episode24〜選択〜
「すると狙撃ポイントで構えていたところをデイダラに襲撃され、その際シンクはなぜか負傷しているにも関わらずあなたを逃し自ら囮となった、と」
シドと合流するため雑木林を駆けながら、ユキノに事の経緯を掻い摘んで説明した。
既にユキノからの情報は提示されているためシンクが捕まったことは知っている。
「はぁ〜あの馬鹿」
俺の話を要約したユキノは徐にため息を吐いた。
「っか、なんでシンクは俺を突き飛ばしたりなんてしたんだ?」
緩やかな傾斜なため落ちても致命傷になるようなことはないが、それでもあの場は俺がしんがりを務めるべきだっただろう。
「おそらくあの子はあなたを危険な目に遭わせたくなかったのでしょう」
「俺を?」
「人様の事情ですので踏み入った事まではお話しできませんが、昔あの子は大きな失態を犯し後悔したことがあるのです」
「……そう、なのか」
どう反応するのが正解なのかわからず、困惑した中途半端な返事をしてしまう。
「そのときからでしょうか、あの子が人を救うことに酷く固執するようになったのは……わたくしたちは人を殺すことしかできないというのに」
言葉を語るユキノはすごく辛そうだった。
不安や焦燥に瞳を揺らし、ひとつひとつの言葉を噛み締めている。
「ほんと、お笑いぐさです。わたくしたち人殺しが人を救おうだ、なんて」
理想と現実。
無情にもこの両者は必ず相反してしまうものである。
そんなどうしようもない事態に最後まで足掻くシンクに、途中で放棄するユキノ。
いまの会話から、そういったことが連想された。
なら、俺はどっちなんだ?
紫苑の復讐のためにいま戦っている俺だが、本心は一体どこにある?
人を救うためなのか?
それともただ単純に殺して自己満足を得るためなのか?
「ですが、シンクは違います。たとえわたくしたちの行なっている正義が汚れているとしても、守れると信じて戦っています。だからこそ、あなたの恋人さんを救えなかったことを酷く後悔しているんですわ……もう少し自分が早く到着していればあなたにあんな思いをさせずに済んだかもしれない、と」
「そう、だったのか」
だから、あいつは俺を危険な場所から遠ざけて……今回の作戦も俺が命の危機に晒されないように、無茶をして参加したのか。
「ふ、ふざけやがって!」
「なっ、あなたいまのわたくしの話を聞いての答えがそれですの⁉︎」
気づくと俺は舌打ちをしていた。
その反応は予想外だったらしく、ユキノが隣で驚嘆している。
「俺は復讐者だ! 自分が望んでここにいる! いくら障害が立ちはだかろうと、全部ぶっ壊して必ずあいつを殺してやる‼︎」
何事も定まっていない俺だったが、シンクの理想はなんとなく理解できる。
いや、きっと俺もあいつと魂胆は同じなのだろう。
だからこそ……。
「だから、余計なお世話だって、伝えてやる! あいつを助け出してなっ⁉︎」
「あ、あなた……」
俺の意を汲み取ったのか、ユキノの顔色が明るくなる。
いまの自分がなにを求めているかは正直わからない。
それでも俺は、いま助けることが必要だと悟ったこの判断に従う!
「残念ながらそいつは聞き入れられませんぜ連理」
俺がそう宣言した瞬間、頭上からひとつの影が降ってきた。
シドだ。
この作戦を指示し、俺たちの合流相手でもあるシドが自ら姿を現してくれた。
「話は聞かせてもらったぜ。悪りぃけど、ここで作戦中断だ」
「「なっ⁉︎」」
突然の告白に俺とユキノが衝撃を受ける。
「それって、どういう意味だ」
必然的に視線が激しくなり、睨みながらシドを問い詰める。
「そのままの意味だ。俺たちはこのままアジトに帰還する。俺の方からウェストたちに報告するからおまえたちは先に戻っていろ」
「それはつまりシンクを見捨てるってことか?」
「あぁ、虚飾なしにいえばそうだが?」
「そんなのあんまりーー」
「ふざけるな!」
ユキノを遮り、俺は無我夢中で叫んでいた。
「おまえたちは仲間じゃなかったのか⁉︎ まだ生きているやつをそう簡単に見捨てるのかよ……俺たちには救えるかもしれない力があるっていうのに、戦わずして背を向けるっていうのかよ‼︎」
「目的を履き違えるんじゃねぇよ」
俺を見つめるシドの眼光が鋭くなる。
いつものおちゃらけた態度から反転し、真面目な雰囲気のシドがそこにはいた。
「俺たちは民を脅かすこの腐った国を変えるために戦っているんであって、今回の富豪を始末することは国を変えるための必須事項じゃねぇ。それに七影剣が護衛にいる限り、ラゴウを抹殺するためには否が応でもあいつと交戦する必要がある。策もなしに突っ込めば余計な被害が出るだけだ」
「だから仲間を見捨てろと?」
「そもそも俺たちは囚われた仲間を助けるなんてリスクを冒すような真似はしねぇんだよ」
「なら、おまえらは先に戻ってろ。ここからは俺がひとりでやる!」
デスペラードを召喚し、交戦の意を表明する。
「あなたそれ本気でいってますの⁉︎」
「あぁ、みんな大人しく帰還するってんなら残って俺がやるしかねぇだろ」
「悪りぃけど止まれ」
屋敷に戻ろうとする俺を鋭い声でシドが制した。
胸元にナイフが突きつけられる。
容赦のない、冷酷な瞳でシドは味方に刃を向けていた。
「俺たちは小規模ながら組織だ。誰かひとりが調和を乱すような真似をすればよくよくは組織全体の傷になる。最悪、ここで壊滅なんて展開もあり得る」
「……だからって共に戦う仲間を見捨てる理由にはならねぇだろ」
「俺たちが潰れれば民は国の権力に押し殺される。俺たちの戦いにかかった命の重みはひとつじゃ釣り合わないほどにでかいものなんだよ……」
シンクの命の重さとこの組織が背負うすべての民の重さは比べ物にならない、そういいたいのだろう。
俺と真っ直ぐ対峙するシドの目に迷いはない。
本気で俺を刺す覚悟もできている。
「それに、サクヤちゃん、ボスの意向に逆らった者は理由がどうあれ処罰しなければならない。組織が円滑に動くためにはルールとそれに伴う罰が必要だってことくらい、わかるよな?」
組織、いや社会が成り立つためにはある程度の決まりと、それを反した者への処遇を用意するのは常識だ。
「最終忠告だ。さっきの戯言を訂正して、俺の命令に従え」
「断る」
意外とすんなりとその言葉が口から出た。
◆
どうして俺はいまここにいる?
ふと自問自答する。
なにかを守るため、なにかを得るため?
それとも己の欲望のため?
わからない、というのが正直な答えだ。
だけど、鮮明にわかっていることはひとつだけある。
それは……。
「あぎゃぎゃぎゃ、まさか自分から俺の前に姿を現してくれるとはなぁ」
「悪いが、テメェをここで始末する!」
俺はこの男と戦い、殺す!
それだけは俺の意識にはっきりとこびりついていた。
◆
「っははは、いやぁ予想以上の反応だ」
連理が消えてからすぐ、シドは噴き出した。
「随分と悪趣味な演出ですわね」
途中からシドの真意に気づいたユキノはあえて彼の言動を黙って見守っていた。
そもそもサクヤの意向に仲間を見捨てて良いなんてものはない。
むしろ、仲間という存在を彼女自身がなによりも尊重している。
その意向に逆らうといのは、この状況ではシドの下した判断の方だ。
「いやぁ、あのまま素直に俺の指示に従っていたらそれこそ、まじでぶっ殺そうと思っていたけど……どうやらあいつにもちゃんとこいつが備わっていたみたいだな」
トンッ、と自分の胸を叩くシド。
それが意味することを察したユキノは静かに頷いた。
「それで、具体的にはどうしますの? まさか無策でシンクを助けるだ、なんて思ってはいませんよね?」
「あぁ、もちろん。この状況ついでだ。連理にはとことん暴れてもらおうじゃないか」
ニヤリ、と顔を綻ばすシド。
そうシンクにいい残すと、自分はフードで素顔を隠して闇へと消えるシド。
「はぁ……」
独りになったユキノは、やがてため息を吐きながら茂みに隠れ、メイド服を脱ぎ捨てた。
そのままシドが置いておいてくれた服に着替えるとマントを羽織り、フードを深く被る。
「では、わたくしも少し暴れるとしましょうか!」
両手に炎と氷の剣を携え、ユキノもシドに習いニヤリと笑った。
彼女のやることは既に決まっていた。
昨日より、小説家になろうにて新作、最強ゲーマーな俺がカードゲームがすべての世界に異世界転移したら最強伝説が始まった件についてを投稿しました!
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