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第3話 騙し騙され

—1—


 それから私たちの騙し合いの日々が始まった。

 あるときは部室である視聴覚室で。


長窪ながくぼ、外見てみろ! ヤバいぞ! UFOだ!」


 興奮した様子で窓の外を指差す郡山先輩。

 騙し合いと言えばもはや定番のそれだが、無視するのも可哀想なのでわざと引っ掛かることにした。


 でも、願い事の件がある以上ただでという訳にはいかない。

 私は先輩が座っていた椅子にある物を仕込むことにした。


「えっ、どこですか?」


 窓際に寄り、先輩の指の先を見る。


「あっ、よく見たら飛行機だったわ」


「むっ、また騙したんですか?」


「騙される方が悪いんだよ。俺たちはそういう勝負をしてるんだからさ」


 楽しそうに笑う先輩が何の疑いもなく、元いた席に座った。

 そこで私が先輩を驚かすべく大きな声を出す。


「あっ、先輩! さっきそこの席に大きな蜘蛛が死んでましたよ!」


「うっ、マジか! 最悪。そういうことは座る前に教えてくれよ」


 私の渾身の演技にすっかり騙されている郡山先輩。

 ばっと立ち上がり、お尻を手で払う。

 すると、おもちゃの蜘蛛が地面に落ちた。


「うお!?」


 郡山先輩はそれを見て再び驚きの声を上げた。

 私はその様子がおかしくておかしくて、お腹を抱えて笑っていた。


「やりやがったな長窪。悔しいけど今のは完璧に引っ掛かったわ。っておい、そんなに笑うなって」


 いつまでも笑っていた私のことが気に入らなかったのか、郡山先輩が私の肩を指先で優しくつついてきた。


 あー、楽しい。もう毎日が楽しくて楽しくて仕方がない。

 こんな日がいつまでも続けばいいのにな。


 いつからか私はそんなことを思うようになっていた。

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