連理とユキノ⑤
「あなた、それはどういう意味ですの⁉︎」
信じられないと瞳を大きく開き、念を押すような確認をするユキノ。
「どういうもそういう意味だ。あいつは俺が相手する。その間におまえは逃げろ」
「わたくしに仲間を囮にして逃げろと申しますの⁉︎ わたくしがそのような真似を許すとお思いですか?」
もちろんユキノはそんな提案を飲むわけがない。
当たり前だ。
ユキノがシンク同様、仲間を想っているのか少なくとも俺はその大きさを把握しているつもりだ。
彼女たちだけじゃない、黒きネクタルという組織全体から想いというのは溢れている。
それに触発されたせいか……いやデスペラードに貪られた中にわずかに残った俺の気持ちがユキノを失ってしまうリスクを恐れている。
「よく考えてみろ。おまえはいま手負いで正直足手まといにしかならない。なら、俺が戦った方がまだ勝機がある」
「それがあなたの本心ですか?」
「……そんなことはいま関係ないだろ」
ユキノの曇りない青い瞳が俺を正眼に捉える。
嘘を悟られまいとつい目を逸らしてしまうが、それが逆に仇となる。
「あなた、わたくしが死ぬかもしれないと恐れていますわね?」
「……」
図星を突かれてしまい、押し黙る。
沈黙は肯定と捉えたのか、ユキノがそのまま続ける。
「この前の任務で、シンクを強引にでも助けると豪語したのをみて、なんとなくは察しはついていましたが……やはりそうでしたか」
「……悪りぃかよ」
「いえ、恋人や親友、大切なものを数多く失った境遇なのですから失いたくないと思う気持ちが芽生えるのはごく自然なこと。ましてやその者たちの無念を晴らすために復讐を成し遂げようと戦いに身を投じているあたり、仲間を想う気持ちが支柱にあるからこそなのだと思いますわ」
シンクの質問の答えがいまになってようやく出される。
仲間……人を想うからこそ俺は復讐を決意した。
それが根本にあったから紫苑を失ったとき発狂し、怒り、憎み、そして白き死神を殺したいと願った。
「そこまで察しているから大人しく休んでろ……あいつは俺が殺る!」
「自惚れないでくださいませ!」
ユキノの声音が一段と強くなった。
激しく詰め寄り、俺の胸ぐらを掴もうとする気迫を帯びている。
「あなたがわたくしを失いたくないようにわたくしだってあなたを失いたくありません! それはかけがいのない仲間だからです‼︎ もちろんシンクもシドもサヤカもメアやウェスト、サクヤちゃん、黒き灯火のメンバー全員、誰ひとりとして失いたくありませんし、全員同じ想いを抱えて戦っていますわ!」
俺の心に呼びかけようとするユキノ。
分厚く、頑なに拒んでいた絶壁に僅かながら綻びが生じる。
「ですから……2人で生き残るためにわたくしに協力しなさい! ひとりで死んで仲間を守るくらいなら、みんなで生き残る確率の高い方に賭けなさい⁉︎」
「ひとりだと死ぬこと前提かよ……」
「いまのあなたの実力ではあの方には勝てませんわ。先程はうまくタイミングを合わせられましたが、おそらく同じ手は通用しないでしょう」
「ならどうすればーー」
「だからこそ、わたくしと協力するんですわ! ひとりでは敵わない相手でも、力を合わせて連携すれば勝機はみえるはずです!」
……連携。
エイス戦のリピートかよ。
「……ったく、シンクと同じかよ」
「あら、彼女にも同じ忠告を受けましたの? 珍しく意見が一致しましたわね」
「協力するにも、どうすればいいんだ? 俺はユキノと連携攻撃なんて練習してないぞ」
明確に頷くわけではないが、ユキノの提案を飲む意思を表示する。
すると彼女は、口端を釣り上げて笑った。
「ご心配には及びません。なにも合体必殺技を放つのが連携ではありませんから」




