白い町と冒険者
いつの間にか使われていた用語解説。
"終末の時" 邪神の軍が攻めてくる。前回は600年前に起こった。
"大戦" 攻めてきた邪神の軍との戦いのこと。
母に呼ばれ、眠っている青年を受け取った。
両手に抱き、ベットへと運ぶ。
この青年はシラキと言うらしい。
いわば母の眷属であり、私の仲間である。
「人間、か」
人間にはあまり良い思い出がない。
思えば私の仲間の人間は、最初からして最悪だった。
600年前の勇者。
人間の間では"世界を救った偉大なる勇者一行"なんて言われてる。
吐き気がする。
あの勇者は世界で一番嫌いだ。
多分歴代最悪の勇者だろう。
あいつがもたらした厄災は両手の指に収まらない。
自己中心的で自分のミスを認めず省みることをしない。
傲岸不遜で心の中ではいつも他人を見下していた。
自分のせいで仲間を死なせていながら、本気で自分のせいじゃないと考えていた、最低の人間。
そして当時。
そんな人間をおだて、なだめすかし、勇者に仕立て上げた腐ったにおいのする富裕層。
善人を祭り上げ自分たちの未来を丸投げした民草。
利己的で保身しか頭になく自分たちで何かしようなんて考えもしない。
それが人間だ。
……違う、分かってる。
大戦の後孤児院の子供達と何年も暮らした私には、人間を"人間"という括りでなど考えられない。
いい人もいれば、悪い人もいる。
しかし、余計にいらだつのだ。
あの孤児院の人々を知っているから。
勇者と一緒に戦っていた人達を知っているから。
すばらしい人々を知っているから、余計に腐ったような人が嫌いなんだ。
この青年、シラキさんと一緒に暮らすのは、少し怖かった。
母が選んだ人だ、悪い人な訳がない。
そう分かってはいても、この青年と話すのに、ぎこちなかった自覚はある。
そんな私は、驚かされることになった。
シラキさんという人間の、不思議な程の純粋さに。
この世界に来てから30日目。
相も変わらず修行漬けの生活を送っていたが、一日の終わりにルティナが喜ばしい提案をしてくれた。
「さて、そろそろ町に行ってみますか」
「お、お出かけか!」
遂にダンジョンから外に出ると聞き、この1ヶ月を思い出す。
穴蔵からほとんど出ていない訳だが、ルティナと一緒に修行しているだけで満足していた。
というか修行で体力と魔力使い切ってるから他に何かしようって気が起きなかった。
「いやぁ、思えば一ヶ月もダンジョンにいたんだなぁ」
「そうですね……人間には長い時間です」
早起きしてパンをかじり修行、ルティナの作る昼食を食べて修行、ルティナの作る夕食を食べて風呂行って寝る。
なんて健康的なんだ!これで頭上が空だったら完璧だったのに。
まあルティナの存在がこの生活の質を信じられないレベルで上げているわけだが。
というかルティナさん紛れもなく女神ですわ。
こんなに女神な人がいて良いんだろうか。
「…とにかく、町です!冒険者登録しましょう」
「ん、そうか。確か登録時は審査でCランクまでなれるんだっけ?」
「その通りです。Cランクまでは魔物と戦う試験でなれます、C+からは何かしら功績がないとなれません」
冒険者、それはこの世界で最も自由な職業だ。
あるいは最も危険で、最も死亡率の高い職業だ、といっても間違いではない。
彼らは依頼を受けて様々な仕事をこなす。
それは落とし物捜しから犯罪者の討伐、果てはダンジョン探索まで様々だ。
基本的には三人から六人程でパーティーを組み、多様な経験をする彼らは、まるで煮染めるかのようにこの世界を生きている。
町から出れば魔物が生息しているこの世界では、彼らの仕事は決して無くなることがない。
犯罪にはそうそう手を出すことはないが、良い人悪い人様々だ。
そんな彼らが所属しているのが冒険者ギルド。
世界最大の組織だ。
冒険者ギルドはどこの国にも属しておらず、あらゆる国に存在している。
領主が抱える騎士団だけで問題の全てを解決することは難しい。
金次第で様々な仕事を請け負う冒険者は、国にとっても必要な人材なのだ。
そんな冒険者達全員に配られる冒険者カードは、身分証明にも使われ、ランクが上がるとそれだけで1つのステータスになる。
冒険者カード、それはまさしく身分証明書だ。
名前とランクがかかれ、有名人ともなればそれを出すだけでいろいろな場所に入れたりする。
冒険者カードは神によって祝福され、本人のみ出し入れが可能だ。
自分の物だけは出したり消したりできるわけだが、消している間にカードがどこに行っているかは分かっていないらしい。
定説では神の下へ送られているんだとか。
ランク的にも、CとBでは身分に結構な差がある。
Cまでは強ければなれる。
冒険者に成りたてでも、戦いさえできれば最初の試験でCまではなれるのだ。
しかし、B以上は一定の功績が必要になる。
要するに信用の問題だ。
Bランク以上の冒険者は、実力もあり経験も積んでそこそこ信頼できると証明されているのである。
「んじゃ、とりあえず明日はランクCが目的と」
「そうですね。後は依頼や懸賞金の情報を見ましょう」
「何か必要な物とか、気をつけることは?」
「特には。目立たないように気をつけましょう」
準備と言っても、俺は手荷物がほとんどないのだった。
角張った石造りの家々。
白が多いが、家によっては茶色いモノもある。
広い石畳の道がまっすぐと都市の端まで伸び、端に建物が並んでいる。
上を向けば、照りつける太陽の他に、うっすらと月が見える。
昼に見える月は、この世界では珍しい物ではない。
なぜなら、この世界には月が三つ存在しているからだ。
ここはリーズエイジ王国の中でもそこそこ大きな都市、リーベック。
平原に立つこの都市はエルンガスト侯爵の領地で、都市の中心には伯爵の城もある。
ダンジョンの北に位置し、街道を通り比較的安全にたどり着くことができた。
とはいえ昼にダンジョンを出て道の途中で一泊、次の日の朝に着いたわけだが。
俺が今歩いているのは中央へと続くメインストリート。
道を歩くのは町人の他にも、冒険者や馬車を引く行商人など、多くの人で賑わっている。
そんな町並みを見ながら歩く俺の左腕には、フードを目深に被ったルティナが抱きついていた。
「ルティナ、さん?」
「はい」
「何故私は抱きつかれているのでしょうか」
ルティナが白い外套で全身を隠しているのには、ちゃんとした理由がある。
ルティナは言うなれば伝説の英雄だ。
六百年前の終末の大戦は今でも人々に語り継がれている。
そんな中、伝説に語られる彼女が町中を闊歩していたらどうなるか。
もちろん、そうそうばれることなどない。
しかし、偶然六百年以上生きるエルフがいて、偶然そのエルフがルティナに気がつくと言うことがないとも言えない。
エルフは長寿。
ドワーフも人間の数倍以上生きられる。
百年も生きられない人間と違って、この世界には何百年も生きる種族が存在しているのだ。
まあ奇跡的な確率だが。
それでも用心するに越したことはないのだ。
白い町並みに白外套は比較的まだ目立ちにくい方で、顔を隠すには仕方ないのだ。
しかし、では何故俺は抱きつかれているのか?
「すみません、私、人混みが苦手で」
「そうなの?」
パーフェクト超人もといリアル女神のルティナにしては珍しい欠点だ。
ん?俺か?
もちろんご褒美です。
当然です、プロですから。
「まあ、恐れていたほど人目を引いてるわけじゃないしな」
若い中堅冒険者風の男が小柄な白い外套にくっつかれていてもそんなに問題ないらしい。
少々不思議な物を見る目で見られないこともないが、そこそこだ。
「すみません」
「いや、役得だと思うが」
まあ問題があるとすればルティナが気になって初めて見る町なのにあまり町を見ていないことか。
どうせこれから何度も来るんだし、何も問題ないな。
都市の中心、広場に来てみると、エルンガスト侯爵の城が目の前にある。
大きい。
やはり白を基調とした城で、西洋の古い大型建築物にありがちな尖った屋根が複数。
四隅にある円柱の状の柱の中には螺旋階段でも設置してあるのだろうか。
大きさ的に中庭でもありそうな構造で、そうであったなら大変趣向を凝らした物があるのだろうと容易に想像が付く。
世界遺産を目の前にしているような気分だ。
「貴族って言うのは、みんなこんな城に住んでるのか?」
「エルンガスト侯爵は、リーズエイジでも有数の貴族ですから。多くはこれより小さいと思います」
そうなのか。
リーズエイジ王国は世界でも有数の国だし、その中で名のある貴族なら力のある家なのだろう。
まあ、この都市は西のフェデスト伯爵領の都市よりも離れているし、まだ関わるのは先だろうか。
ちなみにより近いフェデスト伯爵領では無くこちらに来たのは、こちらの方が都市も大きく冒険者が多いからだ。
俺も目立つわけにはいかないので、冒険者が多い都市というのは都合が良い。
まあ、そうでなくとも何かとこちらの都市の方が良いらしいが。
城から目を離し、広場を挟んで対面にある冒険者ギルドへと歩を進める。
こちらは3階建ての木造建築で、他の家々と比べれば大きめの建物だ。
外見としては宿か酒場か、といった雰囲気を感じなくもない。
白い石?の建物が多いこの町では多少浮いているが、冒険者ギルドともなればそういうものなのだろう。
腕に抱きついたままのルティナを連れて、ギルドの中へと入る。
中は先にカウンターがあり、入り口付近にはテーブルと椅子が多く置かれ、冒険者達が何人も騒がしく喋っている。
入り口は酒場で、奥は民宿といった所か。
中まで入ると、ようやくルティナが左腕を開放してくれた。
横に並んで歩く。
残念。
「壁には依頼だけでなく、賞金首の情報なんかも張り出されています」
見れば壁にはいくつも紙が張り出されている。
依頼主の名前、場所と日時、基本報酬、内容と、欄にかかれた紙が所狭しと並んでいる。
その横に、似顔絵と特徴、懸賞金のかかれた手配書が張られている。
これもそこそこの数だが、その多くが盗賊のようだ。
…これだけ依頼があったら、確認するのも大変そうだな。
「じゃあ、登録しましょう」
受付のお姉さんに話しかけ、冒険者登録してもらう。
ルティナが先にカードを出して紹介してくれた。
返されたルティナがカードを見せてくれる。
名前はシオンで登録され、ランクはBであるらしい。
受付のお姉さんに興味深げに見られつつも、すぐにでも試験ができることを話してくれる。
やはりBランクは権威があると言うことなのかもしれない。
奥から試験官が現れ、別の部屋に通された。
その部屋にあった魔方陣で移動すると、円形の神殿のような場所についた。
広さは半径20メートルくらいだろうか。
白い大理石のような材質の柱と壁が円形に並び、さながらまるいパルテノン神殿の内部といったところか。
試験の様子は事前にルティナから聞いていたが、実際に見てみるとなかなかワクワクする。
この神秘的な場所で今から魔物と戦うのだ。
「では、まずEランク昇格試験を始める」
試験官の男性の言葉と共に、何も無いところにゆらゆらと魔物が現れる。
現れたのは、槍を持ったコボルト。
レベル1、つまり最低レベルの魔物だ。
全身茶色っぽい毛に覆われ、二足歩行するケモノのような魔物。
狼人間をイメージすると分かりやすいだろうか。
俺が安物の片手剣を構えると、槍で突きを放ってきた。
主観では決して遅くはなかったが、突きをかわしながら懐に飛び込み、剣を切り上げる。
胸に傷を付け、そのまま振り降ろしを首にたたき込む。
ただの西洋剣で首をはねるなんてことは俺にはできないが、多くの魔物は首の骨を折ればそれで殺せる。
鈍い音と共に、コボルトは崩れ落ちた。
俺もこの世界に来てからそれなりに強くなった。
貧弱だった身体にもいくらか筋肉が付き、素手でもそれなりに力が出せるようになった。
ただ一番大きかったのは、魔力と気力を肉弾戦に生かせるようになったことだ。
魔力は語るまでもないが、気力というのは簡単に言えば意志の力だ。
基本的に効果は少ないのだが、俺の場合はそこそこ適正があったらしく、それなりの効果を発揮する。
まあ要するに肉弾戦でも筋肉以外の力を使っているということだ。
気を拳に纏えば威力が上がる。
これのおかげで俺は肉弾戦でもそこそこやれるようになっている。
ちなみに魔力の利用というのは補助魔法のことだ。
相手が弱いので今は使っていない。
「ふむ、では続けてDランクの試験を始める」
コボルトがゆらゆらと蜃気楼のように消えてしまうと同時、また別の魔物が姿を現した。
今度の敵は、ゴブリンが2体。
レベル2の魔物だ。
全身緑色の肌をし、豚を凶悪にしたような面をしている。
手に棍棒を持ったゴブリンは、横に太い体格をしていて、見たままの魔物だ。
要するに暴力的で力が強く、生命力も強い。
こいつらもそれなりの冒険者から見たら格下の相手だ。
俺も一体目が振るう棍棒を避け、首筋に向かって反撃して1体撃破。
続けざまに攻撃してくるもう一体の攻撃を剣で受けつつ体勢を整え、首を攻撃。
急所を強打しただけに両方とも一発で沈め、三十秒もたたずにケリを付けた。
この戦い方、まるでシーフかアサシンだな。
蝶のように舞い、蜂のように刺す。
俺のはそんなに優雅じゃないが、つまり敵の攻撃を避けつつ相手の急所を突くという戦い方だ。
ぶっちゃけ単純に筋肉とタフネスの勝負になったらゴブリンにも負ける。
ゴブリンは技術や意志が無いから弱いんだ。
それらを持つゴブリンはロードやヒーローと呼ばれ、なかなかに強力になる。
まあ珍しい個体であることは確かだが。
「続けよう、ランクC-の試験だ、ここからが本番だぞ」
現れたのは、ホブゴブリン。
レベル3、一般人には多対一でも厳しい魔物だ。
体長2メートルはあり、体重も100キロはありそうな巨体。
そんなのが1メートル程の棍棒を持っている姿は、視覚的にはかなり強そうだ。
ルティナに直接稽古を付けてもらっている俺の方が技術的には上だろうが、身長差で首が狙いにくい。
俺は剣を鞘に戻すと、右手の人差し指と中指を合わせ、魔力を集中する。
ホブゴブリンは今までの敵と同じく、ただ突撃し、棍棒を振り下ろす。
それは図体を考えればなかなかに俊敏だったが、しっかりと避けることに集中していた俺は飛び退って回避する。
そのままバックステップし、右手の指の銃を迫るホブゴブリンに向ける。
「魔法弾!!」
放たれた直径70センチほどの青白い弾は、ホブゴブリンの上半身に激突。
胸の辺りから上をえぐりとばした。
頭を失った巨体は衝撃のままに背中から倒れる。
ホブゴブリンは、その肉体こそ強いが、魔法にはほとんど耐性がない。
俺が十分に魔力を込めた魔法が直撃すれば、こんなものだろう。
「おお、ホブゴブリンを一撃で……!」
「ふふん」
試験官が驚いている横で、ルティナが誇らしげにしている。
「ゴホン。次はCランクの試験だ。次の敵はなかなか強いぞ、気をつけろ!」
すぐに気を取り直したらしい試験官が、次の情報を教えてくれる。
今まで無関心っぽかった試験官が忠告を入れてくれたことに内心少し喜びつつ、魔力を操作する。
Cランク、つまり現段階の最終戦闘。
出てきたのはレッサーデーモン。
レベル4の魔物であり、魔法も物理も使える。
いわゆるデーモンと言われる魔物達の中では最弱であるが、最弱でもレベル4な辺り、ゴブリンとは種族としての強さが違う。
黒っぽい灰色の肌、赤い目、逆三角形の体型。
細めの足に比べて太い胴体と腕が凶悪だ。
ただ身体に関節のような物が見られず、全て曲線的で起伏の少ないラインをしている。
かわいいというか、不気味というかは人それぞれ。
俺はまあ不思議、かな。
そんな風に思っていると、レッサーデーモンはケタケタという笑い声と共に右腕を突き出した。
そこに炎が集まり、火球となって撃ち出される。
あれは火の初級魔法、ファイヤーボール。
火球は結構な速さでまっすぐに飛んでくる。
何とか避けることもできそうだが。
「ガイアランス!」
地面から尖った岩を突き上げ、ファイヤーボールをガードする。
岩に衝突した火球は炎を振りまき爆発した。
これは地面から岩を突きだす地属性の初級応用魔法、ガイアランスだ。
出が速くそれなりの防御にも攻撃にも使える上、少ない力でストーンスローに移行できる優れもの。
「ストーンスローッ!!」
今突きだしてファイヤーボールを防いだ岩が、手のひらサイズに別れていき、レッサーデーモンに襲いかかる。
レッサーデーモンは両腕でガードするが、それなりの手応えがある。
瞬時に防御系魔法を使ってこないところを見ると、魔法では俺の方に部があるらしい。
レッサーデーモンもそれが分かったのか、ストーンスローが終わった瞬間、全速力で突撃を仕掛けてきた。
レッサーデーモンの白兵戦能力がどれほどか、相手の動きに集中する。
突き出される左拳。
それをガードすべく右腕を出すが、寸止めされる。
うげっ!と思うまもなく、蹴りが腹にたたき込まれる。
知能の低い者には使用できない技、フェイントだ。
瞬間、息が苦しくなる。
うげぇ。とにかく、距離を取らなくては!
何とか退こうとする俺に、ぴったりと追従するレッサーデーモン。
その拳が握られ、突き出される。
させるか!!
左手の"銃"から魔法弾を撃ち出す。
まともに狙いも付けられないが、この距離で撃ち出された魔法の弾は奇襲気味に相手に直撃する。
吹き飛ばされるレッサーデーモン。
これだって初級応用~中級くらいの威力がある魔法なんだ。
そして吹き飛ばされたレッサーデーモンが体勢を立て直す前に、次なる魔法を放つ。
右手をひっかくような形にしてから上に振り上げ、叫ぶ。
「フレイムピラーッ!!!」
火属性の中級魔法、フレイムピラー。
地表から炎の柱が立ち上り、哀れな犠牲者を飲み込み焼き尽くす。
直径三メートル程の炎の柱は、さながら噴火のように吹き上がり続ける。
たっぷりと五秒間もの間立ち上っていた炎の柱が消えると、中心から黒焦げになったレッサーデーモンが倒れ落ちる。
とにかく全力で放っただけに、結構な威力を発揮することができた。
レッサーデーモンが蜃気楼のように消え去ると、試験は終わりだとばかりに試験官が歩いてくる。
「大したものだな、物理に弱く魔法に強いレッサーデーモンを焼き殺すとは」
「まあ、なりふり構わず撃ったからな」
予想外の格闘能力に焦り、つい全力で中級魔法をぶっ放したのだった。
あれで倒せなかったら次は上級魔法を撃ってたかもしれない。
よく考えればレベル4魔物に上級魔法とかオーバーキル以外の何物でもないな。
まあそんなこんなで無事に試験を終え、ランクC冒険者となったのだった。
ギルドに戻ってくると、受付で冒険者カードを受け取る。
これ、どうやって出し入れするんだ?
「ルティナ」
「手に持って念じればできますよ」
言うまでもなく伝わった。
左手のひらにカードを乗せて、カードが沈み込む様を想像してみると、実際に沈み込んだ。
おおー。
出てくる様を想像すれば、やはり出てくる。
すごいな、魔力も使ってない気がするし。
ついでに似顔絵や説明などがまとめられた冊子、解毒薬やポーションなどのアイテムを購入。
値段はルティナ持ちである。
この自分よりも小さな少女に金をたかるあたり男として思うところがないでもないが、いかんせん俺は無一文である。
それに上司と部下的な側面もあるし、あまり気にしない。
ギルドを出るとやはりルティナは左腕にしがみついてくる。
「ではでは、服を買いましょう」
声だけはいつもの調子でルティナが言う。
服越しに感じる暖かくも柔らかい感触に夢中で気付いていなかったが、ルティナがこんなになるなんて、一体何があったんだろうか。
しかし彼女が生きた数百、あるいは数千年以上の時のことなど、俺には分かろうはずもない。
俺にできることと言えば……まあ黙って身を任せることか。
「俺も服少ないし、買ってくれるか?」
俺が持っている服は元の世界の一着、ルティナが用意してくれた服が数着だ。
修行でぼろぼろになるため普通に足らない。
「もちろんです、というかシラキさんの服を買いに行くんですよ」
言いながらルティナがきゅっとしがみついてくる。
天国かな?
これ以上俺の脳内をピンク色にしてどうしようってんだ。
「そ、そうだな、ありがとう」
どもる。
というか第三者にはどんな風に見えてるかなんて俺は考えない。
深呼吸して左腕から意識を外す。
おれはしょうきにもどった。
よし、これでしばらくは持つだろう。
とりあえず広場を見渡し、手近な場所にある服屋へ。
あんまりゆっくりできる状況でも無いだろうし、手短に済ませよう。
オープンな店に入ると、ルティナが大体服を選んでくれる。
「しかし、金銭感覚もどれが良いのかも良く分からん」
「任せて下さい、シラキさんはどんなのが好みですか?」
全く分からないので見た目で適当に決める。
後はルティナが選んでくれた。
建物に入ると腕は放してくれるのだが、それでも必ず側から離れない。
これは俺の護衛的な意味合いなのだろうか?
まあ折角呼んだ人材がしょうも無いことで死んだら泣けるよな。
買った服は持ってきたバックに詰め込んだ。
その後は大して寄り道もせずに帰った。
ルティナはそうだが、俺もあまり目立つべきではない人間なのだろう。
……とりあえず今日は楽しかった。
31日目終了
シラキ・ヒュノージェ(愛原白木)
総合C+攻撃C- 防御D 魔力量B- 魔法攻撃B- 魔法防御C すばやさC+ スタミナC- スキルC
スキル
ユニークスキル「結晶支配」
ユニークスキル「 」
ダンジョン
保有マナ
28,930
ダンジョンの全魔物
ボス:ソリフィス(ヒポグリフ)
迷宮植物:
ヒカリゴケ4400、ヒカリダケ550、魔草440
眷属・グループ(能力順):
グリフォン4
シルバーウルフ1、ウルフソーサラー5、ハウンドウルフ20
フォックスシャーマン10、ハウンドフォックス10
クイーンビー1、ニードルビー10
ゴブリン30
野良、その他:
ゴブリン29、ホブゴブリン3、コボルト18、コボルトロード1、ハウンドウルフ28、食人花11、インプ5
一階層
洞窟・迷宮
二階層
更地
三階層
更地
四階層
更地
五階層
コア、個室2、ダイニングキッチン、大浴場、保存庫
野良の魔物は割と知らないうちに増えてます。
マナの推移は計算はしてますけど割と適当です。