転生
今日も魔界は平和だ。
魔界と言えば、魔族が荒れ狂っている所だと言われているが俺の世界では違う。
魔族も人族も互いに平和に暮らしている
荒れ地だった魔界も、今では家が建てられて
店などもあり、にぎわっている。
なんで魔界がこんなに平和なのか……
魔界の人々に聞くと、おそらく大半の人はこう答える。
この俺、魔王ガルディアのおかげだと……
◇
魔王城。
ここは魔界の本拠地である。
昔は、勇者などが魔王討伐のために、来たことがあったが今は、ほとんど来てない。
俺は荒れ地だった魔界を統制し、人族との
争いを終わらした。
それ以降戦争はほとんど起こっていないのだが……まさかこんなことになるとは……
「魔王様! お気は確かに!」
側近のじいじが、ベッドでぐったりと寝ている俺の手をがっちりと握りしめる。
その他の部下達も心配そえな表情で見つめる
そう、『病気』である。
この世界に平和を齎した直後、
俺は不治の病に掛かってしまった。
まだ420歳だというのに情けない。
ちなみに人間の年齢で言えば俺は二十歳ぐらいだろうか。
「ケホッ……ケホッ……お前達、この先の魔界を……頼むぞ」
「「魔王様!」」
俺は弱々しい声で部下たちにこの先の魔界を任せた。
まさか魔王が……しかも魔族としては、まだまだ若い俺が病死とは、世の中何が起こるか分からんもんだな。
……ああ、そろそろお迎えが来るようだ
意識がだんだん薄れていく
魔界は大丈夫だろうか?
人族と平和にやっていけるだろうか?
俺はそんな無限に湧き上がる疑問を持ちながらも静かに息を引き取った。
◇
「……むっ、ここは……?」
目が覚めると、そこは殺風景な部屋だった。
周りは夜のように黒かったが、俺の足元は
光っている
「ようこそ、死後の世界に」
目の前には、オレンジの髪色の女性が座っていた。
「私は、女神リースと申します。どうぞ座ってください。」
「いや座れってどこに……あっ」
後ろに何かの気配を感じて、振り向くといつの間にか木でできた素朴な椅子があった。
俺は言われるがままに椅子に座った
……それにしても魔王である俺が女神と話をすることになるとは……まさか俺地獄行きとか言われないよね?
俺が考え事をしている所で、女神が口を開いた。
「あなたの功績は天界にも届いております。戦争を終わらして、魔界を統治して平和にした……私もまさか魔王がこんなことをしてくれるとは夢にも思いませんてした。感謝しています。」
「そりゃどうも。」
「あっ、なにか食べますか?」
「え? ああ、頼む」
死人だから腹は減らないと思っていたが、今は、なにかと食べたい気分だった。
「それでは……パチッ!」
女神は指パッチンすると、俺の目の前にテーブルが現れて、その上に皿に盛られたクッキーがあった。
「うひょおおお! いただきまーす!」
俺はクッキーを手に取って、それを貪った。
うん、すごく美味しい。
俺がクッキーを堪能している最中に女神が口を挟んだ。
「……食べましたね?」
「ムグっ!? ゲホッ!」
「実は頼み事があるんですが……」
「て、てめえ卑怯だぞ! 後から言うなんて……」
「……そのクッキー私の自腹で購入したんですよ……しかも個数限定のやつを……」
こいつ本当に女神か? 新手の詐欺師とかじゃねえのか?
「……ちっ……分かったから、内容ぐらいは聞いてやる。」
「ありがとうございます。私には悩みがあるのでそれを解決してほしいのです。」
「ふーん、で? その悩みってのは?」
「はい。とりあえず一から説明しましょう。実は……」
「神々の間で “異世界転生ムーブ” というのが流行っておりました。」