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異世界で小柄な女神様とダンジョン運営  作者: バージ
続くものと新しい者 ~取り残したものを拾い上げ~
13/96

一ヶ月半のテンプレ

44日目


もはや自分の家となっているダンジョン第五階層。

灰色や茶色、黒の石に囲まれたダイニングルームは、ヒカリゴケとヒカリダケが放つ淡い光に照らされている。

この部屋の椅子に腰掛け、ルティナと向き合うのもいつものことだ。

ちなみに会話の内容は主に講義であり、今日は先日の儀式について聞いてみた。


「正式名称は、"闘争と契魔の儀式"、開発者はガリオン…ガリオラーデ=モーストンですね」

「もう一人の神の子だっけか」


作者は魔族の子だと言う話だ。

"人と神の子"であるルティナに対し、"魔族と神の子"というのがガリオラーデ=モーストンなのだろう。


「そうですね。三人しかいない神の子の一人です。私とガリオン、そしてフレイ」

「フレイ?」

「"竜と神の子"、ヴォルフレイデン=ヴォルドラベルです。二人とも、私の兄弟みたいな物です」


ふむ、竜と魔族と人。

力と魔力と心か?

確かこの世界では人と魔族が同等で、竜だけ突出して上位の存在だったはず。


「心技体的な…じゃなくて心魔体か」

「あはは、魔力の扱いは技術面も強いですし、間違っていませんよ。それに心技体というのもシラキさんの想像の通りです」


ルティナが笑う。

何の根拠もなかったけど本当にそうなのか。

もしかしたら人の神、魔族の神、竜の神がそれぞれ神の子を作ったのかも。

いや、ルティナの母であるところのミテュルシオンさんは人の神じゃないって言ってたな、そういえば。


「それにしても驚きました。別世界生まれだからかは分かりませんけど、シラキさんって変なところで鋭いですね。それを知っているのは私の兄弟くらいなのに」

「ん、まあ、日本はそういう人結構いると思う」

「シラキさんの国でしたね。私も行ってみたいものです」


ルティナならその気になれば行けるのではないだろうか。


「シラキさんも分かっているみたいですけど、私が心、ガリオンが技術、フレイが体です。それぞれ対応した能力を持っています」


ルティナは説明しながらも自らの胸を指さし、手を指さし、体を指さす。

多分心技体。

そのちょこちょことした動きがかわいらしい。


「ルティナは?」

「秘密です」


ニッコリ笑ってルティナが言う。

む、ルティナに質問して秘密と返されたのは初めてだろうか?


「そうか…ガリオンが技術って話だけど、魔術の作成がそれか?」

「……もっと聞いてくれても良いのに」


そうだったの!?

ルティナがジト目でこちらを睨む。

正直神の子相手に秘密を聞くことに反感を感じるから仕方ないんだ。

知りたがり故聞いても良いことは根掘り葉掘り聞くが、言いたくないことまで聞く気はない。

…しかし、こうしているルティナは本当に子どもっぽくてかわいいな。


「こほん。確かにシラキさんの言うとおりです。ガリオンは世界最高の魔法制作者だと思います」


そうだろうな。

あんなのまともな儀式じゃない。

あのレベルの魔法を作れて世界最高じゃなかったら世界のレベルが高すぎる。


「さすが」

「ふふ。ただ、あの儀式は色々と特殊なことをしているだけあって負担が大きいので、十日に一回が限界です」

「む、そうか」


俺としてはどんどんやりたかったのだが仕方ない。

これからは十日に一回行うことにしよう。






空の上、雲の下。

上を見れば薄くのばしたような雲を突き抜け、太陽の光が照らしている。

下を見れば鳥肌が立つほど怖い。

いや、木の葉と草(苔?)の緑が一面に拡がった森がある。

俺とルティナはまたソリフィスの背に跨がり、空中を移動している最中だ。

本来強すぎるであろう頬を打つ風は、ルティナの魔法でそよ風ほどの強さにまで軽減されている。


2回目の"闘争と契魔の儀式"。

十日に一度と決めたばかりの儀式を、前回から四日しかたってないのに行うことになっていた。

どうも一回目はガリオラーデが負担を分担してくれていたらしく、今回だけは四日でできるとのこと。

俺には全く分からない話だが、儀式自体を作れる程の腕があればそういうことも可能なのだとか。

うーん、さすが神の子。


この世界に生きる中で、最も"世界を律している様々なルール"に逆らうことができる生き物。

それが神の子なのだ。

天使よりも、竜よりも世界に干渉できる生物であり、今現在たったの三人しかいない種族。

そんなのに師事しているのだから俺も大概希有な人間だ。

まあ珍しいことがイコール良いこととは限らない。


そういえば、種族という面で考えて最も上にいるのが神の子だ。

一番上にいる神は生物として定義しにくいが、神の下僕たる天使は一応生物として間違ってない。

神の子の下に竜や天使が来て、その下に亜人(人間、エルフ、ドワーフなど)と魔族(魔人、魔物)が来る。

上に行くほど力が上がり数が減る。

竜なんかはまともな生物だと考えると相当数が少ない様子だ、天使は…よくわからない。

ちなみに天使は直接戦いには参加せず、竜は何か特有の仕事があるのだとか。

彼らが飛び抜けて強いということの証明なのだろうな。

ちなみに彼らを除いたとき、地上において最も強大な戦力が魔王軍であり、戦力的に魔王軍なくして邪神との戦いに勝利することはできない。


(我が主、どうやら飛行にももう慣れたようだな)


頬を打つ風に目を細め考え事をしていたら、ソリフィスが念話で話しかけてきた。


「ないです。と言うかソリフィスはすごいな、人二人乗せても軽々と跳んでるし」


一体重さ何キロ分を空に浮かせているのだろうか?

……考えたらメチャクチャすごいことのような気がする。

物理法則的な意味で。


(二人とも軽いからな。この程度なら大したことはない)

「さすが。いや、ルティナの風魔法が発動しているのに飛べる方を褒めるべきか?」

「シラキさんの言うとおり、風の強さが変わってますからね。それを物ともしていないのはさすがです」

(神の子に言われるとは、光栄だ)


神の子も認める芸当。

ちなみに念話するときは大抵一緒にいる人にも聞こえるようにしている。

でないと会話に混ざれないからな。

念話は内緒話するには最高の方法でもあるが、大人数の会話には向かない。


そうこうしながらも適当な場所に降り立ち、儀式を始める。

場所は変えたが、前回と同じ森の中なので住んでいる魔物は変わらない。

そのため出てくる魔物もほとんど変わりが無い。

変わったのは俺の戦い方で、レベル2以下の敵は可能な限り剣とナイフで倒すことにした。

魔力の節約と、白兵戦の実戦訓練のためだ。

どうやらルティナは俺の動きがなかなか良くならないのを気にしているらしく、戦い方に注文が出た。

ホブゴブリンが出たら攻撃魔法無しで戦ってみろ、とのこと。


俺の肉体はかなり貧弱だ。

この世界に来て修行漬けの生活を送っているが、多少は筋肉が付いてもまだ線が細いままだ。

魔力無しで戦った場合、ホブゴブリンには勝てない。

ひょろひょろな俺と、力士並に全身肉だるまなホブゴブリンでは比べるまでもない。

俺の近接戦闘は、魔力と技術と補助魔法によって成り立っている。

身に纏う魔力は上がり幅は少ないがオーラのような働きをし、貧弱な俺からすれば攻防共に役立つ。

補助魔法をかけ、纏う魔力を操り、できるだけ単純な押し合いは避ける。

それが今の俺の近接戦闘スタイルだ。


武器に関しては、今回石英で作った刀を2本、ナイフを3本持ってきている。

どうしても肉体の力が必要な西洋剣よりも、刀の方が技術を生かしやすい。

付け焼き刃の技術だが、あらゆる技術が未熟なのだからしかたない。

鞘も作って腰にぶら下げているが、これがなかなか気に入っている。

材質が石英のため刀のくせに透明だが、それも少しかっこいい。

というか、多分相手からしたら見え辛くて困ると思う。

ちなみに2本持ってきたのは、使っている内に折れそうだったからだ。

刀というのは乱暴に扱うとすぐ折れてしまうという。

その上手入れも大変で、ちょっと切るとすぐ切れ味が落ちてしまう、と。

その点この刀は優秀だ。

何せ俺がその場で直せる。

折れても消滅するわけではないし、直すのは簡単だ。


儀式では当初の懸念の通り、ホブゴブリンの棍棒を何回か弾いていたらそのうちヒビが入って折れた。

肉だるまの攻撃は避けるに限ると実感する。

大ぶりの攻撃を待ち、その隙に避けたりはじいたりしながら攻撃する。

要するに回避重視のカウンター型だな。


押し寄せる敵をもたもたしながらも白兵戦で倒していると、途中でニードルビーの群れが丸々やってきた。

犬ほどの大きさのある蜂が群れでやってきたのはなかなかおそろしかった。

しかもクイーンまで一緒だ。

クイーンはレベルは5だが戦闘力はそこまでじゃないので大丈夫だ。

さすがにどうしようかと思ったが、結局"ブレイズサイクロン"で殲滅した。

そのとき気がついたが、敵を殲滅できるほどのウインドカッターは、二つの魔法を使っているはずのブレイズサイクロンと同じだけの魔力を消費している。

強いとは思っていたが、消費も相応に多いのだ。


で、この日一番の戦い。

なんとコボルトヒーローが現れたのだ。

こいつは弱小魔物に(笑)が付く様な魔物だ。

コボルトヒーローとは名前の通り強化コボルトで、驚きのレベル5。

レッサーデーモンより強い。

こいつは槍を使い、何とか刀で戦おうとする俺を歯牙にもかけずにボコる。

技量の差がモロに出たのか、隙を突かれて攻撃を受けることを何度か繰り返したのだが、ここに来て驚きの事実が発覚。

普段ルティナにボコられすぎて、白兵戦で明らかに俺より強いコボルトヒーローが弱く見える。

その証拠に何度も打撃を受けたにもかかわらず、一つも致命傷を受けなかった。

まあボコられている事実に変わりはないのだが。

何とか頑張ってみたが、結局ストーンスローからのフレイムピラーのコンボで倒した。

これは正面から飛来する多数の石つぶてを囮に、地面から立ち上る火柱が敵を飲み込むコンボ。

大抵の敵はこの攻撃を避けられない。

やっぱり魔法がないと何もできないんですねぇ。

そして油断していたらコボルトヒーローがフレイムピラーを耐えてきたせいでかなり焦った。

すごい突きが眼前まで飛んできて死ぬかと思ったが、何とか勝った。

…そのとき焦って全力で魔法弾を放ったため魔力を大量に消費したが。


結局この日の戦果は以下の通り。

レベル1:コボルト3体、ハウンドウルフ11体

レベル2:ゴブリン42体、食人花5体、ニードルビー32体、

レベル3:ホブゴブリン4体、ゴブリンシャーマン2体、グリズリー1体

レベル5:コボルトヒーロー1体、クイーンビー1体


ええっと、今回も収入は3弱。

魔物のみで一日あたり24に増えた。

ちなみにいつの間にか俺も4マナになってた。

やっぱり実戦は違うな!

マナもかなりのペースで増えてる気がする。

それにやはりレベル5の魔物は強い。

自分が成長することを信じて続けていこう。

死なないようにね。




そうして俺は二回の儀式を終えた。

戦力的には相当増えたし、幸いルティナやソリフィスが割って入るような事態も起こらなかった。

何よりこれから戦力増強の手段が増えたのが大きい。

いや、やってることと言えば拳で語る的な方法だが。

何でこんな手に頼らざるを得ない程収入が少ないんだというツッコミもあるし。

あとは、魔力結晶の貯蔵も開始。

これは今後重要な回復アイテムになるだろう。

何も考えずに「結晶支配」のスキルをもらったが、なんとまあ実用的なスキルだ。

さすが神様もといミテュルシオン様だー。


うん。

フェデラの呪いの件もルティナと話し合い、何とかなりそうだ。

後は見てみなければ分からない。

さあ、気合い入れて行くぞー!





44日目終了


シラキ・ヒュノージェ(愛原白木)

総合B-攻撃C- 防御C- 魔力量B 魔法攻撃B- 魔法防御C+ すばやさC+ スタミナC スキルC+



スキル

ユニークスキル「結晶支配」

ユニークスキル「  」



ダンジョン


保有マナ

32,435


ダンジョンの全魔物

ボス:ソリフィス(ヒポグリフ)

迷宮植物:

    ヒカリゴケ4400、ヒカリダケ550、魔草440

グループ(勢力順):

    グリフォン4

    シルバーウルフ1、ウルフソーサラー5、ハウンドウルフ20

    フォックスシャーマン10、ハウンドフォックス10

    ホブゴブリン4、ゴブリンシャーマン2、ゴブリン42

    リザードマン7

    ホブゴブリン2、ゴブリンシャーマン1、ゴブリン26

    クイーンビー1、ニードルビー32

    クイーンビー1、ニードルビー18

    イートアント87

    ゴブリン30

    フォックスシャーマン3

    グリズリー3

    食人花13

    ハウンドウルフ17

    コボルト9

単体・その他(能力順);

    コボルトヒーロー1

    グリズリー1


野良・その他:

    ゴブリン29、ホブゴブリン3、コボルト18、コボルトロード1、ハウンドウルフ28、食人花11、インプ5、グリズリー1




一階層

洞窟・迷宮


二階層

更地


三階層

更地


四階層

更地


五階層

コア、個室2、ダイニングキッチン、大浴場、保存庫


次回、シリアス。

次々回、シリアス崩壊。

何故ダンジョン運営ゲーなのに魔物を外から補充しているのかという気になった。

元凶は間違いなく収支を決定した頃の作者。

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