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冒険者ギルド

『冒険者』

 誰しもが聞いたことのある職業。

 それは領主や住人などから依頼を受けて、それを冒険者ギルドが仲介して冒険者がその依頼をこなす。


 成功すれば一攫千金いっかくせんきん

 失敗すれば、どん底生活という極めて不安定な職業である。


 俺たちは、その冒険者ギルドに入ろうとしていた。


「ほ、本当に入るんですか?」


 ソフィアが怯えた声で、俺に言う。


「ぶっちゃけ稼げるのが、これぐらいしかないからな」

「おお……これが噂の真相冒険者ギルドか……」


 スカーレットは瞳をキラキラさせて、冒険者ギルドを見つめる。


 俺の計画としては、ここで高難易度クエストを受けてバンバン稼いで木材を購入する。

 前世でもそうしていた。


「よし……入るぞ」


 俺は大きなドアを開けて、堂々とギルドに足を踏み入れた


 ギルドの中には装備を身に纏った冒険者が多数おり、昼間から酒を飲んでいたりクエストボードの前で話し合ったりしていた。


 一部の人は、こちらをチラ見したが、その後すぐに自分の行動に移る


 俺はギルド内を見渡した。

 意外にも中は整備されており、食事の提供もしている


 すると四人組が俺の横を通り過ぎたのを見かけた。


 装備のレベルからして、これから冒険者になる者たちだろうか?


 その四人組は受付嬢に意気揚々と言った。


「あの、すみません。俺達冒険者登録をしたいんですけど」


 ビンゴだ。

 いい機会だ。少し登録の一連を見てみよう


 俺は目立たないように、こっそりと近づき

 受付嬢と四人組のやりとりを見ていたのだが


 四人組の次の行動に俺は絶句した。


「それでは、この用紙に《《自分の血を押してください》》。」


 そう言って、受付嬢は果物ナイフを先頭の一人に渡す。


 そう……『血版』である。

 よりにもよって、最悪のパターンを引いてしまったのである。


 なにが最悪かって? 血液で、俺達が魔族だってバレることだよ。


 前世での冒険者ギルドの登録は、適当な書類を書くためだったので、なんの問題もなかった。


 俺達が魔族だとバレれば俺の一気に大金を稼ごうという計画は見事に崩れ去り、最悪指名手配になってしまうかもしれない。


 もしかして詰んだ?

 もしかしなくても詰んだのである。


 その事実を受けいられず俺は真っ白に燃え尽きた。こう見えてもろいのだ。


「お嬢ちゃんどこから来たの? あめちゃんあげる。」

「わーい、ありがとうなのだ。」


 スカーレットは、知らないおじさんから棒付き飴を貰っていたが、そんなことはどうでもいい。


 ソフィアは、このギルドのパンフレットを、じっと読んでいた。


 ◇


 俺は適当な席に座って水を飲んでいた。

 これからどうしよう。


 悩んでいるとパンフレットを読んでいたソフィアが、こちらに駆け寄った。


「ガルディアさん、どうしたんですか?」

「どうもこうもないぜ。登録できないんじゃどうしようもない。」

「そのことなんですけど……」


 ソフィアは、さっき読んでいたパンフレットを俺に差し出す。


「どうやら冒険者登録をしなくても、クエストは受けれるみたいなんですよ。」

「……なに?」


 俺は、早速そのパンフレットを開く 


 どうやら冒険者登録をしなくてもクエストを受けれて、報酬を貰えるらしい。


 その分提示されている報酬よりも少なくなってしまう。


 報酬が減るのはしゃくだが、魔族だとバレるリスクを考えれば安い物だ。


「……くくくっ」

「ど、どうしたんですか? 狂っちゃいましたか?」

「ちげぇよ。」


 それでも俺は内心で高笑いしていた。

 地獄から天国とは、まさにこのこと


「よーし、お前ら! 早速クエストに行くぞ……って、あれ? スカーレットは?」


 周りを見渡してもスカーレットがいない

 ……あいつまさか!


「ここにいるのだ。」

「わっ! びっくりさせんなよ。」


 後ろから不意に声を掛けられて、俺としたことが情けない声を出してしまった。


「……なぁ、スカーレット。お前両手に持っている菓子の束はなんだ?」

「むっ? このことか?」


 そう言って、菓子の山を見せるスカーレット


「ふふーん、冒険者達がくれたものだ。冒険者というのは、随分優しいのだ。その代わり髪を触らせてとか言われたけど安いものなのだ。」

「「……」」


 ……まあ価値観というものは、人それぞれだし……な?





















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