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絶望トリガー 〜絶望の弾丸と漆黒の反逆者〜  作者: ゆう@まる
第1章〜絶望の復讐者編〜
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episode7〜決意〜

「……ここは?」


 見覚えのある天井が残った右目に映る。

 酷い虚脱感に目を開けているのも億劫になってくる。


「あたしの忠告を無視した結果よ」


「……シンク?」


 保健室のベッドか、ここは?

 鈍くなった感覚だけど、体に被せられたいる布団の柔らかさくらいならわかる。

 そうか、ウィンを倒した後すぐに気絶したんだっけな。


「どのくらい寝てたんだ、俺?」


「ほんの2時間程度よ」


「そうか……」


 限界か。

 もう無茶できる体力もない。

 気力もすべて絞れるだけ絞りきった。


「悪いけど、あたしは行くわね」


 安否確認を終えたシンクが、窓の淵に立つ。


「どこ、行くんだ?」


「あたしはあたしのやるべきことがある」


「っ⁉︎」


 シンクがいる方に顔を向けると、驚愕の事実が飛び込んできた。

 窓の外にある景色が赤く燃えている!


「な、なんだよこれ⁉︎」


「戦争よ。あたしたちがウィンと交戦している最中にこの地区がやつらに制圧され、街が焼かれている」


 ぎしり、と反射的に歯嚙みをする。

 スイッチは既に切り替わっているはずなのに沸々と真っ黒な感情が湧き上がってくる。


「ふ、ふざけるな……」


 唇がわなわなと震える。

 怒りで視界がチカチカしてくる。

 俺の大切な人を奪うだけじゃなく、住んでいる街までも……。


「応援は呼んであるから、あなたの無事は保証するわ。それじゃあ」


 ひらり、とシンクが窓から飛び降りて校庭を走っていく。

 そんな後ろ姿を動けないままただ見つめているだけの俺。


 このまま黙って指を咥えているだけでいいのか?

 度重なる負荷でボロボロなのはわかっている!

 だけど、俺は誓っただろ。

 必ずあの野郎に復讐するって⁉︎

 そのためのヒントが俺の住む場所を焼き払っている。

 許さねぇ!


「ぐっ……があぁぁぁぁぁぁぁっ!」


 全身を襲う激痛を叫びで誤魔化しながら、ギリギリのところで起き上がる。

 ベッドから落ちるように床を踏みしめ、物に掴まりながらのそのそと歩く。


 そうだ、いい加減この左目もどうにかしないとな。

 すっかり血で固まった傷口だが、念のためと包帯を取り出す。


 震える手で必死に包帯をコントロールし、負傷した左目を覆っていく。

 ゆっくりと、呆れるほど丁寧に巻いていく。


 エイスとかいう野郎は絶対に逃さない。

 あいつを瀕死にして、ザンの居場所を吐かせてやる!


 目的をしっかりと固めながら、包帯を装着していく。

 そして、すべて使い切ったところで後ろ手に縛るとより戦いへの決意がはっきりとする。


「行くぞ!」


 晒される右目に強い灯火を宿しながら、俺は窓の先にある真っ赤な戦場を睨んでいた。


 ◆


 先程の戦いで得た力を早速顕現させてみる。

 やっぱり想像通りだ。

 さっきは左手に漆黒の剣が装備されていたが、今度は右手左手両方に漆黒の剣が握れている。

 これができるなら……。

 物は試し、と銃をイメージする。

 すると、両手にあった剣が形を変化させて親しみさえ覚えてきたあの黒銃へと変わる。

 やっぱり思った通りだ。

 俺の武器は遠距離、近距離どちらでも対処できるようだ。

 しかも能力はそれだけじゃなく……。


「ふぅ……行くか」


 焼けついた景色が一望できる校庭に佇み、覚悟を決める。

 おそらく街には部下の兵隊が待ち構えているはずだ。

 包囲される前に一気に抜ける!

 スタートの合図を切り、俺は校庭を駆け出した。

 どんどんと加速して、スピードが乗ってきたところで校門を抜ける。

 想像通り火に焼かれた街には予想した通り、武装した兵士たちが見張りのように等間隔で配置されていた。


「貴様はっーー」


 走り抜けながら近くの兵士の心臓を撃ち抜く。

 その発砲音に周囲の兵士がこちらの存在に気づくも、反撃のチャンスは与えない。

 塀を踏み台にして空高くジャンプ。

 うじゃうじゃと集まってきた兵隊が固まったところで銃弾の雨を降らせ、一度に大量の兵士の頭を飛ばす。


「ここだっ!」


 着地すると、散弾攻撃から生き延びた兵士が槍で伸ばしてくる。

 だが、俺もすかさず身を捻り右手の銃を剣へと変化。

 槍を躱しつつ胴体を切り裂き、真っ二つにする。


「ふぅ……」


 学校周辺の敵を殲滅したところで呼気を整え、前方を見る。

 ちっ、わらわらと湧いてきやがるな。

 誰か統率でもしているのか、多数の兵士が俺をターゲットに突撃してくる。


「テメェら雑魚に用はねぇ!」


 俺も引くわけにはいかない!

 剣を再び銃へと戻し、襲いかかってくる集団に対して正面から激突する。

 多対一。

 くる攻撃は躱し、隙あらば撃ち抜き、切り裂き殺していく。

 そんな血で血を洗う醜い争うに、俺は身をやつす。

 とにかく邪魔する奴は片っ端から排除していき、統率が崩れるのを待つ。


「ここで食い止めろっ!」


「なんだ、こいつ! 本当にこの世界の人間なのか⁉︎」


「ぐちぐちうっせぇんだよ! とっととテメェらのボスに会わせやがれ‼︎」


 攻めてきた連中には銃を乱射。

 それであらかたの数を始末し、生き残った者は接近して切り刻む!

 そして近場の敵を片付けると、エイスを探し街を走り回る。

 その途中に敵がいたらそれを倒し、また走る。

 ひたすら俺はその作業を繰り返した。


 ◆


 どのくらい時間が経過しただろうか?

 一体何人殺めただろうか?

 ひたすら暴れまくり、制服が返り血で赤く染まった頃にようやく目的の人物が姿を現した。


「……随分と派手に暴れまわってくれましたね」


 街の歩道橋からこちらを睥睨するエイス。


「はぁ……はぁ……ようやくお出ましか……悪いが白き死神(ホワイト・ハーデス)の居場所を教えてもらうぞ」


「両手に黒銃。どうやらあのときよりは力を身につけたようですね。部下もだいぶ殺されたことですし」


「冷静に状況分析している場合かよ」


 タンッ、と地面を蹴り大きく跳躍。

 常人ではあり得ない脚力で歩道橋の下から最短距離でエイスに肉薄する。

 空中で右の銃を剣へと変形させる。


 カキン、と金属同士が衝突する音が静まり返った街中に木霊する。


「なにっ⁉︎」


「……殺らせない」


 俺の一撃をガードしたのは、黒装束にガスマスクをつけた正体不明の男だった。

 ガスマスク野郎は手にしたチェーンで剣を弾き返す。

 その衝撃で体勢を崩し、地面に落下する俺。

 ギリギリ着地は成功したが、エイスとの距離は確実に離されてしまった。


「テメェ……」


「……我はハンス。エイス様の側近だ」


 マスクによりくぐもった声で自己紹介をするハンス。

 まだ、側近が残っていたのか⁉︎


「……エイス様。こいつは我がお相手します」


「そうか。任せたぞ」


「テメェ、待ちやがれ!」


 俺の慟哭も虚しく、姿をくらますエイス。

 こいつ、いま黒い影になった⁉︎

 驚く俺にチェーンが迫る。


「ちっ!」


「……我が存在を忘れてよそ見とは余裕だな」


 隙あらば仕掛けてくるってか!

 紙一重でチェーンを避けると、俺はすぐさまハンスから距離を取る。

 どうやらまずはこいつを倒さなければエイスには辿り着けないようだ。


「仕方ねぇ。テメェを半殺しにしてエイスがどこに消えたのか聞き出してやる‼︎」


「……やれるか、貴様に」


 睨み合い、対峙する。

 そんな時間が数分と続いた。


「んだよ、仕掛けてこないのか?」


「……そちらこそ」


「……」


「……」


 互いに緊迫し、心理戦となりどちらも動かなくなる。

 しかし、そんな読み合いを先に破り仕掛けたのはーー

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