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異世界で小柄な女神様とダンジョン運営  作者: バージ
死神三人衆 ~最大の敵、最大の対価~
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オラルプリスの悪魔


第八階層 フールド型森ダンジョン 中央やや後方


戦いは熾烈を極めつつも、実にシンプルだった。

ペレが攻め、ルティナが守る。

そしてディレットとアテリトートが攻撃する、それだけである。

ペレの攻撃が他に向かわないのは、ひとえにルティナの手腕によるものであった。


巨大な鎌であれば、懐に入れば使えないと思うかもしれない。

しかし、ペレはその場で鎌を振るっているだけに見えて、実は移動し続けている。

踊るように鎌を振るい続けながら、相手が飛び込みづらいように立ち回っている。

また、それがなくともペレは、至近距離ではそれ以外とは明らかに違う速度で鎌を振るうことができる。

ペレはどの距離でも必殺の一撃を放てるのであり、しかもそれが至近距離であれば、連撃することすら可能なのだ。

そもそもペレは鎌による攻撃能力以外の手札をほとんど見せていない。

攻撃面において全死神中最強のペレだ、他にどんな隠し球があるのか分かったものではない。

ルティナが安定した動きを続け、戦況を同じような流れで推移させようとしているのも、不透明なリスクを負わないためだ。


ペレの鎌による攻撃はすさまじい。

その一撃は、まともにくらえば吸血鬼であるアテリトートやドラゴンであるディレットですら大ダメージを受ける。

とても受けて平然としていられるような攻撃ではなく、それどころか数回切られればそれだけで命を落としかねないような攻撃だ。

およそ地上で最高クラスの耐久力を持つ両種族ですらそうなのだから、これがどれほどの脅威であるかが良く分かる。

また、これはただ威力が高いだけの攻撃ではない。

正面に立ち、常にペレの鎌を受け続けるルティナはそれを実感していた。

前回の終末の時には、一分に満たない僅かな時間やり取りしたに過ぎないが、そのときにも感じていた脅威。

ペレが放つ鎌を、桜色の、身の丈ほどもある透明な盾を展開して受け流す。

すると確かに鎌を捌いたにもかかわらず、体に僅かな痛みが走る。

それが何を意味しているのか、何が起こっているのかを正確に理解できたのは、神の子であるルティナだからこそだった。

そしてその攻撃の全てを受け止め、他の二人に向かわないようにしているのも、紛れもなく正面に立っているルティナである。

常に白兵戦の距離を保ち、ペレの攻撃を捌き、その足止めをする。

ペレが自分以外のどちらかを狙えばすぐに割り込み、振るわれた鎌から放たれる斬撃を防ぎ、いなし、たたき落とし。

隙が見えようが間が開こうが、迂闊には攻撃しない。

それでいて遠距離攻撃を行う二人の邪魔をしないという、まさに熟練したタンクの動き。

完全にパーティー内での自分の役割を理解し、それを完遂していた。


最も気の抜けない立ち位置に居続けるルティナが大変なのは言うまでも無いが、では他の二人が楽かと言えば決してそんな事は無い。

ペレとルティナの攻防は、ギリギリの均衡の上に成り立っている。

ディレットとアテリトートが攻めを緩めないからこそ、ルティナがその位置をキープしていられるのだ。

そしてそんな二人ですら多大な隙を晒すような行動はとれない。

気を抜けば一瞬で追い込まれる、それだけの攻撃能力がペレはある。


そんな戦闘のさなか、ディレットの高密度フレアブレスがペレに直撃する。

ディレットのフレアブレスは、シラキの眷属には防げる者がいない超高威力の熱線だ。

かつてシラキを絶句させたその光線がペレの体を貫き、当たった部分を溶かし尽くして消滅させる。

と、そう思えたのは一瞬だった。

まるで幻か何かのようにペレの体がぶれる。

直後に鎌を構えて飛び上がったペレには、まるで先ほどの攻撃が当たっていなかったかのように、焦げあと一つなかった。

そして鎌で自身の体を引っ張るように、体ごと縦に一回転して、その巨大な鎌をディレットに向けて一閃。

ディレットもアテリトートも、世界クラスの強者でありながらスタンドプレーに走らず、パーティとしての役割を全うしており、当然ペレに近づいたりはしていない。

別に鎌が伸びたわけでも、円を描く鎌から斬撃の類が飛ばされた訳でもないため、当たるはずのない攻撃だった。

しかしそこには確実に猛威が存在し、まずディレットに、そしてペレを挟んで反対側にいたアテリトートにも襲いかかる。

ディレット、アテリトートの双方が避けられないタイミング。

目を見開いたルティナは両手をそれぞれ二人に向ける。

そうして両者の前に張られた二つの盾がたたき割られ、二人の体に十センチ近い、深い切り傷が付けられる。


痛みというものに高い耐性があるはずの二人が苦痛の声を漏らし、顔を歪めて動きを止める。

しかし着地したペレはその鎌の動きを止めることなく、今度は地上にいたままに鎌を振るおうとし、そして飛び込んできたルティナに鎌を止められる。

盾は鎌の切っ先ではなく持ち手のところで受け止めたにもかかわらず、衝撃と大きな音を立てた。

そのまま鍔迫り合いの様な押し合いに入る。

その時間で持ち直したアテリトートが、背を向けたペレに向かって"血鎖水星"を放つ。

六本の青い短剣が突き刺さるかに思えたその直後、またもペレの体がぶれ、短剣の射線上からずれた場所に移動している。

しかしその時にはディレットがルティナの後ろ、ペレの死角から炎属性最上級魔法"炎帝鳳凰"を放っていた。

ギリギリでルティナが飛び退き、ペレの目前まで迫った業火の鳥は、しかしペレの直前で受け止められる。

止めたのは、盾を構えて現れたレオノーラだった。


「あらっ。そう、そっちは終わったのね」


そう言ったペレの言葉に、全員が驚愕する。

しかし冷や汗を掻いた三人に対し、鎌を下ろしたペレは別の言葉を紡いだ。


「向こうのレオノーラは全滅したそうよ。ふふっ…強いのね、あの人たち」


ペレが余裕の表情を浮かべてそう言った。
























一時的に全員が戦いの手を止め、飛んできたシラキがペレの正面、ルティナの隣に降り立つ。

十九体という半端な数を見て予感していたが、全滅したかに思えたレオノーラが一体、ペレとともに立っている。


「やっぱ、まだいたか」

「レオノーラは二十体の人形の集団で、全てが本体…レオノーラという魂が持つ肉体よ。十九体がやられて、ここにあるのが最後の体ね」


俺のつぶやきに対して、そうペレが口を開く。

こちらに教えるメリットはないだろうに、嘘を言っている気配もない。


「彼女は主を守る誇り高き騎士。今は私を主として契約しているから、お互いにお互いをいつでも呼び寄せることができるの」


ダンジョンのマップにはついさっきまで、ペレの隣にレオノーラの反応など無かった。

先ほど戦っていた十九体のみがレオノーラとして表示されていたのだ。

人数的に半端だからそれで全部とは思えなかったが、やはり思った通りだ。

ダンジョンコアの反応からして、おそらくだがダンジョンの外から転移してきたのだろう。

ダンジョンの外側から中まで転移するなどそうそうできることではないはずだが、それだけレオノーラのスキルが特殊なのだろう。

瞬間移動、空間転移は地上においてもまず見ることのないレアな能力だ。

しかし死神というヤツはスキルも能力も軒並みおかしいからな、これぐらいなら驚かない。


「レオノーラは集団と言うより、群体そのもの。人形の兵隊達もその能力の一つ。亡者の肉体を再編して作られた魂を持たぬ人形(ゴーレム)は、主の命に従う騎士団。それは本人が消えてもなくなることはなく、動き続けるわ」


今目の前のレオノーラを倒しても、上層を進行中の人形達は消えないって訳ね。

もしかして目の前の二人を倒せば万事うまく収まるかと、淡い期待を全くしていなかった訳ではない。

そうであって欲しくなかったが、現実は非情である。


「レオノーラ一体一体の戦闘力はレベル10くらい。それでも全員が集まれば、全死神でも最高クラスの力を発揮するわ」


レオノーラがその小さな体に似合わぬキリリとした表情で、手に持った槍を高く掲げる。

その姿を見るペレの表情は笑ってはいるもののどこか儚げで、恐ろしい死神とは思えない雰囲気があった。

その様子に俺は少々の困惑を覚えるものの、チラと見ても俺以外にそう感じている者はいないらしい。

ルティナは割と無表情だし、ディレットは楽しそうで、アテリトートは戦士としての冷たい表情の裏から、燃えるような戦意を感じられる。


「何故、そんな説明を?」


俺はそう聞く。

おそらく、彼女の言うことに嘘はないと思う。

何となくだから根拠はないが。


「何でかしらね。何となく、なのかしら」


そう言うペレは自然体で、まるで本当に思いつきでそんな事をしたかのようだ。


「私も聞きたいけれど……あなたたちは多分主力よね。そんなあなたたちがいるのだから、ダンジョンももう残り少ないはず」


正解だ。

一応表情には出さないように気をつけたが、果たして意味があったかどうか。

正直目の前の二人に勝つだけでも辛いのに、予備戦力なんてレベルじゃないおかわりもいる。

こちらはかなりの損害を被っているし、ダンジョンも残りわずかだ。


「そんな中私がいて、レオノーラがいて、メアリーと人形達がいる。それでもあなたたちは諦めていない……どうして?」


ペレはキラキラとした、どこか期待するような瞳で俺を見る。

どやらペレは俺に聞いているらしい。

吸血鬼の魔王とドラゴンに挟まれて、横に神の子がいるのに平然と俺に聞くんだから凄い。

でもまあこういうのは人間に聞くべきだよな、なんたって人間だし。


「不利は諦めるほどじゃない……俺は元から弱いから、敵はいつも俺より強いばかりだ。それにやるしかないなら、楽しんでやりたい」


この戦いの勝敗に関して、状況は絶望的とすら言える。

だが、もし負けてもどうしようもなく悪い状況ではないと、俺は心のどこかでそう思う。

俺以外にもルティナや俺の眷属、みんな死ぬことになるだろう。

だが、逆に言えば誰かがはぐれることもなく、悲しむ時間もなくみんな死ぬ。

死神に対してそういうのも何だけど、この人は敗者をなぶるような人ではなく、そして俺たちを皆殺しにする。


それは到底良いこととは言えないことのはずなのに、どこか安心している自分がいた。


「生み育ててくれた両親とルティナ、仲間達のことを思えば、諦めることは不可能だな。幸せなことに俺は今、俺を幸せにしてくれる人達のために戦えてるから」


両親しかり、ルティナしかり、ミテュルシオンさんや、仲間達しかり。

ルティナが少しだけうれしそうな笑みを浮かべる。

アテリトートはペレを見つめたまま表情を動かさず、ディレットは苦笑い。


「強いのね」


そういうペレの言葉には、かけらも他意を感じない。

心の底からでる、飾りっ気のない本音。


「そうか?」

「そうよ……少し、うらやましいわ」


ペレは手を前に出し、浮いていたレオノーラを手のひらに載せる。

冥界から地上を滅ぼしに来た死神でありながら、無慈悲な死刑執行人などでは絶対にない。


「そういうペレ達は、どうして滅ぼそうとするんだ?」

「私たちは……そういう存在だから。そのために、ここにいるの」


彼女は一体どのような存在なのだろうか。

しかし、それを今知ることはできない。


「アテリトート。ディレット。ルティナ。そしてシラキ。……私の名前はペレ、死神・煉獄よりの使者。さあ、本気で行くわよ!!」


ペレが初めて厳しい視線を向け、死神二人は闇に包まれた。











『終幕の後にて起こりし悲劇、薄幸の命を吸って目覚める。悪魔の如きと呼ばれし厄災は、今死神のもとより放たれた!』


『ワールドスキル"オラルプリスの悪魔"が発動されました』











二人が闇に包まれていたのは短い間だった。

闇の中の光を逆にしたような、おぼろげな闇は瞬く間に巨大化し、人の形を取っていく。

俺たちは、相手の肥大化に合わせて距離をとる。

変身中に攻撃するべきかと一瞬思うが、どうせ死神相手にそんな事しても意味は無いだろうと思い直す。

現れたのは、身長五十メートルはあろうかという真っ黒な闇の巨人。

基本は人と同じ形をしているが、お化けか何かのような、円筒形に似た形をしている。

淡い闇はまるで闇夜に浮かぶ小さな光のようで、そこに実体があるのかすら怪しく、しかし圧倒的な存在感を誇っている。


『我が盾は主を守るために。我が剣は主の道を切り開くために』


声がする。

耳を震わせる音ではなく、心に直接語りかけるような声だ。


『この身は栄光を守る騎士の残滓、泥にまみれた誇り高き守護者』


その声から、それがレオノーラのものであると直感する。

レオノーラの声など一度も聞いたことがないにもかかわらず、俺はそれが正しいと確信した。

なんだか妙な感じだが、今は普段とは大違いにわき上がる自分の感覚が信じられる。


『今顕現するは、過去よりいでし禍災の"亡者"!黒翼を落とし、数多の命を煉獄へと送った黒き死神!!!』


その声を聞きながら、俺もハッとなって動き出す。

俺が翼を広げて空へと飛び出すと同時、ディレットが竜の、アテリトートがコウモリの羽を広げて飛び立つ。

直後、木々を枯らしながら、真っ黒な津波が地上を飲み込んでいった。


(横へ!)


頭の中に響くクラージィヒトの念話(こえ)

俺が横へと飛び退くと、太さ数メートルはあるような赤黒い光線が俺のすぐ側を通り抜けていった。

地上を飲み込んだ黒い津波に目を奪われていたとはいえ、全く発動に気づけなかった。

しかも元がデカいだけあって攻撃もデカいらしい、あと威力もデカい。


「これなら小出しにする必要も無いわね!!」


ディレットが完全にやる気になったらしく、先ほど巨人が放った光線もかくやと言うような威力と太さを持つ赤い光線を連発する。

相手が大きくなったた上にルティナが接近していないため、小さくまとめる必要が無くなったのだ。

それと同時に、別の場所から吹き上がる巨大な噴水。

アテリトートはアテリトートで、"エシディア・エヴォリューション"を発動しつつ、タイダルカノンを発動したのだ。

二人の光線が巨人に襲いかかるが、どちらも巨人の数メートル外側を覆うような不可視のシールドに阻まれる。

双方とも最上級魔法並かそれ以上の威力があったのだが、それを同時に防ぎきるとは。

姿が変わってもレオノーラの防御力は健在と言うことか。

しかしレオノーラはその盾による防御力こそ目を見張るものがあるが、本体の方はそれほど硬い印象はない。

おそらくあのシールドの内側自体には、こちらの攻撃を防げるほどの防御力は無いはずだ。


巨人は先ほどの声のこともあり、おそらくレオノーラであろうことがわかる。

俺がユニゾン使いであるからそう思うだけかもしれないが、これは多分レオノーラ主体でのペレとのユニゾンなのだろう。

騎士と言ったレオノーラが主体となるのはどうかと思ったが、すぐに思い直す。

普通戦うのは騎士の役目だろうし、レオノーラが表にでて攻撃を引き受けるということなのだろう。



レオノーラの巨大化と共に、戦いは一気に大規模化した。

巨大化してからというもの這うような速さでしか動いていないが、その攻撃はこの階層全域に届く。

攻撃は全てが巨人スケールで、とにかく大きかったり数が多かったりする。

すでに緑の生い茂る森の階層は、見る影もないくらい土と焦げの色で満たされていた。


黒い光線は同時に十発は射出可能なようで、しかもそれを連射してくる。

威力は俺なら致命傷、他の二人なら大ダメージになるレベル。

クラージィヒトが射撃前に発射タイミングや弾道を教えてくれるから何とか避けられているが、そうで無かったら悪夢だろう。

無数に飛んでくる大玉の弾幕はルティナが盾で防いでくれる。

弾の大きさや密度は滅亡の大地の時よりずっと厳しいので、ルティナが防いでくれなければ避けきれない。

触れている時間だけ表層から剥げてく感じで、まともに当たれば誰でも中ダメージ。

たまにその巨大な腕を薙ぎ払ってくることもあるが、当たるとその運動エネルギーだけで死にそうだ。

スケールがデカいせいで腕先はかなり速く、しかもかするだけで猛烈な気持ちの悪さに襲われる。

これがくせ者で、瞬間的にはどうしようもないレベルで気をとられる上、少なからず尾を引くため、ちゃんと避けないとあの世に片足突っ込む。

また僅かに暗い波動が面状に押し寄せる攻撃もあり、こちらは完全に隙間も無く押し寄せるため、回避不能。

ルティナがバリアのようなものを張って防いでくれているが、触れるとじりじりと焼けるようなダメージを受ける。


これらの攻撃を不定期に切り替えつつ、レオノーラは常に何かしらの攻撃をしている状態だ。


しかし一方のこちらもやられてばかりではない。

ルティナは地上の一点から動かず、遠距離からこちらを防御している。

遠距離からあのレベルの攻撃を防げるような防壁を、三人分張り続けているのは控えめに言って人間業じゃない。

前回の終末では"盾の女神"、"最強の盾"などと呼ばれたらしいが、その名に恥じない活躍だ。

アテリトートの噴水は群がるように巨人に集まっていき-そんな事ができたのか-、その全てがシールドに弾かれる。

しかしデバフ自体は効いているらしく、僅かながらレオノーラの動きが鈍くなった。

ディレットの攻撃は今までの鬱憤を晴らすかのように激しくなり、攻撃力が増している。

一人では攻撃の全てがシールドに阻まれているが、一度三人が立て続けに最上級魔法を放ったとき、変化が起こった。

三人目、この時はアテリトートが放ったタイダルカノンが、遂にシールドを破壊したのだ。


チャンスとばかりに初撃をになっていたディレットが追い打ちをかける。

放たれた炎帝鳳凰は確かにシールドの内側に着弾し、レオノーラが巨人らしい低く大きな声で唸り声を上げる。


俺達は死神に対し戦況を有利に進めることができていおり、その理由はいくつかある。

一つ目は、アタッカーたる三人全員がそれなりの飛行能力を持つこと。

レオノーラの攻撃はどれもこれも大きく、地上のみを移動してこれを避けることは至難。

しかし本来レアなはずの飛行能力を、偶然にもこの場にいる全員が持っているのだ。

二つ目は、パーティーの盾ことルティナの存在。

本人を含めた四人全員を守り、広範囲に攻撃するタイプの攻撃を悉く防いで見せた。

三つ目は、パーティーの目と言っても過言では無い、クラージィヒトの存在。

防ぎきれないほどの威力と避けられないような速さを持つレーザー攻撃だが、これはクラージィヒト一人でいなしきったと言っても過言では無い。

そして最後に、全員が息を合わせて攻撃すればレオノーラのシールドを突破できること。

俺達には、分かりやすい勝ち目が見えているのだ。


一方、不安要素もある。

まず、ルティナを酷使しすぎていること。

いくら盾の女神と呼ばれるルティナであっても、そのスタミナには限界がある。

何せ自分を含めた四人分の防御を一手に担っているのだ、その負担たるや並大抵のものじゃない。

さらに、アテリトートとディレットのダメージ。

二人は元々高い耐久力を持つ存在であり、それ故にこれまでは回避のための機動力をあまり必要としてこなかった。

回避型のシラキと違い、アテリトートの飛行能力は決して高くはなく、ディレットもそれほどの機動力は持たない。

その為直撃こそないものの、二人はレオノーラの攻撃を避けきれていないのだ。

恐ろしいのは、その程度の被弾でありながら、二人が看過できないほどのダメージを負っていること。

ルティナの防御の上からそれということは、レオノーラの攻撃には貫通ダメージのような、特殊な効果があると思われる。

相変わらずアテリトートは戦意をむき出しにしているし、ディレットはどう猛な笑みを浮かべている。

しかし表情に出ていないだけで、実際はかなり余裕がない事を俺は分かっている。


レオノーラにも、間違いなくダメージは与えられている。

勝負はこのやり取りを維持したまま、どちらが先に力尽きるかにかかっていた。





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