラオケに来て一曲も歌わないのは流石に勿体ないか。

「いいよ、茜ちゃんは何歌うの?」

「えと…」

 私が聞くと、茜ちゃんはらしくもなく言い淀む。

 変な事を聞いたつもりもないので、私が首を捻っていると、茜ちゃんは「あるか分かんないんだけど、」と前置きしながら、私の知らない曲の名前を挙げた。

 検索をかけても出てこなかった。

「やっぱそっかぁ」

 と、残念そうな声を出した後、「じゃあ、」と、今度はアーティストの名前を挙げた。なんだか覚えにくい、文法用語みたいな名前のアーティストはぎりぎり検索に引っかかり、茜ちゃんは、

「うわ、あった!」

 と、嬉しそうに驚いた。よく知らない曲だけど、茜ちゃんは歌いたいのかなと思って予約を入れる。一曲目という事もあって、すぐにイントロが流れ始めた。

「え、祈里入れちゃったの!?」

 ピアノとギターの伴奏を聞いた茜ちゃんが、焦った様にこっちを見てくる。

「え、ダメだった?」

「いや、ダメじゃないけど、私この歌上手くないし、てかそもそもこの曲暗いし、え、待って、」

 茜ちゃんはびちゃびちゃバチバチと騒いでいたが、私としては好きなら歌えばいいじゃんって感じなので、放っておく。

 イントロも佳境に入った様で、茜ちゃんは目の前で手を組みながら歌い出す。

『死んだら解決するのなら、さっさと死んでしまえよ。

 それでは解決しないから、今日も醜く生きてんだろ。

 昨日の傷も癒えないまま、新しい痛みとこんにちは。

 繰り返したらいつの間にか、大人と呼ばれる様になった。

 分からないことが嫌いだから、必死に周りを見渡して。

 自分で導いた正しさで、別の正しさを差別する。

 こんな人に成りたくなかった。それだけが胎に残ってる。

 秋の風が耳元で荒ぶ。君の声が遠く鳴り響いてる。

 寒さが、僕と溶け合って。

 怖さが、僕の背中を押してくれた。

 弱さが、まだ僕の型を留めて。

 眩しさに、また僕は顔を背けた。

 君の見ていた景色が、僕には分からない。』

「ね、私上手くないし、暗いでしょ!」

 間奏が流れ出すと茜ちゃんがこちらを向きながら言ってくる。

 確かに暗いけど、暗い曲なんていっぱいあるんだし、特に気にする事ないと思う。

 後、私はこの曲聞いたこと無いから上手いかどうかは分からない。音程バーは延々灰色のままだったし。

 茜ちゃんが頑張って歌っていて、格好いいなーと見てただけなので、私は、

「いい感じー、あ、ほら、そろそろ間奏明けそうだよ」

 と無責任に言いながらモニターを指差す。

「あぁ!」

 と声を上げながら、茜ちゃんがまた歌い出す。

『死んでも解決しなくても、死んでしまいたいと君が言う。

 そんな君に送る言葉が、僕には見つけられなかった。

「頑張れ」なんて無責任を、僕は頭から吐き出して。

 君の眼が見せた絶望が、僕の脳裏にこびり付いた。

 結局君はいなくなって、僕の居場所はここじゃなくなって。

 電気も付けず一人座って、酒を飲みながら宵を明かした。

 こんな人に成りたくなかった。それだけが胎に残ってる。

 冬の風が股下を過ぎる。君の声は遠く掠れ消えてく。

 寒さが、傷跡塞いで。

 怖さが、何もかも消してしまった。

 弱さが、また僕を肯定して。

 眩しさを、まだ僕は探してる。

 君の見ていた景色が、僕にも見えるかな。


 布団に入るたび、あの日のことを思い出す。

「僕も一緒に死んであげる」

 本当はそう言いたかった。


 寒さが、尾を引いて去って。

 怖さが、遠く影を落とした。

 弱さが、夕暮れの空を見上げて。

 眩しさを、まだ僕は探してる。

 君の見ていた景色が、朱に染まっていく。』

 はぁ、はぁと息を切らしながらなんとか歌い切った茜ちゃんに、私は「いえーい」と拍手をする。

『採点できませんでした』と表示された画面を、採点機能を切って止める。

 人が気持ちよく歌っているのに、やれ何点だなんて、まったく大きなお世話だ。

「茜ちゃん、とっても良かったよ!」

 私がそう言うと、茜ちゃんはきっ、と音がしそうな程勢い良く私の方に顔を向け、タブレット端末を指差す。ごぽごぽと肩から泡を吹かせ、満身創痍な様子だったけど、不撓不屈の『お前も歌え』という意思を感じたので私は両手を挙げて適当に有名な曲を入れた。

 軽快なギターソロが流れ始め、私はマイクを口元に近づけ、歌い始める。

 たまにテレビのコマーシャルでも流れている曲なので茜ちゃんも知っていたのか、体を左右に振りながらリズムをとっていた。

「…ふぅ」

「…えっと、」

 私が歌い終わると、茜ちゃんが手を口元に当てながら、まるで宙に拡がった辞書から懸命に言葉を探すように首をあちこちに向ける。

「…祈里って、音痴だったの!?」

「ぐふぅ」

 茜ちゃん、必死に言葉を選んでそれ?

 まぁ、私が音痴である事は私も知っていたので、てれてれと頬を掻きながらソファに座る。

 歌なんて、楽しく歌えればそれでいいじゃないか。別にお金を貰っている訳でもないんだし。音痴でも好きに歌ったらいいじゃん。

 …負け惜しみじゃないもん!


 その後も私が下手くそな歌を披露したからか、茜ちゃんもどこか吹っ切れた様子で叫ぶかの如く歌うようになった。

 急速にカロリーが消費されていくのを感じながら、私も声を張り上げる。深夜のテンション感も相まって、すごく楽しかった。

 知っている曲が減ってくれば同じ曲を歌った。タンバリンもマラカスも置いていなかったから手拍子をとった。眠気も疲れもあったけれど、明日の事なんか考えなかった。

 このまま朝を迎えたかったけど、五時間も歌いっぱなしの喉に限界が来る。

 痛い。掠れる。声が割れる。痛い。

 ドリンクバーで貰ったリンゴジュースが、がらがらになった喉に染みた。

「゛もうむ゛り」

 茜ちゃんが聞き取れるか不安だったので、私は自分の喉を指差しながら両手で大きくバツを作る。

 大袈裟なボディランゲージが伝わったのか、茜ちゃんが「おっけい」と枯れる様子の無い声で答えた。

 茜ちゃんは自力で曲の選択が出来ないので、茜ちゃんと相談しながら機械が許す限り予約を入れる。

 ボカロ、アニソン、たまに有名な曲が混じった、茜ちゃん欲張りセットを作り、私はソファに寝転がる。

 ソファとしては普通の幅なんだろうけど、仰向けになると右腕が落ちそうだったので、体を横に向けた。曲げた足はいつの間にか靴を脱いでいて、ふくらはぎが疲れからかじんじんと傷んでいた。

 傍らに置いてあったクッションをひっつかんで枕にし、目を瞑る。

 茜ちゃんの歌は、子守歌にしてはbpmが高かったけど不思議とリラックスできた。

 旅行を始めて二日。たった二日だ。それでも、私には今までにない充足感があった。

 何か今掴めそうな気がする。

 茜ちゃんが知らない人の知らない曲を元気に歌っているのを遠くに聞きながら、私はもぞりと体を動かす。服の皺が腋に食い込んだ。

 旅行の始め、私が茜ちゃんについてきたのは、茜ちゃんよりちょっとだけ大人の人として、茜ちゃんの友達として、そばにいてあげたいと思ったから。ただそれだけ。

 そんな訳なかった。

 心的世界に住む子達は、最後には晴れやかに成長していく。

『ありがとうございました。おかげで解決できました。助かりました』って。

 私はなんにもしてないのに。

 私はなんにも知らないのに。

 勝手に成長して、いつも私を置いていく。私だけが、子供のままで取り残されていく。

 茜ちゃんに「どうやったら戻れるか知っているか」と聞かれた時、格好を付けて「答えられない」なんて言ったが、本当はただ知らなかっただけだ。

 あの子達が何を見て、何を思って、大人になったのか。

 私はその全てを知らない。

 だから、今度こそは見てみたかった。この子達が成長していく様を、ちゃんと見届けたかった。

 そして、私が、私自身が、どうすれば大人になれるのかを知りたかった。

 だから私は、茜ちゃんについてきた。恥も外聞もなく、年下の女の子の真似ができるように、強引に。人に迷惑をかけないという、私の原則を破ってまで。

 そんな、自分本位な願いのためだ。

 でも、そのおかげで、何かが掴めそうな気がする。

 夢とは何か、なんだかその端を、もう持っている気がする。



『わたしのしょうらいのゆめ。いざわいのり。わたしのしょうらいのゆめは、ケーキやさんになることです』

 私が初めて持った将来の夢は確かこれだ。

 ケーキ屋さん、パティシエになること。

 実家がちょっとだけ裕福だったこともあり、私は保育園に通っていた頃から、様々な習い事をさせてもらえていた。結局続けられたのはピアノだけだったけど。

 ある冬の事だ。

 寒くて、雪が冷たくて、手袋を忘れた指が赤くなっていたのを覚えている。

 私はピアノの練習で失敗して、酷く落ち込んでいた。

 今では思い出せない程些細な事だったと思うけど、とても暗い顔をしていた私を母が見かねて、ケーキ屋さんに連れて行ってもらった。

 何度か来たことのあるケーキ屋さんで、店内は温かく、小麦粉とバターの香ばしい香りが広がっていた。

 私は、年相応の子供みたいにきゃいきゃいとはしゃぎながら、「あれ食べたい」「これ食べたい」と母にねだった。

 母が苦笑いしながら「二つまでにしなさい」と言うものだから、私は顎に手なんか当てちゃったりしながら真剣に悩んで、ケーキを二つ選んだ。

 本当はクッキーも食べたかったけど、諦めた。

 母が会計を済ませると、店員がカウンターから出てきて、目線を私とあわせるようにしゃがみこみ、

「はい、ピアノの練習よく頑張ったね」

 と言いながら、クッキーの入った小包をくれた。

 手にとったクッキーはまだほんのり暖かくて、指先が溶けてしまいそうだった。

 私は嬉しくて嬉しくて、何度もありがとうと言った。

 何のことは無い。そのケーキ屋さんは、誕生月に商品を買うと数枚のクッキーを付けてくれる。

 ただそれだけの事だった。

 ただそれだけの事だったけど、当時の私は、こんなにも人を幸せにできる仕事があるのかと衝撃を受けたものだ。


『将来の夢。伊澤祈里。私の将来の夢は、写真家になって、世界中の人を笑顔にするような写真をとることです』

 私の小学校の卒業文集の書き出しはこうだった。

 小学校五年生の夏休み、父の実家に帰省した時、父の弟である叔父が私にカメラをくれた。

 叔父は結婚こそしていないが、キャンプ、ゴルフ、ドライブ、サーフィンと言ったアウトドアな物から、読書、音楽鑑賞、絵、陶芸などのインドアな物まで幅広い趣味を持っており、豊かな人生を送っている。

 カメラもその中の一つであり、なんとなく興味を示した私に叔父は、新調した事で古くなったカメラを一台、譲ってくれた。

 スマホとは違う、正真正銘のカメラにテンションが上がった私は、あたりかまわず写真を撮りまくった。そのせいか、その頃の家族アルバムを見返してみると、私が写っていないものも多い。

「はい、チーズ!」

 私がそう言ってカメラを向けると、父も、母も、祖父も、祖母も、もちろん叔父も、当時飼われていた猫でさえ、私の方を向いて笑顔になる。

 暑い暑いとうだりながら、けだるげに寝転がっていたって、ひとたびカメラを向ければ笑顔になってピースサインをする。

 私にはそれがなんだか魔法のように思えた。

 勿論魔法なんかじゃないと、もう子供ではなかった私はちゃんと理解できていたけれど、写真家とは、周りの皆を笑顔にする人の事なんだと、まだ子供の域を出ない私は思っていた。

 それに加え、周りの大人達はこぞって「祈里ちゃんは写真を撮るのが上手い」と褒めてくれていたものだからますます増長して、写真家になれる、なりたいと思っていたのだろう。

 初心者を否定しない事、それが大人であるための義務なのだと私はまだ知らなかったので、長い間その事を鵜呑みにして、友達や先生に写真を見せつけたりしていたものだ。

 …これは黒歴史だ。思い出しちゃったぁ…。


『将来の夢。伊澤祈里。私は将来、塾や学校の教師になって、私がしてもらったように、未来の子供達にたくさんの事を教えてあげたいと思う』

 中学生になった私は、親の意向もあり塾に通い始めた。

 元々勉強があまり苦では無かった私は学校の成績も悪くなかったので、親としては私を進学校に行かせたかったのだと思う。

 塾に通い始めた当初は、土曜日にも授業がある事をかなり負担に感じていた。

 部活動やピアノの講習も重なった日なんかは、平日よりも忙しいと思える程だった。

 勉強内容としても、学校で習う範囲よりも少し発展的なものを扱っており、宿題を解ききることが出来ない事も多かった私は何度も補習を受けた。補習を受けるメンバーは大体いつも固定だった。

 ただ、そんな日々にも二年生の夏休みが終わる頃にはだんだんと慣れてきて、その年の冬休み講習なんかは補習無しで乗り切れて、その辺りから私は勉強が楽しいと明確に思えるようになっていった。

 勉強というものに対して肯定的になっていた私は自然と、将来は教師になりたいと考えるようになった。

 今にして思えば、その頃の私がイメージできる職業なんてものは、教師の他には市役所の受付とかバスの運転手とかスーパーの店長とか、ごく少ないものだったというのも影響していただろう。

 ただ、この教師になるという夢を、私は二度諦めている。

 一度目は、高校受験に失敗した時。

 第一志望であった高校に行って、私の番号だけが無い看板を母と一緒に見たあの時。

 歓声を挙げる男の子の隣で、何度も何度も視線を滑らせた。

 何度見たって私の番号は無くて、目の前が本当に真っ暗になって、気が付いたら私は母に抱かれて泣いていた。

 人目も憚らず、嗚咽をあげながら泣いていた。

 合格した人達が、書類を受け取るために列を作っているのを眺めながら、邪魔にならないように帰ったあの時。

 私は、教師にはなれないと思った。

 そしてその日初めて、塾に行きたくないと心から思った。

 今まで三年間、私に勉強を教えてくれた先生達に、どんな顔をして会えばいいのか分からなかった。

 それでも結果を報告するために、私は塾に向かった。普段は自転車で行っていたのに、その日だけは歩いて行った。

 私の赤い目尻を見て悟ったのか、先生達は神妙な面持ちで私の報告を聞いていた。

 ある先生は大袈裟に、またある先生は淡白に、私の事を激励してくれた。

 翌日、次の入試に備えるため、私は再び塾に向かった。

 教室の生徒は半分程度になっていて、いつも一緒に補習を受けていた子はいなかった。

 なんとなく寂しさを覚えながら席に座っていると、時間となり先生が入ってきた。

「起立、礼」といつもの挨拶を終えると、先生がいきなりこう言った。

「いいかい、過去は変えられない。でも、過去は変えられる」

 この人は何を言っているんだと、クラスの皆が思った。

 先生は、怪訝そうにしている私達を見渡して満足そうにしながら続けた。

「勿論、過去に起こった出来事は変えられない。少なくとも物理法則がある内は。でも、過去に起こった出来事、その価値はいくらでも変えることが出来るんだ。皆は今回、思うような結果は得られなかったかもしれないけれど、この事実の価値を決めるのは未来の君たちだ。だから、将来の君たちが、『あぁ、こうしておいて良かったな』って思える今にするために、もうちょっとだけ頑張ろうか」

 半分放心状態であったその時の私には、何を言っているのかはっきりと理解できた訳では無いけれど、『過去は変えられる』という発言の意図はなんとなく分かった。

 そして、漠然とだけど救われた気がした。

 私は間違えてしまったのではなく、そういう過程を踏んだだけだと思えるようになった。

 二回目の入試に無事合格する事ができた私は、やっぱり教師になりたいと思った。


「んー、将来の夢かー…。特には無いかなぁ。大学で色々経験して、そこから決めたいな」

 高校の卒業式の日、私は友人に向かってそう言った。

 私は大学入試にも失敗した。

 不思議と、あまり悲しくは無かった。

 涙は出たけれど、なんで泣いているのか分からなかった。

 一度経験していたからか、受験が終わった瞬間から『落ちた』と、漠然と感じる事が出来ていた。

 教師になりたいと、もう思っていなかった。

 中学生の時は、教師になるという夢を諦めた時、明確な喪失感があった。

 だが今はもう、悲しいとすら思えない。

 高校に入って部活動に励んで、放課後は喫茶店で友達とコーヒーを飲んだ。

 そんな事をしているうちに、私は『どうやら世界は広いらしい』と知ってしまった。

 私よりすごい人はいっぱいいるって、その事は幼い頃から知っていたけれど、そうじゃない人もいっぱいいるって、そう思えてしまった。

 その人も結婚して、仕事をして、精一杯生きているって、思い知ってしまった。

 この世界は優しいと、分かってしまった。

 ピンク色のスチームが枠をなぞるように、霞がかって綺麗だった視界が、クリアに色褪せた。

 水槽の奥から覗くようにしか捉えられなかった色々な人の人生が、マネキンのように明瞭な線を持って動き出した。

 それでも、少なくともその時は、私の生活は特に変わらなかった。

 楽しさも嫌悪感も無く、ただ義務として勉強を続けた。勉強を楽しいと思えたのは私の才覚ではなく、かつての先生達の努力だった。

 でも勉強は続けた。お金を払ってくれている親には報いなければならないと思った。

 デスクライトの根本に、埃と消しゴムのカスと折れたシャープペンシルの芯が溜まっているのを眺めながら過去問を解いた。

 全然解けないのに、全然焦っていない私自身が気持ち悪かった。

 付箋とマーカーばかりが増えて分かりにくくなった参考書を開きながら窓の外に降る雪を見た。

 暗い空、電灯に照らされ、風に揺蕩って舞う雪はまるで群れた蝿のようだった。

「勉強中、足が冷えないように」と母が買ってきてくれたブランケットを抱きながら、椅子の上で単語帳を眺めた。

 書いた方が覚えられると知っていたけど、手を動かしたくなかった。

 将来の夢という、私の玉座が空いている事に、後ろ髪だけが気付いていた。

 入試の前日は驚く程良く眠れた。

 当日、自分の座席に座り、いつの間にか癖になったペン回しを一度した。

 前方に重心が乗ったシャープペンシルが、かじかんだ指先に当たり落ちて折れた。

 私は大学入試に失敗した。

 不思議と、あまり悲しくは無かった。

 教師になりたい。

 そんな夢は疾うに弾けていた。

 それは、受験に落ちたからではなかった。

 夢を諦めたのは確かだけど、この気持ちを挫折と呼んでいいのかは、今でも分からない。


 大学生になってしばらく経つが、やはり夢は見つからなかった。

 必要な単位の分しか授業は取らなかったし、サークルも、見学に行っただけで入りはしなかった。

 勉強への好奇心はちょっとだけ戻ってきたけれど、学者として生きていけるとは到底思えない。

 結局、漫然と続けてきた写真だけを趣味に、街をぶらぶらと撮って回っている。

 撮りたいものが見当たらないのに、惰性的にシャッターを切っている。

 教師になりたいという夢が腐り枯れ落ちてから、私にとっての、たった一つの将来の夢は、ずっと空席のままだ。

 …ん?

 微妙に空調の効いていないカラオケボックスの中で、私は首元に垂れた汗を拭う。

 神社の裏に行ってみたいと言った茜ちゃんの透明な袖を思い出す。

 寝苦しさから、私は薄く目を開ける。曲が流れている液晶だけが明るくて、昼間に訪れた水族館の様だった。

 喉の違和感が抜けなくて、私はとっくにぬるくなってしまったリンゴジュースを煽る。

 顔を襖に突っ込んでいる茜ちゃんの絵が浮かぶ。

 茜ちゃんの歌う曲は、ラストのサビの前の、ギターソロのパートだったようで、駆け抜けるような音色が部屋に響いている。

 川沿いで聞こえた一節が、私の頭の中でぐるぐると回る。

 彼はどうしてギターの練習をしていたのだろう。

 自分の夢のためだろうか。

 夢なんて、脆く儚く、散ってしまうものなのに。

 私の教師になるという夢と同じように。

 …あれ?

 そういえば、なんで私、写真家になるという夢を捨てたんだっけ。

 自分には才能が無いって分かったから?いや、それだったらなんで今も続けてるんだってなるか。

 将来が不安だから?私は写真家として食べてはいけないかもしれないけど、副業としてとかなら不可能ではないよね。

 パティシエだってそうだ。

 なんで私はパティシエになるって夢を捨てたんだっけ。

『わたしのしょうらいのゆめは、ケーキやさんになることです』

『私の将来の夢は、写真家になって、世界中の人を笑顔にするような写真をとることです』

『私は将来、塾や学校の教師になって、私がしてもらったように、未来の子供達にたくさんの事を教えてあげたいと思う』

 なんで、私の夢はころころ変わってるんだろう。

 その時その時で興味があるものが違うからか。

 じゃあなんで、新しい夢を語る時に、前の夢を思い出しちゃいけないんだろう。

 どうして夢を語る時って、『たった一つの』将来なんだろう。

 川沿いの彼は、どんな気持ちでギターの練習をしていたんだろう。

「あぁ、なんだ。そんなものか」

 私は寝息と間違えそうな程の小声で、そうつぶやく。

「AHH―――!!」

 と叫んでいる茜ちゃんには、到底聞こえないだろう。私ですら、自分の声が聞こえなかったのだから。

『夢追い人』。

 私は『夢追い人』だ。やっと分かった。

 歩き疲れて足は痛いし、歌い疲れて喉も痛いし、考え疲れて頭まで痛い。

 だけど久しぶりに心は清涼で、今から眠る事に抵抗を感じない。罪悪感を感じない。

 脱力するまま、落ちる瞼に任せて、私は眠りについた。

 夢の中で、私はギターを弾いていた。



 prrrr…

 突然鳴り出した電話の音に、何事かと私は跳ね起きる。

 よく状況も理解しないまま急いで壁にかかった受話器を取り上げると、店員さんが退出の時間が近づいていると教えてくれた。

「もうちょっと早く起こしてよお…」

 退出の旨を告げ、電話を切った後、茜ちゃんに対してそう言いながら振り返る。

「あれ?」



 茜ちゃんが、いない。

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