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剣戟の付与術師  作者: 八映たすく
第二章
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四十三話 ベリーの街へようこそ!



 コウタ達がセリアと出会ってから数時間後、馬車は順調に草原を進んでいた。


「⋯⋯見えてきましたね。」


 コウタは前方から現れた街を見る。


「おっきいですね〜。」


 マリーも御者台から乗り出して眺める。


「危ないですよマリーさん。」


「ほら!見てくださいあの大きな建物!あれが教会ですよ。」


 マリーはそんなことなど聞かずに街を指差す。


「確かに、すごく大きいですね。」


「ベリーの街は総人口、総面積、共にベーツの街の倍以上ある。冒険者の質もかなり高いらしい。」


 後ろからアデルも乗り出してくる。


「「へぇ〜。」」


 二人は街を覗き込みながら返事をする。


「おお!ついたか!⋯⋯やれやれ、一時はどうなるかと思ったが、本当に助かったぞ。」


「ありがとうございました。」


 途中で乗ってきた四人組も礼を言う。







 街に着くと、セリアはアデルに礼を言う。


「本当にありがとうございました。聖剣のことですが、三日ほどお待ちいただいてもよろしくて?」


「ああ、その位なら大丈夫だ。」


「そうですか、では三日後、教会でお待ちしておりますわ。」


「よろしく頼む。」


 会話が終わるとセリア達は街の奥へと消えて行った。


「アデルさーん、馬車の預け入れ済みましたよ。」


 入れ替わりでコウタとマリーが帰ってくる。


「ああ、すまないな。」


「いえ、これくらい大丈夫ですよ。ところで聖剣の話、どうなりました?」


 コウタはそう尋ねる。


「三日後に教会に来い、だそうだ。」


「そうですか、ではしばらく暇になりますね。」


「ああ、だから今日のところは——」


「泊まる宿を探す。ですね?」


 マリーが横からそう言う。


「と、情報収集だ。⋯⋯とりあえずコウタは図書館などで武器の情報を調べておいてくれ。マリーは私と滞在中泊まるホテルを探すぞ。集合は四時にここにしよう。」

 アデルはマリーの頭に手を置くと優しくそう言う。


「「了解です!!」」


 二人は元気よく返事をする。


「では行くかマリー。」


 アデルはマリーと共に歩き出す。


「はい!」


「出来れば食事の美味しいところでお願いしますね〜。」


「ああ、善処する。」


 軽く会話を済ませると、コウタも図書館へと向かった。







「ここが図書館⋯⋯、やはり大きいですね⋯⋯。」


 コウタはベーツの時と同様、巨大な建物の中前に立ち尽くしていた。


 この街の図書館はベーツの街のものとは大きく違いステンドグラスのような装飾が施されていた。


「なんか綺麗だな⋯⋯。」


 そう言って中に入ると、そこにはよぼよぼのおじいさんが一人、受付で座っていた。


「おお、珍しいですな。本を読みに来たのですか?」


 おじいさんはそう言って立ち上がる。


「はい、そうです。」


 コウタは短くそう答える。


「では説明を、と言っても、本を傷つけるのと、持ち出すことさえしなければ大丈夫なのですがな。ファファファ⋯⋯。」


 おじいさんは愉快そうに笑う。


「大丈夫なんですか⋯⋯図書館で大きな声出して。」


「なに、中には誰も居ませんから。」


 そう言って再び笑う。


「街の人はあまり利用しないのですか?」


「利用する者はほとんどありませんのぉ、今月も君を含めてまだ二人しか来てませんぞ?」


「⋯⋯ですから、多少はうるさくしても大丈夫ですぞ。」


 おじいさんはそう言って歯を見せながらニッコリ笑う。


「そ、そうですか⋯⋯。」


 コウタは苦笑いして会釈すると中へと進んで行った。






 結局その日は図書館で大きな成果を上げることができず、夕方になってしまった。


「——お、来たな。」


「遅いですよコウタさん!!」


 コウタが集合場所に行くと、すでに二人はコウタを待ち構えていた。


「申し訳ありません。少し長引いてしまって⋯⋯。」


「何かいい情報はあったのか?」


 アデルは腕を組みながらコウタに問いかける。


「いえ、どの本もベーツの街の図書館と同じようなものばかりで⋯⋯。」


 コウタは肩を落としながら答える。


「そうか、ならば次の行き先は当初の目的通りナスト公国だな。」


「分かりました。⋯⋯すいません、なんの収穫もなくて。」


「ないものはしょうがないだろう。それよりも、今日はもう宿に行こう。⋯⋯実はなかなか良い宿があってな、貴様も気にいると思うぞ。」


 アデルはそう言ってニッコリ笑うと歩き出す。


「私が見つけたんですよ!」


 マリーは嬉しそうに胸を張ってそう言う。


「⋯⋯それは楽しみですね。」


 コウタもニッコリと笑いながらついていった。





「⋯⋯⋯⋯で、何故僕の部屋で明日の話を?」


 宿に着き夕食をとると三人はコウタの部屋に集まっていた。


「何故って、男の人は乙女の部屋には入っちゃダメなんですよ!」


「は、はあ⋯⋯。」


 コウタの問いはマリーによって強めに返された。


「⋯⋯それよりも、明日の話だが⋯⋯明日はクエストを受けようと思う。」


 アデルは強引に話を進める。


「クエストってまた討伐のですか?」


 コウタがそう尋ねる。


「ああ、私達はまだ三人で戦ったことがないだろ?取り敢えずはお互いの戦力の確認をするという意味でな。」


「アデルさんは一度一緒にクエストを受けていたのですよね?」


「ああ、簡単な採取クエストだがな。」


 アデルとマリーは顔を見合わせる。


「そうですか、分かりました。⋯⋯ところで何と戦うかは決めてあるのですか?」


「ああ、先ほど時間が余ったからギルドの方にも寄ってな、良いのがあったからもう、受注してきた。」


 そういってアデルは一枚の紙切れをコウタに渡す。


「やはり、相手は強くなくては意味がないからな。とびきり強いのを用意しといたぞ。」



「もう、いきなりそんな強いので大丈夫なんですか?」


 アデルは得意げに腕を組みながらそう言う。マリーはそれを不安そうな目で見つめる。


「ええと⋯⋯、なになに。」


 コウタはその紙に書かれた依頼内容を読み上げる。






「〝ミノタウロスの角の採取〟⋯⋯ですか?」



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