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act.2 少女との出会い


 名古屋駅。それは数多くの路線が重なる、中部地方のターミナル。その周辺には商業施設やオフィス、飲食店やアミューズメント施設が建ち並び、ツインタワーとも呼ばれるセントラルタワーズはついこの前まで世界最大の駅ビルだと言われていた名古屋の顔だ。

 そんな名古屋駅に俺と桜は何度か乗り換えを経て到着した。集合時間までにはまだまだ余裕があるので、俺達は近くのコメダ珈琲店でコーヒーを飲んで集合時間を待っていた。

 桜と他愛ない談笑をしながら、俺はコーヒーに無料で付いてくるたっぷりとバターの塗られたトースト半切れを一口かじる。外はさっくり中はふわっとした食感で、パン自体にもほんのりとバターの味がついていて、パンに対する強いこだわりを感じる。


「久しぶりですね、こうやって拓真さんと一緒に名駅に来たのは」

「あぁ、たしか二年前……だっけ?」

「そうですよ、綾ちゃんと一緒に『アナと雪の女王』をミッドランドスクエアへ観に行ったんです。覚えてませんか?」

「……始まってからすぐ寝ちゃって、二人にこっぴどく怒られたんだったなぁ、思い出したよ」

「あんなに素晴らしい作品だったのに、気が付いたらもう寝てるなんて! 怒られて当然です!」

「まぁまぁ、その後DVDをゲオでレンタルしてちゃんと見たんだから許しておくれよ……」


 経済的に厳しくておいそれと来られる場所じゃなかった名駅周辺。数少ない思い出話に花を咲かせていると、1人の女生徒が桜の隣に腰を下ろした。深緑色のブレザーに赤と緑のチェック柄が施されたスカートを身に付けていて、俺達と同じ大山高校の生徒であると言うことが分かる。黒髪を短く整えて群青色のアンダーリムグラスをかけている、その顔に俺達は見覚えがあった。


「おぉ、愛子か! 久しぶりだな!」

「久しぶり、拓真」

「お、おはようございます、愛子さん……」

「おはよう、桜。少しは出来るようになった?」

「はいぃ、愛子さんのご教示のおかげでなんとか人並みには出来るようになりました……!」


 俺と桜が勉学で大変お世話になっている同級生、新垣愛子だ。愛子の父親は教科書等を出版している大手出版社の社長で、中学生の頃は週末になると家に呼び出し、学校の宿題とは別にお手製の問題集を解かされたもんだ。そのおかげで一年生の頃に下から数えた方が早かった成績が三年生の期末テストでは人並みよりやや上くらいまで上がった。


「拓真、例のアレ。ちゃんとやって来た?」

「もちろん。愛子の問題集は分かりやすい解説があって、スッと頭の中に知識が入っていくような気がするよ」

「そう言ってくれると作った甲斐があるわ」


 俺は桜の両親に買って貰ったスクールバッグから一つも空欄のない愛子の問題集を取り出し、愛子に手渡した。中学で習った事が、主要五教科裏表各十枚ずつのプリントにびっしりと並べられていて、我ながら二週間という短い期間でよくやり遂げたなと思っている。

 愛子は何枚かめくって確認すると、二つ折りにして自分のスクールバッグに突っ込んだ。


「見たところ誤答は少ない。答え合わせが楽しみ」

「進学早々地獄のーーじゃない、楽しい個人補習なんてゴメンだからな、しっかり読んで回答したぜ」

「うぅ、拓真さんはしっかり解けてていいなぁ、私なんか個人補習まっしぐらですよ……」

「二人の事を思っての補習。嫌ならそれ相応の学力を身に付けること」


 愛子はそういうと、店員を呼びだしてホットココアとシロノワールを注文した。シロノワールとは熱々のデニッシュパンの上に冷たいソフトクリームが乗った、名物とあってなかなか美味しいデザート。愛子はその一切れを頬張ると頬を綻ばせた。愛子にとって至福の時間なようで、体を震わせた拍子にコツンと固いものが膝に当たる。どうやら細長いバッグのようで、その中に入っているものが俺には簡単に想像できた。


「ん。そのバッグ……、竹刀か。愛子も剣道続けるんだな」

「えぇ。文武両道、これまでも続けてきたのだから、これからも続けていくわ。拓真もそうでしょう?」

「まぁね。中学生まで負け越してるんだ、高校では勝ち越してやるさ」

「流石ですね、お二人とも。私は家業の料理でいっぱいいっぱいなのに……」

「大丈夫。私が付きっきりで教えてあげるから。拓真だって応援してくれるわ」

「そ、それは俺へ楽しい個人補習の参加を求めているのですか……?」

「勿論、応援するだけじゃなくて分からないところがあれば聞いてあげる。更なる成績向上を目指すなら参加して損はないわ」


 ふふふ、と黒い笑みを浮かべる愛子。確かに愛子の個人補習は効果テキメンで、テスト前日にもなれば個人補習で教わったところがそのままテストに出たりなんてよくある話なのだが、個人補習が始まるとなかなか帰してくれないのだ。

 午後九時を越えるのは当たり前、テスト前は俺の家に泊まり込んで日付が変わるまで勉強漬けで授業中眠りこけるなんて事もよくある話だった。……そのおかげで二人とも成績が上がったんだけどね。


「あぁ、やっぱりここにいた!」


 地獄のような日々を思い出していると、不意に抱き締められて柔らかいものが胸元辺りに押し付けられる。


「みんな久し振りね! もちろん拓真も。元気してた? 夜は寂しくなかった?」

「真理亜、お願いだからそろそろ……離れてくれないか? いろいろツラいものが……」

「やーよ、こうしてハグするのは本当に久し振りなんだから。ここのところバラエティー番組の撮影ばっかりでイヤらしい若手芸人にいじられまくって心身ともに疲れ果ててるんだから、少しは労いなさいよー」

「へいへい……」


 藤宮真理亜。そこらのグラビアアイドルに負けないプロポーションの綾をも凌駕するプロポーションで、数多くのグラビア雑誌の表紙を飾り、世の男性の視線を独占。今や知らぬ人はいない有名人だが、信じがたいことにこれまた俺の同級生だ。アメリカ人の母親に父親は日本人というハーフで、眩しいほどに輝くブロンドヘアーと吸い込まれるような碧眼、はちきれんほどにも豊満なわがままボディは母に依るものなのだろう。カッターシャツのボタン上二つを外し、下着が見えそうになるギリギリまで短くしたスカート、と着崩した制服からもそのスタイルがうかがい知れる。

 俺はそっと両腕を背中に回し、労うように二度、背中を軽く叩いてやる。真理亜は耳元で最高のご褒美ね、と囁きギュッときつく抱き締める。胸元で柔らかいものが形を変えて押し潰されて、ブレザー越しとはいえしっかりとその存在感を示している。真理亜はひとしきり抱きしめて頬に口づけると、満足して俺の隣に座り、ホットコーヒーを注文した。

 ……ようやく離れてくれたと一息ついてコーヒーを一口啜ったとき、刺々しい眼差しで俺を睨み付ける桜と目が合って思わず目を背ける。愛子はいつの間にかシロノワールを完食し、ココアを飲みながら難しそうな本を読んでいた。


「……それにしても、その格好は際どすぎないか? その、目のやり場に困るというか……。ナンパとか嫌なやつに絡まれるんじゃないのか?」

「……鼻の下、伸びてますよ」

「うっ……」

「あら、妬いてる? いいじゃないの、今に始まったことじゃないことくらい拓真もわかってるでしょう? それとも、ナンパ男に触れられる前に今晩のおかずにしちゃう?」


 不敵な笑みを浮かべる真理亜。コーヒーカップに口を付けたまま左手でカッターシャツの襟元を引き下げて胸元を見せ付け、右足を上にして足を組んで俺の方を向く。ただでさえちらりと見えていた胸元を白いブラジャーまで見えるほど大きな双丘をあらわにし、下では程よく肉付いた艶めく太ももを惜し気もなくさらけ出して、見るからに誘っているかのよう……!

 あぁ、もう! 流石はグラビア撮影を数こなしてきただけあって自分を魅力的に見せる仕草を心得ている! 俺も桜の手前目を逸らしたいところだけど、俺も男の本能には勝てずまじまじと見つめてしまう!


「ふふ、しっかりと目に焼き付けて? これでしばらくは困らないでしょ? 触っても良いのよ?」

「え、えぇ……?」

「ほらこの太もも、すべすべで柔らかいわよ……? それとも、この胸が良いの? とっても柔らかいわよ……?」


 真理亜の言葉はそれ自体が甘い猛毒のようで、頭の奥深くに入って思考回路を痺れさせるかのようだ。本能のまま真理亜の胸に手を伸ばそうとした時、固いものが頭に振り下ろされて激痛と共に正気を取り戻す。それはそれは本当に痛くて涙目で振り下ろされた方を見ると、桜が陶磁器製の灰皿を手に持って、半分泣きながら頬を膨らませていた。


「もう! 朝っぱらからなにやってるんですか! まだ学校にも着いてないのにエッチなことするなんて言語道断ですっ! ダメですよ! ダメダメ!」

「ってて……。あぁ、そうだな……。どうかしてた」


 灰皿で殴られて痛む頭を擦りながら、腕時計を見る。……八時か。そろそろ頃合いだな。皆も既にコーヒーやココアを飲みきっているようで、俺も残ったアイスコーヒーを一息に飲み干し、荷物を持って席を立とうとしたとき、不意に外から女性の叫び声が聞こえてきた!


「何事ですか!?」

「なにか厄介事にでも巻き込まれたんだ、ちょっと見てくる! お金はあとで絶対払う!」

「ちょっと! もう集合時間が近いのよ!? それに入学前に暴力沙汰なんて起こしたら入学取り消しだってあり得るのよ!?」

「だからって目の前で危ない目に遭ってる人を放っとけないだろ! だから行ってくる!」


 俺は真理亜達の制止を振り切って猛スピードで声のした方へと走る。大通りから一本入った、道の両側には背の高いビルが立ち並ぶ裏通りで、そこでは俺より少し年上で見るからに柄の悪い男三人が同じ大山高校の制服を着た女生徒を取り囲み、今まさに乱暴しようとしていた。

 俺は持ってきた細長いバッグから竹刀を取りだし、まず衣服を引き剥がそうとする男性の顔面に飛び蹴りを喰らわし、続けざまに別の男の顎に向けて竹刀を振り上げてぶっ飛ばす。残った男がバタフライナイフを取りだし、激昂した様子で振り回すが、所詮は心得のない人間がやたらめったらに振り回すだけの隙だらけな使い方だ。落ち着いて一瞬の隙を見逃さず、手首に竹刀を打ち付けてバタフライナイフを叩き落とし、狼狽える男の頭部に竹刀を思いっきり叩き付けて昏倒させる。剣道三段ナメるなよ。


「おい! そこのお前! その竹刀を捨てろ! さもないとこの女のきれいな顔に傷が付くぜ!」


 男がどう、と音を立てて倒れ伏せた直後、妙な自信に満ちた怒号を背に受けてゆっくりと振り返る。すると最初に蹴り飛ばした男が女生徒の頬辺りにカッターナイフを突きつけていた。人質とは姑息な……! 俺は竹刀をーー捨てることなくゆっくり一歩一歩確実に男との距離を縮めていく。


「おい! 聞こえなかったのか!? この女がどうなっても良いのか!?」


 男が怒り狂って喚き散らし、ナイフをこっちに向けた瞬間、鋭く踏み込んで竹刀を一閃。カッターナイフを吹き飛ばして男の額に右ストレートをぶちかます。男は盛大に吹き飛ぶが、すぐに体勢を整えて真っ直ぐ突進してくる。俺は竹刀を正眼に構え、止めの一撃を頭に喰らわそうと振り上げた瞬間、後ろから羽交い締めにされる。


「クソッ、離せ!」

「暴れるんじゃねえよ! オラッ!」


 俺は激しく暴れて抵抗するも、むなしく腹部に拳が突き刺さる。一気に全身の力が抜けて竹刀を手放して意識まで飛びそうになるが、ここで倒れたら女の子を救えない。歯を食い縛り前の男を蹴り飛ばし、その拍子に男の拘束が解かれると、俺は鳩尾を思いっきり踏みつける。今までのダメージもあってか男はあっさりと悶絶した。

 あとは最初に蹴り飛ばした男のみだ。俺はさっき落とした竹刀を拾い上げると後ろ手に構えて、尻餅をついて動けずにいる男に向かって一直線に突き進む!


「ひ、ひぃいいいいい!!」


 その情けない悲鳴が男の最後の声だった。後ろ手の構えからそのまま振り上げた竹刀が、男の顔面にクリーンヒット! その勢いのままアスファルトに後頭部を強打して動かなくなった。これで全部片付いたな。安全を確認したところで女生徒の方を向くと、駆け寄って抱き付いてきた。


「ありがとう……! あなたが助けてくれなきゃ今頃……私……!」

「あぁ、そうだな。怪我はない?」

「えぇ、なんともないわ……。本当に、なんて言えばいいか……」


 緊張の糸が緩んだようで涙声で感謝の意を述べる女生徒。その体はまだ微かに震えているようで、男三人に囲まれた恐怖がまだ抜けきっていないみたいだ。俺はそっと手を背中に回して真理亜にしたようにぽんぽんと叩いてやると、少し落ち着いたのか震えが止まり、息も整ってきた。

 それにしても桜や真理亜に負けず劣らずこの子からも良い匂いがするもんだ。しかもなんだか上品な感じでお金持ちみたいなイメージが浮かんでくる。

 そして胸部に押し付けられる柔らかいもの。桜と同じかそれよりやや大きなものが細やかながらに女性であることを主張するので冷静に考えるととてもツラいものが……。


「なぁ、そろそろ落ち着いた、かな?」

「えぇ、おかげさまで。あなた、とてもやさしいのね……」

「なら、そろそろ離れて欲しいかな、ちょっとこういうの慣れてなくて……」

「キャッ!? あ、ごめんなさい。私としたことが、つい……」


 ようやく我を取り戻したのか、女生徒は俺を突き飛ばして顔を赤く染める。俺は埃を払いながら立ち上がり、竹刀の入っていた袋を拾って竹刀をその中にしまう。女性徒もそのあとを付いてきた。


「別に良いよ。それよりも、あんたも大山高校の生徒だろ? そろそろ集合時間じゃないか? 急がないと遅れるぜ?」

「そうね。私は大山香織、あなたの名前を教えてくれるかしら? 是非お礼がしたいわ」

「……大原拓真。ま、貰えるものは貰っておくよ。それより集合時間、間に合わなくなるぜ。……ってあれ?」


 ちらりと腕時計を見たとき、時計は八時二十五分を指していた。なんてことだ……、額に手を当てて絶望してしまう。


「なんてこった……、もう集合時間じゃないか……」

「あら、それは問題ないわ。お父様に事情を話せばこのくらいは目を瞑ってくれるわ」

「……金の力で解決ってか、良いよなぁ金持ちは。金を積めばなんでもできるんだからな。ふん、そんなのはゴメンだね。全力で走ればどうにかなるだろ。せいぜい汗かいて必死になってバカだなぁと笑うが良いさ」


 俺は女生徒、香織に背を向けて名古屋駅に向かって全速力で走り出す。もうどうにもならないかもしれないけど、なにもしないで終わるなんて、ましてやお金の力を借りることなんてしたくはない。

 路地裏を抜けて大通りに差し掛かろうとしたとき、突如目の前の空間がひび割れて、その異様な光景を目にしてか、そこから発せられるおぞましい気配を感じ、足がすくんでか足が止まり数歩後ずさる。

 しばらく動けずなにもない空間に入ったひびを見つめていると、そのひびの向こう側からガラスの割れるような音を響かせて、人の形はしているが五メートルはあろうかという巨体を誇り、その額には大きく赤い角を生やしたバケモノが、その右手に棍棒を持って現れた。

 その巨体は背筋も凍るようなおぞましい雄叫びをあげて、ついに腰が抜けて尻餅をついてしまう。それを好機とみた巨体のバケモノは二メートルほどはある棍棒を振り上げ、動けない俺目掛け一気に降り下ろす!

 もはや死も覚悟して目をぎゅっと固くつむるが、一向に最後の時は訪れない。俺はゆっくりと目を開けると、香織が棍棒のような細長い物で巨体のバケモノが繰り出すこん棒を受け止めていたではないか! 一体どこにそんな力が……。


「逃げなさい! 私の事は良いから!」


 香織はこん棒を跳ね返し、巨体のバケモノ目掛けて細長い物、恐らくは薙刀を振り抜く。するとどう考えても届かないはずのバケモノの胸部にぱっくりと大きな切り傷ができた。巨体のバケモノは痛みで顔を歪ませ、怒りを込めて香織を蹴り飛ばす。間一髪薙刀で受け止めるが、それでもかなりの衝撃で俺よりも後ろに吹き飛ばされる。

 ……やるしかない。俺は細長い袋から静かに竹刀を取り出し、正眼に構える。


「バカ! あんなのに拓真みたいな普通の人が敵うはずがないわ! すぐに逃げなさい! 私は大丈夫だから!」


 “逃げろ”その言葉が引き金となって過去の惨状がフラッシュバックする。幼き日の凄惨な一日、辺り一面血だらけの孤児院。全ては俺が逃げ出したから……。呼吸が荒くなり動悸も激しくなる。思い出すだけでも吐き気がしそうだ。俺はどうにか気持ちを落ち着けて竹刀を正眼に構え直す。


「……逃げてたまるか。もう、あの時と同じ過ちは繰り返さない……! 俺が、全部守ってみせる!」


 竹刀を握り締め、決死の覚悟で巨体のバケモノへ突進する……が、その覚悟はこん棒の一振りでいとも簡単に粉砕される。振り上げるように繰り出されたその一撃は俺の体を大きく打ち上げ、香織よりも後方のアスファルトに背中から落ちる。棍棒を受ける瞬間、なんとか竹刀で受けてはみたものの、見事にひしゃげて折られている。なんて馬鹿力だ……。骨もあちこち折れてるみたいで、少し動いただけで身体の至るところに激痛が走る。


「拓真! なんで逃げなかっーー」


 香織の叫び声が聞こえてくる。意識がぼんやりと霞んでいく。もう死ぬのか……? こんなところで、こんな訳のわからない、あっけない終わりなのか……? そんなのは嫌だ……、まだ、やることが残っているんだ……。

 徐々に身体中から力が抜けていく。天を仰ぎ、空に手を伸ばす。その手が一瞬、僅かに赤い炎を発したような気がするも、ついに俺は力尽きる。愛しき妹の無事を願いながら。



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