煉獄にて白き龍と出会う
ケントニスと出会った後。
あの時かの白き龍と出会った、いや見つけてもらったことが如何に幸運であったのか実感することとなった。
何せこの森に来てから初めて戦いから解放されたのだ。
ケントニスが張ってくれた結界は、中の存在を外から分からなくする、聞いたこともない魔法だった。
俺がやりたくてもできなかった気配絶つ系…というよりは隠蔽系である。
この結界色々とトンデモ性能で、効果範囲は半径二十メートル程の球形。
その中にいる対象の存在を隠すわけだが、この中にいる限り外から見つかる可能性はほとんどない。
魔力は感知できないし、生命探知や魔力探知と言った魔法もごまかせるし、おまけに臭いや体温まで隠してしまう。
ぶっちゃけどうやって見つけたら良いのか思いつかないレベル。
しかもこれ対象になるのは任意で選択した相手だけで、範囲に入っても敵にはかからない。
その上結界自体の存在に気付くことも容易ではなく、事実として結界が張られていることを知っている俺ですら、相当集中しないと感知できない。
直接姿を見られるか、こちらが大きな音でも立てない限り見つかることはないだろう。
とんでもない性能である。
こんな魔法が使えちゃったら待ち伏せし放題、というか奇襲し放題だ。
しかもこれ張ってるのケントニス本体じゃなくて分身だからね。
……言ってて意味分かんなくなってきた。
つまり、エルダードラゴンってヤツはそれほど凄い存在だと言うことだ。
ディレットだって元々の体なら戦闘力でルティナを超えるそうだし。
ちなみにケントニスはヴォルフレイデンとは馴染みの仲なのだそうで、俺のことも話に聞いていたらしかった。
そして狭間の戦いの最中にこの場所に連れてこられたのだとか。
まあほぼ初対面の俺達に良くしてくれるのだから、いい人だと思う。
そして久しぶりの休息と共に、ケントニスはかなりの情報をもたらしてくれた。
敵を倒してしまうとフィールドの融合が起きる。
最高難易度であり、出てくる敵が全てレベル10以上という修羅の世界を軽々に融合させてしまうのは良くない。
そういうわけでドラゴンたちのいる「瘴気の浮遊岩」では後一体というところで敵を倒すのを止めているのだそうだ。
ちなみにそのフィールドにいるのはエルダードラゴン5体だけだそうで、ガチで人の居場所じゃない。
ケントニスはユニークエネミーの討伐報酬で、他のフィールドに分身を送っているのだそうだ。
分身の数は全体で百ほどで、本体とは常に情報を共有しているとのこと。
それぞれの分身がそれぞれのフィールドで情報収集をしたり、人助けをしたりしているという、あなたが神か。
ちなみに情報はイベントで知ったのもそうだが、実際にケントニスが調べたものも混ざっている。
どうやって調べたのかと聞いてみれば、世界構造や物質を調べると、そこに意図的にヒントが記されているそうだ。
そんなもんが何故分かるのか。
エルダードラゴンだから、と言うよりケントニスだから。
俺にはできない……次元が違う。
というかそんなことが分かるのは、よほど魔法やその手の知識に精通している者だけだろう。
俺の場合は割と感覚で使っている部分が多いのと、実用面に偏っているため、構造や知識に弱いのだ。
こう、ソフトは分かるけどハードは分からない的な。
凄いと言えば、澄香もずいぶんと尖った人間だった。
まともな休息を得られたおかげで、澄香のコンディションは数日で完全に復調したのだが、思った通り相当な戦闘力の持ち主だった。
彼女の戦闘スタイルは、風魔法を補助に使い、高い速力を生かして白兵戦に持ち込むというものだ。
小さな体も合わさってか、彼女の敏捷性は驚嘆に値する。
何度か軽く手合わせしたのだが、刀で打ち合っていると彼女が視界から消えるのである。
ふとした拍子に彼女が消え、横や後ろを取られるのは、打ち合う側としては恐怖だ。
澄香曰く瞬きの瞬間が好機だそうだが、そんなもんが常人にできるか!
なお俺の場合は常に魔力を気にして戦っているので、目が見えなくても相手の位置は分かる……見えないで接近戦とかマジ勘弁だけど。
武器の切れ味を上げる"風の刃"、方向転換や空中での移動を補助する"風の翼"、そして直線での移動速度を上げる"戦士の追い風"を同時に扱う、澄香の速攻は苛烈だ。
相手は逃げることも打ち合うことも難しく、たとえ能力的に上回っていてもこれを跳ね返すのは難しいだろう。
相当な戦闘センスを持ち、この歳でこのランクであるのも、才能と無関係とは言いがたい。
しかし、ひたすら攻めることに特化している反面、それ以外の部分は非常に脆い。
彼女は防御面に関してはほとんど紙同然で、躱すことのみに特化している。
その為威力の低い攻撃でもそれなりの脅威であるし、そもそもまともに攻撃をくらうこと自体がまずい。
年齢的若さと体の小ささもあり、持久力や耐久力は俺以下。
回復やその他の補助はそろって消費アイテム頼りであり、それが尽きたら回復手段を持たない。
扱いの難しい風魔法を複数維持したままで大きな負担のかかる白兵戦をするため、体力・精神力を爆発的に消費する。
持久戦には全く向いておらず、そもそも本人にそこを伸ばす気が薄い。
戦闘能力で俺を上回っているにもかかわらず、この森で俺の数倍死亡するのもうなずけるというものだ。
何せこの森では断続的に敵がやってくるため、どうしたって持久戦を強いられる。
その上満足に休憩もできず、アイテムが尽きて回復もできずじゃあ、長く生きられるはずもない。
そして年齢が関係あるかは分からないが、今の澄香は精神的に不安定だ。
というか、弱っている。
雰囲気的に、普段の彼女は冷静で感情の薄い少女だったのではと思われる。
それが今は妙に俺に懐いている、と言うより俺に依存している節がある。
肉体的にはほとんど復調しているしているのに、俺にくっつきたがり離れようとしない。
不思議に思ったが、冷静になって考えてみれば当然のことかも知れない。
そもそもこの歳でこの性格と戦闘能力なのだ、まともな環境で育ったとは思えない。
人がそうあるのは、"そう"であるだけの理由が、確実に存在しているはずなのだから。
彼女といると子どもができた気分になるし、一対一の戦いで勝てない事も、むしろその思いを強くさせている。
結界を維持してくれているケントニスとは何でもない話もするのだが、澄香の事を話していたとき。
「私たちドラゴンは論理は詳しいのですが、感情というものには習熟していません。そんな私に言えることは、そうですね。極限状態でなければ、表出しないものもあるでしょう。そして澄香が欲しているものは、おそらく彼女が持ち得たことのないものなのではないでしょうか」
そう言った。
このような状況であるからこそ、普段心の奥底に沈んでいるものが出てくる、と。
道理ではある。
そして彼女が欲するもの……それは信頼か、愛情か……人のぬくもりというものか。
あるいはもっと直球に、自分を守ってくれるもの、恐怖を取り除いてくれるもの。
こうなってくると、生まれ育った環境が良くなかったというのは、実際にそうなのではないかと思う。
と言うか現状まだ子どもで育ち盛りなんだし、現在進行形でまともな環境じゃないじゃん。
ここが異世界だって事忘れてた。
まあ何にせよ、俺は今の状況を悪いとは思っていない。
「にしてもケントニスって、結構人間のこと分かってるんだ?」
ケントニスは様付けすると仰々しいし、さん付けだと言いづらいため、仕方なく呼び捨てに。
フレイみたいに愛称とかあれば良いのだが、特にないらしい。
付き合ってみて思ったが、彼女とは仲良くなれそうな気がする、というかもうなった。
ただ敬語で話すべきなのか普通に話して良いのかいまいち分かりづらい。
でもこの世界、偉い人でもそれほど話し方は気にしない気がする。
ガリオラーデには気持ち悪い呼ばわりされたことすらあるし。
「なぜ、そう思うのですか?」
「いや……だって、人間が複雑な生き物だって分かってるみたいだからさ。それが平時であれ、極限状態であれ、そのときに出てくる言動や人格なんて……その人の一部に過ぎない」
一言で表せる人なんていない。
……とも言い切れないけど。
単純な人もいれば複雑な人もいる、十人十色だよな。
「そうですね。私たちドラゴンの間では、有名な話があります……っと」
折れた刀の代わりに、俺が作った刀を振って慣らしていた澄香が戻ってきた。
澄香は俺達を見て首をかしげる。
「何の話?」
「人間の話。まあ聞いてみてからのお楽しみで」
澄香は頷くと、俺の隣にぴったりとくっついて座る。
この構図、先生と生徒だ。
俺が目で促すと、ケントニスは頷いて話し始める。
「かつて、とあるドラゴンがいました。彼の願いは、英雄たる力を持った人間と戦い、そして死ぬこと。長い年月を生きる彼は、何をするでもなく、ただ力を蓄えて生きていました。
ある日、そんな生活も終わりを迎えます。荒れ狂う強大な魔物と出会ったのです。彼はその魔物との戦いで消耗し、その力の多くを使って勝利しました。
その後、彼は勇気ある人間達と出会います。英雄と呼ぶにはまだ弱く、しかし強い意志を持った人間達。彼はそんな人間達と残された力の全てを使って戦い、そして敗北しました。
満足した彼は人間達にトドメを刺せと言いますが、人間達の内一人が言いました。人間として生きてみろ、と。
そうして彼は人間として生きることとなり、そして自分が如何に無知蒙昧であったかを知ることとなったのです。
自らを打ち倒した人間達と共に暮らし、人とは何か……その中で、戦う力以外が占める割合の、なんと大きいことか。
彼は、英雄を好まなくなりました。それが持つ悲しみとつまらなさを知ったからです」
ケントニスは、昔話調で語った。
それを聞いていて俺は、その話が脚色や端折った部分があるにせよ、実際にあったことなのだと感じた。
横で聞いていた澄香は、隣で真剣に聞いている俺を見て、ケントニスへと視線を戻した。
「人は、ただ一つの事柄だけを見て測れる存在にあらず」
その言葉に、目の前の白き存在は、どのような思いを込めたのだろうか。
「それだけの事を知るのに、私たちは気の遠くなる程の時間を掛けました」
目をつむるケントニス。
俺はその話を聞いて、酷く感動していた。
「竜も、また」
「……え?」
抑えきれず発した言葉に、ケントニスが疑問の声を投げる。
「人と共に生きて、竜もまた、"ただ一つの事柄だけを見て測れぬ存在"になったんだな、って」
長い時を生き、強大で、叡智を持ち、誇り高く、偉大な存在。
ディレットを見ていれば、全ての竜がそれだけの存在でないことは分かる。
あっけにとられていたケントニスが、二の句が継げないでいる内に、はっとなって気付いた。
「いや、その、凄く失礼なことを言っていたらすみません」
上から目線で言われたとは思われたくない。
そのような存在であることは、当然良いことばかりではないのだから。
「ふ、ふふ。心配しなくても大丈夫ですよ。むしろ、うれしかった」
ケントニスがなだめるように言う。
「彼の竜も、きっとこういう気持ちだったのでしょうね……少し、ディレットがうらやましくなりました」
「当のディレットは、何かとルティナにボコられてるけどね」
「ふふふ、ディレットには良い薬です」
何かうれしかったらしく、ケントニスは機嫌が良さそうだ。
「ありがとう、シラキ。このことは、私が消えるときまで忘れません」
「喜んでもらえたならなにより」
「エルダードラゴンに褒められるなんて…シラキ、凄いのね」
「ありがとう」
素直に受け取っておくことにした。
竜と人の話を聞いた次の日。
あぐらをかいて座る俺は、一本の刀を膝に乗せている。
"緑風"と名付けたそれは、透き通ったエメラルドグリーンの刀であり、澄香のために作成しているものだ。
オーダーメイドといえる物であり、澄香に振るってもらって、望むとおりの調整を繰り返している。
最初は遠慮されたが、澄香の刀はすでに折れており、このままでは戦力大幅減なので受け取ってもらった。
この世界では二つの力が使われており、それが"魔力"と"闘気"だ
魔法使いが使い、俺も使っているのが魔力であり、それ以外の物理攻撃主体の戦士が使うのが"闘気"、あるいは"気"とか"気力"とか呼ばれるものだ。
基本的にどちらか片方が使えるようになると、もう一方の力を使うのは非常に困難になる。
それは操れる力の総量は一定だとか、才能だとか、容量限界だとか色々言われているが、実際の所は分からない。
魔力はあればあるほど、魔力によって引き起こされる効果に対して耐性を持つが、それだけでは物理に対してはほとんど影響力を持たない。
一方闘気はあればある程身体能力を上げるが、魔力に関してはほとんど影響できない。
一見正反対の二つだが、そこには大きな共通点がある。
それは、意志の力が介在していると言う点だ。
実際に使われる魔力とは、"無色の魔力"と"意志"を合わせたものであり、闘気とは"生命力"と"意志"を合わせたものなのだ。
ちなみに俺は知識として知っているだけでしっかりと実感できているわけではない。
それで何が言いたいかというと、ユニークスキル、と言うか俺の"結晶支配"はそのどちらも使っていないと言うことだ。
使っているのは、"意志"そのもの。
つまり俺は魔力があろうがなかろうが、"結晶支配"自体は使えるのである。
しかし実際には、この刀には魔力も、闘気も使われることになる。
なぜなら"作る"段階を超えた後になら、これらの力の出番はあるからだ。
俺は意志を使って作った刀に、魔力を付与することでその性能を向上させているのである。
魔力には指向性、あるいは特性と呼べるものがある。
それは、使い手が何を思ってその魔力を使っているかによって決まり、それを制御することで、魔力の効果をある程度変えることができるのだ。
傷付けたいと思えば攻撃力が上がるし、守りたいと願えば防御力を上げる、といった具合だ。
まあ、だから怒りや憎しみ、拒絶や愛でも影響は大きい訳だが。
ちなみに魔力だけでなく、闘気にも感情は関係してくる……両方とも意志を使っているのだから、当たり前ではあるが。
そうして作った刀を、澄香が闘気でもって振るうのだからかなりの性能になるだろう。
ちなみに澄香は闘気主体で、魔力は補助魔法に全振りすることで何とか使えているらしい。
十分凄いけど。
「澄香、できた」
「んっ」
調整の終わったばかりの"緑風"を鞘に納めて投げ渡し、澄香の正面に立つ。
そのままお互いに見つめ合い、合図もなく動き出す。
もちろん、お互いに加減した打ち合いだ。
魔法も使わず、純粋な身体能力と技量のみの立ち会いで、呼吸や体の動き、武器の調子を確かめる。
そうしていて分かったことだが、澄香は手加減すること自体にあまり慣れていないらしかった。
たださすがと言うべきか、最初の内はむすっとしたり戸惑っていたが、何回かするころにはそれもなくなった。
「楽しくないか?」
「わかんない。…そんなこと、思ったことなかったから」
笑わない澄香に聞いてみた。
気を抜かないのは良いことだが、どうせなら楽しんだ方が良いと思う。
「俺は割と楽しいぞ」
「そうなの?」
「うん」
俺が笑うと、澄香も表情を柔らかくした。
やっぱり笑ってはいないが。
組み手もどきを終えて水分補給する。
「どうですか?」
「すみません、途中から忘れました」
「そのようでしたね」
俺は今ケントニスに修行?を見てもらっている。
竜の昔話から、ケントニスが何かと良くしてくれているのだ。
ホントこの人凄い。
まあ育てる事に関してはルティナに叶わないとケントニス本人は言っている。
そりゃあっちは"教育"や"成長"の権能持ちだから…。
そう考えるとルティナに師事しているっていうのは本当に凄いことなんだろうなぁ。
見てもらっているのは、自身の存在をより深く理解し、制御する技能……仙人の技能だという。
ちなみに仙人は"生命力"をそのまま操る術を持つ者、らしい。
極めると老化が遅くなったり、髪の毛や爪と言った、普段体が自動的に管理している部分も操れるようになるという。
病気にもなりにくいし、血を止めたり体から毒を追い出したりと言ったことまでできるのだとか。
特別な術を使っているわけではなく、自身の意志で肉体を制御する当たり、凄く仙人って感じがする。
ちなみにちゃんとした仙人はいま地上にはほとんどいないのだとか。
で、ケントニスから言われていたこと。
それは仙人の修行レベル1、呼吸。
戦っている間常に意識的に呼吸しろ、という単純なものなのだが、これがなかなか難しい。
気を抜くとすぐに忘れてしまう。
この世界に来てからちょっとした運動では息も上がらなくなったし、いつの間にか無意識になっているのだ。
あれ、これ意志力の修行じゃね?
「言わばこれは入門。竜であれば誰しもができることであり、己の存在を高めるための術」
「……実際、凄い技術だし俺もかなり本気で習得したいけど、時間がかかりすぎるんじゃ?」
「良いのですよ。元々、日常にこそ神髄のある技術。短期間に詰め込めるものではありませんから」
「長く続ける話か」
やらないのはできるのだが、続けるのは不得手なんだよな……まあ、でも興味の方が強いから多分やるでしょ。
「ところでケントニス、"神の子達の庭"って知ってる?」
俺は話を変え、疑問に思っていたことを聞いてみることにする。
「三人の神の子達の世界のことですね。私は直接行ったことはありませんが、話には聞いています」
「ん。あそこって何か精神体?だか魂だかでいつでも行けたんだけど、今は…ここに来てからは行けてなくて」
そう、この場所に来てからと言うもの、神の子達の庭に入ることができていない。
つまり、神の子三人組と連絡が取れない。
世界というか空間?が違うから、仕方ないことなのだろうか。
「地上であれば行けた神の子達の庭に、煉獄に来てからは入れないのですね?」
「ん、多分」
ケントニスはそう俺に確認し、その後少しの間考え込むように目を伏せる。
「と言うことは……やはり、そうなのかも知れませんね」
「というと?」
「死ぬと元に戻る体、この世界の構造をみて、考えていたことがあるのです。それは……この場所にいる私たちが、魂だけの存在、もしくはそれに準ずる状態であり、肉体を持っていないのでは、ということ」
ケントニスの言葉は、それなりに衝撃的であった。
俺は自分の体を確認してみるが、もちろん触ることはできるし、地上にいた頃と何かが変わっているような感覚はない。
「そう……なのか?」
「可能性は高いです。そうではないかと思っていましたが、シラキの話を聞いて更に疑念を強めました。すでに魂がこの場所に囚われているため、神の子達の庭に移動できない。諦めた者が復活できないのは、この肉体と思っているもの自体が魂に依存しているから…!」
そう言われて見ると、確かにそうなのかも知れない。
というか、そうだとすると大抵の謎は解決できるだろう。
まあ普段の状態とまるで差を実感できないし、どうして死ぬと空腹まで解消されているのかとかは説明しづらいが。
結晶支配の力は使えるし、武器の持ち込みなんかがどうやって判定されているのかも分からない。
「……ちなみに、それが本当だとしたら、何か変わることや注意点は…?」
「特には。この体も地上とほぼ変わりありませんし、気を強く持て…というのはあなたには言うまでもない助言でしょうし」
「なるほど…要するに変わらないと」
肉体がないからと言って、仙人の修行などが無意味なわけではないのだろう。
内容は衝撃的ではあったが、相変わらずシラキは動揺もせずに受け入れた。
こういう所がシラキの特徴の一つなのであった。
シラキが誰かと話していて「感じる」とかいっているときは、それは大抵正解です。