魔界会議
「それでは、第一回魔界会議を始める」
俺がそう言うと、スカーレットは「はーい」と元気な返事をする。楽観的なやつだ
対するソフィアは、少し真剣な表情だ。
「まず最初にスカーレットに問題だ。魔王として……魔界の王様としての最終目的はなんだ?」
俺が問いかけると、スカーレットは、『ふっ……』と鼻で笑いながら答えた
「そんなの決まってるのだ! 《《人類抹殺》》なのだ!」
うんうんなるほど……
「全然違う。」
「なにぃ!?」
俺がきっぱり答えると、スカーレットは俺の肩を掴んだ
「なぜなのだ!? 人間界を支配するのが魔族の目標なのでは、ないのか!?」
……確かに大昔はそうだったが、今は、違う
「そんな古臭い考えは捨てろ。いいか?
『人類抹殺』ってのは聞こえはいいが、いざやろうとなると、莫大な費用と人材が必要になるし、それに当然人間も抵抗するから多大なる時間もかかる。ぶっちゃけそんな暇があるなら魔界をより良くしたほうがいいんだ。」
「な、なるほど……なのだ。」
スカーレットは納得した顔でうなずく。
ソフィアもコクコクと頷いている辺り、人間界を支配するのは、リスキーと薄々感づいていたのだろう。
そして、スカーレットが首を傾げながら口を開いた。
「うーん、でも大丈夫なのか?」
「なにがだ?」
「いや……その、人族から魔界に攻めてきたり……」
……なるほど、確かにその可能性はある。
もし、国王が魔界に軍隊を送ろうもんなら、我々も戦わざるを得なくなってしまう。
……だが
「大丈夫だろ。」
「な、なんで?」
「人間の賢いやつなら、こんな荒れた土地を征服しても仕方ないことぐらい分かってる。だからリスクを犯してまでもこんなところ来ない。」
それに本気で魔界が消滅しちまったら、今度は、チート勇者によって、人間界が蹂躪されてしまう。
そうなるとゲームオーバーだ。
「つまり良くて共存。最低限お互い不干渉の関係が一番丸いってことだ。」
「す、すごい説得力……これが『経験者は語る』ってやつですね!」
ソフィアが尊敬の眼差しを俺に向ける。
前世での失敗がこんなところで役に立つとは夢にも思わなかった。
「それで、最初は何すればいいのだ?」
「まずあのボロ城をなんとかする。魔王城は魔界の象徴みたいなもんだからな。」
俺は深夜に書いた設計図を出す。
ソフィアは、それを手に取って目を見開いた
「こ、これガルディアさんが書いたのですか!?」
「ああ、つっても前世での書き写しだけどな」
「そ、それでも凄いですよ!」
ソフィアは俺が書いた設計図を隅々まで見る
スカーレットは、ポカンとしている。おそらくまだ子供だから設計図なんて、見たことないのだろう
「よしお前ら、そろそろ行くぞ」
「……行くって、どこにだ?」
「決まってんだろ……《《人間界》》だよ。」
「え、ええ!? なんでですか?」
「なんでもかんでもない! 確かに設計図はできたが、城を作る材料をこの魔界から調達するなんて無理ゲーだ。だから人間界から頂戴するんだよ。」
「でも……大丈夫か?」
「ああ、幸いお前らは、人族に近い見た目をしているし、今の代の奴らは魔族なんて知らないだろ。」
「うーん……でもいきなりは……」
俺は大きなため息をついて
「世の中早い物勝ちだ! つまり誰よりも早く行動したやつが人生の勝ち組になれるんだ! 分かったならさっさと行くぞ」
俺はボロ屋のドアを開けて外に出る
「まっ、私も着いていくから置いてかないでくださーい!」
「我も右に同じじゃ!」
俺の跡に続くように二人も外に出た。