episode18〜死を招く古代秘具《アーティファクト》〜
投稿時間を18時台に変更致しました。
これからも絶望トリガーをよろしくお願い致します。
「俺が死ぬ?」
「ど、どういう意味ですの⁉︎」
衝撃の事実に固まる俺の横でユキノが声を荒げる。
「そのままの意味だ。デスペラードは所有者の絶望を吸収し、人間のリミッターを強制的に外す古代秘具だ」
「人の限界を超える……」
ウェストの解説は間違ってはいない。
現に俺はつい朝方まではただの高校生だったが、古代秘具を手に入れてからこちらの世界の殺人集団と互角に渡り合えるほどにまで強くなった。
身体能力強化に感覚の鋭敏化。
それらはすべて俺の中での人間の常識を超えていた。
復讐に必死でそんな単純なことを見落としていたが、改めて考えると俺はもう既に人という枠に収まってはいない。
「その感じだと心当たりはあるようだな。リミッターを解除し続ければ当然肉体はその負荷に耐えきれなくなり自壊する」
「それではあの暴走も!」
「おそらくは無理にリミッターを外したために起こったものだろう。このまま無茶に強化を繰り返せばいずれ、自分の自我すべてをデスペラードに乗っ取られるぞ」
「……そうか」
脅されているはずなのに、俺の返事は意外にもあっさりとしていた。
自分でもどうしてこんなに冷静でいられるのかわからない。
「おそらくメアの太刀筋が目視できたのもデスペラードによる強化のおかげだろう。動体視力が異常なまでに発達させられている証拠だ」
「……だけど、己のリミッターを外さなければあいつは殺せない」
「あなた……」
「おまえはその目的のためなら人を辞める覚悟があるっていう意味か?」
「あぁ、俺は誓ったんだ。どんなに苦しかろうと絶対に紫苑の仇を討つって! それだけはどんなことがあろうと揺らぐことはない⁉︎」
瞬間、殺意を感じた。
鋭い眼光と共に肉薄。
俺の心臓を狙い太刀が一閃される。
「なにするんだ……」
ギチギチと、鋭い一太刀をデスペラードの剣腹で受け止めながら切りかかった本人に問いかける。
淡い色の瞳に紫紺色の髪をした、袴のような衣装を着た少女は真っ直ぐに俺を見つめながら木刀を震わせる。
お、重い……こいつこんな小柄な体格なのになんつー重い一撃をかましてきやがる!
「……うん。ウェストのいう通り反応できてる」
力比べになった途端、スッと木刀を離す。
「まさか、それを確認するためだけに攻撃しましたの?」
「……うん」
こくん、と悪びれる様子もなく頷く少女。
「相変わらずの不器用っぷりですわね……ほらまずは挨拶なさい」
「……メア」
紫紺色の少女は無表情にいう。
「えーと、それだけ?」
「……それ以外にあるの?」
ぽつり、と細い声で語るメア。
名前以外知りたい情報なんてないから特別突っ込む意味はなかったな。
「悪い、なにもなかったな」
「……うん」
「独特の空気感ですわね」
「だな」
俺とメアのやりとりを間近で見るユキノとウェストが不思議そうな表情をする。
俺としてもこの子とどう関わったらいいかわからないのだが?
顔立ちも幼いし、中学生くらいの歳だろ。
「……ウェスト、特訓の続きやらないの?」
「あぁ、悪かったな中断して。それじゃあ俺たちは訓練の続きに戻らせてもらうぞ」
メアに触発され、ウェストは訓練を再開する。
そういえば、なんか話途中だったようなそうでないような?
「なぁ、ユキノ。俺たちなにか話忘れてないか?」
「わたくしも思い出せませんわ。はぁ、あの子が間にくるといつもこうなりますわね」
ぽつり、とため息を吐くユキノの姿が隣にあった。
◆
夜。
俺は自室として与えられた部屋のベッドで横になっていた。
窓から差し込む月明かりに照らされた部屋はまだ薄明るく、寝るには少し不便だった。
「……死ぬ、か」
ウェストにいわれた言葉を思い出し、つい反芻してしまう。
怖いとは思っていないが、確実に自分という存在を削られているような感覚が俺の中に芽生えている。
異常なまでに活力に満ちている体がその証拠だ。
あれだけ激しく戦ったにも関わらず……。
人間の限界なんてとっくに超えている。
「やっぱり人間辞めかけてんだな、俺……」
デスペラードを手にするために己の情を捨てたときからそうだ。
あのときから恐怖という感情は消え、怒りや憎しみといった負の感情に酷く敏感になっていた。
戦闘モードに切り替えなくても、そのような感覚は継続している。
おそらくデスペラードの影響なのだろう。
深く感情に結びつくことで本人の負の感情を強制的に放出させるとか、そんな感じだろうか。
とにかく、もう後戻りなんてできない。
俺は、仮に復讐を遂げたとしても普通の人生は送れないだろう。
まぁ、いまはまだ表世界で普通に生活していたあの頃のような態度を自分で意識することできるレベルなのだが、おそらくこのコントロールもいずれは……。
「便利なんだか、不便なんだか……」
そのうち睡眠すら取る必要なくなってな。
などと内心で冗談めかし気持ちを落ち着けると俺は安楽な世界へと落ちていくのだった。
◇
真っ暗な世界をロウソクの灯火だけを頼りに照らした会議室に、密かにシドとサクヤは集まっていた。
「これが今回の収穫だ」
シドは書類を纏めた紙の束をサクヤに渡す。
その書類に軽く目を通しただけで、現在のオラシオンの財政がどうなっているのかを把握する。
「どうやら次のターゲットが決まったようね」
「あぁ、そいつは民衆に恐れられているだけじゃなく、国に莫大な投資をしているをようだぜ」
「狩れば間違いなく王政に打撃を与えられる……すぐに行動に移るわよ」
「りょーかい、サクヤちゃん」
悪ふざけだ様子だが、シドは至って真面目である。
そういうものだと察しているサクヤはふざける彼を咎めようとはしない。
「それと良い機会だから、明日ユキノに連理を帝国に案内させるわ」
「へぇ〜それはまたどうして?」
「ふふっ、ちょうど良い機会だといったでしょ? いまなら彼はあの国の現実を知ることができるはずだがら……」
陽炎に揺らめくサクヤの影がニヤリ、と笑った。
「さぁて、あの光景を目の当たりにしたら彼は一体どんな反応を示すかしら?」
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