ペンギン三兄弟 〜 8話 氷豆みっけ の巻
ペンギン三兄弟、チャン、ドン、ゴン。
今日も仲良く暮らしています。
3羽は、町のはずれの路地にいました。
目の前には、「氷豆」と大きく書かれた看板がありました。
喫茶店の入り口です。
チャン「こおりまめ、って読むのかな」
ドン「ひょうまめ?」
ゴン「古そうな店だな」
チャン「ま、入ってみよ」
チャンは、年季の入った重そうな木のドアを
押しあけました。
カラン、カラン、カラン
ドアについていた金のベルが鳴り響きました。
店の中は、ちょっとひんやりしています。
なんだかわからないクラッシックの音楽が
気にならないくらいの音量で聴こえてきます。
「いらっしゃいませ」
白シャツに黒のベストをキチンと着たマスターが、
カウンター越しに挨拶をしました。
お客さんは、誰もいないようです。
3羽は、カウンターの前を通り過ぎて、
店の一番奥のテーブルにつきました。
マスターが、トレイに3つの水の入ったグラスをのせてやってきました。
ドン「マスター、いつもの」
ゴン「オレも、いつもの」
チャン「オレも」
マスターは、驚いたように言いました。
「これはご冗談を。皆さま、初めてのご来店ですよね」
ドン「あ、バレた?」
ゴン「常連のように入ってきたのにね」
チャン「そりゃ、バレるよねえ、おれたち目立つから」
マスター「そうですね、長年この店をやってますが、ペンギンさまのご来店は、初めてです」
ゴン「じゃあ、コーヒー。ブラックで」
ドン「ぼくは、ミルクティー」
チャン「おれは、ココア」
マスター「かしこまりました」
ドン「マスター、今のちゃんと覚えておいてね。次来たとき、いつもの、って言うからね」
マスター「おまかせください」
チャン「もう覚えたの?さすがマスター」
マスターは、ニッコリと不敵な笑みを浮かべました。
マスターが行ってしまうと、
3羽は、ヒソヒソ何やら話しはじめ、
マスターに気づかれないように、席を交代しました。
しばらくして、注文の飲み物がやってきました。
マスター「ブラックコーヒー、ミルクティー、ココアでございます」
マスターは、ゴンの前にコーヒーを、ドンの前にミルクティーを、
そしてチャンの前にココアを、
間違えることなくきちんと置きました。
ゴン「やるねえ、マスター」
マスター「おまかせください」
チャン「ところでマスター、店の名前なんて読むの?」
ドン「ひょうまめ?」
ゴン「こおりまめだろ」
マスター「ひょうず、です」
チャン「ひょうず!それは読めないな」
マスター「なかなか読めないのが狙いです」
ゴン「なるほど」
ドン「マスターって、なかなかくせ者だね」
マスター「お褒めいただき、ありがとうございます」
マスターは、またしても不敵な笑みを浮かべました。
3羽は、小1時間ほど、過ごしたあと
席を立ちました。
チャン「ごちそうさま」
ドン「マスターまた来るね!」
ゴン「コーヒーおいしかったよ」
マスター「ありがとうございました。またお待ちしております」
マスターは、3羽にゆっくり手を振ってくれました。
その手は、3羽と同じ形をしていました。
チャン「とうとう見つけたね」
ドン「いい店だね」
ゴン「お客さん来なかったけどね」
3羽は、いい気分で、ペンギンマスターの店を後にしたのでした。
おわり