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剣戟の付与術師  作者: 八映たすく
第二章
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四十二話 とんだ大物


「それにしても羨ましいですねぇ〜。オリジナルスキルなんて。」


 マリーは草原を走る馬車の中でそう呟く。


「まぁ確かに、あると無いでは大違いだな。」


 アデルは興味なさげに本を読みながら答える。


「そういう問題じゃないんですよ!!オリジナルスキルですよ!?本で見ただけでも様々な都市伝説があるんですよ!!」


 反対にマリーは興奮気味にそう言う。


「都市伝説?どんなのだ?」


 その言葉にアデルも少し反応する。


「フフン、例えばですね。オリジナルスキルには一つとして同じものが存在しないとか、オリジナルスキルのレベルを最大まで上げると、神に等しい力を得るとか。そんな感じのがたくさんあるんですよ。」


 マリーは得意げに説明する。


「一つ目はよく聞く話だが、二つ目のはなんか胡散臭いな⋯⋯コウタ、実際どうなんだ?」


「⋯⋯⋯⋯。」


 アデルはコウタにそう声をかけるが、全く返事が帰ってこない。


「コウタ!!」


「っ!?はい!なんですか!?」


 コウタはビクリと反応し、返事を返す。


「聞いてなかったのか⋯⋯。オリジナルスキルの話だよ。」


「オリジナルスキル?がどうしたんですか?」


 コウタはそう聞き返す。


「オリジナルスキルのレベルを上げると、神のような力を得ることができるらしい。」



「ああ、それは無いですね絶対。」



 コウタは即答で返す。


「ええ!?なんでそんなに簡単に言い切れるんですか!?」


 マリーが不満そうに声を上げる。


「何故って、だってそもそも、オリジナルスキルにはスキルレベルなんてありませんから。」


「それは初耳だな。色々あるのだな、オリジナルスキルも。」


 その解答にアデルが反応する。


「なんか面白く無いデス。」


 マリーは頬をぷくりと膨らませて不満をこぼす。


「そんなこと言われましても⋯⋯。」


 コウタは苦笑いで返すしかなかった。


「⋯⋯ん?なんだあれ?」


 コウタはふと視界に人の影を捉える。


「どうしたコウタ?」


「いえ、何やら人の影が⋯⋯。三、いや四人ほど。」


「こんなところにか?」


 アデルは馬車から体を乗り出し外を見る。


「私にも見せて下さいよ〜!」


 マリーもアデルの体を少しだけ押し出し、ひょっこりと顔を出す。


 馬車は少しずつその人影に近づき、徐々に人の影は鮮明になり、はっきりと視認できるようになる。


「あれは⋯⋯⋯⋯教会の人ですかね?」


 マリーはその服装を見てそう呟く。


「⋯⋯⋯⋯少し話しかけてみよう。」


 アデルは少し考え込むとそう決断を下す。


「了解です。」


 そう言ってコウタは手綱を握り直す。

 近づくとそこには一人の女性を守るように三人の男性が周りを囲み歩いていた。


「あの、どうかしたんですか?」


 コウタは馬車を止めると彼らにそう尋ねる。



「おお!旅の者か!?済まぬがその馬車を譲ってくれ!!なに、報酬は後でしっかり払う、さぁ!!」



 女性を囲んでいた男性の一人がそれに反応する。男性はこちらの事情など関係なしに話を進めようとしてくる。が、


「まぁ、お断りしますけど。」



 コウタは流されるタイプではなかった。


「なっ!?貴様!ここにおられる方をどなたと心得——」



「——どなたでも構いませんが、人にモノを頼む態度ではなかったので。」


 ヘラヘラとおちょくるような表情で食い気味にそう否定する。


「このっ!!」


「まぁまぁ落ち着いて下さいまし、それでは盗賊と変わりませんことよ?」


 掴みかかろうとしてくる男性を見て、真ん中にいた女性が口を開く。金髪で緩い表情でおっとりとした調子の声で男性を諌める。


「しかし!」


「しかしではありません。話がこじれるので貴方は少し黙っていなさい。」


 そう思った矢先、突如女性の表情に影が落ち、口調もかなり強めのものに変わる。


「も、申し訳ございません⋯⋯。」


 男性は怯えたの表情を浮かべ黙り込む。


「分かればよろしいのです。」


 それを聞いて女性の様子も元に戻る。


「それで?何故こんな草原のど真ん中を徒歩で移動しているのだ?」


 アデルは馬車の中から顔を乗り出して女性に対してそう尋ねる。


「私達は見ての通り教会の者なのですが、実は近くの村へ布教に行った帰りに魔物に襲われてしまって。魔物は追い払ったのですが、馬車も馬もダメになってしまって。」


 女性は再び、おっとりとした口調でアデルの問いに答える。


「なるほどな。」


「散歩してたわけじゃなかったんですね。」


 アデルとマリーは馬車の窓から顔を出して反応する。


「ええ、ですから誠に図々しいのでごさいますが、私達をその馬車に乗せて頂けませんか?」


 女性は申し訳無さそうにそう尋ねる。


「どうします?リーダー。」


 それを聞いてコウタはアデルに判断を委ねる。


「⋯⋯⋯⋯まぁいいだろう。馬車の広さ的には全然余裕があるしな。」


 少し考え込んだ後答えを出す。


「まぁ、本当ですの?ありがとうございますわ。」


 女性は嬉しそうに礼を言う。





 馬車の中には女性たちが乗り込み、アデルの隣に女性、正面に三人の男性が座り、マリーは馬車の中ではなく御者台のコウタの隣に座る。


「初めまして、私、セリアと申します。」


 馬車の中ではセリアと名乗る女性が自己紹介を始める。


「私はアデルだ。御者台に乗っている二人はマリーとコウタだ。」


 アデルも軽く自己紹介をする。


「アデル様達は何故旅をしているのですか?」


セリアはアデルにそう尋ねる。


「魔王軍を倒すためにな。」


「まぁ、それは素晴らしいですわ。」


セリアはそう言ってアデルを賞賛する。


「では、アデル様達は何故ベリーの街へ?」


 セリアは続けてそう質問する。


「ああ、あの街には伝説の聖剣があると聞いてな、一目見てみたいと思ったのだ。」


 アデルはコウタのスキルのことを隠して、そう話す。


「無理だ。あれは教会で厳重に管理されておる。」


 その言葉を聞いた男性の一人がアデルにそう言い放つ。


「では、見せてもらうにはどうすれば?」


 アデルは男にそう尋ねる。


「無理だろう。どこの馬の骨とも分からぬものに見せられるほど安くはないのだ。」


「そんな⋯⋯。」


 アデルは帰ってきた答えに肩を落とす。


「では、私が交渉してみましょう。」


 セリアはそう言ってニッコリ笑う。


「なっ⋯⋯。」


「本当か!?ありがとう!」


 アデルはそれを聞いてガバッと顔を上げる。


「いえいえ、お安いご用でございますよ。」


「セリア様、それはさすがに⋯⋯。」


 男の一人が止めようとする。


「大丈夫でしょう。助けて貰った恩もありますし、悪い人たちでは無さそうですわよ?」


 セリアは緩い雰囲気でそう言った。





「こうですか?えい!」


「ええ、いい感じです。」


 その頃御者台ではコウタがマリーに手綱の握り方を教えていた。


「わっとと⋯⋯。」


「ちょっと貸してくださいね。」


「ほい!」


 マリーがバランスを崩したり、操縦をミスするたびコウタがそれを補助する形で教えていた。


「お、どうですかコウタさん!上手いでしょ!?」


「ええ、上手ですよ。⋯⋯⋯⋯。」


 コウタは御者台から中にいる四人組に〝観測〟のスキルを使うと四人の情報が手元に移し出された。


(ふ〜ん⋯⋯。普通だな。)


 その結果、男三人はなんの特徴もないレベル30前後の僧侶ビショップであった。


(⋯⋯⋯⋯これは?)


 だか女性の方は違った。





セリア=ジーナス  聖人  lv44





 彼女の職業の欄には〝聖人〟という表記があった。





「⋯⋯⋯⋯マリーさん、聖人って知ってます?」


 コウタはそれとなくマリーに尋ねる。


「え?そりゃあ知ってますよ。世界に数人しかいない特殊職で生まれながらにして神の加護を受けている人たち。でしたよね?」


 マリーは答え合わせのようにコウタに尋ねる。


「へ、へえ⋯⋯。」


 コウタは苦笑いで反応する。


(なんか、めんどくさそうなの拾っちゃったなぁ⋯⋯。)


 コウタは一人頭を抱えた。


 


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