放火魔。
「ーーー本日午後4時頃。
〇△□県☆▽市□△〇町で、放火事件が発生しました。今回で5軒目となるこの事件。警察は、同一犯の犯行とみて捜査を進めています。」
家族団らん、リビングでテレビを見ていると、
そんなニュースが流れた。
「あらまあ、隣町の話じゃない!
怖いわねぇ…早く捕まってくれないかしら。」
声を震わせて、母が言った。
確かに怖い。
子供の頃から怖いもの知らずで有名だった僕も、
こんなに大っぴらにニュースになると
流石に怖くなってきた。
「なんでこんなひどいことするの…?」
不思議そうな顔をして、妹が言った。
さあ?わからないなぁ。
…わからないけど、
多分溜まったストレスを発散してるんだと思うよ。
人間は定期的にストレスを発散しないと、
おかしくなっちゃうからね。
「ふーん、そっかぁ…。
でも、こんなやりかたはまちがってるよね!」
ほほう、珍しく大人びたことを言うじゃないか。
まだ5歳なのに。
「それにしても、なんで捕まらないんだろうな。
こんなに連続で何軒も放火してたら、
すぐに捕まっちまいそうなものだけど…」
何故だ、と唸るように父が言った。
うーん…なかなか捕まらないものだよこういうのは。
手袋をして火炎瓶を投げれば証拠は残らないし、
その家の住人に恨みがある人ならまだしも、
犯人が無関係の愉快犯とかだった場合は
目撃者がいなかったら証拠も手がかりも無いからね。
流石の警察もお手上げなんじゃない?
僕の説明に納得して、父が言う。
「なるほど!
あったまいいなぁ、お前。
まるで自分自身の事を話してるみたいだ。」