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episode20〜孤高のハンター〜

「次のターゲットが決まった」


 人気のないカフェへと移動した俺とユキノは正面に座るシドから一枚の写真を差し出される。


「さっきの悪趣味な公開処刑の実行犯である資産家のラゴウだ」


 あの忌々しいおっさんが写された写真が目に飛び込んできた途端、あの惨たらしい光景が脳裏をよぎり、静まったはずの感情に火が点いた。


「よしっ、今夜にでも結構しよう!」


 反射的に机を叩き、シド相手に身を乗り出した。


「少し冷静になりなさいな」


 焦る俺の頭をユキノが小突く。


「まぁまぁ、落ち着けって。血気盛んなのは結構だが、その勢いは夜のお供のときにでも取っておいてくれ」


「シド! あなたも余計な茶々を入れないでください⁉︎」


 ニヤニヤと両手の人差し指を合わせるシドにユキノが赤面しながら叱責する。


「はいはい。あんな小説や漫画が大好きな割にほんと純情なんだからユキノちゃんは」


 やれやれとシドが呆れたような仕草をする。


「そ、それとこれとは話が違いますわ!」


 ってか、あんな小説や漫画ってなんだ?

 特別気に留めてはないのでスルーするけど。


「そ、それで……話を戻しますけど、今宵に仕掛けるのですか?」


 ごほん、とわざとらしく咳払いをしてユキノが脱線した話の道筋を正す。


「いや、それは無謀だ」


 シドが真剣な眼差しで答える。

 おふざけモードから切り替わった真面目モードとでも称するべきか。

 さっきまでの顔と180度違う。


「連理には悪いが、今回は慎重にいかせてもらう」


「屋敷に侵入して抹殺するのではダメなのですか?」


「それも考えたが、ラゴウは随分と用心深いやつでな、護衛の兵士やら部隊を帝国の軍からかなりの数を雇っているんだ」


「そうなりますと、必然的に強行突破という手段は勧められませんね」


「どうしてだ?」


 ユキノとシドで意思疎通ができているようで、話が幾ばくもなく進んでいくが、俺には疑問点が浮上しているため、つい口を挟んでしまった。


「ユキノの実力なら護衛の兵士くらいまとめて倒せるだろ? それに他のメンバーだって俺より全然強いんだろ? なら多少強引にでも攻めいれば首を取れるんじゃ……」


「ご明察。たしかにおまえの読み通り、俺たちの実力なら多少強引にでもターゲットは始末できる」


「ですが、かつて帝国に従軍していたサクヤちゃんやウェストはともかく、基本的にわたくしたち構成員の素性は破れておりません。仮に強硬手段に出たとして、ターゲットを始末できたとして、多すぎる兵士の中からひとりでも取り逃がしたものならすぐさまわたくしたちの顔が国にバレてしまいます」


「そのリスクを最小限に減らすっていうのが今回の作戦だ。理解できたか?」


 シドとユキノ交互に説明されてようやく合点がいった。

 たしかにここで素性がバレるものなら今後の戦いに影響が出かねない。

 一刻も早くターゲットを仕留めないといけないのだが、自分たちのリスクも考慮した上で慎重に動かなければ自傷の危険を伴うということだ。


「それで、具体的にはどうするつもりなんだよ?」


 迂回の道を聞くと、待ってましたとばかりにシドの口元が綻ぶ。


「あぁ、今回は珍しくこっちから宣戦布告をしてやろうじゃないかって、な」


 ◆


 静寂とした闇が包み込むオラシオンの夜。

 俺はそんな闇に紛れるように漆黒のマントを羽織り、黒の世界へと溶け込んでいた。


 現在俺は、ラゴウの屋敷を囲う雑木林の中に身を潜めている。

 情報だとそろそろ警備部隊が巡回を始める頃だな……。


 シドからいい渡された作戦、それは……。




「護衛部隊を排除する⁉︎」


「正確にはその部隊長だ」


「なるほど、まずは護衛の勢力から削いでいくということですわね」


「そういうこった。そして慎重なラゴウのことだ、護衛がやられたとなったらすぐにでも人員を補充しようと動くはずだ」


「動いたとして、それがどうなるっていうんだ?」


 肝心な本質が見えずにいる俺は、またしても質問してしまう。


「潜入だよ。その補充人員の中に変装した俺たちメンバーの誰かが紛れ込み、隙をついてラゴウを始末する。そして別部隊として予め配置したおいたやつらが残った護衛をまとめて排除する。どうだ、完璧な作戦だろ?」


「つまり、いまの俺たちがやるべきことは護衛部隊の暗殺というわけだな」


「おいっ、少しは完璧なプランを練った俺を褒めろよ……」



 シドとの会話を回想しているとちょうど良い時間帯となった。

 茂みに隠れて、舗装された林道を見張る。

 すると軽い武装をした男が2人、歩いてきた。

 1日しか感覚は空いていないはずなのに随分と久しぶりに戦う気がする。

 短いブランクを埋めるために、試しにデスペラードを召喚し、握ってみる。


 よしっ、いけそうだ。


 確かめた感想は、十二分。

 俺は両手に漆黒の剣を携えて、そのときを待つ。

 ゆっくりと、こちらに向かって歩いてくる兵士。

 あと、5歩、4歩、3、2、1……作戦開始っ⁉︎


 俺は両足の筋肉を爆発させ、バネのようにそれを利用して一気に加速する。

 俊足で茂みから飛び出すと、兵士2人が俺の存在を認知するより早く、2つの首が空中を舞う。


「闇討ちが基本ってならこういう戦い方を学べってことだよな?」


 すぐさま血に濡れた剣を払い、穢れを落とすと次のターゲットを探し俺は林を駆ける。

 情報によるとラゴウは2つの護衛部隊を雇っているらしく、その両方共に部隊長がいるらしい。


 とりあえず、部隊長をこの戦場に誘き出すところから始めないとな……。


 樹木を飛び回りながら、護衛を発見し次第斬り殺す。

 そんな単純作業を繰り返す傍で俺は部隊長らしき人物を探す。


「ほほう、随分と暴れまわっているみたいじゃねぇか」


 10数人の兵士の首を刎ね終えた直後、暗闇の中から雑魚な兵士とはがたいが違う大柄な男が登場した。

 全身から溢れるオーラがそいつの威厳や風格を表す。


「てめぇが部隊長さんってやつだな」


「がっはっはっはっ! いかにも、俺は帝国第26部隊隊長のオルガだっ⁉︎ その身なり、どうやら貴様が巷を騒がせている悪党の黒き灯火(ネクタル)だな。こいつはちょうどいい、テメェの首を皇帝様に献上すれば俺も一気に昇進ーーっ⁉︎」


「ベラベラと口数だけは達者だな」


 面倒だったので台詞の途中から切りかかってしまった。

 わざわざ律儀に長ったらしい台詞を聞いてやる義理もないので、そこらで殺した兵士と同じように首を刎ねてやったが……。


「瞬殺だったな……こんなんで任務達成でいいのか?」


 重い肉体が地面に転がると、あまりの呆気なさに自身の行動の真偽を確かめてしまいそうになる。


「俺のノルマは片付いたし……とりあえず命令通りシドたちと合流するか」


 ◆


 ラゴウの屋敷のちょうど北に位置する雑木林。

 こちらは、ウェストとメアが担当していた。


「朧三日月ッ‼︎」


「がはっ⁉︎」


 ウェストの暗殺拳がもうひとりの部隊長の胸元を穿つ。

 瞬間、技を喰らった肉体は内部から破裂し、爆裂四散。

 血の雨を辺りに降らせながら肉塊ひとつ残さず死んでいった。

 こちらもうまく闇に紛れながら敵兵を暗殺し、最後に登場した部隊長も無事に撃破しノルマ達成となる。


 そんな様子をユキノとシドは木の上から観察していた。


「はぁ〜」


「順調に作戦が進行しているっていうのに、ため息なんて吐いてどうした?」


「いえ、作戦のことではなく連理のことですわ……」


「あぁ、なるほどね」


 ユキノの一言でシドはすべてを察する。

 連理は作戦が開始する前、ひとりでオルガ率いる部隊と交戦するという申し出をしたのだ。

 もちろん経験の乏しい連理をひとりで作戦に導入するなんて真似、ユキノは拒否したのだが、強引に押し切られもうひとつの部隊をウェストとメアに任せて行ってしまった。


「本来であれば無理にでも止めるべきでしたのに……わたくし」


「そう自分を責めなさんなって。それにあいつのあんな目を見たら誰だって止められないって」


「ですが……」


「おいっ、こっちは片付いたぞ」


 強く反論しようとするユキノを遮りウェストがシドに合図を送る。


「積もる話は戦場以外で、だ。よしっ、任務達成、連理と合流してずらかるぞ!」


 シドの合図で4人の暗殺者は一切の痕跡も残さずにその場を去っていったのだった。

 ただひとり、ユキノだけは帰還途中ずっと浮かない表情をしていた……。

引き続き、面白ければブクマ、評価、感想等よろしくお願い致します。

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