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異世界で小柄な女神様とダンジョン運営  作者: バージ
続くものと新しい者 ~取り残したものを拾い上げ~
14/96

アイハラクリニック

今回と次回。

重い上に長い話注意。

そして重い話が軽いノリで終わる注意。

話数的にシリアスは長くは続かないのでご安心下さい。

あと一日終わってないのでステータスは次回出します。

46日目


リゼリオと共に借宿を出ると、まぶしい程の光に目を細める。

空に浮かぶ太陽は、憎たらしいほどにいつも通り地上を照らしている。

数日前の苦痛を思い出し顔を歪めながらも、冒険者ギルドに向かって歩き出す。

リーベック外縁にある借宿からは、中央の冒険者ギルドまでそこそこ時間がかかる。

町の外れの人通りは少ないけれど、白い家々の景色は大通りに引けを取らない。

もしあの出会いが私の冒険に終わりをもたらしてくれるというのなら、この小綺麗な町並みにも何ら未練はない。


依頼の書面を持ってまとめ冒険者ギルドに入ると、並べられた丸テーブルの内の一つに目的の二人を見つけられた。

興味深げに周りを見ているシラキさんは、この平凡な冒険者ギルドをどのような目で見ているのだろうか?

そんなシラキさんを見ているらしい様子のシオンさんは、白い外套を目深に被り、この日も相変わらず黙っている。


「よっ」


すぐにこちらに気付いたシラキさんが、片手を上げて声をかける。


「こんにちは」


空いていた椅子に座り、あいさつもそこそこに話し出す。

依頼の話はスムーズに進んだが、私とシラキさんしか話していない。

傍から見たら冒険者らしくないことだろう。


「報酬ですが、とりあえず調べるのに銀貨5枚でよろしいでしょうか?」

「いや、それはダンジョンを教えてもらったお礼だから、別にいらないぞ」


シラキさんは、本気でいらないらしかった。

冒険者は貸し借りとお金についてはうるさい。

やっぱり、シラキさんは冒険者らしくないと思う。


「いえ、その件はサンダーバードから助けてもらったお礼です。ですので、こちらは受け取って下さると助かります」

「…そうか、じゃあそれで」


シラキさんは頑固ではないらしく、すぐに納得して報酬を受け取ってくれた。

依頼の条件についても、シラキさんはお互いの情報の黙秘だけ確認し、すぐに引き受けてくれた。

私が依頼に付けた条件は、お互いのことを他言しない、お互いに危害を加えない、の二つ。

依頼の中ではよくある宣誓だ。

人によっては破ることのできないモノで、人によっては紙切れ同然の誓約。

評判を気にするなら簡単に破るわけにはいかないだろう。

要するに、多くの冒険者にとっては気休めだと思う。

冒険者にはどうしても荒くれ者、食い詰めた者のイメージがあるからだ。

早々にギルドでの手続きを済ませ、シラキさん達とともに宿へ戻る。


四人で奥の部屋へ。

お互いに椅子に腰掛けると、リゼリオが飲み物を用意して外の部屋に出た。

調査中は部屋を出ていて欲しいと、事前にリゼリオに言っておいた。

無防備な私を晒すところを見せるのは、リゼリオには良くないと思ったからだ。


「私は黙っていますので、いないものとして扱って下さい」


シオンさんが言うけれど、彼女のことは全くと言って良いほど分からない。

とはいえ気にするなと言うのならそうすることにしよう。

成り行きを全てシラキさんに任せているのかもしれない。

私はシラキさんと向かい合い、最初に言わなければならないことを言った。


「申し訳ありません。私は嘘をつきました」

「…呪いがかかってるのがフェデラだってことか?」

「…分かっていましたか」

「一日一緒にいたからな」


そう、ですよね。

私はすぐに納得していた。

私は呪いの秘匿に特別な技など使っていない。

シラキさんなら、見抜いていてもおかしくない。


「その通りです。結晶化の呪いを持つのは私自身で、体内に黒結晶があるのも私です」

「俺が見るのも、フェデラで良いんだよな?」

「はい。説明しますね」


一口お茶を飲み、話す。


「私の体内には、多くの黒結晶があります。のどの奥、食道、子宮一つずつ。脚に二十二個。……そして、心臓に一つです」


自分の黒結晶を話すのは、リゼリオ以外では初めてだ。

少し、恥ずかしい。

そんなことを感じるのも、久しぶりな気がする。


「脚の結晶は多いですけど、小さいと思います。心臓にあるのは、大きさが分からないほどの魔力を蓄えてから長いです。今では、どれほどの物になってしまっているのか、分かりません」


体内にある黒結晶は常に感じられている。

のどと食道と子宮の結晶は中くらいで、脚の結晶は小さい。

ただ、心臓の結晶だけは別格だった。

あまりに成長しすぎたせいで、自分自身でも把握できなくなってしまっている。


「なるほど」

「結晶は体内にあります。……見る間、私はどうすれば良いでしょうか?」


他人の体内にあるものを探るのは難しい。

当人の魔力が邪魔をする。


「上着を脱いで、できるだけその場所の魔力を少なくしてくれ。あ、座っていてくれればいいから」






呪いがフェデラにあると見抜いたのはルティナだ。

呪いなんて見たことすらないのに俺が分かるわけなかろう。


それを置いておいたとしても、今日会ったフェデラの表情は深刻だった。

それは依頼の話の時も移動の時もそうで、いざ診察が始まってからは更に顕著になった。

自分よりも年下の少女が、自分が一度もしたことがないような深刻な表情をしていれば、自然とこちらも気を引き締めるというもの。


ローブを脱ぎ、薄着になったフェデラを見る。

この少女は美人だが暗い雰囲気を漂わせている。

この世界の基準だとどうなのか分からないが、身体も細い。

胸はかなりあるのだが、どことなく不健康にやせているような気配がある。

色々思うところもありそうだが、フェデラの表情を見ればそんな感想も薄れる。

見たことはないのでただの想像だが、まるで医者に自分のガンの詳細を聞く患者の様だ。


とりあえず、目の前のことに集中しよう。

まずはのどだ。

俺はまるで首を絞めるような格好でフェデラののどに手を当て、魔力を侵入させる。

何もしなければ反発するはずのフェデラの魔力は、ほとんど抵抗することがなかった。

フェデラがコントロールしているのだ。

びっくりして見れば、フェデラは眉一つ動かさずに俺を見つめている。


これはそうそうできることではない。

この状況では、フェデラはほとんど無防備だ。

俺はその気になれば簡単にフェデラ傷つけることができる。

いや、殺すことができる。

体内に他人の魔力の侵入を許すと言うことは、その人に自らの生殺与奪の権利を差し出すと言うことだ。

そのことをフェデラが分からないわけもない。

彼女は自らの命を、会って間もない俺に預けているのだ。

俺にはできない。

いや、例えその人が絶対に自分を傷つけないという確信があったとしても、自らの命に対する本能的な防衛反応を制御しきることなどできるだろうか?

人間は自分の意志とは関係なく、勝手に自分を守ろうとする。

彼女がやっているのは俺には到底及びも付かないほどの精度を誇る魔力制御だ。

そして、覚悟。

あるいは、彼女は自らの命すら他者にゆだねなければならないほど、切羽詰まっている。


俺は気合いを入れ直し、魔力の操作に集中した。

自分の魔力が触れた瞬間、その禍々しさに悪寒が走る。

黒結晶はすぐに見つかった。

おそらく、フェデラののどを覆うようにびっしりとこびりついている。

これは毒だ。

こんな物を体内に入れて、彼女はどれほどの苦痛を味わっているのだろうか?

俺はまたも驚きつつ、全容を調べる。

すごい量だ。

おそらく、上級魔法が四、五発撃てるくらいの魔力がある。

つまり、俺の魔力を2回全快できるくらいの魔力だ。

これで氷山の一角とは、おそろしい話だ。

俺の表情がゆがむのがフェデラには分かってしまうだろう。

ポーカーフェイスができないとは、医者としては失格かもしれない。


しばらく結晶を調べ、大体の当たりを付ける。

おそらく、何とかなる。

時間はかなりかかるが、逆に言えば時間さえかければ安全に解体できるだろう。

やり方は単純。

フェデラの口からのどに俺が作った結晶の棒を突っこみ、それを通して魔力を吸い出す。

吸い出した魔力は別の魔力結晶に隔離する。

簡単だ、少なくともこれから見る他の位置にある魔力結晶に比べれば。

俺は魔力を下に落とし、食道のあたりを探る。

こちらにあったのも、のどにあったのと同じぐらいの魔力結晶だ。

距離の関係上、のどの物よりも更に時間がかかるだろうが、こちらも解体はできるだろう。

フェデラにとって、口からのどの奥に棒を入れるのがどの程度気持ち悪いかは、この際考えないでおく。


俺は首から手を離した。

俺が調べている間、フェデラはずっと俺を見つめていた。

その表情からは、彼女が何を思っているかを推し量ることはできない。


「次、腹」


フェデラが頷いて服をまくりあげる。

検診で聴診器を当てるときにするあれだ。

こんな状況じゃなければ喜ぶ所なんだが。

本当は服があっても大丈夫なのだが、まあない方が楽なので気にしないでおく。

とにかく、フェデラの腹に手を当てる。

調べると、のどの物より一回り大きい黒結晶があることが分かる。

これはどうやって分解した物か。

……方法もないわけではないか。

今は深く考えずに次に移る。


「大体分かった。次は脚を見せてくれ」


俺がその場を退くと、フェデラはもう一つの椅子に脚を乗せ、ズボンをまくり上げる。

ガリガリとは言わないが、こちらも線が細い。

少々緊張しつつも手を足に乗せ、魔力を通す。

こちらは、俺にとっては更に不快な物だった。

足の所々に存在している小さな魔力結晶。

それは体内に弾丸が取り残されたままふさがった傷跡みたいなもので、そんなのが22個も存在している。

はっきり言って、気持ち悪い。


…なんなんだろうな、これは。

どうしてこんな少女が、こんな目に遭っているんだ?

不快感と共に感じる怒りに歯を食いしばりつつも、同じように調査する。

一つ一つはのどと食道のものに比べれば、たいしたことない。

それでも上級魔法の一発くらいなら撃てそうでもあるが、問題はそこじゃない。

脚の魔力結晶には、直接触れる方法がないのだ。

最初は注射のように結晶の針を刺して抜き取るつもりだったのだが、これだけ量があって脚は大丈夫だろうか?

内包されている魔力は一回で抜ききれる量でもない。


それさえ何とかなるなら、こっちも大丈夫だ。

俺も忘れていたが、ここは魔法の世界。

壊すより作る方が遙かに難しいとは言え、ちょっとした刺し傷くらいなら回復魔法で直せるだろう。

問題なのは直接的な傷ではなく、悪性魔力がもたらす影響の方なのだから。


「ふー」


ため息を吐く。

で、最後はなんつったっけ?

心臓か。

場所が場所だけについ最後に残してしまった。

あまりの痛々しさにかなり気分が悪くなっていたが、次も腐抜けるわけには行かない。


「心臓」


服の上から左胸の上の辺りを触る。

多少なりとも魔力の編まれたローブと違い、普通の服なら魔力を阻害したりしない。

服の上からでも十分に探ることができる。

そうして心臓、人体の中心とも言うべき場所に魔力が到達したとき。

俺の心に澱のように溜まっていた怒りは、頂点を迎えた。

心臓の中にあったのは他の物とは比べものにならないほどの魔力だった。

信じられないほどの大きさ。

最上級魔法が何発撃てる?

こんなことがあって良いのか?


「フェデラ、こんな物を抱えて……大丈夫なのか?」

「……そうですね。大丈夫、ではないと思います。今の私は歩く爆弾……非常に危険な人間です」


そんなことは分かっている。

この量の魔力が爆発すれば周辺は更地だろう。


「違う、体調の話だ」

「……今は、二十日に一度、激痛で動けない日があります」


当たり前だ。

これは毒だっていっただろう。

こんな物持っていたらどれほど苦しまなくてはならないんだ?

この、俺よりも年下の少女の人生は、どれほど苦痛に満ちた物だったのだろう?

俺は怒りと不快感でどうにかなりそうだった。

しかしそれは、フェデラのことなどほとんど知らない俺が感じる様な物ではない。

もしかしたら彼女はそれだけの業を背負うにふさわしい悪を成したのかもしれない。

俺の目に善良に移っているだけで、実は多くの人を不幸にしてきたのかもしれない。

ならばリゼリオはどうなんだ?

かくしてはいても彼女の態度の節々には、フェデラに対する敬意が籠もっていた。

少なくともフェデラは、リゼリオに慕われる人間だ。


いや、止めろ。

今の俺は、ただ病を診るだけの人間だ。

それが、その人の人生まで考えるなどおこがましい。

俺は立ち上がって後ろを向くと、大きく息を吐いた。


「終わった」

「……どう、でしたか?」

「のどと食道は、時間をかければ解決できる。足も、どうにもならないわけじゃない」


背中越しに、息をのむ音が聞こえた。

そのとき俺は後ろを向いていたから、フェデラがどんな顔をしているかは分からない。


「子宮と心臓は、どのような…?」

「……難しい」


子宮の方はまだマシだ、結晶の棒を性器に刺すなり腹に刺すなり思いつく。

すさまじく不快だが。

ただ心臓の方はもうどうしたら良いのか分からない。

傷付ける訳にはいかないし、心臓の中、血のポンプの中にある物にどうやって接触すればいいのか。


なんにせよ相当長い時間、合計すれば何十時間も接触していなければならない。

それでも、あれほどの魔力を安全に解体できる保証はない。

一歩間違えば、フェデラどころかここら辺一体が焦土。


現実的じゃない。


一つ、大きく息を吐いた。

気持ちを入れ替える。

とりあえず、何事もやってみなければ分からないものだ。


「とりあえず、これからのどの黒結晶から少し抜き取ってみようと思うが、良いか」

「…!すぐに始められるのですか?」

「ああ、準備はしてきた」


ポケットから道具を取り出す。

それは水晶の棒と、卵形の魔力結晶だ。


この棒の中を悪性の魔力を通し、卵形の魔力結晶に移す。

必要かどうかも分からないが、とりあえず殺菌の意味を込めて魔法で棒を燃やす。

少しの間燃やしたら、今度は中空に水を出して十分に冷やす。


「ベットに横になって、口を開けてくれ。多少苦しいと思うが」


頷いて横になるフェデラの左隣に座り、慎重に口からのどに棒をさす。

その先に悪性の魔力結晶があるのを確認し、卵形の魔力結晶を棒の手前側に付ける。

左手で棒を持ちながら、右手をのどに置き、魔力の操作を始める。


フェデラの魔力結晶の、棒が触れている部分を少しだけ区切る。

防火扉と言えば分かりやすいだろうか。

魔力を閉じ込めるための外殻を内側にも作ることで、中身を区分けするのだ。

こうしておけば、ミスしたときにあふれ出す魔力を少なくすることができる。

圧力も減るし、これがあると魔力を移す難易度が変わる。

時間がかかっても安全を優先するのは、当然のことだと思う。

多少時間はかかったが、フェデラは苦しそうな様子も見せない。

彼女は、この程度の苦痛はもはやどうと言うこともないのかもしれない。


水晶の棒を通し、少しずつ魔力を移動させる。

棒を用意してきたため、移せる速度がかなり上がっている。

イメージとしては、ペットボトルの水をこぼさないように別のペットボトルに移す感じか。

とにかく慎重に行うことを心がけながらも、俺は少しずつ魔力を移していった。



横になっているフェデラと、それをのぞき込むようにしている俺。

ごくわずかに区切られた部分、そこにあった魔力のほとんどを移し終わったとき、すでに四十分以上が経過していた。


俺は結晶に開けていた穴を閉じ、棒を引き抜く。


「はぁー……終わった」


自分の服で水晶の棒に付いた唾液をぬぐうと、ベットから降りて床にへたり込む。

やっている間は集中していて気がつかなかったが、終わってみれば相当疲れていた。

何せ一つのミスが死に結びつかないとも限らない作業だったのだ。

いや、それを言うならフェデラもすごいな。

俺がミスったら、下手したら死ぬぞこの子。

まあ魔力の侵入を許してる時点でもう今更だったが。


そんなことを考えていると、フェデラが予想もしていなかったことをした。

フェデラはベットを降りると、俺の隣に座り、頭を床まで下げた。

要するに、土下座だ。


「えっ?」

「シラキさん、本日は本当にありがとうございました。どうか、これからも私を助けて欲しいのです」


一瞬ギョッとしたが、すぐに頭を使って考える。

かつての俺なら、助けない理由はなかった。

しかし今は違う。

曲がりなりにも大きな目的がある。

そのために、フェデラの治療に当てる長い時間が惜しい。


………と、思いはしたんだがな。

先のことなど考えられないのが人間だ。

世界中の生き物を救う目的がありながら、目の前の一人のためにその時間を消費する。

良いじゃないか、俺はそっちの方が正しいと思ってる。

目の前で助けを求める少女を見捨てるのは、自らの人間性を犠牲にすることに他ならない。

そうすることでしか救えない世界など、滅んでしまえば良いのだ。


……ただし報酬はもらうがな!


「……フェデラがそうしてほしいのなら、手を貸すよ。ただ、報酬はもらうぞ」

「私に差し出せる物なら、何でも差し出します。シラキさんが望むなら、私を奴隷にして下さっても構いません」


え?


「え?」


予想外すぎて二重に言葉が出た。


「な、なんだそれは」

「これからも私の黒結晶を消して下さるのなら、私は喜んであなたの奴隷になります」

「違う、だから、なんだそれは」

「私はユニークスキルも所有しています。それにまだ誰にも身体を許していない、生娘です。シラキ様が望むのなら、どのようなことでも覚えます。ですから、どうか」

「待て」


ユニークスキルは気になるが会話になってないぞ!

話が突飛すぎて意味が分からん。


「何故、奴隷?」

「シラキ様には目的があるようです。私のために多くの力を使われるのならば、微力ながら、私は何でもいたします」


ダメだ、まだ会話に。

……いや、落ち着け、フェデラが何を言いたいのか考えるんだ。


…………うん、分からんわ。


「すまん、最初から説明してくれ」

「シラキ様のお力にふさわしいだけの報酬が、私は持ち合わせていないのです。ですから、私の全てを差し出します」


………。

結局さっきから言ってることが変わってなくね?

いや、少しは状況が分かったけどさ。


とりあえず俺は大きく深呼吸をして気持ちを落ち着ける。


「つまり、フェデラにとって黒結晶の除去は、全てを差しだすに匹敵すると?」

「はい。その通りです」


確かに、フェデラはほっときゃ死ぬ。

助かることは絶望的、といっても多分間違いないと思う。

俺は命の恩人なのかもしれない。

だが、命を救ってもらうために自分の全てを差し出すとかおかしいだろう。

恵まれているからか?俺が恵まれているから分からないのか?


「分からん。なら先にフェデラのことを教えてくれ。呪いのこととか」


自分の全てというならその程度、なんてことあるまい。


「分かりました」


俺がルティナの横の椅子に座ると、フェデラも対面の席に着いた。

そうしてフェデラは語り出した。

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