【短編小説】婚約破棄されたダメ聖女~実はわたくし、まだ本気出していませんことよ? 今さらなかったことには致しませんわ!
初の短編小説です!
別小説【受け身で習得するチートスキル~冒険者パーティーを追放されたが、ドM向けな魔法を悪役令嬢から授かったので英雄になれるみたいです〜ですがショタワンコにされました、ぴえん】のスピンオフとなります。
「婚約はなかったことにする!!」
「まぁ、そうですの」
わたくしはロッドフォード家の聖女【リンジー・ロッドフォード。
四大公爵家の令嬢で14歳ですわ。
そして、目の前にいる殿方が婚約者。
いえ、たった今『元』婚約者になった【アーヴィン・オハラ】様。
四大公爵家の次期当主で20歳ですわ。
「聖女として優秀と聞いていたから婚約したのに!」
聖女。
主に回復系や治療系の魔法を使って多くの人を助ける活動をしている女性たちを指す。
この世界の最も大きな教会に参加して活動する者。
独自の教会を構えて活動する者。
どこにも所属しないでフリーで活動する者。
ボランティアで活動する者もいる。
わたくしは公爵家でありながらボランティアで活動するとても珍しいタイプの聖女ですわ。
「聖女の中でもトップクラスしか扱えない【霊力】を扱えるって話だったが」
【霊力】。
それはこの世にある、ありとあらゆる魂の力を借りる技法。
魂は誰しも持っているものであり、死んだ者は魂となりこの世を目に見えない形でさまよう。
そのさまよう魂から力を借りることができるが、基本的には【精霊】と契約して霊力を扱うことが主流。
それをわたくしは生まれながら扱えましたわ。
しかし。
「制御できない上に魔法も初級しか扱えないなんて【ダメ聖女】もいいとこだ!」
「まぁ…そう思われるのでしたらよろしいですわ」
わたくしは特にこの殿方を好きではなかったため、どんなに悪口を言われても気にも留めませんわ。
そんな素っ気ないわたくしの態度をみて、さらにアーヴィン様は腹を立ててきましたわ。
「僕は公爵家の次期当主だぞ!?
なんだその態度は!!」
20歳にもなるのにこの殿方の器が伺えますわ。
それに公爵家の次期当主というのでしたら、わたくしの隣にもいらっしゃいますわ。
「アーヴィン殿。そう怒鳴らないでくれたまえ」
ロッドフォード家次期当主【ジョーディ・ロッドフォード】。
わたくしのお兄様ですわ。
「これを怒らずにはいられるか!
オハラ家の計画が台無しだ!」
オハラ家の計画の話は初耳ですわ。
ですが恐らく、優秀な聖女の力と看板を使って、更に商売と領土を拡大することを考えていたのでしょう。
優秀と聞いていればこれからさらに飛躍することは十分に有り得る投資ですわ。
「…息子の意見に私も同意だ。
この件はなかったことにしてくれ」
こちらのおじ様はオハラ家の当主【グラル・オハラ】様。
アーヴィン様のお父様ですわ。
「……わかった…。
その話、承諾しよう」
こちらのおじ様はロッドフォード家当主【イーニアス・ロッドフォード】。
わたくしのお父様ですわ。
「では失礼する」
グラル様とアーヴィン様はそう言うと屋敷を出て馬車に乗り、去っていきましたわ。
「………………………………」
黙り込むわたくしたち。
でもこの沈黙はわたくしに落胆している訳ではありませんわ。
「あぁんんんんんんのクソガキイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!!!!!!!
うちの愛娘を好き放題侮辱しおってええええええええええええええええええええええええ!!!」
お父様が発狂しましたわ。
「幼なじみとはいえ可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い妹を男に紹介したくなかったのにいいいいいいいいいいいいい!!!!!!
それをあのやろおおおおおおおおおおおお!!!
次会ったらたたっ斬ってやるううううううううううううううう!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
お兄様も発狂しましたわ。
このお二人はわたくしに溺愛すぎるぐらい溺愛しておりますわ。
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!
リンジーイイイイイイイイイィ!!!!
さぞ傷ついただろおぉぉぉぉぉぉおおおおお!!!!」
「私たちのハグで慰めてやろおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」
シュバッ!
お父様とお兄様が涙と鼻水まみれの顔で、わたくしに飛びつこうとジャンプしましたわ。
ですので。
「……御二方…」
ズドドーン!!!!
わたくしの回し蹴りがお父様とお兄様の顔面にクリーンヒットしましたわ。
「ブボロ!?!?」
「ボエバフ!?!?」
そのまま吹っ飛ばされて壁に激突しましたわ。
ドサ
ドサ
お父様とお兄様は気絶しましたわ。
「ご心配なさらずにお父様、お兄様」
「実はわたくし、まだ本気出していませんことよ?」
これは、お父様とお兄様には内緒で始まる、秘密の物語ですわ。
「うわあああああああああ!!!!!」
馬車で帰るはずだったアーヴィン様たちに魔物が襲ってきましたわ。
屋敷を出てすぐの出来事ですわ。
護衛にB級冒険者を数人雇って移動中。
公爵家の護衛にしては不用心ではありますが、この周辺は危険度の高い魔物に出会うことがありませんわ。
しかし、今襲われていらっしゃるのは危険度Bランクの魔物【ハイオーク】3体、危険度Aランクの魔物【ジェネラルオーク】1体ですわ。
ジェネラルオークがハイオークを従えて指示を出しているみたいですわ。
B級冒険者数人では歯が立たず次々と倒れていきますわ。
「応戦するぞ!」
わたくしの回し蹴りをくらって倒れていたお父様とお兄様が復活して、屋敷の戦える人達が出ていきましたわ。
ですが。
「間に合いそうではありませんわ」
わたくしは、わたくしの部屋の窓からそれを確認しておりましたわ。
アーヴィン様がいつ殺されてもおかしくない状況ですわ。
「た、た、助けてくれぇええええ!!!!!」
「仕方ないですわね」
好きでもない殿方ですが、あれでも四大公爵家の次期当主。
死なれたら貴族間の力関係が崩れてしまいますので力を貸して差し上げますわ。
「召喚!ディアーナ!!」
わたくしは【霊力】を使って天使の羽で飛ぶ美しい女性。
弓矢を装備した光の精霊【ディアーナ】を召喚した。
「狙いはあの危険度Aランクの魔物ですわ」
わたくしは部屋の窓を開けて、そこからジェネラルオークを撃ち抜きますわ。
「【ホーリーアロー】!!!」
【ディアーナ】から光属性の弓矢が放たれた。
バシュン!!
一方、ジェネラルオークは。
「グアアアアアアア!!!!」
「殺されるーーーーー!!!!!」
「ひいいいいいいい!!!!」
ガクッ
ガクッ
アーヴィン様とグラル様はおしっこちびりながら気絶してしまいましたわ。
殿方が情けないですわ。
ズガン!!
「グァ…!?」
ホーリーアローは数百メートル離れた所から一直線にジェネラルオークの頭を貫きましたわ。
「ディアーナ! ナイスですわ!」
危険度Aランクの魔物ジェネラルオーク。
一撃で討伐完了ですわ!
「うおおおおおおおおおおおお!!!!」
お兄様とお父様が追いついたようですわ。
「死ねええええええええええええええええええええええええええアーヴィンンンンンンンンンンンン!!!!!!!!!!!!!!!!」
ズバン!!!
「グオオオオオオオオオオオオ!!!」
お兄様がとんでもないことを叫びながらハイオークを次々とお斬りになりましたわ。
「ぬ!? ジェネラルオークが死んでいるぞ!?」
お父様がジェネラルオークが死んでいるのを疑問にお持ちになりましたが、わたくしはこれで失礼致しますわ。
「ディアーナ。よくやりましたわ!」
わたくしに褒められたディアーナはニッコリして、精霊界に帰りましたわ。
それにしても危険度Aランクの魔物がこの辺にいるなんて珍しいですわ。
何かの前触れでなければ良いのですが。
お兄様とお父様はいったんアーヴィン様たちを屋敷へ連れて帰り、傷ついた冒険者たちはわたくしが治療致しましたわ。
「召喚! 『ディア』!!」
わたくしは妖精のように小さく、全身黄金の鎧に包まれた光の精霊『ディア』を召喚致しましたわ。
「聖なる加護を、汝の光、癒しを捧げよ。
光魔法『ディアヒール』!!」
わたくしが詠唱するとディアが光だしましたわ。
そして、傷ついた冒険者は光に包まれてみるみる傷が治っていきましたわ。
「す、すごい…」
これがわたくしのオリジナル技法『魔霊力』。
精霊を媒体として自身の魔力を込めることで威力や効果が倍増しますわ。
精霊と自身の魔力を組み合わせることができるのは聖女の中でわたくししかいないと言われておりますわ。
しかし、わたくしは初級魔法しか扱えないので中級レベルの魔法の効力しか出せませんわ。
『魔霊力』は魔力と霊力を同時に消費するので、すぐにバテてしまいますわ。
更に、わたくしはある【トラウマ】があって屋敷の外に出ることができませんわ。
つまり、1日で救える人数にかなり限りがあり、活動場所が屋敷限定。
しかも精霊の力を上手く制御できない。
これが【ダメ聖女】とアーヴィン様がわたくしにレッテルを貼った理由ですわ。
そうそう。
ここだけの話にして頂きたいのですが。
精霊を上手く制御できないというのは。
「まだ本気じゃありませんわ」
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数日後。
「ふぅ…疲れましたわ」
本日、傷を治した方々は18人。
これ以上は難しいですわ。
「本日はこれで閉めさせていただきますわ」
聖女は新米でも1日20人は治療を行うことができるますわ。
トップクラスなら1日1000人は可能ですわ。
わたくしは聖女の活動を始めて2年ですが、活動始めたての聖女に劣りますわ。
つまり、もう伸び代が見えていますわ。
婚約破棄されたアーヴィン様も、そこをチェックしたと思いますわ。
それに。
「聖女リンジー様! 動けねぇ老人もいるんだが来て頂けねぇだか!?」
ロッドフォード家の領民の殿方が話しかけてきましたわ。
「申し訳ありませんわ。
わたくしは屋敷の外へ出ることができないのですわ」
こういう場合は、使用人たちにお願いして屋敷の中まで連れて来ていただいておりますわ。
「…わたくしが外へ出れないばかりに…」
わたくしが外へ出れない理由。
それはお母様が関わっておりますわ。
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10年前…。
「お母様! 今日はこんなお勉強を致しましたわ!」
お母様はもともと病弱だったため、わたくしが物心着く頃にはベッドの上の生活をしていましわ。
「すごいわリンジー!
もっとお話を聞かせて」
そんなお母様に対して勉強したこと、遊んだこと、いろんなことをお話しましたわ。
わたくしにとってお母様と話すのが一日の中で一番の楽しみですわ。
バン!
「リーーーーンジーーーーーー!!!!!
お仕事から帰ってきたぞーーーーー!!!!」
10年前のお父様ですわ。
勢いよくお母様の寝室の扉を開けて入ってきましたわ。
「お父様! お帰りなさい!…ですわ!」
わたくしは覚えたての丁寧に淑女の礼をして、お父様を迎え入れましたわ。
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!
リンジーがこんなに丁寧にあいさつをするなんてええええええええええええ!!!!
愛娘の成長に感激だああああああああぁぁぁ!!!!」
お父様は喜びのあまりに涙と鼻水まみれになりましたわ。
「さぁ! 私と愛あるハグを!!!」
シュバッ!
涙と鼻水を飛び散らかせたお父様は、わたくしに向かってハグをしようとジャンプしましたわ。
「…あら、あなた…」
ズドーン!!!!
お母様は素早くベッドからジャンプして、お父様の顔面に回し蹴りをクリーンヒットさせましたわ。
病人とは思えない機敏さですわ。
「ブバホン!?!?」
お父様はそのまま吹っ飛ばされて壁に激突しましたわ。
ドサ
「鼻水と涙にまみれた顔でリンジーに抱きつこうとしないでくださいませ。
清き淑女として育ちませんわ。
それに夫婦とはいえ淑女の部屋に無断で入るなんて、いささか無粋ではありませんこと?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…。
お母様は笑顔ですが、誰が見てもわかるほど怒っているとわかる雰囲気ですわ。
「…お…おぉ…さすが私の妻だ…。
ナイスキック…ガクッ」
お父様は何かを言い残して気絶しましたわ。
お兄様を含めて4人の家族。
とても楽しく幸せでしたわ。
しかし、そんな幸せな時間は長くは続きませんでしたわ。
_______________________
お母様は亡くなってしまいましたわ。
「お母様ー! お母様ー!」
わたくしは、しばらく泣き叫んでいましたわ。
お兄様はそんなわたくしを抱きかかえて、一緒に泣いてくださいましたわ。
涙が枯れるほどに。
そして、わたくしは新たな決意をしましたわ。
もうお母様のように亡くなってほしくない。
そんな想いで必死に回復魔法の勉強と霊力の鍛錬を積みましたわ。
そして、お母様が亡くなって8年後。
つまり、今から2年前に聖女の活動をボランティアで始めましたわ。
しかしそれとは反面的に、わたくしはお兄様とお父様から離れることができず、今でもこの屋敷の中や庭でしか活動したことがありませんわ。
離れるのが怖い。
1秒でも長く一緒にいたい。
もしかしたら明日いなくなるかもしれない。
そう考えるようになり、わたくしが離れている間にお兄様とお父様が何かあったらと思うと外には出られませんわ。
そんな中、わたくしはある日突然。
精霊界に強制的に招かれてしまい…。
「…ここは…どこなのですわ?」
満面の星空を眺めるわたくし。
いつもの部屋で寝て起きたら外に…。
「!! 早く屋敷に戻らないと!」
わたくしは屋敷の外に出ていることを認識して急いで帰ろうとする。
「待って!」
「!? 誰ですの!?」
振り返ると、わたくしが最初に契約した光の精霊【ディア】がいたのだった。
「ここは精霊界。
リンジーがいた世界とは時間軸が異なるから安心して!」
わたくしが今にいる場所は精霊界なのですね。
初めて来ましたわ。
「時間軸が違うというのはどういうことなのですの?」
わたくしは落ち着きを取り戻してディアに問いかけた。
「簡単に言うとここでの1日は向こうだと1分なんだ。
だから慌てて帰る必要はないよ」
ディアが分かりやすく、しかもわたくしのトラウマを優しく撫でるように説明してくれた。
「そうですの。わたくしはどうやって精霊界に来れたのでしょうか?」
昨日の夜は普段通りに眠りについたはずなのに。
「リンジーの意識だけ精霊界に呼んだんだよ。
だから身体はまだ眠ったままだ」
「そうですの。
それでわたくしを呼んだ理由はなんですの?」
「…僕はリンジーの悲しみを知っている。
その悲しみを取り払う方法をずっと考えてたんだ」
わたくしのお母様のことですわね。
契約したとはいえここまで心配されていたなんて…。
わたくしは胸が苦しくなりましたわ。
「でも、どうしても思いつかなくて…。
それで精霊のみんなと相談したんだ」
みんなと言いますと?
わたくしは振り返ると何体もの精霊がこちらを見ていましたのですわ。
「トラウマは結局のところ本人が乗り越えるしかない。
それしか言えないんだけど…」
ディアのお友達の正論は痛いですわ。
でも、それしかないのは事実ですわ。
「いつかトラウマを乗り越えて屋敷の外へ出る時、大きな力が必要だ。
それで精霊界に呼んでみんなと契約しようと思って!」
それでこんなに精霊たちが集まって頂いたのでしょうか。
「はっはっは! ディアの頼みだからといって贔屓はせんぞ!
我との契約に力及ばずなら破棄させてもらう!」
天使の羽で飛ぶ巨大で神々しい機械兵がそう言いいましたわ。
精霊たちの中で一際、巨大な精霊ですわ。
「我の名は【アレクディア】。
光の上位精霊だ!」
上位精霊…。
確かに凄まじい霊力ですわ。
他の精霊とは比べ物になりませんわ。
「…望むところですわ!」
そして、わたくしはディアのお友達と契約を結ぶことになりましたわ。
「契約せよ。ディアーナ!」
わたくしは霊力を流し込んでディアーナを認めさせましたわ。
「我が名は光の中位精霊『ディアーナ』。
主、リンジーと契約し力となることを誓う」
ディアーナとの契約は成功しましたわ。
続いて光の防御精霊『ディルガラ』。
足がなく、宙に浮いて大きな盾を持った機兵。
さらに、氷の防御精霊『セルシウス』。
氷の鎧を纏った美しい女性とも契約しましたわ。
その他、何体もの契約に成功しましたわ。
そして、
「最後に我か。少し休憩するか?」
最後に残ったのはアレクディア。
少しばかり休憩してはどうかと提案をしてくださいましたわ。
「わたくしはまだまだ大丈夫ですわ!」
強すぎて制御できない霊力を存分に使えてむしろ清々しい気分ですわ。
「なら遠慮はせんぞ!
来るが良い!!」
わたくしはアレクディアに触れて、霊力を流し込みましたわ。
「おぉ! やるでわないか!」
アレクディアは予想以上の霊力に驚いている様子ですわ。
ですがわたくしも余裕があるわけではありませんわ。
「さきほどの精霊たちとは比べ物にならないほど、霊力をもっていかれますわね!」
自分自身で感じる。
霊力がどんどんなくなっているのを。
「それならもっともっと差し上げますわ!!!」
わたくしを全霊力を勢いよく注ぎ込もうとした。
「お、おい! ちょっと待て! もう良い!!」
アレクディアは慌てふためいていますが、わたくしはそれに気づかずにドンドン霊力を注ぎ込みましたわ。
「や、やめ…!!」
すると
ドカーーーーーン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
アレクディアは爆発してしまった。
「アレクディアさーーーーーーん!!!!」
精霊たちがアレクディアの安否を心配して叫びましたわ。
「…まぁ…どうしましょう…」
予期せぬ出来事にわたくしは呆然としてしまいましたわ。
「………やりすぎだ!!!!」
アレクディアは生きていましたわ。
ダメージを受けておりますが。
「コ…コホン…その膨大な霊力を我も認めよう。
我が名は光の上位精霊『アレクディア』。
主、リンジーと契約し力となることを誓う」
アレクディアとの契約が成功しましたわ!
「すごいよリンジー!
まさかアレクディアさんとの契約が成立するなんて!」
ディアは喜んでくれましたわ。
「うむ、確かに我をその年齢で契約するとは。
もしかしたら将来【精霊王】とも契約できるかもしれないな」
精霊王? なんですの?
とお聞きしたいのですが…。
「…さすがに疲れてしまいましたわ…」
わたくしははしたないと思いながらその場で眠りにつきましたわ。
「おやすみリンジー。
今、肉体に戻してあげるね」
_______________________
わたくしは自分の部屋で目が覚めましたわ。
日付がズレることなく、いつもの時間に起きれましたわ。
「まるで夢ですわ」
しかし、わたくしの中に確かな力を感じますわ。
その代わり本日は霊力が消耗しているので聖女の活動はおやすみしますわ。
それを聞いたお父様とお兄様は。
「リンジィィィィ!!!!!
大丈夫かああああああああぁぁぁ!!!」
と叫びながら涙と鼻水まみれで飛びつこうとしますので。
ズドドーン!!!!
「ホゲバ!?」
「ベラムバ!?」
お父様とお兄様にわたくしの回し蹴りがクリーンヒットしましたわ。
_______________________
ここまでがわたくしの10年の成り立ちですわ。
お父様とお兄様が心配するといけませんので秘密ですわ。
_______________________
「やれやれ、手当り次第令嬢を殺しているが、なかなか当たりはいないな」
彼は暗殺ギルドの令嬢殺し【ベルモット】ですわ。
「次はロットフォード家か…。
侵入とかめんどくせぇんだよなぁ。
そうだ!周りに魔物を解き放って襲ってみたらどんな反応するかな?」
ベルモットは強力な魔物を解き放って様子を見るつもりですわ。
わたくしはそうとは知らずに本気を出してしまうことに…。
いっぽうで。
「なに!? 霊力を制御できないというのは精度が悪いという意味ではなく強すぎるからということだったのか!?」
わたくしとの婚約破棄をした殿方。
アーヴィン様がそう認識してしまいましたわ。
「そうなのです!!!
私の情報は間違いないのです!!!!」
更にまた1人怪しい男。
オハラ家の執事【アザートス】。
後に楽園の使徒【ラプラス】と名乗る1人なのですわ。
「こうしちゃおれん!
すぐに婚約破棄を撤回せねば!
馬車を出せ!!」
アーヴィン様はすぐにこちらへ向かって来ますわ。
というよりどうしてそう簡単に信じてしまうのでしょうか。
どこから仕入れた情報かと知らずに。
呆れてしまいますわ。
そうして、複数の陰謀が絡み合う中。
事件が起きてしまいましたわ。
「ぎゃあああああああああああぁぁぁ!!!!!!」
「何事ですの!?」
これはアーヴィン様の叫び声。
またしてもわたくしの屋敷の近くで魔物に襲われていますわ。
どうしてあの方はこう魔物に襲われるのでしょうか…。
なんだか可哀想になってきましたわ。
「く、来るなぁーー!!!」
アーヴィン様を襲っているのは危険度Aランク+1。
【ハイスケルトン】が5体。
危険度Aランク+2。
【ジェネラルスケルトン】が1体ですわ。
「…どうしてこのようなところにこれほどの魔物が…。
しかも高位アンデットなんて」
魔物のランクにはG~ついていまして、危険度Bランクの次は危険度Aランクになりますわ。
そして、Aランクの次はAランク+1。
Aランク+1の次はAランク+2になりますわ。
「とにかく助けないといけませんわね」
なぜを考える前に行動をしないとアーヴィン様が、殺されてしまいますわ。
お父様とお兄様は出掛けていらっしゃいますのでわたくしがやらなければなりませんわ。
「召喚!ディアーナ!!」
わたくしは【霊力】を使って天使の羽で飛ぶ美しい女性。
弓矢を装備した光の精霊【ディアーナ】を召喚しましたわ。
「まずはハイスケルトンですわ」
わたくしは部屋の窓を開けて、そこからハイスケルトンを狙いましたわ。
「【ホーリーアロー】!!!」
【ディアーナ】から光属性の弓矢が放たれましたわ。
バシュ!
バシュ!
バシュ!
ハイスケルトンを3体倒しましたわ。
「ハイスケルトンはいけますわね。
次はジェネラルスケルトンを狙いますわ!」
しかし、
ガキン!!
ガキン!!
「クカカカカカカカカカカ!!!」
ジェネラルスケルトンは持っている剣と盾でホーリーアローを防がれてしまいましたわ。
「さすがですわね…」
光属性の霊力はアンデットにとっては強大な威力を発揮しますわ。
ですので格上の魔物相手でも倒すことも可能。
ですがジェネラルスケルトン相手では威力不足でしたわ。
さらに
「クカカカカカカカカカカ!!!」
ジェネラルスケルトンの影からハイスケルトンを3体出現させましたわ。
「ひ、ひいいいいい!!!!
もうダメだ!!
助けてくれーー!!!!」
泣き叫ぶアーヴィン様。
同じ公爵家として恥ずかしいですわ。
「…仕方ありませんわね。
地形が変わりそうですが本気を出しますわ」
わたくしは屋敷の上空に精霊を召喚することにした。
「召喚! ディルガラ!
アレクディア!!」
わたくしが現在呼ぶことができる最強の精霊。
光の上位精霊アレクディアを召喚しましたわ。
そして、大きな盾を持った光の防御精霊【ディルガラ】も召喚しましたわ。
目標はジェネラルスケルトンと他のアンデット。
アレクディアはアーヴィン様の真上まで移動した。
「な、なんだ…!!
これは…!!!」
アーヴィン様もジェネラルスケルトンたちも上空を見上げてカタカタ震え出しましたわ。
「行きますわよ! アレクディア!!
【ホーリーレスフリー】!!」
わたくしはアレクディアに思いっきり霊力を送って、アレクディアは巨大な光の柱を放った。
ズドーン!!!!!!!!!!
ジェネラルスケルトンとハイスケルトンは消滅しましたわ。
そして、アーヴィン様は。
「な、何が起こって…。
ひぃ!?!?」
アーヴィン様の周りの地形は破壊されて変わってしまいましたわ。
そして、ディルガラがアーヴィン様を守ってくれましたわ。
「ふぅ。アレクディアを召喚するとかなり霊力を使ってきまいますわね。
初めて本気を出してしまいましたわ」
わたくしは召喚した精霊たちを精霊界に戻しましたわ。
そして、アーヴィン様はわたくしのところへいらっしゃるのですが…。
「お願いだ!!
もう一度、婚約をしてくれ!!」
アーヴィン様がわたくしの元へやって来ましたわ。
しかし、尿の臭いがしますわ。
さきほど、魔物に襲われた時にまた漏らしてしまったのでしょう。
「いやですわ」
わたくしの答えはもちろんお断りですわ。
「どういう経緯か知りませんが、今さらなかったことには致しませんわ!」
わたくしを道具としてしか見れない殿方と一緒になって幸せになるはずがありませんわ。
「僕は君のことを誤解していた。
霊力は強すぎて制御できないのだろう?
さっき僕を助けた精霊だって君が召喚したのだろう!?」
わたくしの屋敷の上にアレクディアを呼んだのですからそう思うのは当然ですわね。
しかし、使用人の皆さんにはその旨を話さないようお願いしましたわ。
もちろんお父様とお兄様にも。
「まぁ、そんなことがあったのですね。
ですがその精霊とわたくしは関係ありませんわ」
わたくしはしらばっくれましたわ。
「ウソをつくな!
それなら誘拐して監禁してでもその力を僕の物にしてやる!!!」
まぁ、なんて横暴な…!
「その発言は取り消せませんことよ?」
「うるさい! 一緒に来るんだ!」
そう言うとアーヴィン様は無理やりわたくしの手をつかもうとしましたわ。
バシッ
「いけませんわ!!」
わたくしはアーヴィン様の手を弾きましたわ。
「いて! あくまで抵抗するのか!」
アーヴィン様は剣を抜いてわたくしを脅そうとしてきましたわ。
ですがわたくしが恐れているのわそんなことではありませんわ。
「殿方の手を握ってしまったら子供ができてしまいますわ!!!!」
「いやできないから!!!」
そんなやり取りをしていると。
ドタバタドタバタ。
バン!!
「なんの騒ぎだ!」
お父様とお兄様が帰ってきましたわ。
「な!? おいアーヴィン!
リンジーに何をする気だ!!」
いつもお優しい2人の顔が鬼のような形相でアーヴィン様を睨みつけましたわ。
「わたくし。
アーヴィン様に無理やり子供を作るよう求められましたわ!!」
なぜか一瞬、3人は固まりましたわ。
「ななななななぅあんだとおおおおおおおおおお!?!?!?!?!?
こおおおおんのクソガキいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!」
「アーヴィン!!!!!!
貴様ああああああああぁぁぁ!!!!!!!!!!!
ぶった斬ってやる!!!!!!!!!」
お父様とお兄様の怒りが、なぜか頂点に達しましたわ。
「へ?! い、いや、ちが!?!?」
アーヴィン様が何かを言おうとしておりますが、聞く耳持ちませんわ。
シュバッ!
「愛ある必殺!
お父様キーーーーーーック!!!!」
ドカ!!!
「ヘブ!?」
お父様がアーヴィン様の顔面に飛び蹴りしましたわ。
「溺愛の力!
お兄様ブレイバー!!!!」
ドカ!!!
「ぼふぇ!?」
お兄様は鞘に納めた状態の剣をアーヴィン様にお見舞いしましたわ。
ドサッ
アーヴィン様は気絶してしまいましたわ。
「ぶった斬ってやりたいところだが正式な処罰を受けさせてやる」
殺してしまったら自分自身も罪になる。
お兄様がまだ冷静で良かったですわ。
これでアーヴィン様のせいでオハラ家は没落するでしょう。
「うおおおおおおおおおおおお!!!!!!
リンジいいいいいいいいいい!!!!!!
怖かっただろおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
「お兄様が慰めてやるからなああああああああぁぁぁ!!!!!!!」
シュバッ
シュバッ
お父様とお兄様が涙と鼻水まみれの顔で、わたくしに飛びつこうとジャンプしましたわ。
ですので。
「……御二方…」
ズドドーン!!!!
わたくしの回し蹴りがお父様とお兄様の顔面にクリーンヒットしましたわ。
「ベロンバ!?!?」
「ロメブ!?!?」
そのまま吹っ飛ばされて壁に激突しましたわ。
ドサ
ドサ
お父様とお兄様は気絶しましたわ。
「ご心配なくお父様、お兄様。
わたくしは無事ですわ。
…そしていつか…外に…」
翌日。
アーヴィン様は公爵家令嬢の強姦未遂の罪で投獄されてしまいましたわ。
更に、オハラ家は貴族の地位を剥奪されてしまい、没落してしまいましたわ。
これでもうこの国に住む公爵家で、このような殿方は現れることはありませんわ。
これでわたくしのお話は終わりますわ。
この続きはわたくしの運命の人との出会いから始まりますわ。
それまで皆様。
ごきげんよう。
「面白かった!」
と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当にうれしいです。
何卒よろしくお願いいたします。
続きは【受け身で習得するチートスキル~冒険者パーティーを追放されたが、ドM向けな魔法を悪役令嬢から授かったので英雄になれるみたいです〜ですがショタワンコにされました、ぴえん】に繋がりますのでそちらもお願いします!