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剣戟の付与術師  作者: 八映たすく
第二章
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七十話 成長


「くっそ!」


「甘いねぇ!!」


 噴水広場では大通りとは打って変わってたった二人の声と、剣戟が交わる金属音のみが静かに広がっていた。


 コウタは奇策と手数で攻めるがルキはそれを涼しい顔で捌き切る。



「どうしたの、もう終わりかな?」



「ちっ⋯⋯だったら、これでっ!!」


 そう言って飛び出すと、コウタは身にまとっていた外套を脱ぎ、ルキの視界を塞ぐように広げる。



目隠し(ブラインド)⋯⋯。)



「⋯⋯と、来たらこうだよねっ!!」


 ルキが剣を振るうと発生した衝撃波が外套の後ろから迫って来ていた大量の剣を散らした。



「これじゃさっきのと大して変わんない、よ⋯⋯?」



(⋯⋯いない?)



「——こっちです。」



(⋯⋯⋯⋯蹴り!?)


 一瞬コウタを見失ったルキは真横から聴こた声に反応して咄嗟に左腕で顔を守るように構える。



「加速。」



「しまっ⋯⋯ぐっ⋯⋯。」



 インパクトの瞬間にコウタの足は急激にスピードを上げて、ガードの腕ごとルキを吹き飛ばす。



「召喚!!」



 身体が浮き上がったままのルキに間髪入れずにコウタは追撃を入れる。



「あっぶない、な!!」



 無理矢理に剣を振るうとコウタの召喚した剣は呆気なく吹き飛ばされ、散り散りになる。



「ちっ⋯⋯。」



 ルキがその後あっさりと空中で体制を立て直したのを見ると、コウタは軽く舌打ちすると数歩下がって体制を立て直す。



(こいつ⋯⋯さっきより強くなってる?⋯⋯⋯⋯いや、成長してやがる。)



「⋯⋯全く、やっぱり恐ろしい少年だよ君は。脚術のスキルでも持ってんの?」



 額からうっすらと流れた血をぬぐいながら、おどけた様子でそう尋ねる。



(⋯⋯⋯⋯そろそろいけるか⋯⋯?)



 コウタはその言葉を聞いて遠くへと視線を向けてそう考えた後、意識をルキへと戻して口を開く。



「いいえ、別にそんなものは持ってませんが、ただ⋯⋯貴方の動きには慣れてきました。」



 二本の赤い剣を両手に召喚して構える。



「ふぅん⋯⋯なるほどね。」


「⋯⋯なんです?」



「いや、なんとなく分かったよ。キミのスキル。」



 召喚した剣を見てニヤリと笑ってコウタを指差す。



「トリガーは恐らく目視、というか凝視かな?⋯⋯つまり君は武器を召喚するスキルの他に武器の情報を読み取るスキルを持っている。」



「もしくは武器の情報を読み取り、読み取った武器を召喚するスキルってことになる。」



「人間でオリジナルスキルを二つ持ってる奴なんて聞いたこと無いから君のは後者かな?」



(こいつ⋯⋯思った以上に見てる。)



 コウタの顔に思わず苦い笑みが浮かぶ。



「図星⋯⋯だろ?」



 ルキはポケットから小さな玉を取り出すと、地面へと投げつけ、玉は大量の煙を上げて爆発する。



「煙玉!?くそっ⋯⋯。」



「つまり目に見えない武器は真似出来ない。」



 そう声が聞こえると、背後からコウタに向かって刃が突き出す。



(伸びる剣!?⋯⋯掠ったか!?)



 音のみを頼りに身体を捻り回避しようとするが、コウタの服の脇腹あたりがじんわりと赤く滲む。



「これを避けるか⋯⋯。」



「避けるに決まってるでしょう!!」



 声のした方へ煙を振り払いながら大量の剣を放つ。が、呆気なく回避される。



(もうしまってる⋯⋯。視界に入れさせないつもりか⋯⋯。)



 見ると、その手には先程まで使っていた長刀が握られていた。



「それじゃあ次は⋯⋯こう!かな?」



 そう言って噴水を叩き斬ると、今度はコウタの視界いっぱいに瓦礫や水飛沫が広がる。



「目くらましか⋯⋯。」



「⋯⋯君の真似だよ。」



(速い⋯⋯、後ろ!)



 振り向くとそこはすでに濁流の高波へと変貌していた。




「——遅いねぇ。」



「水!?やばっ⋯⋯!」



 大波に飲まれ、もまれ、引っ張られ、身体の自由を失う。



「⋯⋯これで⋯⋯トドメだ。」



 今度は刀身が透き通った水色の剣を取り出し地面に向けて突き刺す。

 剣に接していた水はたちまち凍り付き、コウタを襲う高波も、数秒としないうちにその動きを止める。



「今度は、凍結⋯⋯!?」



 凍り付く濁流と共にコウタの身体も氷の山に縛りつけられる。



「くそ⋯⋯う、ご、か、な、いぃ!」



 氷の山から、首と右手首だけが出た状態でコウタがジタバタと動いていると、ルキはゆっくりとした足取りでコウタに歩み寄る。



「⋯⋯どうやら、打つ手なしみたいだね。」



 ルキがそう言うとコウタと一旦息を深く吐いて向き直る。



「⋯⋯随分と、いろんな武器を持ってるんですね⋯⋯。」



 見下される視線に対して、コウタは落ち着いた様子で答える。



「そりゃまあ、魔王軍の武器庫と直接繋がってるからね。世界中のあらゆる武器が眠っててもおかしくないでしょ?」



「武器庫⋯⋯。」



「ああ、言ってなかったっけ?」



「魔王軍幹部ってのはその一人ひとりに役職を与えられるんだ。で、僕はその中で、倉庫番がメインの仕事って訳。」



 手に持った鞘を見せびらかすようにそう言うと、その鞘から最初にモクリを刺した剣を取り出す。



「呪剣も、その中にあるんですか?」



「うん、といっても、今は七本全部貸出中だから、君との戦闘には使えないけどね。」



(七本⋯⋯。)



「その在り処はどこに⋯⋯?」



「三本は彼女みたいに人間の手に、他四本は⋯⋯。」



「魔王軍、最上位戦闘員の手にある。」



「最上位⋯⋯?幹部ではないのですか?」


 敢えて幹部という言葉に触れない事にコウタは疑問を感じる。



「幹部の中でも特に戦闘に秀でたもの、魔王軍四天王の皆様が持ってらっしゃるんだよ。」



「まあつまり、仮に僕を倒せたとしても僕より強いのが少なくとも、あと四人いるって事だよ。ドンマイ。」



 哀れむようにそう言うとルキは剣を構え、コウタに向かって振り上げる。



「⋯⋯そうですか。」



 コウタはそこまで聞くと頭上に真っ赤な剣を数本召喚し、ルキに向かって真下へ振り下ろす。



「おっと、危な。」



 ルキは余裕のある態度で避けるが、真っ赤な剣はそのままコウタを縛り付ける氷に突き刺さり、粉々に砕く。



「だったら、全員倒すまでです。あなたも、四天王も、魔王も!!」



「残念だけど、そいつは無理だ。」



 二人はそう宣言すると、不敵に笑う。



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