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ゆきの彼方  作者: 水野渚
第1章
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第7話「宝物 (前編)」



ごぉぉぉぉぉぉお


オレはリビングで掃除機をかけていた。


そこに妹の月城ゆきが現れた。そしてテーブルの上を指さし言った

「ねぇ、お兄ちゃん…ここに置いてた(星型の髪留め)見てない?」

「え?…見てないけど?」


ゆきは、えぇー!?といいリビングをうろちょろして髪留めを探しはじめた。


「なんで、なんでないの?」

「おおいおい…今掃除してんだぞ?あるわけないだろう」

「も、もしかして…、掃除機の中に…?」

妹は掃除機の中を調べようとする。

「おいバカ、そんなもん吸ってたらさすがにわかるよ」

「だっ、だって……どこにもないんだもん…」

妹は半泣き状態だった。

「はぁ…、そんな大事かそれ。まぁ、無くなったならまた買い直せばいいじゃあないか」


「…お、お兄ちゃん。本気で、本気で言ってるの、それ」

妹は信じられないものを見るよう目でおれを見る

「だって、アレは…お兄ちゃんが…」

「……」

「お、覚えてないの?お兄ちゃん…?」

「……え?」

「う、うぅ…う。お、お兄ちゃんのばかーーーー!!!」

そう叫ぶと、妹は走り去って言ってしまった。

「い、いったいなんだってんだよ…」


……


晩飯時

妹は一切オレと口を聞かなかった


「はぁ……まいったなあ」


晩飯も終わり洗い物を終わらせた頃

テーブルの上に大きな本が置いてあったのを見つけた。


「これは、……アルバムか」

幼い頃の思い出が詰め込まれた写真アルバム。

あいつがさっきまで見ていたのだろう。


「…………」

オレはなんとなくアルバムを見ることにした。

「…………あ、これは」


その写真には幼い頃のオレとゆきが写っていた。

ゆきが(星型の髪留め)を嬉しそうに持っている写真。


……!!


オレは思い出した。昔の記憶を



ーーーーーーーーーーーー



「うぇぇぇんお兄ちゃんんん」

「もうだいじょうぶだよ、ゆき。わるいやつらはみんなやっつけたから!」

「ほ、ほんとぉ…?で、でも、こわいよう…」


「それなら、ゆき。これを、この(星型の髪留め)を髪につけていてよ」

「…え?」

「これは、おまもりだよ。これを付けていれば、いつでも、どこに居ても、オレが駆けつけてまもってやるから!…だがら、安心しろ!」

そう言ってオレはゆきの頭を撫でる。

「うん…、ひっく。…ありがとう、お兄ちゃん!」

ゆきは、笑った。

その笑顔はとても眩しかった。


ーーーーーーーーーーーーー


……これは、あの時の…。


そうか、あいつが(星型の髪留め)を、あんなに大事そうにしていたのはそういうことか…。


しかし…。

忘れていたオレも悪いとはいえ。

10年以上前のことだぜ…。忘れたって無理もないだろう…?


「……まぁ、それだけ、アイツにどって、大切なものだったんだな」


オレは星型の髪留めを探すことにした。


…………


まずは掃除機の中だ。まぁさすがにないと思うけど。


「…うーん、やっぱりないなぁ」


次にゴミ箱も調べてみたが、やはりなかった。

つまり、捨てられてはいないという事だ。まだ確実に家の中にあるはずだ!


オレは探した、あらゆる場所を。

タンスの中、食器棚の中、冷蔵庫の中、洗濯機の中、本棚の中……

色んな場所を探しまくったが、とうとう見つからなかった。

ついでに自分の部屋を調べたがとうぜんなかった。


「いったいどこにあるんだいああああ」


気づけば深夜の2時を回っていた。

「……あぁ、もう眠気が……」

オレは意識を失った。


……

目が覚めると朝8時を過ぎていた

「うおおおおおおおお遅刻しちまうつうううううううう」


幸い、HR1分前に教室に入り遅刻は免れたのだった。


…………



それからというもの、ゆきは、オレに口をきかなくなってしまった。

「はぁ、やっぱりアレを見つけないことには、期限を直してくれそうもないな」


とわいえ、もう家の中は調べ尽くして。

何処にあるのか見当もつかない…。

捨てていないのは確実で家にはあるはずなのに…なんでどこにもないんだ。


「はぁ、どうしたもんかねえ」


…………


ある日の帰り道。オレは道端の掲示板である張り紙を見つけた。

「これは、冬の町内会のお知らせか」


12月19日

冬の町内会が行われます!

とかかれた紙。


その下の方をよく見ると…。


町内最強選手権大会開催!

腕自慢立ちよ、集結せよ!


大会のお知らせが書かれている。

大会そのものはオレの趣味ではない。

しかし、その大会の景品には…、(ノノベアーのぬいぐるみ)があった。


「こ、これは……!!」


オレは数日前のことを思い出した。


ーーーーーーーーーーーー


「ねぇねぇお兄ちゃん、これ見てー」

ゆきは、そう言ってケータイの画面を見せてきた。

そこには「クマのぬいぐるみ」が表示されていた

「…またそれか。そんな何度も見せんでも…」

「だってーこの「ノノベアーのぬいぐるみ」どこにもうってないんだもん」

「そんなに欲しいか?それ」

「ほしいよ〜!だって凄ーく可愛くない?特にこのお目目のところとか特に……」


ーーーーーーーーーーーー


ノノベアーのぬいぐるみ。あいつはコレをずっと前から欲しがっていた。

これは、どこのお店にもなく。ネットショップですら在庫切れ多発で。極めて入手何度の高い代物だった。

「な、なんでこんなもんがここに……いや。それはとかくとして。もしこれを入手することができたら…」


これで、星型の髪留めの代わりになるかはわからない。

でも、このまま手をこまねいてなにもしないよりはマシだ。


「……よしっ!!」


オレは決意した。

この大会に勝って。ノノベアーのぬいぐるみを手に入れると。


「うおおおおおおおおおおおおやるぞぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!!

待ってろよノノぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


オレは駆け出した。どこへ向かうでもなく。

…その日から、オレの闘いが始まった。


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