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異世界で小柄な女神様とダンジョン運営  作者: バージ
続くものと新しい者 ~取り残したものを拾い上げ~
19/96

第二階層・幻樹の森

53日目

中枢部

ダンジョンコアに手を触れ、これから第二階層の整備と魔物の召喚を行う。

色々考えはしたが、結局フィーリングで召喚することに。

根底には初見プレイなんてそんなものだろうといういい加減な考えがある。

とはいえ、目的は戦力のバランスを整えることと、マナの収入を増やすことの二つであり、これに則した召喚を行うことにしている。


さて第二階層だが、その前に第一階層を考える。

第一階層は基本洞窟であり、無数の分かれ道が小部屋と大部屋をつなぎ、蟻の巣よりも複雑な構造になっている。

また一部、らくがきで紙に書いた迷路よろしく迷宮化しており、全体として迷いやすい。

これにより侵入者を消耗させ、弱ったところを叩くと言った戦法がとれるのだが、アンデットには効果が薄い。

また、全体的に広い場所が少なく、ボス部屋以外では大人数で戦うことが難しい。

これからどんな敵がやってくるかは分からないが、少なくともフィールドは多彩な方が良いだろう。

動物系魔物が生きやすいだろうということも考え、第二階層は広く緑のあるフィールドにすることにした。


地形としては、崖と森。

森を取り囲むように崖があるが、森以外は面積が少なく、中央の森がメインになる。

第一階層のボス部屋に地下へ続く階段を作り、第二階層の高度の低い場所に繋げる。

階段の出口から森に入りまっすぐ進めば、そのまま次の階層へ続く階段にたどり着けるという仕様だ。

ちなみに一キロ四方だと小さすぎたので、適当に拡張した。


また、天井には"陽光水晶"を設置。

陽光水晶とは、太陽と同じ光を放つ水晶だ。

狭い洞窟では天井を覆うヒカリゴケが十分な光量を確保してくれていたが、この階層ではそうもいかない。

何せこの階層は高さを二百メートルに設定したのだ。

さすがのヒカリゴケもこれだけの空間を照らすには足りず、太陽並みの明るさを持つ陽光結晶を使うことになった訳だ。

大きな陽光結晶を召喚しようとなるとそこそこマナもかかるが、そこは俺の能力で代用する。

階層全体を照らすほどの陽光結晶を作るとなると、一日二日ではできないだろうが、ルティナ曰く十日もあれば十分だろう、とのこと。

まあそれでマナを節約できるのだから、じっくりと作っていくことにした。


真っ暗なら真っ暗で別に良いじゃん、と思う人もいると思うが、それはそれで問題がある。

確かに侵入者の目を奪うことはできるが、こちらも目が見えなくなる。

アンデット系やゴーレム系は真っ暗でも問題ない者もいるし、ウルフやフォックスも鼻で多少は何とかなる。

でもやっぱり見えないことに変わりは無い。

結論としては、真っ暗な階層は後回し。

戦力がある程度そろってきたら、それ専用の階層を作るつもりだ。

あくまで予定は未定の域を出ないけど。


ここまでだとかなりのイージーモードだが、もちろんそこまで親切に作るつもりはない。

まず森は背が高く、大きな木をチョイス。

これにより森の深い場所での日光を遮断し、暗く、見通しを悪くする。

そこに生物の方向感覚を奪う"幻樹"を設置(というか植林?)。

いわゆる迷いの森である。

それに天上を高く作ったのは、空中戦を可能にするためだ。

崖以外の場所が全てが森という訳ではなく、空が見える場所もあるので、そういう場所では空中戦力も地上を攻撃できる。

周囲の崖も、飛行能力のある魔物のために用意したようなものだ。


階層の構造としては以上なのだが、正直そんなに難しくは無いと思う。

もちろん簡単なダンジョンではないが、作者の殺意が低い。

正直思いつきで作っているところはあるしな。

でもウルフやフォックス達は、洞窟よりは住みやすいと思う。

俺は世界救うガチ勢じゃないからな。

コレデヨイ。


そうして第二階層の整備を終えた。

マナ的には基本地形の整備で三万、幻樹五千本で二万の消費。

階層整備で合計五万の消費か。

すでにある階層の整備だし、手の込んだことはしていないからこんなものなのだろう。


(みんな、整備終わったぞ)


眷属達に第二階層の整備が終わったことを伝える。

ルティナも含め、主要メンバーにはボス部屋で待っていてもらったのだ。

第一・第二階層間を繋ぐ階段もボス部屋の奥に作ってあるし、皆第二階層へと向かっていることだろう。

俺も整備した第二階層の様子を見に行くことにする。

方法は簡単、ダンジョンコアがレベル2になって新たに追加された機能、転送を使用する。

これは俺自身の魔力を使い、俺をダンジョンコアごと転送する機能だ。

俺の魔力を使い、第二階層入り口に瞬間移動。

転移魔方陣を使って転送するときと同じく、目を瞑り、体を一瞬の浮遊感が襲った後、ゆっくりと目を開く。


そこは魔草やヒカリゴケの光が地面を照らす、まるで夜の野外のような場所だった。

正面には暗い闇に包まれた森。

周囲には、ヒカリダケによって所々を照らされた崖。

天井は高く、ヒカリゴケのぼうっとした明るさが月の光のようだ。


(マスター。第二階層の開放、おめでとうございます)


命尾の声を聞いて振り返ると、第一階層へと続く階段から仲間達が続々と降りてきていた。

命尾、ソリフィス、レフィル、ルティナ。

その後ろにはフォックス達、ウルフ達、グリフォン達と昨日の会議の時と同じメンバーだ。

ダンジョンの主要メンバーが勢揃いと言った所だろう。


「ああ、ありがとう。こんな感じになったけど大丈夫か?」

(もちろんです!あの昨日まで何も無かった空間と同じ場所とは思えません!)


命尾の声もいつもより弾んでいる。

大方の眷属達は、普段は第二階層に住むと言う話になっていたのだ。


(こちらはかなり住みやすそうです)

「やっぱり洞窟暮らしはキツかったか?」

(いえ、基本的にダンジョンにいる以上、住むのに問題は無いです。ただ、やはり閉塞感がない方が良いですね)


命尾がうれしそうに言う。

やはり何も無い洞窟というのはあまり良い環境ではなかったのだろう。


(ただ、私たちよりマスターの方が気になります。この洞窟のダンジョンという環境は、控えめに言っても、人間が住みやすいとは思えないのですが)

「ははは…」


そう言われると否定しづらい。

ルティナが思いっきり苦笑いして横を向いた。

今度は俺も苦笑いだ。


「まあ、外出する機会もあるし、何とかなってるよ」

(つまり、良い環境ではないわけですね)


と言いつつ命尾がルティナをジト目。

俺が言い訳する時間が無い。


「あ、遊びで住んでいるわけではないですし」


ルティナが横を向いたまま反論する。

いや、この構図だとまるで言い訳みたいだが。


(でも第五階層を整備したのはルティナ様ですよね?)

「うっ」


追撃の言葉責めでダメージは更に加速した。

しかし言われてみればそうなのか。

ミテュルシオンさんがそこまで手入れするとも思えないし、一階と五階はルティナが……あれ?


「そういえば、一階の整備もルティナ殿だったか?」


俺が思った疑問を、先にソリフィスが聞いていた。

しかし、何故ソリフィスまでそっちに。

いや、雰囲気からしてあれは純粋に疑問を口にしただけか。


「あれは兄妹きょうだいで考えた結果ですねぇ」

「へー、ちなみにガリオラーデとヴォルフレイデンどっち?」


助け船になってない助け船、もとい疑問。

第一階層はルティナっぽくない気がしたが、そういうことか。

ルティナの兄妹とはあったこともないが、何となくガリオラーデの案の様な気がする。

てか神の子三人集まってできたのが蟻の巣って…。


「ガリオンが。ただ第五階層は私が一人で整備したので、言い訳できる余地がないです」


ル↑ティ↓ナさん↑!(アクセントが変)

さすが神の子、自分から言い出したぞ。


(折角マスターを迎えたなら、もう少しまともな作りにすれば良いのに)

「ま、マナが足りなかったんですよぉ…」


ルティナが沈んだ。

やめたげてよぉ!


(ルティナ様ならマナなんか無くても階層整備できるのでは?)

「立場上、手を出しづらくて…」


しかし命尾、ずばずば行くなぁ。

仮にも相手は神の子で、召喚主の上の立場なのに。

そんな中、ソリフィスがレフィルに耳打ちするように話しかける。


「レフィル、どう思う?」

(すまん。さっきから反論しようと思ってたんだが、思いつかなかった)


ソリフィスとレフィルが蚊帳の外になってる。

そしてレフィル、無理に命尾に反発しなくて良いけど、今は反論して欲しかった…。


(狼脳には難しい話でしたか)

(何だと?)


そしてこの飛び火である。


(マスターが住むならもっとまともな場所が良いに決まっています)

(だが、当の主自身が良いと言っているじゃないか)

(マスターの場合、大抵の苦行は「自分よりもっと不幸な人くらいいくらでもいる」で済ませますよ?)

(「「確かに」」)

「いや、そこは否定しろよ」


レフィルだけでなくソリフィスも、あまつさえルティナまで納得していた。

お前ら仲良しか!


「我が主はなぁ」

「シラキさんですからねぇ」


お前らそれ本人の目の前でする話じゃないからな。

いや、俺は本人の目の前で言ってくれる方が好きだけどさ。

さすが我が子。


(そんなマスターを暗い穴蔵に閉じ込めた神の子がいるらしい)

「愛です。もうそういうことで許して下さい」

(ルティナ様、愛って言えば何でも許してもらえると思うなよ)


命尾が「びしっ」という効果音でも付きそうな声で言う。

そしてそれを聞いてソリフィスがつぶやく。


「…盛大なブーメランだな」

(お前愛の一言で夜に第五階層で何をしようとしていた?)


例によって命尾にツッコミを入れるのはレフィルだ。


(いいいいつ私がマスターに夜這いかけようとしたって証拠だよ!?)

「ファ!?」


おい待て今何つった!?

俺に走る衝撃。

命尾の爆弾発言が俺の思考回路に直撃した。


「ちょ、ちょっと待て!何の話だ!?」

「うむ、皆落ち着け!」


ソリフィスが翼をバサッと広げ、俺以外、ルティナを含めた全員を牽制する。

さすがソリフィス、頼りになる!

惜しむらくはその統率力をもっと早く発揮しなかったことか!!


「我が主。第五階層へ転送できる魔方陣は常に我の監視下にあった」

「ああ、それで?」

「また、魔方陣の使用許可自体、数名しか与えられていない」


ソリフィスの言うとおり、魔方陣には使用制限を掛けている。

そもそも誰でも使えたらダンジョン崩壊ってレベルじゃない。

使えるのは俺とルティナ、ソリフィス、命尾にレフィルと五人だけだ


「その通りだな、それで?」

「懸念事案は何も無かった」

「そうか、何も無かったなら良い」


そうそう、俺が最初に召喚した魔物であり、このダンジョンのボスであるところのソリフィスがそう言うならそうなんだろう。

ってそんなわけあるか!

いや、一向に話が進まないから置いとくけど。


「君達さぁ。いや、仲良いのは良いんだけどさぁ………まあ、いいや」


話が進まなすぎる。

俺は早く魔物を召喚したいんだ。


「それじゃ、俺召喚するから」

「拝謁する」


俺がほったらかしていたダンジョンコアに触れると、周りがみんな姿勢を正してこちらを見た。

さあ、第二次魔物召喚の始まりだ!

次回予告。

魔物が増えるよ!

しかし、何故か戦力があまり増えた気がしない…。

召喚コストが高すぎる!あるいは収入が少なすぎる。

……もしくは短期間の内に事件が起こりすぎている。

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