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異世界で小柄な女神様とダンジョン運営  作者: バージ
新界定礎の始点 ~未知は尽きぬもの~
3/96

修行漬け、神の寮

この世界に来て一週間。

つまり、受験勉強じみて過密な修行を初めて七日。


俺の一日はルティナに起こされるところから始まる。

普通人が部屋に入ってくれば気付きそうなものだが、今のところ気付けた試しがない。

ルティナが気配殺してる訳でもないだろうし、疲れのせいか俺が熟睡しすぎているのだろう。

そうして寝たままの俺はルティナに揺すられて起きる。

何というお大臣生活。その幸せをかみしめる俺。


自分で起きろという話だが、洞窟内は日の光が届かないせいで時間が全く分からない。

朝も夜も全く変わらないため、起きる時間は完全にルティナ任せだ。

ルティナ曰く「何となく時間が把握できるようになりましょう」とのことだが少なくとも今は進展がない。

実際の所どれくらい寝ているのか全然分かっていないし、日付に実感がわかない。

ただ一日が大変濃いから相当疲れてるし、それなりの時間寝てはいるはずだ。


起きると軽く朝食をとり、修行が始まる。

朝は基礎体力の向上や瞑想による魔力のコントロール練習など、基礎練の時間だ。

どのような修行であれ、疑問質問こそあれど文句はない。

自分の能力が伸びていく実感があるというのは、すばらしいことだと思う。

目に見える成果を素直に喜び次に繋げるのだ。


朝の修練が終わるとダンジョンコアに張り付く。

これからどんなダンジョンを作るか、どんな魔物を使うか。

半ば夢想しながら先のことを考える。

ダンジョン関連については、ルティナは全然口を出してこない。

魔物の所感とか能力とかなら色々教えてくれるのだが、具体的な方向性などの話は丸投げである。

よく分からない立ち位置だ。

まあ色々やりたいことはあるが、まずは最低限強くなってからということになっている。


その後は、ルティナが作ってくれる昼食を食べながら、世間話。


「シラキさんは水魔法も変形させてましたよね」

「変形?」


水の初期魔法、ウォーターブレット。

つい昨日習った魔法で、水のボールを出して打ち出す魔法だ。

属性のごとの初期魔法の中では格段に難易度が高く、しかもその性質上威力が出にくい。

しかし魔力があれば綺麗な水が出せるため、戦闘以外で重宝する魔法だ。

この世界の魔法で作られた水は、多くが放置しても消えたりはしない、実在する水なのである。

実際この洞窟の風呂は水魔法と火魔法で作られている。


このダンジョンの風呂は旅館の温泉くらいの大きさがあるから俺一人じゃ一杯にできないけどね。

どちらにせよ修行で何度も魔力使い切っているのだが。


「水に圧力を加えて撃ち出してました」

「ああー、撃ち出そうとしてできなかったあれね」


ウォーターレーザー的な技にできるかもと思ったのだが、実際は難しかった。

修行を続けていればそのうちできるだろうと思うので、また今度試すつもり。


「あれ、中級魔法ですよ」

「えっ……そうなの?」

「ですです。ただ、初級を変形させて作ったウォーターレーザーと、中級のウォーターレーザーでは、消費と威力が違います」


魔法は初級に始まり、初級応用、中級、中級応用とレベルが上がっていく。

初級、中級、上級、最上級ときて、大魔法、神話級魔法と続く。

先は長いね、神話級魔法なんかは使える人いないらしいけど。

で、話をまとめると俺は初級魔法で中級魔法を撃とうとしていたのか。

……分かりにくい。


「違うんだ?」

「初級の方は消費も威力も低いですけど、費用対効果は高いです、ある程度は。

 まー単純に中級魔法を使うよりずっと難しいんで、使う人いませんけど」


ふーむ。

つまり初級の方がコスパは良いけどより疲れる、と。

加護があることも考えればこれは相性が良いのかもしれないな。

いや、先に精神力が切れるか。


「面白いな」

「シラキさんには、身近な話ですね」


魔法を教わると、つい変形したくなる。

仕方ないね。


この世界では標準的なパンとシチューを食べたらまた修行だ。

修行の内容は、大まかに分けて魔法と接近戦の二つ。


魔法。

やっていることと言えばひたすら魔法を撃っている。

新しい魔法を教わり、変形させたりしながらひたすら撃つ。

するとルティナがそれをみてあれこれいってくるので、言うとおりにする。

この繰り返しだ。

ルティナは基礎から順番に教えてくれるため、今のところつまずくところはない。

あまりにも順調すぎるが、毎回魔力切れギリギリまで魔法を使うので、よく意識が飛びかける。

そうするとルティナが魔力をくれるのだが、他人の魔力はやはり自分の物とは違うらしく、違いを感じるのも修行の一つだ。


近接戦。

こちらは魔法よりもスパルタで、最初あった加減は初日の内に消滅した。

お互いに武器を持ってひたすら打ち合うのだが、当然勝負になってない。

ルティナは避けるか、受けるか、受け流すかして、その後きっちりカウンターを入れてくる。

相当手加減してくれているのですぐに治るのだが、治る故に終わりがない。

加護による回復が思いの外強く、なかなか限界が来ないのだ。

おかげでずいぶん長く修行をしていられる(白目)

いろいろ言われるのだが、半分もこなせている気がしない。

俺も日に日に動きがよくなっている自覚はあるのだが、そのたびにルティナがハードルを上げるのであまり実感が湧かない。


ただ、七日も続けて分かったのだが、ルティナが本格的に人間じゃない。

まずルティナは身体は見た目少女なのだが、明らかに力が強い。

あの細腕から俺の筋力の数倍どころじゃない力が出ている。

多分リンゴどころかスイカとか片手で握りつぶせると思う。

それも魔力などの力を使っていない、純粋な膂力のみで。

それに勘違いかもしれないが、どうも体の動きが誘導されている節がある。

それも何故そう思うのか説明できない、謎の感覚によってそう感じている。

実は俺の動きはルティナから干渉を受けており、最適な動きを覚え込まされているとか?

SFみたいな話だな。


「ルティナって、神だよね」


休憩時間、体力が戻ってきたあたりで聞いてみた。

ルティナは広げた両手を合わせて答える。


「いわゆる半神半人というやつです」

「え?つまり人と神の間に生まれた子?」

「ですです。ミテュルシオン様がある人間の女性に生ませたのが、私になりますね」


ミテュルシオンは女性だったはずだが…まあ神にはそんなの関係ないのか。

神話だとえいってやっただけでパッと子供できたりするし。

ああいうのは常識で考えても仕方の無い所あるからな。


「純粋な神々は、性別があってないようなものですから……あ、私は女です。乱暴にしちゃダメですよ?」


ミテュルシオンさんは女っぽいけど性別無し。

ルティナは少女っぽい女性。


「つまり乱暴でなければ良い?」

「シラキさん、ハレンチです」

「俺なんかはかなりピュアやで」


俺はピュア種。もとい、ルティナは意外とノリが良いのだ。

というか、どういう対応をしてもあちらで距離感を調整してくれる。

なんてできた人だ、純粋に尊敬する。


「実際の所ルティナが強すぎるから間違いも起こりようがない」

「私より強くなったら起こるんですか?」

「食べちゃうぞー」

「やぁーん」


ぐはっ!?萌え死ぬかと思ったわ。

というかこれは駄目だ、恥ずかしくて見てられない。

勢いで言ってみたけどこれはもう二度と言えないな。黒歴史待ったなしでは?

あ、HP1残った。


「食いしばりは神スキル」


ルティナが?マークを浮かべている。

もうこの話題やめよう、俺の心が持たない。

さっきまで何の会話してたっけ?

ああ、神と性別とルティナの話か。


「現人神かな」

「うーん、どうでしょうね?私も、私がどのような生き物かなんて考えませんし」

「まあ生き物は生き物だよな」

「神々は生き物と言えるかどうか分かりませんよ?」


生き物ですらないのか。

そもそも生き物の定義って何だろうね。

…どうでもいいか、俺も人間が何かなんて知らんし。

それよりルティナだ。


「ルティナも不老不死なの?」

「不老ですけど、不死ではないです。生物の中では一番不死に近いと思いますけど」


大部分は人間と同じなのだが、一部おかしいんだとか。

結局、土台となる肉体は常軌を逸しているわけではないのだろうが、それでもとんでもなく強いのだ。

純粋な力からしてこうなのに、魔力まで使ったらどうなってしまうんだろう?

…まあきっとすごいんだろう、うん。


「さて、そろそろ再開しましょう」

「いえっす」


剣を持って向き合う。

お互いに青眼に構え、じりじりと間合いを詰める。


剣を扱って七日。

やはりまだ扱いには慣れない。

しかしあらゆる技術が足りない俺は、あまり悩んでいても仕方が無い。

ただ前進あるのみ!


剣の切っ先を気持ち水平にしながら、大きく踏み出す。

間合いの一歩手前で剣を左へ。

申し訳程度の駆け引きから放たれた横薙ぎは、ルティナによって上に弾かれる。

そのまま放たれた左拳を、こちらも何とか左手で受ける。


この何でも無いただのパンチを何とか防御できるようになったのもつい昨日の出来事だ。

とはいえ接近戦が続けばすぐ受けきれなくなる。

要するに素人に毛が生えた程度の進化だ。

その進化にしたって、受けた状態から何か知らんが押されて吹っ飛ばされた。

二メートル程押され、体勢を崩したところに追撃の突きが来る。

必死でその突きを弾くと、その反動で完全に転ぶ。


床に転がったところで剣を突きつけられる。

まあ、負けだな。


ルティナが剣を引くのをみて飛び起きる。

攻撃を二発分受けられただけでも進歩はしている。

そう考えつつ飛びつき、切りつける。

剣を振ることにも多少は慣れ、そこそこ隙の少ない攻撃ができるようになっているのだが、ルティナにはかすりもしない。

ひらり、ひらりと避けるルティナに感心しつつも連続で斬りかかっていると、突きを受け流したルティナが回った、ように見えた。

放たれた鋭い後ろ回し蹴りが視界の端に写り、その一瞬で背筋が凍る。

避けられるはずもなく、そのまま綺麗に顔を蹴りとばされた。


「ぶぐぃ!?」


変なうめき声を上げて地面を転がる。

視界が揺れ、立とうとして手を突き、バランスを崩して崩れ落ちる。


「あ…?」


おかしいぞ。

いや、別に蹴られてふらついてるのはおかしくない。

ふらついて立てないのもそんなにおかしくはない。

そうじゃなくて、なんで気絶してないんだ?


ルティナの蹴りを見たとき、意識が飛ぶのを察したんだが。

とりあえず息を整え、めまいが引くのを待ちながら聞く。


「ルティナ、ひょっとしていつもより加減した?」

「いえ。とっさに魔力で防御したみたいですね」


そうなのか。

となると、魔力はやっぱりオーラ的な側面もあるんだな。

攻防どちらにも利用できる。

ただ、単純に純粋な魔力を防御に使うことの是非は、結構微妙なところだったりする。


「とっさの防御にはすごく重要なことなので、魔法使い的には意識して止める必要はありませんよ」


魔法は無しの近接訓練だが、とっさの防御に魔力を使うのはOK、と。


「でも、それに頼ったら鍛錬にならないよな」

「うふふ」


そしてルティナの攻撃の威力が若干上がり結局のされる数が減らないというオチ。

そのままやはりルティナが作った夕食を食べ、風呂を魔法で作って入ったら寝る。


……悪くない、いやすばらしい一日だ。






7日目終了


シラキ・ヒュノージェ(愛原白木)

総合D 攻撃E 防御E 魔力量D 魔法攻撃C- 魔法防御D すばやさE スタミナE スキルF



スキル

ユニークスキル「結晶支配」

ユニークスキル「  」




保有マナ

101,136




ダンジョンの全魔物

ヒカリゴケ4000、ヒカリダケ500、魔草400


一階層

洞窟、迷宮


二階層

更地


三階層

更地


四階層

更地


五階層

コア、個室2、ダイニングキッチン、大浴場、保存庫





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