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連理とユキノ②

 ユキノと訓練をするようになってから数週間が経った。

 ありとあらゆる能力を鍛えるために無茶振りの多いユキノの特訓メニューをこなしていくにつれて俺の基礎能力は以前よりも格段に伸びていた。

 そして本日もまたユキノによる訓練が行われる。


「それでは今日はあなたも所持しています古代秘具アーティファクトについて学んでいきたいと思いますわ」


 随分と今更なことだと思いかけたが、よくよく考えてみたら俺は古代秘具アーティファクトという武器についてシンクから簡単に教わった程度で詳しいことはなにも知らなかった。

 そんなわけで黙ってユキノの話に耳を傾ける。


「そもそも古代秘具アーティファクトとはこちら側の世界に古来より伝わる伝説の秘宝のことで、一説によると神の能力を封印して造られたという話もありますが、これに関しましては信憑性が薄いのであまり信用しなくてもいいですわ」


「そうなのか?」


 神様がどうとか正直スケールがでかすぎてついていける気がしないが、スルーして良いというならスルーしておこう。


「重要なのはここからですわ。古代秘具アーティファクトは伝説の秘宝と称されるだけあってどれも特殊な力を持っているのはもうご存知ですわよね?」


「あぁ……」


 銃の形態を自由に変化させたり、炎と氷を生成させる剣。

 風を自由に操ったり、相手に虚実をみせて自身を影と同化させたり、と少なくともどの能力も俺の世界の常識に当てはまらないものばかりで超常的なものだとわかる。

 そして俺の所有するデスペラードもまた、その例に漏れず超常的な力を発揮するものである。


「強大な力を宿す古代秘具アーティファクトはありとあらゆる物理法則を無視します。マヤちゃんのやってのけた通り、空間転移だって可能ですわ」


「それだけ聞くと随分と危険な代物なんだな」


「勘が鋭いですわね。あなたのいう通り、古代秘具アーティファクトはいまの時代が築かれる以前にも戦争の道具として各国が利用してきましたわ。その恐ろしいまでの破壊力により犠牲になった人々の数は計り知れません」


 冥福を祈っているのか、目を閉じ黙祷するような姿勢でユキノは語っていた。

 古代秘具アーティファクトはただ強力な武器ではない。

 簡単に人を殺めることのできる兵器なのだということを把握しておく必要がある。

 そんなメッセージ性をユキノからは感じた。


「さて、ここまでの話でしたらいままでの経験からなんとなく理解していたと思いますが今日の本題はここからですわ」


 悲壮感漂う空気を切り替え、ユキノがいよいよ本題を持ち出してきた。


古代秘具アーティファクトには固有スキルと呼ばれるものが存在するのはご存知でしょうか?」


「固有スキル……エイスのやつがそんなこといっていたような?」


「端的に述べてしまえばその古代秘具アーティファクトに切り札的なものですわ。古代秘具アーティファクトの所有者としてある程度力をつけ、その真価を引き出せるようになれば発動可能なものですが……百聞は一見にしかず、わたくしの固有スキルをお見せ致しましょう」


 そういって前方に手をかざすユキノ。

 なにが起こるのか注視していると、パキパキ、と周囲の空気が凍りつきやがて巨大な氷壁が生み出される。


「わたくしの固有スキル氷結錬成アイシクルメイル。左手から氷を錬成してそれを自由に形作ることがでますわ」


「固有スキルって古代秘具アーティファクトを離していても扱えるのか⁉︎」


 いまのユキノは例の双剣を装備していない。

 にも関わらず超常的な力を発動させてみせた。


「えぇ、古代秘具アーティファクトによっては所持していなくとも発動できるタイプのものもありますので覚えておいてください。敵の所有者がどのような固有スキルを有しているのか、またそれがわたくしのように直接所持していなくても発動できるものなのかどうか、その辺りを戦闘中に冷静に分析することこそが古代秘具アーティファクト所有者同士の戦闘を有利に進めるコツですわ」


 たしかに、シンクも古代秘具アーティファクトのネタを暴くことを重要視していたな……俺がエイスに勝てたのもやつのネタを見抜いてそれの弱点をつけたからというのが大きい。

 実体験も合わせてこのユキノの教訓は非常に重要だということは理解できる。


「そういうわけですので、今日はあなたの古代秘具アーティファクトにどのような能力が隠されているのか、その力の覚醒を目標に訓練していきますわよ」


 こうして今日も俺とユキノの特訓は始まった。


 ◆


 結果的にそう簡単に固有スキルなど覚醒できるはずもなく、便宜上は覚醒と述べた古代秘具アーティファクトの力をコントロールする訓練が終わった。

 そのあと、汗を流しところでボスから召集がかかり俺とユキノは会議室へと足を運んだ。


「突然で悪いけど、いまからあなたたちには表世界に行ってもらうわ」


 唐突に舞い込んできた任務。

 数週間ぶりに自分のいた世界に戻れるという嬉しさもあるが、急を要する事態かもしれないという不安の方が大きかった。

 もしかしたらまた侵略戦争が起こるのかもしれない。

 あの悲劇が脳裏をよぎり自然と肩に力が入る。


「そんな不安そうな顔をしなくても大丈夫よ。今回は威力偵察部隊の撃破だから」


 俺の心情を察したのかボスが静かに宥めてくれる。


「威力偵察部隊?」


「要は下調べですわ」


「次に戦争を起こす地域の情報を事前に調査することで効率よく制圧するために派遣される部隊が威力偵察部隊よ」


 ユキノに続く形でボスが解説してくれる。


「いまここで叩いておけば地域の情報が国に渡らないので戦争の開始を遅らせることができる、ということよ」


 まるで俺を作戦に誘導しているかのように焚き付けてくる。

 もちろんあんな地獄を他の人々に与えようだなんて毛頭考えていない俺にとって、その煽り文句に乗らない手はなかった。

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