episode17〜黒き反逆者たち〜
正式に黒き灯火へと加入した俺は、メンバーを紹介しておこうというボスの意思により、会議室に待機させられていた。
ちなみにシドは情報収集があるということでアジトを離れている。
待たされること数十分。
重たい会議室の扉が開いた。
「ようやく着たわね」
「おまえは!」
不敵に微笑むボスの傍で俺は声を上げる。
「おまえとは、相変わらず無作法な方ですわね」
豪奢な金髪をなびかせながら登場するユキノは怪訝そうに眉根を寄せていた。
既に2度も対面しているため特別驚きはしないと思っていたが、その衣装に目を見張ってしまう。
「な、なんだその格好、コスプレか?」
黒のマントに覆われてわからなかったが、ユキノはボス同じく白を基調に薄青色のアクセントがついたロリータドレスを着ていた。
「ふふっ、どうです? 可愛いでしょ?」
ドレスに触れられ、上機嫌となったユキノがその場でくるりと一回転する。
「まぁ、たしかによく似合ってはいるが……」
お嬢様気質が強いユキノは特にドレス衣装がよく映える。
それは間違いないのだが……。
「そんな動きにくそうな格好でいざというときに戦えるのか?」
「あらご心配なく。このドレスはわたくしが改良を施したバトルドレスとなっていますのでこの格好のまま問題なく戦闘ができますわ! 通気性にこだわった素材に、絶妙な整えられたバランス。おまけにスカートをフレアタイプを採用しておりまして、この中にはわたくしの古代秘具も隠して収納してありますの!」
スカートを軽く翻し、ちらりと健康的な太ももを露出させるユキノ。
すると大腿部の中央より少し上あたりにホルスターが装着されており、そこには先の戦いでも目撃した刀身のない剣の柄が取り付けてある。
「ちなみに我らがサクヤちゃんのドレスもわたくしがデザインし、製作致しましたのよ!」
「そうなのか?」
「えぇ、そうよ」
振り返り尋ねると、ボスは明らか不服そうに頷いた。
「ただでさけ幼児体型なのに、余計にロリに見えるから嫌だと断ったのだけど、しつこく頼まれてね」
ボス立場弱くないか?
「やはりロリ体型にはロリータドレス。ロリータドレスとはロリのためにあるといっても過言ではありませんわ!」
なんか突然力説し始めたんだが?
「とりあえずその口を閉じて、さっさと連理にアジトを案内してもらえるかしら?」
ぞくり、と背筋に悪寒が走る。
ロリ発言に怒りを露わにしたボスが全身からものすごいオーラを放出する。
「わ、わかりましたわ。ほ、ほら行きますわよ!」
その気迫に圧倒されたユキノがわなわなと震えながら会議室を後にする。
こ、こえぇ……。
自分に向けられたものではないとはいえ、背筋が凍るような気迫に俺までもが恐怖に慄いてしまう。
「おいっ、なんなんだよあの威圧感」
会議室を出て、真っ先にユキノに問う。
「当然ですわ。ああ見えて元皇帝の騎士のNo.4虚無の魔女という異名で民衆ばかりか帝国軍にまで恐れられていたお方ですわよ!」
「ボスって元々敵側の人間だったのか!」
さらりと明かされる衝撃的事実に目を見張る。
「逆らえば塵も残らず消されるでしょうね」
ボスに逆らうのだけは絶対にやめておこう。
そう俺は心に誓った。
「とにかくここにいても時間の無駄ですし早速、アジトの中を案内致しますわね」
ついてこいといわんばかりに先導するユキノの背を追って、俺はアジトを回っていく。
◆
ユキノに案内され、一階にある食堂、浴場、大広間の場所を把握する。
建物を回ってみて改めて感じたが、本当に立派な構造をしているなこのアジト。
下手すれば山奥にある旅館として売り出しても稼げるレベルだ。
「大きな部屋はこれですべて紹介しましたので、細々とした部屋は利用する際に近くの人にでも聞いてください」
「わかった」
元々メインはアジトの紹介ではなく黒き灯火のメンバーの紹介なのだろう。
ユキノの案内があっさりとしていたためなんとなく想像がつく。
「お次はわたくしたちの仲間を紹介致しますわ。最も、シンクやわたくし、シドやボスは知っての通りですので、紹介するメンバーは少ないですが……っと、噂をすれば」
渡り廊下の先、ユキノの視線を追いかけるとそこには長くふんわりとした黒髪の少女が佇んでいた。
ユキノは早速その黒髪少女に近寄り、俺を呼ぶ。
「ユキノさん、その人は誰ですか?」
黒髪の少女は、俺を見るなり大きなエメラルド色の瞳を瞬かせる。
すらりと長い手足にほんわかとした雰囲気の漂う顔立ち。
とてもじゃないが、クーデターを企てる反逆者には見えない。
「今日からわたくしたちの仲間になる雨宮連理ですわ」
「そうなんですか。わたしはサヤカ、よろしくお願いします」
律儀に頭を下げて自己紹介するサヤカ。
髪の毛が舞うと同時にふわりとした甘い香りが鼻腔をくすぐる。
香りだけでなく口調もゆったりで甘ったるい。
「こちらこそよろしく」
「ところでこんなところでなにをやっているんですの、サヤカ?」
「あぁ、そうでした! ごめんなさい、わたしこれから用事があるんでした。連理さんまた日を改めてお話ししましょう!」
何度も頭を下げて、パタパタと忙しく去っていくサヤカ。
……ほんとモデルみたいな美少女だな。
体格といい、顔立ちといい、人を殺めるようには見えない。
「あら、黒き灯火一の美少女に目を奪われていますわね」
「そういうんじゃねぇよ……なんつーか、人を殺すようなやつには見えねぇよな、あいつ」
「たしかにあなたのいっていることは理解できますが。ですが、ご安心を。少なからずまで彼女はいまのあなたの数倍はお強いですわよ」
「ちっ、そうかよ」
「ふふっ、妬きましたわね。しかし本当のことですわ。そのうちあなたもサヤカの実力を知ることになるでしょう」
くすりとおかしそうに笑うユキノ。
まぁ、俺は誰かと競い合うつもりはないので特別悔しくもなんともないのだが……。
◆
「こちらは訓練場ですわ。主に古代秘具の力を調節したり、戦闘に必要な技術を磨く訓練に使用されたりする場所ですわ」
続いて案内されたのは本館から少し離れたところにある大きく開けた道場だった。
床材質は畳で、広さは学校にある体育館とさほど変わらない。
さらに、襖を開放した先には外からの光が差す解放的な空間があり、野外訓練もできるようになっている。
「そして、たったいまあちらで訓練をなさっている2人でメンバー全員の紹介が終わりますわ」
ユキノの示す先にいたのは、畳の上で木刀を振るう袴姿の少女と、それを素手で受け流す長身の青年がいた。
「すごい剣捌きだな、あの女の子。確実に相手の急所を狙っている」
「あなたあの子の太刀筋が見えますの?」
「あぁ……それがどうした?」
「気になっていたのですが、あなた本当にあちらの世界の人間ですの?」
「自分ではそのつもりだが?」
「相当な鍛錬を積んだものでないと、あの子の剣筋を見極められるだけの動体視力は身につきませんわ。あちらの世界の一般人には刀が抜かれたことすら気づけない可能性すらあるというのに……あなたは」
「それはおそらく古代秘具の影響だ」
ユキノの疑問に答えるように、ひとりの青年が割って入ってくる。
さっきまで木刀を振るう袴少女と稽古をしていたあの青年だ。
俺よりも頭ひとつ高いすらりとした立ち姿にボディガードが着るような黒スーツを模したデザインの服装に身に纏ったその青年は、こちらに軽く睨むような視線を送ってくる。
「どういう意味ですの、それは? あと、目つき悪くなっていますわよ?」
「悪りぃかよ。こちとら目つきの悪さは生まれつきなんだよ」
ユキノの指摘にがしがしと軽く癖のついた髪を掻く。
「俺はウェストだ」
その流れで自己紹介。
サヤカと比べぶっきらぼうな挨拶だが、馴れ合いを望んでいないこちらとしては有難い限りだ。
「それよりもどういう意味だ。古代秘具の影響っていうのは」
「自己紹介もせずにいきなりかよ……まぁ、こっちはおまえの情報はシンクたちから別にいいんだけどよ。だが、その説明の前におまえには謝っておかないとな」
「なんの話だ?」
「悪かったな。暴走を止めるためとはいえ、殴るような真似して」
本気でなんの話なのだがわからない。
謝られる理由がわからずフリーズしていると横からユキノが小声で囁いてきた。
「あちらの世界のベッドで説明したことですわ。あなたが暴走して、それをウェストが力技で止めた、要するにそういうことですわ」
「あぁ、そういえばそんな話があったな」
「体の方は大丈夫そうだが……問題ないねぇか?」
「特には」
「そうか……力をセーブしていたとはいえ、俺の技を喰らってこんなに早く回復しているってことは」
なんか独りでブツブツとごちるウェスト。
そんな彼に今度はユキノから話しかける。
「いわれてみればそうですわね。全力でないとはいえウェストの技をまともに喰らったのに一日も経たずしてここまで回復しているなんて信じられませんわ」
「おいっ、さっきからなんの話をしているんだ?」
「悪りぃな。置いてけぼりにしちまって。それで話を戻すが、おまえの持つ古代秘具、そいつの能力については把握しているのか?」
「……なんとなくは」
曖昧な回答だが、実際にそうだ。
エイスとの死闘で死にかけたとき、力を得るための代償として古代秘具にあるものを捧げた。
等価交換。
つまり、俺の古代秘具は代償を支払うことでその対価として力を得ることができるタイプのもの。
そういうことになるのか?
「おまえの持っている古代秘具はデスペラードといって、俺やサクヤが皇帝の騎士に所属していた頃に、皇帝自らが管理していた代物だ」
「なっ!」
「ウェスト、おまえも帝国に所属していたのか⁉︎」
俺とユキノが同時に驚いた。
「あぁ、俺は元皇帝の騎士No.5で破壊の使徒という異名を貰っていた」
「いえ、そんなことよりも彼の所持している古代秘具が皇帝の管理物だったというのは本当ですの⁉︎」
予めウェストの素性を知っていたユキノは、俺の疑問を無視してウェストに問い詰める。
「直接謁見したのはサクヤだが、あいつがいっていたことだからまず間違いないだろう」
「では、どうして帝国の庇護下にある古代秘具があちらの世界の一般人の手に顕現しましたの⁉︎」
「知るかよ。少なくとも俺やサクヤが皇帝の騎士を抜けてからそれなりに時間が経つ。その間に持ち去られたと考えるのが妥当じゃないのか?」
ウェストにも原因はわからないらしく、可能性を論じてユキノの衝動を抑える。
「それよりも、問題はその古代秘具の能力だ」
「デスペラードというのはそれほど危険な代物ですの?」
「あぁ、俺が知る限りだと、この古代秘具の所有者となった者は確実に死ぬ」
ウェストの口から述べれた事実。
それは俺にとって、衝撃以外の何物でもなかった。
評価やブクマが少しずつですが伸びてきて舞い踊り気味のゆう@まるです!
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