魔界へ
「くそ……あのクソ女神覚えてろよ……」
目が覚めると、そこは俺のいた魔界とはかけ離れた光景だった。
建造物のほとんどは倒壊しており、荒れた荒野。そして、不穏な風に枯れ果てた木が何本か立っている
「ま、これが本当の魔界か」
まずは、この世界の魔王に会おう
そいつと話をして、魔界を立て直そう
人間界はその後でも遅くない
そうと決まれば早速会いに行こう……
しかし場所が分からない
魔王といえば、でっかい城の奥に引きこもっているのが定番だ。
辺りを見回すと、棍棒を持った《オーク》が
いた。魔王城を聞くのにちょうどいい。
「ねえねえ、そこのオーク君。魔王城どこにあるか知らないか?」
『……あー……う……?』
しかし、オーク君は首を傾げながら『あー』とか『うー』しか言わない
まさか分からないのか?
ていうか、俺の世界の言語で大丈夫なのか?
言語が通じないとか、一気に難易度が上がるのだが……
………いや冷静に考えろガルディアよ。
いくらあのリースとか言う奴が無能神だとしても、いきなり言語が違う世界に放り込むか? あの女神が本気で救いたいのならそんなことはしない。
結論で言えば魔族は異種族間での、コミュニケーションができない
うん、そうだ。きっとそうだ
いや、そうだと思いたい
「オーク君失礼したね。」
未だに首を傾げているオーク君に別れの挨拶をして、その場を離れた。
「まず俺が前世にいた頃のスキルが使えるか……」
スキルが使えないとなると、パワー至上主義の魔界を仕切ることは難しい。
俺は《千里眼》スキルを発動させた。
《千里眼》は遠くを見渡すことのできるスキルだ。
「うーんと、おっ、奥に高い建造物があるな。」
とりあえず一番高い建物が魔王城の確率が高いので、ひとまずそこを目指すことにした。
◇
歩くこと一時間。
俺はなんとか魔王城(?)に無事に着くことができたのだが……
「ボロ……」
俺の魔王城とは、比べ物にならないほどボロく、ところどころ欠けており、今にも崩れ落ちそうだ。
不安だが、なんとかこの世界の魔王と会わなきゃ何も始まらないので、俺は壊れている扉の隙間に入り込んだ。
城の内部は、外見と同様にところどころヒビが入っていた。赤いカーペットが敷かれているが汚れていて、黒く染まっている。
「……おかしいな」
モンスターも襲ってこず、仕掛けもあるが作動する気配すらない。
魔王城はラストダンジョン的な物なので、強力なモンスターと最先端の仕掛けを用意するもんだが……ここは長年放置されてるらしい
そして、何事もなく魔王城よ奥に着いたのだが……
「おーい! 誰もいないのかーー!」
そこには、古びた玉座があるだけで、誰もいなかった。
隠れているのか?
「……ちっ、とんだ肩透かしを喰らったぜ」
結局何も収益がないまま俺は魔王城を跡にした。
そして、また扉の隙間をくぐって、外に出た瞬間、俺は魔王城の横に薪を持った女性と目が合った。
「あ、あわわ……」
その女性は、俺よりも長身で酷く怯えていた。
「ひいっ!」
「あっ! 待ちやがれ!」
その女性は、俺を見るなり逃げていった。
女性はローブを着ており、長スカートなので
走りにくかったのか、思いの外あっさりと捕まえれた。
後ろからの悪質タックルで、取り押さえられた女性は、ジタバタしながら言った。
「お願いします! お願いします! 私悪いことしてないので、せめて命だけはお助けをーーー!!!」
「落ち着け! 俺は討伐しにきたんじゃなくて、話をしたいだけだ!」
「……ほぇ?」
◇
「す、すいません。いきなり逃げて……てっきり私達を殺しに来た人間かと思いまして……」
「まぁ今の魔界の現状だと無理もねえか。
で、お前何してたんだよ。」
女性は、持っていた薪を見ながら
「あぁ、薪を集めてたんですよ。いつ寒くなるか分かりませんからね。……そして、あなたは……」
「ん? ああ、俺の名はガルディア。率直に言ってしまえば異世界の魔王だ。」
「い、異世界の魔王様!? ど、どういうことですか!?」
「詳しい話は、この世界の魔王と一緒に話す。どこにいるか知っているか? この城にはいなかったんだが……」
「ああ、こちらになります。」
女性は、魔王城の横を通り過ぎて歩いていった。
「そういえば名前聞いてなかったな。」
「そうですね。私の名はソフィアと言います。見た目は人間っぽいですけどアンデッドです。」
「アンデッドのなんだ?」
「人からはノーライフキングと呼ばれてます」
の、ノーライフキングって……アンデッドの王じゃねえか……とにかくこいつらには、聞きたいことが山程ある。
俺は話をしながら、魔王のいるところに案内された。